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班決め ―修学旅行編―

やっとラブコメします。

 ゴールデンウィーク明け、学校での初授業は例のごとく居眠り状態でくぐり抜けた。

 午前四時ごろに寝て昼前に起きる生活をしていたため、午前中の授業が終わっても眠くて眠くてたまらなかったのだ。

 

 幸いなことに午前中の授業の先生は生徒を指名して答えさせるような先生がいなかったため安心して居眠りすることができた。

 

 わけもなかったがスマホを取り出して確認すると一件のラインの通知が来ていた。

 開いてみると一紗からのものだった。


 おいおい、ついに現役アイドルから連絡もらっちゃったぜとか心躍ったのは一瞬で内容を読むとこんなものだった。


「藤本さんにも私が学校でアイドルをやっていることを隠すようあなたから言っておいて」


 あいつ……


 返信する文面が思いつかなかったのと藤本さんは見境なく言いふらすような人ではないと思ったので、スマホをポケットにしまった。


 教室を見渡すと、食堂へと行く者、すでに机をくっつけて弁当を広げている者、イヤホンしてぼっち飯を堪能している者とバラエティーに富んでいたが、俺はまだ昼食を確保していないので売店へ向かう。

 

 昼食を買った後、なんとなく足が一紗と出会った四階のあの場所へ向いていた。

 四階に着いて階段に腰かけた途端になぜか後ろの扉が気になった。朱が屋上へと続く扉から出てきて声をかけられたことを思い出したのである。

 

 立ち上がり、その扉に手をかけると鍵がかかっていなかった。

 扉を開けると近くに金髪少女が寝転がっている。ほぼ間違いなく朱であると予想して声をかける。


「今日も一人かよ」


 扉を開ける音で気づいているはずなのに金髪少女はこちらに注意を向けない。


「アンタもね」


 予想は外れることなく、俺は会話を続ける。朱の隣に腰を下ろす。


「それは言えてる」


 扉の前で初めてした会話を思い出す。

 さっきの一紗のラインのことを聞いてみることにした。常に隣に立っている朱なら何か知っているかもしれない。


「一紗がアイドル隠してる理由ってお前知ってるか?」


「知らないわよ」


 朱に一蹴されてしまった。

 仕方ないのでこの前のライブの話でもするか。俺とこいつの共通の話題ってそれしかないしな。


「そういえば、この間のライブ一紗とちょっとぶつかってたよな」


 朱は空を見上げてつぶやく。


「それは…… アタシのせいかも」


「え?」


 最後の方はなんて言っているか聞き取ることができなかった。


「ううん、なんでもない」


 朱らしくない声量ではぐらかす。


「ねぇ、金髪ってそんなに目立つかな」


 朱は自分の髪を触りながら俺に尋ねる。


「目立つな」


 金髪なんて目立って当たり前だろと内心思ったが口には出さない。


「染めようかな。黒に」


「やめとけ。金髪じゃないお前は調子狂う」


 金髪じゃない朱なんて想像できなかった。


「あはは、それはそうかも」


 乾いた笑いで答える朱。


「お前、もう飯食った?」


「いらない」


 質問と回答がかみ合ってない。拒否する朱にさっき買った焼きそばパンを渡す。


「食っとけ」


「いらないって言ってるじゃん」


 口調が強くなったので俺も意地になった。


「いいや、食っとけ」


「うるさいわね……」


 言いながらも諦めたようで、しぶしぶ起き上がった朱は一口かじる。

 二口目からはなんかすごい勢いで食べていた。

 その姿を横目に俺も自分の分を食べた。


「おい、それ俺の!」


 朱は食べ終わったかと思うとビニール袋から俺のコーヒー牛乳を出して勝手に飲んでいる。


「全部は飲まないわよ」


「いや、もうストロー……」


 そういやこいつ間接なんとやらを気にしないやつだった。

 満足いったのか朱は立ち上がる。朱の金髪がはらりと揺れる。


「アンタ、今度ゲーセン付き合いなさい」


「それは、デートに誘ってんのか?」


 仕返しに言ってやると、見る見るうちに顔が真っ赤に染まる。


「なっ! ばっかじゃない?! そんなわけないでしょ!」


 そう吐き捨てると屋上から出て行った。


 残されたコーヒー牛乳のパックに目が行く。


「さすがにね」


 好奇心がなかったわけではないがすんでのところで理性を発揮する。


 残りのパンを頬張って立ち上がると昼休み終了のチャイムが鳴る。


 屋上の鍵、あいつが管理してるんじゃなかったのかよ……

 もう知らん。バレたら全部あいつのせいだ。

 俺は屋上の鍵は開けたままで教室に戻った。

 

 朱と話したおかげか午後の授業はいつもよりは起きていた気がする。

 今日の授業が全て終わって、担任の先生が入ってくる。ホームルームが行われるのだ。


「今日は修学旅行の班決めをしてもらいます」

 

 いよいよきたか。修学旅行の班決め壊滅級。今回は一班五人か六人。


 多分どこの学校でもそうだと思うが修学旅行の班決めは生徒各々気が合う者同士で組むのだ。


 一紗に関しては藤本さんがおそらくアプローチするだろうが朱はどうするんだろうか。

 自分のことを差し置いてそんなことを考えた。


「タツ、俺ら組もうぜ」

 

 颯介に同じ班に誘われる。おいおい楽勝じゃねえか。


「おう、いいぜ」


 しかし、一紗にも示しがつかないため、俺はこの修学旅行を機に少しでもクラスの友達を作らなければいけない。

 俺が答えると颯介はほかのメンバーを確保しに行った。


 席を立とうとしたが歩いてきた女子に声をかけられる。


「立華君って、颯介君と同じ班だよね?」


「ああ、さっき組んだところだけど」


「私も同じ班に入れてほしいんだけど」

 

 そう言った彼女の顔は平然としている。


「は? 別にいいけど、颯介に直接言えば?」


 俺は思ったことをありのまま吐き出す。


「察してよ。それくらい」


 淡々とする彼女をみて俺はようやく話の内容が分かってきた。


「ああ。そういうこと。え~と……」


「波多野美桜」


 名乗られてクラスメイトの名前がすっと出てこないことに自分で呆れてしまった。彼女も多分呆れてるだろう。


「分かったよ。颯介には俺から言っておく」


「もう、女子メンバー私のほかに二人決まってるから」


 教室がざわざわとうるさくなってきたタイミングで先生がクラス全体に呼びかける。


「では、メンバーが決まった班ごとに名簿を提出するように。今日は挨拶無しで良し。解散」


 それを境に俺たちのクラスは放課後となった。


「で、なんだっけ」


「だから、女子は決まってるから男子の人数も調節して」


「そんなこと言われてもなぁ……」


 颯介はほかの男子を連れてくる可能性がある。班の男女比に制限はないのだ。


「それとライン教えて?」


「なんで」


「立華君は本当に察しが悪いね」


 いやいや、察しはいい方だが。


「いろいろと手伝ってもらうから」


「何をだよ」


 訳も分からずため息を吐かれた。


「はぁ。いいから」


 まあ俺としては一紗と颯介以外に連絡先が増えるのはやぶさかではない。

 連絡先を交換し波多野さんは去っていった。


 ほぼ同時に颯介が帰ってくる。


「メンバー決まったのか?」


 俺が聞いてみると颯介は首をかしげる。


「あー、なんかね。みんな恋愛脳」


 おそらく誰と一緒になりたいとかあの子と同じ班がいいとかでうまく決まらなかったんだろう。


「言えてる」


「は?」


「いや、なんでもない」


 さっきのことを伝えなければ。


「あの、女子三人は決まった」


 そう伝えると、颯介は変な声を出す。


「タツって女子の友達いたの?」


「まあな」


 ドヤ顔で嘘をついたが、波多野さん以外の二人の名前を聞いていなかった。


「じゃあ、もう男子は俺たちだけでいいか」


「いいのか?」


「ああ」


 そう言うと颯介はバッグを背負う。


「じゃあ、俺バイトだから」


「おう」


 颯介の背中を見送って、男子のメンバーは俺と颯介だけだという旨をラインで波多野さんに伝えるとすぐに返事が返ってきた。


「立華君、思ってたより有能ね」

一日でプロット、本文という流れをやっているのでほんとにヒヤヒヤです。

読んでくださりありがとうございました。


気が向いたらでいいので評価、ブクマ、感想など頂けると嬉しいです。

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