モブ視点でお送りする本編チラ見せ小説〜人形美少女&美青年の師弟のギルド訪問〜
あらすじに軽く登場人物の説明あります。そちらを一読してからこちらの本編を読んでいただけるとわかりやすいと思います。
[短編]顔面国宝詐欺な二人
「うわぁ...!」
「ねぇ、あそこ...」
「きゃーっ!ちょっと、見てよあの二人!」
「誰か話しかけてこいよ」「無理だろ、隣に居る男見ろって」
「...え、なにごと?」
俺はCランク冒険者のブーモ・シャボーカン。長期の依頼が終わりホームとしている町に帰るためにいくつかの町を経由して帰路についている途中だ。
今日もホームを目指すついでに少しの依頼をこなして冒険者ギルドに来たのだが、なんだか少し騒がしい。
この町全体が騒がしいかと言われればそうでは無いので、ギルドで何かがあったのだろう。一体何が...、と辺りを見渡したその時。
俺は自分の目を疑った。
「に、人形が歩いてる.........????」
人形だ。
精巧な作りをしている、人間のような人形が歩いている。しかも二人。
一人は男、一人は女の人形のようだ。
どこからどう見ても人形にしか見えないが、その整い過ぎた顔を持つ男女は自立して歩いているし、女の方は屋台で買ったと思わしき甘そうなお菓子を食べている。
ひとくち食べる度に頬が緩んでいる様子はとても可愛らしく、まるで宗教画の天使のようだ。
その天使を見つめる男の方も、涼し気な美貌を惜しげも無く晒しながら周囲への牽制なのか、天使の口元に着いたクリームを指ですくいとって自分の口へと運んでいた。
その際天使に目をやっていた男共へ目線をやっていたので、確実に牽制であると理解した。
俺も目線を受けたが、正直あの美貌に睨まれるのはご褒美でしかない。キモいって?うるせぇシャボーカン家は先祖代々みんな面食いなんだよ。
クリームを付けていたことに天使が気付き、少し恥ずかしそうに男から目を逸らしているが、男が天使を見つめる目線の甘さに天使は気付いていないのだろうか?
ぷっくらとした形のいい唇を少し尖らせて男を見上げる天使は本当に愛らしく、庇護欲をかきたてられる。
男も同じように思ったのだろう。天使を自分が羽織っているローブの中に入れて完全に隠してしまった。
周囲から残念そうなため息が洩れる。わかるよ、あんな光景見ずにはいられないよな。
もぞもぞと動いているローブの中の天使は、男と同じような白い髪をしていた。
ただ天使の方は純白で透明感のある髪で、男の方は白だけれど白よりもほんの少し温かみのあるベージュカラーで柔らかな印象を受ける。
瞳の色は天使は紫水晶のような淡い紫色をしていて、珍しい色なのも相まってますます現実味が薄れている。
男の瞳の色は緑色。神秘的なエメラルドの瞳は男の容貌によく合っており、こちらも現実味がない。
というかこの二人、本当に美しい。まつ毛の1本1本が白くて長い。烟るようなまつ毛の中で時折輝きを放つ宝石のような瞳。腕のいい職人が手によりをかけて作った最高傑作のお人形フェイスだ。
男が涼し気で神秘的な美しさだとすれば、女は可憐で愛らしい美しさを持っている。
天使は、全体的に小さい作りをしているため、動作がいちいち可愛らしい。
ぱっちりとした瞳にくるん、と上を向いているまつ毛。化粧っ気はないのに何故かほんのり色付いている頬と唇に、思わず目が奪われてしまう。
こんな現実味がない美貌の男女がこの世界に存在したことに感謝しつつ、今まで出会えなかった事への悔しさが湧き出て来るのを感じる。絶対に幼少期も可愛かっただろ。
まぁそれはさておき、噂のふたりがギルドの受付へと近付いてきた。
その横にある依頼板の前にいた俺は、必然的に会話がききとれる距離になっていた。偶然だったが数分前の俺、グッジョブ。
「あっ、ここが受付みたいですね!早速以来の報告をしましょう、エルドさん」
「ん。...狩ってきた魔物を出すブースはどこなんだ?」
「あ、新人さんですか?お疲れ様です。1匹や2匹でしたらこちらのカウンターで出していただいても大丈夫ですよ!」
「いや、俺たちは...」
「一匹ですし、出せますね。じゃあ出すので少し離れてくださいね」
「え?離れるって...きゃーー!!!!」
ドサッ
「なっ!!!?」
女の方が受付嬢に話しかけると、微笑ましそうな顔をした受付嬢が答える。
二人とも年齢不詳の美貌なので具体的には分からないが、若いのでそこまで高ランクではないと判断したのだろう。
現にブースがどこかもわかっていなかったのできっと初めて魔物討伐の依頼を受けたような新人で、ならば依頼の魔物も大したことは無いと判断して受付で出すように言ったのだろう。
だが、予想を遥かに裏切って出てきたのは低ランクの魔物ではなどではなく。
音を立てて床に転げ落ちたのはSSランクのレッドボーン。例外のSSSを除き最高ランクの危険度の魔物だ。普通の冒険者なら見た瞬間死を覚悟するような魔物がいきなりギルドに現れたので周囲は大混乱を起こしている。
かく言う俺も自分の武器を構えて魔物と向き合ったが、その時妙なことに気がついた。
静かだ。
生きている魔物というのは唸り声や呼吸音、動きで多少なりとも変化があるはずなのだが、あまりに一定すぎる。
よく観察すると目が濁っており、もう死んでいることがわかった。死の覚悟をした後だったので、少し拍子抜けだが安心した。
「っだぁもうバカ弟子!!こんなとこでそれ出すんじゃねぇよ!」
「何でですか。一匹ならいいって受付のお姉様も言っていましたよ?」
「俺らが新人だったら良かったんだろうな。でもFランクと俺らじゃ基準が違いすぎるだろうが」
「...はっ。ごめんなさい、そこまで気が回っていませんでした。
受付のお姉様とここにいる皆様、混乱させてしまって申し訳ありませんでした。この魔物は既に死んでいるので危険はありませんよ」
「たとえ生きてたとしてもお前が瞬殺するだろうしな」
「エルドさん、きっと褒めてくださってるんでしょうけど私の繊細な乙女心は傷つきました」
「あ?なんでだよ」
二人が何かを話している傍らで、俺はほっと息を撫で下ろした。
周りの冒険者たちも安全を確認してからそっと武器を収めて、だが魔物からは目を離していない。
なかなかお目にかかれない高ランクの魔物だ。好奇心から野次馬をしている輩が増えてきたところで、受付の女性がはっ、と正気に戻った。
「もっ、申し訳ありません...。
お二人共、依頼書とギルドカードの提示をお願いできますか?」
「私の方こそ本当にすみませんでした。驚かせるつもりではなかったのですよ。
依頼書...は、エルドさんでしたっけ?」
「ん、俺が持ってる。これだ」
「ギルドカードはこれですよ!」
そう言って二人は依頼書とギルドカードを受付の女性に見せた。
こちらからは見えないが、どちらかは確実に高ランクだろう。SSランクの魔物を狩るくらいだから、Sランクなどだろうか?
「っ.........!?!?!?」
女性が声にならない悲鳴をあげて椅子から勢いよく立ち上がったのをみて、野次馬たちがどよめきを発する。
そこまで驚くとは一体何があったのだ、と野次馬のひとりが恐る恐る受付を除くと...
「っ、SSSランク!?!?しかも、二人...!?」
と、大声で叫んだ。
その男のおかげで騒ぎはさらに大きくなり、この国で片手に収まるほどの人数しかいないSSSランクを見ようと人が押寄せる。
「あ、あわわ...。なんか騒ぎになってませんか!?」
「ランクを見られたか。弟子、こっち来い」
「んわっ」
押し寄せる人から守るように、また男の方が少女をローブの下に隠してしまった。もぞもぞと動いていたローブのなかで落ち着くところを見つけたのか、大人しくなった。
男はギルドカードのみを回収し、受付嬢へ「また来るから報酬を用意しておいてくれ」と言伝を残して扉の方へ向かう。
当然野次馬にもみくちゃにされる...と思ったのだが、あと少しで触れる距離になったら謎の障壁に阻まれて触れることは出来なかった。
ちなみにローブの中にいる少女は歩き出した時点で浮いている。よくわからねぇ事を言ってる自覚はあるんだ。俺もよくわからねぇが少女は確かにローブの中で浮いている。
そしてようやく外に出た瞬間、従魔を呼び出す魔方陣が即座に展開された。
展開速度もさることながら、陣の大きさがなかなか見ない大きさなので騒ぎを聞き付けた一般人までもが注目しはじめた。
うっとおしそうに全てを無視した男は、呼び出した黒い竜に乗って空へと逃げた。
俺は野次馬と共に、彼らが黒い点になるまで見続けていた。
「...黒竜って、伝説の存在じゃ無かったんだな」
ちなみに相棒の白竜までもがいることを、まだ今の俺たちは知る由もない。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
この短編への反応次第で本編の連載が投稿される可能性が高くなるので気になった方は評価等お願いします。