4:二人の違い
すっかり肩を落とした西條を尻目に、二人は部屋を出ようとした。
亜衣が西條とすれ違う瞬間だった。
「僕が何も知らないとでも思ったのか?」
取り巻きを振り払い叫んだ。
「お前が何なのか、僕は知っているんだぞ!!」
はっ。と亜衣は目を見開いた。
「お前は…お前は…っ」
「それ以上はやめてっ!」
亜衣は声を張り上げた。
「それ以上は言わないで…。」
懇願するような眼差しと声。
「ふ…ふふふふ。あははっははは。形勢逆転だなぁっ!さっきの勢いはどこへ行っちゃったんだい?」
真衣は何が何だか分からない様子で
「いったい何のことなの?ねぇ亜衣、何か知ってるの?」
「おやおや?真衣ちゃんは知らないのぉ?いつも一緒の亜衣ちゃんの正体は…」
亜衣の心の中で驚愕と困惑、苦しみと悲しみ。全てが入り混じる。
混乱。
きぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃいいいいいぃぃぃぃぃぃいいぃぃ
超音波の様な高音。
大気が震える。
ドンッ
何かが落ちたような、ぶつかったような音と共に床が揺れる。
「あぁっ。ぅあああああああああああぁああ。」
「真衣っ!?」
頭をかかえて真衣が蹲った。
「お前らは、いったい何なんだっ。」
叫ぶ西條を他所に亜衣は真衣の元へ駆け寄った。
揺れにより足元のバランスが取れず、膝から崩れるように真衣の様子を伺う。
「真衣?真衣っ!??しっかりして!」
「こんなはずじゃなかった・・・こんな・・・」
西條はいち早く部屋を飛び出し、亜衣と婚約者の真衣を置き去りにした。
壁に備え付けられた緊急用の内線電話で助けを呼び、黒服の男達が駆けつけた頃には
揺れと高音は収まっていた。
黒服の男達により真衣は研究所の医務室へ運ばれた。
亜衣は蒼白な顔をして部屋の外にいた。