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画策

新キャラが出てきます。

 ゴールデンウィークに入った。

 

 ここ最近は颯介に連れまわされて土日はほとんど外出していた気がする。まとまった休みは久しぶりだった。

 

 俺はこの休みを利用して積ん読していたラノベを消化する予定で、すでに最初の三日間はひたすら本を読んでいた。こっち方面のオタクもなかなかやめられない。おかげで寝不足、頭が割れるように痛い。

 

 明日はFortune Routeの定期公演の日だ。開演は夜なので早起きしなくていいのが幸いである。

また明日は例の計画を実行に移す日でもある。そんな計画っていうほど大層なものでもあるまいが。


 計画のあらすじはこんなものだ。

 明日は俺と颯介に加えて颯介の幼馴染だという藤本綾乃なる少女と一緒にライブに来てもらうことになっている。


 先日、颯介に頼んで藤本綾乃にはすでに伝えてもらっている。


 藤本綾乃は一紗と同じ一組の生徒で、まあ端的に言えばスクールカースト上位の明るい女子である。

 

 俺も隣のクラスということで見かけたことはあるが、見るからにまあそういう感じのザ・リア充だ。

 

 俺とは生きてる世界が違うリア充女子と明日、颯介付属といえど一緒にお出かけするので緊張というかすげえビビってる。


 それは計画とは関係ないのでここではいったん置いておこう。


 とりあえず颯介と俺と藤本綾乃でライブの後の特典会まで参加するのだ。


 目的としては、特典会もとい握手会に参加した藤本綾乃が一紗と少し仲良くなって帰るというただそれだけのことだ。


 幸運なことに藤本綾乃は音楽系のイベントに参加するのは好きらしく颯介と一緒に地下アイドルのライブにも何回か行ったことがあるらしい。だからそういうライブに参加するという観点では心配はない。


 懸念点としては藤本綾乃が一紗のことを認知しているかという点だ。


 一紗側からはあんだけ目立つ女子なのだから名前は覚えてないまでも顔ぐらいは分かるはずだろう。


 逆に藤本綾乃が一紗のことを分かっているかは怪しい。一紗はよく見れば顔はもうほんとに可愛いのだがステージ上と違ってものすごい地味な格好で学校に来ている。髪型とかメイクとかとにかく地味に仕上げてきているのだ。だから下位カーストどころかカーストに所属してないかもわからない一紗を認識できているかは不明なのだ。


 とはいえ藤本綾乃はリア充の中でも平和型。一応説明しておくがリア充には平和型とDQN型の二タイプ存在するのだ。俺の中では。平和型は下位カーストにも優しいみんなから好かれるタイプなのに対し、DQN型は下のカーストの生徒を馬鹿にしていて素行も不良のようなタイプだ。


 平和型であればクラスの生徒の顔ぐらいは見れば分かるという期待があるので俺の考えている懸念点に対しては追い風だ。


 計画の整理をしていたらスマホが鳴った。


「明日、○○駅、十二時集合な」

 

 またも開演時間よりだいぶ早い時間を指定してきた。

 

 藤本綾乃には詳細を説明する必要があるので一時間ほど時間に余裕を持たせたかったのを差し引いても集合時間が早い。

 

 だが、颯介に頼んでいる手前文句言うのも気を悪くしてもらっては困るので了承して返事することにした。


 「了解」

 

 翌日、集合場所へ向かう。

 

 緊張していて眠れない夜を過ごすと思ったのだが、それ以上に普通にライブが楽しみでぐっすり眠ることができた。


「おはよー」


「ういー」

 

 俺より少し前に颯介は来ていた。待ち合わせに関しては俺たちはほんとに時間通りなのだ。


「あとは綾乃だけだな」


 颯介は楽しみな様子だ。


 しばらく待つと、茶髪おさげの少女がやってきた。髪色と髪型で女子を見分けてるわけではないことは理解してほしい。


「おはよ」


「おはよ、そうちゃん」


 く~「そうちゃん」って。なんだよ、そのザ・幼馴染的呼び方は。羨ましいにもほどがある。


「こいつが綾乃な」


「はじめまして、藤本綾乃です」


 言いながらニカっと笑った少女は半袖Tシャツの下に着ているアンダーシャツを肘あたりまでまくっているのがいかにもライブっぽい服装だ。


「はじめまして。立華達です。よろしく」


 少々どもったが気にしてては身が持たない。


「よーし、そろったし、まずは飯だな」


「うん、お腹すいた~」


 俺たち三人はまず腹ごしらえをすることになった。


 着いたのはなんかスゲーおしゃれなカフェ。しかもメニューを見るとリーズナブル。こんな店まで知ってる颯介さん、完璧オタクだな。


 テーブル席に案内されて、各々好きな料理を注文した。


「立華君って、いっつもそうちゃんと一緒にいるよね」


「う、うん。二年になってからは結構仲いいかな」


 まだリア充オーラに慣れないが会話にはついて行ける。


「始業式の日に、ライブ連れて行ったらこいつ、ハマってさ~」


「オタク友達いないって言ってたもんね」


「最近なんてずっと一緒に現場行ってるわ」


 二人はもうそれは長年付き添った夫婦みたいな感じで話す。お前らもう結婚しろよ。テンプレな突っ込みを心の中で披露しつつも会話に入ろうと画策する。すでに知っている情報で勝負だ。


「藤本さんはライブとか結構行くの?」


「綾乃でいいよ~」


「……藤本さんはラ」


「あ・や・の」


 うーん、何食わぬ顔でスルーしようとしたが通用しないらしい。距離感を詰めるのが早いというか… 数秒無言の笑顔で見つめられる。

 

 こういう時は間をとるのが得策。


「あ、綾乃ちゃんはライブとか行くの?」


「うん! ロックバンドとか! アイドルもたまに行くよ」

 許されたみたいです。


「お前、一紗ちゃんのこと呼び捨てじゃん」


「一紗は特別なんだよ!」


「ふーん、アツアツだな」


 颯介は不敵な笑みを浮かべる。くっそぉ。多分颯介としては罠にかけようなんて思ってなかったのだろうが俺は一人で勝手に罠にかかってしまった。


 藤本さんには「彼女さん?」とか言って微笑まれる始末。


「かず、柊さんは今日見に行くグループのメンバーだって」


 推しの名前をさん付けで呼ぶとかいう謎行動をしてしまった。もうよく分からん。


「いや、一紗ちゃんは呼び捨てにしないとおかしいだろ」


 爆笑しながら突っ込む颯介。恥ずかしすぎて死にそう。


「そ、そうだな。一紗は……」


 言いながら本題を思い出した。藤本さんに詳細を話さなければいけない。


「ひいらぎかずさ?」


 フルネームを発音しながら藤本さんは首をかしげる。


「一組にいるだろ? 柊一紗ちゃん」


 颯介が確認する。


「ああ! いるいる! めっっっちゃかわいい子!」


 藤本さんは得心いった様子。おまけに褒めてくれた。


「えっ? あの子アイドルなの?」


「そう。しかもセンター」


「ええぇ! 全然そんな感じじゃないじゃん!」


 確かにアイドルモードの一紗と学校モードの一紗はほとんど別人である。


「話したことある?」


 俺は状況確認するために一紗との関係性を聞く。


「ないんだよね~。 かわいいからずっと話したいと思ってたの」


「ふじも……綾乃ちゃんには今日ライブだけじゃなくて握手会にも参加してもらいます」


「急に敬語?!」


 気にせずに続ける。


「それで、一紗と仲良くなってほしい」


「なんで?」


 当然の疑問である。一紗に関する詳細を隠しつつ質問に答えるために頭をひねる。


「いや、推しメンの知り合いの知り合いが自分だったらうれしいじゃん?」


 全く非論理的な回答しか思い浮かばなかった。そもそも俺と藤本さんは今日知り合ったんだし。


「別にいいけど? 願ったり叶ったりだし」


 藤本さんは戸惑った様子だが納得はしてくれた。


 昼食を終えてカフェを出る。


 まだライブまでにはたっぷりと時間があった。行き先に関しては百パーセント颯介だよりである。

「よーし、ライブまでROUND TENであそぼーぜ」

 

 それからはスポッチャにカラオケ、ゲームセンターとすごくアウトドアな時間だった。

 スポッチャとカラオケはマジで陰キャ丸出しで二人に申し訳なかったのだが、クレーンゲームではいいところを見せれたのでプラマイゼロであると思いたい。

 

 遊び疲れて体は帰りたがっているのだが、本番はこれからだ。


ストックがなくなってきました。

ヤバいです。


個人的な話なのですが絶対に行きたかったライブのチケットが抽選で落選してしまいました。死にたいです。


よろしければ評価、ブクマお願いします。

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