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追放されたが、それでも収縮拡張スキルで英雄へと駆け上がる  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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防具屋にやってきたレリアーノ

 ギルドを出たレリアーノとルクアは、ベルトルトからもらった紹介状を手に防具屋に向かっていた。

 防具屋はギルドから少し離れた場所にあるようで、二人は市場で買い食いなどしながら移動をしていた。


「いい? 今日は休養日だったのよ! しっかりと休日を満喫しないとだめだからね。ほら、レリアーノも色々と買いなさいよ」


「いや、十分に買ってるから。金銭感覚が狂わない程度に散財はしてるぞ。それがCランク冒険者の仕事でもあるんだろ? 物を買うことで市場を活性化させるだったよな?」


「その通りよ! それが冒険者の心意気ってもんよ」


 ルクアから高ランク冒険者の心構えを聞かされていたレリアーノが、昔なら買えなかったお菓子や服を買っていた。

 自分が今まで所属ていたパーティーでは報酬金を渡されることは少なく、たとえ渡されたとしても銅貨数枚程度であり、それを貯めて必要な日常品を買うのがレリアーノの暮らしぶりであった。


「依頼料の多さを知ったことで分かったと思うけど、レリアーノは本当にお人よしだからね! 普通は報酬が少ないならギルドに異議申し立てをするものなの。それがパーティーを組む冒険者たちの生活を守るために必要な制度だから。そうしないと配分を巡って争いが起こり、パーティーが分裂するし、場合によっては殺傷沙汰にまで発展するから。それを解決するのもギルドの仕事になっているわ。レリアーノは異議申し立てをせずに唯々諾々(いいだくだく)と従っていたから、パーティーのリーダーからすれば笑いが止まらなかったでしょうね」


「分かったって。十分に反省しただろ。何度も言うけど誰もそんなことを教えてくれなかったんだ。リーダーからもらった報酬は確かに少ないと思っていたけど、『お前はなにも貢献出来ていない』と言われていたから、当時は仕方ないと思っていたんだよ」


 容赦ないルクアのツッコミに、レリアーノは苦笑しながら反論する。


 当時はリーダーのエドガーから『貢献できていない者に報酬を渡すわけがない。衣食住を保証しているだけでもありがたいと思え』と言われており、また冒険者登録の際にも、そんな制度があるなど聞かされていなかったので、不満に思いながらも渋々と納得していたのである。


 実際のところ、レリアーノの貢献は戦闘以外では破格のものであり、普通のパーティーならば感謝しながら対等なレベルで扱い、報酬も均等割りにして渡していたはずである。


「まあ、あの出来損ないのパーティーだったから当然かもね。人を扱うことを全く分かっていなかったから。むしろレリアーノを追放してくれてよかったわ。お陰で私はレリアーノと出会えたからね」


「そうだな。俺もルクアと出会えて本当に良かったと思っているよ。神様に感謝したいくらいだ。ルクアと出会ったからどん底人生にならずに済んだし、ルクアが居てくれるから今も冒険者として生きていけている。本当に人生の充実を感じているよ」


 ルクアとの出会えて良かったと、いつものように、ただ少し真剣さを含ませて返事をしたレリアーノだったが、急にルクアが立ち止まったので、何事かとルクアの顔を見ると真っ赤になっていた。


「どうかしたのか?」


「なんでもないわよ! 思った以上に直球の感謝の言葉が来たからビックリしただけよ……。なんで神様に感謝とか、私のお陰で生きていけるとか真顔で言うのよ。聞いているこっちが恥ずかしくなったじゃない」


 首を傾げているレリアーノにルクアは焦ったように答えると、一人でぶつぶつと言いながら近くにあった店で飲み物を買うと一気に飲み干して、火照った顔を落ち着かせようとする。

 いつもと違うルクアの態度にレリアーノは不思議そうな顔を続けていたが、それ以上の確認をすると怒られそうな気配がしたので、何も聞かずに防具屋に向かうのだった。


◇□◇□◇□


「思ったよりこじんまりとした佇まいだな」


「ええ、そうね。こんなお店で商売が成り立つのかしら? 私が経営していた道具屋よりも小さいわよ」


 2人がベルトルトから紹介された防具屋を眺めながら話していた。

 紹介状と一緒に渡された地図を見なければ分からないほど民家が立ち込めている中にあり、古びた看板もあったので防具屋と分かるレベルであった。


「本当にここに防具が売っているのか? と、思わず言いたくなるな」


「そうね。でも、ベルトルトの紹介だから大丈夫よ……多分だけど」


 紹介状がなければ絶対に入らないと言い合っていた2人だが、店の前で立っているだけではなにも始まらないと、お互いに頷き合うと意を決して扉を開ける。


「お邪魔しまーす」


「誰か居ませんかー」


 なぜか恐る恐る扉を開けて中に入る2人。

 店が開いているのかと心配になり、留守にしているのかと思うほど店中は静寂に包まれていた。


「商品はまともみたいね」


「そうだな。この鎧なんて綺麗に磨かれれているから手入れはしっかりとしてされているよな。でも、パッと見た感じは俺に合いそうな鎧や盾はないぞ。これで品揃えがすべてなら、ここで購入する物はないし、誰も居ないみたいだから帰ろうか」


 しばらく眺めていたが自分に合う物は展示されておらず、しばらく待っても店員が出てこないので、居心地が悪くなったレリアーノは店を出ようとルクアに言いだす。


「そうね。誰も居ないなら帰りましょうか。それにしても不用心よね。盗人が入っても知らないわよ」


「ふぁー。ん? なんじゃ、お前らは?」


 誰も居ないと思っていたレリアーノとルクアが帰ろうと入口に向かうと、背後からいきなり声をかけられ、驚きのあまり飛び上がってしまう。


「うわぁ!」


「きゃっ! だ、誰!?」


「それはこっちのセリフだ。人の店にやってきて、誰はないだろう」


 眠そうに体を伸ばしながら確認してくる男性に、ルクアが眉を寄せる。


「客が来ているのにその態度はないわ。同じ商売人として許せない」


「ん? 客? ここは一見は断っているぞ。ある程度実績がある冒険者だけがやってくる防具屋だ。防具が欲しいなら、表通りに――待てよ。ここに来たってことは紹介状を持っているだろう。早く出せ」


 ルクアの言葉を聞き流しつつ、面倒くさそうに話をしていた男性だったが、急に目が覚めたように真剣な顔になると招待状を出すようにとレリアーノに手を突き出した。

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