7:帰路
真衣が倒れ、亜衣が祖父である恵造に叱責され、真衣と亜衣は帰宅を余儀なくされた。
少し落ち込んだ様子の亜衣を他所に、真衣はむくれ気味だ。
研究所の職員が数人見送りに出てきたが、亜衣は眼もくれずに車へ乗り込み、真衣は挨拶をしながら乗り込んだ。
亜衣は自分がどんなに愛想良くしても意味が無いことを幼い頃に思い知らされているせいか、真衣とは正反対の性格に育っていた。事情を知る人間は一握りしかいないが、周囲の人間は亜衣と真衣の扱いの差を肌で感じ取り、自分達も同じように接しているのだった。
二人の、いや真衣の移動専用の高級車。
祖父の恵造はドイツ製の高級車が一番丈夫だと、わざわざ運転手付で買ってよこしたのだ。
「あぁあ。せっかく帰りに青井のおじ様の所へ寄ろうと思ってたのにっ。って私が倒れたからなんだけどねー。・・・・・・・・・ごめんね、亜衣。」
亜衣の様子がいつもと少しでも違うと感じ、何か喋ろうと話題を振る。
「あの男の事の言った事なら気にしないで。それより、私のせいで破談になるほうが申し訳ないわ。」
「って言うか西条が悪いんじゃん。婚約者の顔も見分けられないなんて最っ低ぇ。お爺様もよくあんなの選ぶわよ。センス悪すぎだし。」
「・・・・・・。」
「亜衣さん、助手席に移られては?そのままだと真衣様が横になれませんので。」
運転手が亜衣に向かって言った。バックミラー越しに亜衣を見る目は無機質だった。
「はぁ?何言ってんの?あんた何様?」
真衣は嫌悪感むき出しで無機質な目を睨む。
「構わないわ。真衣、横になってて。」
真衣は亜衣の服の袖を掴み
「大人しくしてるから、行かないで・・・。」
うつむき加減に呟く。
「じゃぁ私に寄りかかってて。」
「・・・うん。」
亜衣と運転手の目が合う。冷たい、物を見るような瞳。
「よそ見運転!そんな目で私たちを見てる暇があっても、赤信号見逃さないようにね。」
スッと運転手は目線を前方へ移した。
「申訳ございません。気をつけます。」
亜衣は真衣を肩に寄りかからせたまま窓の外を眺めた。
すっかり暗くなった山の中で木々が流れて行く。
空は夕焼けと夜の間。
オレンジと深い藍色が時の流れを告げる。
今回はチョト短めです。
亜衣と真衣の違い、見たいなものを描きたかったのですが…
感想などお持ちしております。
次回も宜しくです。