状況を確認するレリアーノ
「じゃあ、話の続きをしようか」
フーベルト達と共に、村長から提供された空き家にやってきたレリアーノ達は改めて情報の確認と、今後の対応について相談を始める。
村長がギルドに依頼を出した時にはオオカミの被害はそれほどではなく、例年通りに討伐依頼を出したとの事。また、状況が悪くなったのはこの3日ほどであり、慌ててギルドに修正の依頼を出したが間に合わずにレリアーノ達がやって来たとの事。
「タイミング悪いわね。これって依頼の修正になるのかしら? 難易度は上がるし、報酬も変わってくるわよね?」
「そうだな。そこはベルトルトさんと相談になるな。まあ、間違いなく報酬額は増えると思うぞ。気になる点は難易度の方だな。俺たちだけで対処が出来るかどうか……」
難しい顔をしながら、ルクアが確認すると、フーベルトも同じように難しい顔をしながら答えていた。レリアーノからするとオオカミを倒す事に変わりがないと感じていたが、しばらく黙って話を聞いていた。その後、ギルドの応援を待ちながら村の防衛する事が決まり、いったん解散となる。
「とりあえず村長に俺たちの立ち位置を伝えている」
「そうね。私は牧場の様子を見に行くわ」
フーベルトとルクアがそれぞれ行動内容を話しながら立ち上がった。レリアーノは当然とばかりにルクアを牧場に向かう。歩いて10分ほどで到着した牧場はかなりの大きさであり、周囲は柵で覆われていた。
「柵があるから牧場の大きさは分かるけど、しょぼい柵ね」
「仕方ないだろう。そんな費用を掛けられないと思うぞ。これだけの広さの策を頑丈するなら魔法使いを雇った方が安いんじゃないか? それよりも……」
「なに? 難易度の話?」
レリアーノの言葉を遮ってルクアが確認してくる。大きく頷いているレリアーノにルクアは理由を説明してくれた。
「簡単よ。さっきも少し話していたけど、急にオオカミが増えたのは活動範囲が増えたのか、生息範囲を追われたからのどちらかなの。私とフーベルトは、オオカミたちが何かに追われたと思っているわ。だから難易度が上がると思ったのよ」
「なるほどな。じゃあ、俺たちは牧場に居る動物たちをギルドからの応援が来るまで守るのが役目になるのか」
「そうよ。他にも出来る事はあると思うけどね」
ルクアの話を聞いて納得したレリアーノは、大きく肩を回しながら気合を入れる。
「そうだな。偵察などもしておいた方がいいな」
「遠くまで行かない範囲で偵察はした方がいいわね」
「だな。前のゴブリンの時みたいに大量発生している可能性もあるから、人数は多めの方がいいのか?」
「うーん。それはどうかしら。レリアーノと私が居れば、1パーティーくらいの働きは出来そうだから、その辺りをフーベルトと相談しましょうか」
遠目に草を食んでいる動物たちを見ながら、レリアーノとルクアは拠点となっている空き家に戻った。
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「どうだった?」
「そうね。あの程度の柵では防御もなにもないわね。このままでは家畜たちは食べられちゃうわね。その後は村が狙われるわね」
「やはりそうか。村長には話をしたが、村から逃げ出すかギルドからの応援を待つかで議論をするそうだ」
フーベルトの確認にルクアが肩をすくめながら答える。回答を聞いたフーベルトはしばらく考えていたが新たな案は思い付かないようであった。
「仕方ない。村長たちがどう判断するかは分からないが、俺達に出来る事をしようじゃないか、家畜はしばらく厩舎に入れておこう」
「そうね。ストレスは掛かるとは思うけど、死んじゃうよりはマシだものね」
「なあ。こっちから攻撃するのはなしか?」
フーベルトとルクアが話している中で、レリアーノが新たな提案をする。2人は意表を突かれたようでキョトンとした顔をした後に真剣な表情になるとレリアーノに話を続けるように促した。
「だから、俺達が森に入ってオオカミたちを攻撃するんだよ。こっちの方が強いと思ったら、相手もこなくなるんじゃないか?」
「なるほどね。こちらの強さを見せつけてビビらせる訳ね」
「いい案だ。それで検討をしてみようじゃないか」
レリアーノの提案にルクアとフーベルトが大きく頷いて賛同する。そしてレリアーノの提案を元に作戦を練り始めた。
「ねえ。村長さんがやって来たわよ」
会議は長引いており、昼寝が終わったクレアが目をこすりながら来客を告げてきた。その背後には年老いた男性がおり、かなり疲れた表情を浮かべていた。
「あなたが村長さん?」
「ええ。私が村長のエルケンです。こちらの方々は?」
ルクアの問い掛けに村長のエルケンが答えつつ、フーベルトに見知らぬ2人の確認をする。
「ああ、俺達とパーティーを組んでいるレリアーノとルクアだ。今回の依頼を一緒に受けている。2人とも優秀な魔法使いだ」
フーベルトの紹介にエルケンは値踏みするような表情を一瞬だけ浮かべたが、魔法使いとの言葉に安堵したようであった。
「魔法を使える方がお2人も居るなら心強いですな」
「私も使えるから3人だよー」
クレアの言葉に村長は微笑みながら頷くと、フーベルトに向かって村の方針を伝える。ここから避難すると言っても年寄りも多くおり、移動が困難である事。ギルドからの応援があるなら村に残った方が安心であることも併せて伝えてきた。
「分かったわ。じゃあ、私達がギルドからの応援が来るまで、完璧に護衛するから安心してちょうだい」
「はは。期待させてもらいますぞ。それでは食事などはいかがですかな? こえから正念場になるでしょう。それまでは英気を養っては?」
「ああ。それは助かる。俺も料理が出来るから準備を手伝わせて欲しい」
「俺も手伝う」
村長の提案にレリアーノとベックが答えると、最初は遠慮していた村長だったが、レリアーノ達が料理上手だと聞き、申し訳なさそうにしながらも了承した。
「では、お2人には村の中央に作っている調理場まで来てもらいましょうか」
村長の言葉にレリアーノとベックは頷くと付いていった。




