意気投合するレリアーノ
「早くキャンプ予定地に着かないかな? ベックさんに聞いたレシピを作りたいんだよ」
「どれだけ料理好きなのよ。まあ、私としては美味しい料理が食べられるってのは幸せな事だけどね。よし! 今回の目的はベックの料理に関する知識を全て奪い取ることに決定よ!」
「いやいや。俺たちの目的はオオカミ退治だから。それとベックから料理知識を奪い取るのはいいけど、引き抜いたりしないでくれよ。依頼を受けている時の唯一の楽しみなんだからな」
ウキウキと料理が作りたいと話しているレリアーノに苦笑しながらも、美味しい料理のレパートリーが増える事を喜んでいるルクア。そんな二人にツッコみを入れるフーベルト。
これから討伐に向かうはずのなのに気楽に会話が出来ているのは、先行して偵察している斥候のミゲルから定期的に安全連絡が来ているからである。側面や背後はルクアが精霊魔法で探索しており、気軽な感じで会話しながらも油断はしていなかった。
「ねえ、ベック。レリアーノからはレシピをもらったの?」
「ああ、問題ない。レリアーノはお菓子のレシピをたくさんもらっていた。キャンプについたら色々と作ろうと思っている」
「わーいやったー」
一同の陣形は先行しているミゲル。その後ろに副リーダーのサイラス。中央をクレアとベックがおり、それを護衛する形でフーベルトが弓と矢を持ち周囲を警戒していた。最後尾をレリアーノとルクアが固めており、たとえどこから奇襲や攻撃を受けても即時に対応が出来る状況だった。
「今回の行軍は楽だな。やっぱりレリアーノとルクアは俺たちのパーティーに入らないか? 安定さが全然違うんだよ。これならさらに上のランクを狙えると思うぞ」
フーベルトの提案にルクアが笑いながら断りを入れる。
「評価してもらえるのは嬉しいけど、私達のランクはまだまだだ『遊撃の射術』とは違うわ。それに私達はダンジョン攻略も視野に入れているの。ある程度経験を積んでランクを上げたら出ていくことになるわ。でも、それまでならいつでも組んであげるわよ。もちろん、報酬の取り分は要相談だけどね」
「ちゃっかりしているな。まあ、あくどい金額を提示したりはしないから、街を出るまでは俺たちと組んでくれよ。『遊撃の射術』と組んでいるなら、周りからの勧誘も減ると思うぞ」
ルクアの言葉に笑いながらフーベルトが答える。レリアーノの噂はギルド内に広がりつつあり、ギルドマスターであり英雄でもあるベルトルトが目にかけているレリアーノを引き抜こうと、様々なパーティーが動き始めていた。
そんな状況を知らないレリアーノは、ギルド1番と言われている『遊撃の射術』のフーベルトに評価された事を素直に喜んでいた。
「村に着く前に戦闘がありそうだな」
先行しているミゲルから緊急サインが送られてきた。一同は今まで弛緩してた気分を切り替え戦闘態勢を取り始める。ベックとクレアを中心として半円陣をとりミゲルからの報告を待つ。
「オオカミが5匹ほどこっちに向かってきている。どうする?」
「そうだな。……レリアーノは魔法をどれくらいで撃てる? 先制攻撃は可能か?」
ミゲルの報告に少し考えたフーベルトがレリアーノに問い掛ける。
「5匹全部倒すような魔法は時間が掛かるから無理だけど、1,2体への攻撃なら可能だぞ。次に魔法を撃つならは少し時間が欲しい」
「分かった。レリアーノは先制攻撃を頼む。その後は魔力温存で構わない。基本はクレアとベックを守るようにしてくれ。オオカミへの攻撃判断は任せるが、緊急時は指示を出す。オオカミ相手だと機動力を活かした戦闘は出来ないから、数を減らすのを主眼に置いてくれ」
レリアーノの回答にフーベルトは考えた戦術を一同に伝える。レリアーノの先制攻撃に合わせてフーベルトが弓で攻撃して数を減らし、接近戦になればサイラスやミゲルが剣で戦うことが決まった。
「ルクアは状況を見て回復魔法。ベックはいつもどおりでいい」
フーベルトの言葉にルクアとベックが頷くと同時にオオカミが一同の前に飛び出してきた。
◇□◇□◇□
「火の魔法を放つぞ! 『ここに火の矢を放たん』」
レリアーノの言葉に一同が射線をあける。放たれた複数本の火の矢はオオカミに向かって飛んでいき、宣言通り2体に命中した。火の矢が襲ってきたことにオオカミたちが怯み、それまで一糸乱れぬ動きにほころびが生じる。そして注意力も散漫になったオオカミにフーベルトの矢が突き刺さり、1体はそのまま転倒し動かなくなった。そして接近戦が開始された。
「うらぁぁぁ!」「ほいっと、攻撃っすよー」
レリアーノの魔法とフーベルトの矢に意識が奪われたオオカミたちにサイラスとミゲルの攻撃が命中する。一撃で仕留める事は出来なかったが、足を攻撃されたことで2体のオオカミたちは自由に動けなくなる。
「しっ!」
そして2射目を鋭い息を吐きフーベルトが放つ。矢は唯一無傷だった1体に命中し、息の根を止められる。後は残っているオオカミはどれも怪我をしており、戦意は低下し逃げようとしていた。
「逃がすわけないでしょ。『風の精霊よ切り裂いて』」
「『風舞う勢いを敵に放つ』よし。後は任せた」
一気に戦闘を終わらせようとルクアとレリアーノが風の魔法を放つ。見えない風の攻撃にオオカミは混乱状態になり、次々と止めを刺されていた。
「……。よし、全部倒せたな。それにしても楽な戦闘だったな。いつもならもう少し時間が掛かっていたぞ」
「私とベックの出番なかったね」
「問題ない。戦闘が楽なのはなによりだ。それよりも解体を始めよう」
周囲を警戒しながらフーベルトが戦闘の感想を述べていると、クレアとベックが会話に参加してきた。その通りだと笑いながらフーベルトが倒したオオカミをベックの元に持ってくる。
「俺も手伝うよ。解体は得意なんだ」
レリアーノがオオカミを引きずりながらベックに伝える。最初はポーターの仕事だと主張していたベックだが、レリアーノの手際を見て感心したように頷くと手分けして解体を始めるのだった。




