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悪役令嬢は、昨日隣国へ出荷されました。  作者: ねこたまりん
業務日誌(二冊目)
15/24

(5)対外交渉

 地下の魔導工房前では、侍従長のアルダス率いる魔攻班が、名前を名乗らない三名の客と対峙していた。



「液体魔力を売ってもらおう」


「お取引きは、すべて魔導ギルドを通していただいております」


「ギルドの連中では話にならなぬから、直接来てやったのだ。適正価格で不満があるなら、多少の上乗せをしよう。ただし、今すぐ取り引きするならだ」


一昨日(おととい)にでも、おいでいただきましょうか」


「話の分からぬ奴だ。貴様らの主人がどうなってもいいと?」


「どうなってもとは、どうなるのですかな」


「会いたくても二度と会えぬようになるであろうな」


「ほう」


 アルダスの背後では、魔術探知の得意な使用人が、全力で敵対魔術の発動者を探っていた。



『侍従長、空間断絶の大元は後ろに立ってる小柄な奴だ。あと、その隣の背の高い奴が、転移魔法の発動などを封じてる』


 解呪の名手である使用人は、城内に仕掛けられた意識操作などの呪具を探しだしては、次々と破棄していた。


『百個もあるぜ。防衛班の連中、事が済んだらシメてやる……あと三個…二、一、終了!』


 アルダスは、反撃の準備が完了したことを把握すると、好ましくない来客を目の前から消し去ることにした。


「私といたしましても、あなたがたとは二度と会いたくございませんな」


 その言葉が終わると同時に、王城全体に空間断絶と魔封じを仕掛けていた者たちの姿が消えた。


「おい! わしの配下をどこへやった!」


「ご自宅に帰られたのでは?」


「貴様、なぜ魔術が使える!?」


「さあ、魔術に疎いもので、よく分かりませんな」


 魔術の技量が極めて高いアルダスに、格下の者がかけた魔封じは全く効いていなかった。


「ふっふざけるな! こんなことをして、タダで済むと思うなよ」


「おいくらほどかかりますかな」


「お前の主人を消してくれる!」


「その前にお帰りいただきましょうか。夜分に不法侵入など、迷惑この上ない」


「わしに何をしても無駄だぞ! あの小娘なら、すでに部屋ごと我が王の元へ送ったからな!」


「なるほど…では、貴方がたには地獄の門番のところにでも、行ってもらいましょうか」


「な! うわっやめろ」



 騒がしい侵入者を魔導工房前から消し去ると、アルダスは魔攻班の面々に指示を出した。


「不法侵入者がまだ城内に残っているようですので、他の者たちと連携して、完全に駆逐してください。遅発性の魔具や呪具があるかもしれないので、徹底駆除を」


「侍従長は、この後お嬢の所へ飛びますか」


「そうしたいところですが、先にもう一仕事しなくてはならないようです」


 その言葉を聞いて、魔攻班の面々は、アドラスの目的を察した。


「助手が必要では?」


「まあ必要ないでしょう。こちらが完全に片付いたなら、順次お嬢様のところへ飛んでください」


「了解。ご武運を」


「アルダスさん、俺らもすぐ飛びますから、少しくらい残しておいてくださいよ」


「保証はしません」


 アルダスが転移していくと、入れ替わりに防衛班が飛び込んできた。


「お前ら遅いぞ」


「すまん。武器庫は早めに抜けられたんだが、その先で足止めを食ってた。液体魔力は無事だな?」


「ああ。お嬢の部屋は?」


「防衛班の半分が向かってるが、部屋もお嬢も、元の場所から消えたままだ」


「くそ…今の時点であっちに直接飛べるのは、アルダスさんと、ネイトくらいか」


「デミグリッド城の魔法防壁は硬いからな…」


「マーサとリビーはどうにか飛んだようだ」


「なら、まず大丈夫か。お嬢、目が覚めてないといいが」


「この騒ぎだ。さすがに覚めてるだろう」


「マーサたちや侍従長から連絡が来たら、すぐにでも飛ぼう」


「その前に掃除だ。侍女組も庭師組も連携復帰してるようだ。とっとと片付けようぜ」


「デミグリッド国は、今夜で終了だな」


「多少の悪党なら放っておくが、うちのお嬢の安寧を損なうものに、存続する資格はない」


「そういう事だ」








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