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追放されたが、それでも収縮拡張スキルで英雄へと駆け上がる  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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キャンプの準備を始めるレリアーノ

 その後、数度のオオカミとの戦闘を経て、レリアーノたちは休憩所に到着していた。倒したオオカミの数は十数体になっており、例年に比べるとかなりの数が討伐されたことになる。


 依頼には関係ないが討伐数は評価となり、またオオカミの皮は使い道が多いため、ギルドでも高額買い取り商品になっており、冒険者たちは積極的に狩っていた。ただ、皮の買い取りは剥ぎ取り具合により金額が変動するため、ポーターが行う仕事の中では重要な技術となっていた。


「それにしてもレリアーノは解体も出来るんだな。本当に欲しい逸材だぞ。なんで前のパーティーは追放なんて馬鹿なことをしたんだ?」


 解体作業はベックとレリアーノが行っており、本職のベックにはかなわないが、解体は思った以上に体力を使う作業であり、レリアーノが手伝うことによってベックの負担はかなり軽減されていた。


「フーベルトもそう思うでしょ? なんで前のパーティーはレリアーノを追放したのか分からないわ。こんな逸材は私なら絶対に手放さないわよ」


 フーベルトの疑問にルクアも同調する。それほどレリアーノの手際はよく、以前は戦闘が出来なかったとしても、ここまで多彩なレリアーノを簡単に手放すとは信じられなかった。


「俺としては出来ることをやっているつもりだったけど、パーティーの考え方が違ったんだろうな。あいつらは新しいメンバーを入れたから、別の場所で活躍していると思うよ」


 すでにパーティーはウードの策略によって壊滅しており、前パーティメンバーは奴隷として鉱山や戦場で強制的に働かされているのを知らないレリアーノが苦笑しながら答えていた。


「相変わらずレリアーノはお人よしよね。あんたを追放したパーティなんて悪口を言っといたらいいのよ。私は会うことがあったら感謝をするけどね。『こんな優秀なレリアーノを追放してくれてありがとう。お陰で快適な冒険者ライフを送れているわ』ってね」


「なんだよそれ」


 なぜか胸を張っているルクアの言葉を笑いながらも、レリアーノは胸が温かくなるのを感じていた。そんな嬉しそうにしているレリアーノを見ながらフーベルト達も微笑ましそうに見ていたが、フーベルトが手を叩いて話を終わらせる。


「レリアーノが優秀なのは分かったから野営をする準備を始めよう。ルクアはキャンプを作るのが得意だと言っていたよな? 参考にしたいからお願いしてもいいか?」


「ええ、いいわよ。別に秘匿情報でもないからね。快適な休憩が出来れば生存率も高くなるから、是非とも覚えて欲しいわ」


 そう言いながらルクアは設営を始める。休憩所だとは言え、完全に安全とは言えないため、テントの位置取りが重要であることや、死角に設置する鳴子の作り方などを説明する。


「マリウスの孫のユリアーヌ達も知らなかったわね。ベルトルトにマニュアルを作って講習会でもさせようかしら」


 ルクアの言葉にフーベルトが嬉しそうにする。ルクアの技術を身に付けた冒険者たちの生還率が上がる事でギルドの評価も上がり、依頼も増えると考えたからである。


「是非ともベルトルトさんに提案してくれ。あの人ならルクアの提案を無下にはしないからな」


「もちろん。顧問料も含めてしっかりとベルトルトに提案するわよ」


 その後、ルクアが作ったマニュアルを元に新人冒険者の研修が追加されることになる。知識を得た冒険者たちは依頼を受けた際に、休憩所でリラックスが出来るようになり、依頼の達成率が劇的に上がっていった。


◇□◇□◇□


「よし、ルクアがキャンプを整えてくれている間に俺達は料理をしようか」


「そうだな。料理はどうする」


 ルクアとフーベルトたちが設営をしている間に料理をする事になった、レリアーノとベックが食材を前に話をしていた。


「私はお野菜が多いのが食べたいなー」


 クレアの一言で野菜を煮込むスープと塩漬けの肉を焼くことになった。


「塩漬けの肉はどう処理しているんだ?」


「俺は水で洗い流しているが、レリアーノはどうしている?」


 ベックから質問を返されたレリアーノは最近覚えた方法として、魔法を使った塩抜きをしていると伝える。


「水魔法を使うやり方なんだが、塩漬けの肉を鍋に入れるだろ。そして水を入れて……」


 肉が浸かった水に手を当てて魔力を流し始める。


「ポイントとしては渦を巻くように水魔法を流すんだよ。水はこまめに交換した方がいいな。その際に何度も味見はする。薄めの塩味になるまで抜くようにしている」


「なるほどな。そのレベルの水魔法なら俺でも使えるな」


「私も出来るよー」


 レリアーノの説明に頷きながらベックがメモを取っていた。その横でクレアが自分も出来るとベックに主張をしていた。


「もちろん手伝ってくれ。レリアーノに聞いたやり方で料理ができれば肉の味も上がるだろう。クレアは塩漬けの肉はしょっぱくて嫌だったんだろう?」


「そうなの。男連中は塩分が多くても気にならないみたいだけど、私は薄味が好きなの」


 クレアの言葉にベックは微笑みながら頷くと、野菜スープはレリアーノに任せ、クレアと肉料理を作り始めた。


「腹減ったー」「今日の飯はなにっすかー」「肉の匂いがするぞ!」


 ルクアからキャンプに関する講習を受けた『遊撃の射術』のメンバーがレリアーノ達の元にやって来た。すでにスープは完成しており、後は肉が焼きあがるのを待つばかりであった。


「ああ、今日は2種類の肉を用意しているぞ。いつもの塩漬けの肉とレリアーノが提供してくれた新鮮な肉だ」


 ベックの言葉に一同から歓声が上がる。


「へー。新鮮な肉なんてよく用意出来たな」


「まあな。日数的に保存できるようなら、最初は生肉を使う様にしているんだよ。上手い飯は食べたいだろ?」


 感心しているフーベルトにレリアーノが皿に肉を置いていく。いつもなら塩を掛けて食べるのだが、レリアーノは様々なソースを今回は用意していた。


「このソースの作り方はベックに伝えたから、次も食べられるぞ」


「ああ、任せてくれ。まさか果物を使ったソースまであるとはな。レリアーノは料理屋をした方がいいぞ」


 待ちきれないとばかりに肉の争奪戦を始めるフーベルトたちを見ながら、ベックはレリアーノに料理店を開くように勧めるのだった。

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