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第六話 成敗 (上)

 フレアイーグルを駆るレッドオーガ。

 炎鳥兵。『烈火剛将アモン』直属の空を守護する兵隊だ。人間との戦の時は空撃魔法をかいくぐりながら突撃していった勇猛果敢な兵士であったが、平和な時代の現在、城下町サザンクロスの上空をパトロールし……そして今、教会の前に降り立った。


「……使いの人が来たわ。キティ、後は宜しくね」

「ダメだ! 行っちゃ嫌だ!」


 どこか諦めたような表情を浮かべキティの両肩に手を置くメロディ。

 キティの表情は悲痛に満ちている。

 また、両親が目の前から消えて行ってしまうのか……と、訴えているかのようだ。


「……少し、待っていてくれないか?」

「バッツさん?」


 炎鳥兵に事情を問いたださねば、状況が理解できない。

 もしも、本当にアモンが無理やり市民を拉致しているのであれば……あれば……、


 バタン!


 外へ出ようとした瞬間、ホールの扉が勢いよく開け放たれた。

 槍を持つ赤い肌の鬼。炎鳥兵がぎらぎらとした目を光らせながら入ってきた。


「首輪を持つ者はいるか!」


 槍の切っ先を我々に向けながら声を張り上げる。

 挨拶もなしに第一声から脅迫とは……程度が知れる。


「私です」

「ム……」


 メロディが手を挙げて前に出ると、炎鳥兵の眼の色が変わった。

 にやりといやらしく口元が歪み、メロディを上から下まで値踏みするような眼を向ける。


「ゲフフフフ……貴様は魔王様の命により特別奉公の役目が与えられることとなった。これからは魔王様のおひざ元で精いっぱい働くがよい」

「はい、光栄の極みです」


 メロディが恭しく炎鳥兵へ膝まづき礼をする。


「フフフフ……立て! 魔王様がお待ちだ」

「待て」


 炎鳥兵がメロディを連れて行こうとしたところで、口を挟む。


「あぁん? なんだ貴様は?」

「魔王様直属の執事だ。炎鳥兵。オーガ族の戦士よ。貴様はさっき誰の命を受けてこの者を、メロディを連れていくと言ったのだ?」

「魔王様の執事だぁ……?」


 炎鳥兵はしばらくあごに手を当てて考え込み、首を振った。何か思うところがあったが振り払うように。


「……そんな立場の奴がこんな場所にいるわけがない。魔王様の命令だと言っただろう! 貴様は何なのだ! 魔王様の執事がこんな汚らしいスラムにいるはずがないだろうが!」

「この者から、キティから助けを求められたのだ。魔王様は困っている民がいたらどんなものでも助ける。それが例え、両親を攫われてスラムに身を落とした子どもだとしても、だ」

「ぐ……! 黙れ! 魔王様の執事を騙る不届き物が! 逆らうのであればこの槍で貴様の胸を貫いてくれよう!」


 炎鳥兵が槍を構える。


「や、やめてください!」

「バッツさん!」


 メロディとキティが声を上げる。

 炎鳥兵の額から汗が伝った。

 私が何者なのか、まだ測りかねているようで、脅したはいいものの本気で刺すつもりはなさそうだった。

 ならば、穏便に終わらせるとするか……。


「ならば、やるがいいさ」

「な⁉」


 私は両手を広げて、無防備な胸を槍の切っ先に当てた。

 少し炎鳥兵が力をいれれば、槍は我が胸を貫くだろう

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