ベルトルトと話をするレリアーノ
「よし! 決まりだな。じゃあ、明日の朝にギルド前で待ち合わせをしようぜ。俺も仲間に伝えておかないとな。それにしてもベルトルトさんに認められたレリアーノの実力を楽しみにしているぞ」
フーベルトが片手を上げながらギルドから出ていくのを見送りながら、明日の依頼について楽しそうに思いを馳せていたレリアーノの左耳に突然激痛が走った。
「痛ってー! なにすんだよルクア!」
激痛がする方に鋭い視線を投げると、そこには怒り心頭のルクアの表情があり、レリアーノを睨みつけていた。
「なんで討伐依頼なんて受けるのよ。ゆっくりと休憩だと私は言ったじゃない」
「ルクアも依頼を受けたじゃないか!」
継続中の耳への痛みに抗議するように、ルクアを睨み返すレリアーノだったが、そんな態度のレリアーノにルクアはため息を吐きながら答える。
「いい? あそこまで話が進んでいたら、私はOKと言わざるを得ないの。そうしないと、このコンビは仲が悪いと言われるくらいなら構わないけど、リーダーの意見も聞かない冒険者だとレリアーノが思われるでしょうが。そうなりたかったの?」
「ぐっ! そ、それは困るけどさ――」
「まあ、『遊撃の射術』を率いている高ランク冒険者のフーベルトとお近づきになれたのは良かったけどね」
さっそく高ランク冒険者とつながり、情報収集や困った時には助けてもらいやすいとレリアーノの耳から手を放して喜んでいるルクアに、痛みから解放されたレリアーノが小さく呟いた。
「だったらなんで俺は耳を引っ張られたんだよ? 痛いだけ損じゃん」
「何か言ったかしら?」
レリアーノの独り言を聞き逃さなかったルクアがレリアーノにジト目を向けて確認するが、レリアーノは慌てて首を振ってなんでもないと伝える。
しらばっくれた上に逃げようとしたレリアーノを、ルクアが逃がすまいとレリアーノの腰にしがみつこうとしたタイミングで、クレメンティアが2人を見つけて近づいてきた。
「お待たせしました。ベルトルト様がお待ち……なにかありましたか?」
「なにもないわよ。ちょっとレリアーノにお説教をしようと思って捕獲しようと思っただけだから。そっちは後ででもいいから、先にベルトルトのところに行きましょう」
逃げようとしても無駄だからねと言いたげなルクアに、レリアーノは苦笑を浮かべつつ嫌そうな顔をする。
状況が分からず、2人を見て不思議そうな顔そしているクレメンティアだったが、ベルトルトが待っているのを思いだすと、すぐに付いてくるように伝えてギルドマスター室に向かった。
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「失礼します」
「入ってくれ」
レリアーノとルクアを連れてギルドマスター室にやって来たクレメンティアがドアをノックすると、中からベルトルトの返事があった。
そして入室した2人の目に入ってきたのは、山のように積まれた書類と格闘しているベルトルトの姿であり、レリアーノとルクアに目線を向ける事なく、ひたすらペンを走らせていた。
「まだ仕事が終わっていないので、このまま作業を進めさせてもらう。気にせずに座ってくれ。無事に戻ってきてなによりだ。魔石も入手出来たと聞いている。ご苦労だった」
「ええ、そうね。危うく悲惨な目にあうところだったけど、無事に帰ってこれて良かったわ」
「悲惨な目にあうだと? どういうことだなにがあった?」
思わずペンを止めて顔を上げたベルトルトにルクアが満面の笑みで答える。
「ギルドの情報が誤っているから大変だったのよ。守護者ゴーレムが3体も出るなんて聞いてないし、多種多様なゴーレムが山のように出てきたのよ。これはギルドの情報提供が間違っていたからよね?」
「本当なのか? クレメンティア。次の面会は日程変更だ。彼らから話を早急に聞きたい。それとこの書類は完成している。担当者に渡しておいてくれ」
「はい。かしこまりました。飲み物も用意しますね」
ベルトルトから書類を受け取ったクレメンティアが席を外したのを確認するように、ベルトルトがソファーに移動すると、眉間に皺を寄せながらレリアーノに視線を向けた。
「なにがあった? 教えてくれ、レリアーノ。それによって遺跡に対するギルドの方針を決めないといけない」
「ああ、俺とルクアが遺跡で体験した話だけど、途中まではギルドの情報に間違いはなかったんだ。だけど、その後が全然違っていて……」
レリアーノはベルトルトに経験した内容を話していく。
転移の魔法陣に乗ると、ギルドで聞いた内容とは違う場所に転移した上に大量のゴーレムに襲われた事や、守護者ゴーレムだと思い戦ったが魔石を得られないうえに消えた事。
そのほかにも奥の部屋が工場になっており、警告音と共に3体のゴーレムが湧いて襲ってきたことなどを伝えた。
「ふむ。よく無事だったな」
「本当にそうよ。それでも私たちは依頼通りに魔石を確保してきたわ。依頼内容の伝達不備にもかかわらず、見事対処した私達への評価はしっかりとよろしくね」
最後まで話を聞いたベルトルトが大きく息を吐き出しながら2人のが無事なことに安堵していると、そこにルクアが満面の笑みを浮かべて話してきた。
「ちゃっかりしているな。もちろん、今回の件については全てを調査し、しっかりと評価させてもらう。……。それにしてもレリアーノは突発事項によく遭遇するな。追放に始まりゴブリンジェネラルや守護者ゴーレム3体との戦闘か。それを全て乗り越えているレリアーノは、なにか神からの祝福を持っているかもしれないな」
「もちろん! 私っていう女神が傍に居るからよ。ねえ、レリアーノもそう思うでしょ?」
ルクアの台詞にレリアーノとベルトルトは苦笑を浮かべるしかなかった。




