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追放されたが、それでも収縮拡張スキルで英雄へと駆け上がる  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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追いかけられるレリアーノ(前)

 ライトニングランスの直撃を受けた守護者ゴーレムが活動停止したのを見て、レリアーノが安堵のため息を吐く。


「なんとか倒せたな。でもこれで杖に貯めていた魔力が無くなったから、もう1体が出てきたら厳しいな」


「とりあえず倒せたからならいいんじゃない。次出てきたら逃げたらいいのよ!」


「あのなー」


 レリアーノの呟きにルクアが軽く答えながらスキップしそうな勢いで守護者のゴーレムに近付いていく。


 呆れた表情を浮かべているレリアーノを気にすることなく、倒れている守護者ゴーレムを動かし魔石を探す。


「あれ? ゴーレムの魔石が無いんだけど? まさかレリアーノが破壊しちゃったとか」


「え!? 嘘だろ?」


 ルクアが魔石に反応する魔法を唱えながら守護者ゴーレムの身体をくまなく探していたが、どこからも魔石の反応はないようであった。


 先ほどのライトニングランスが魔石に直撃し、木っ端微塵(みじん)にしたとレリアーノが青い顔になっていると、ルクアが別の所に移動し始めた。


「まあ、やっちゃったものは仕方ないじゃない。それにしても、こんなところに扉なんてあったからしら? ひょっとしたら、守護者ゴーレムを遠隔操作していたから、魔石がないんじゃないのかしら?」


「は? ル、ルクア」


 ルクアがブツブツと呟きながら扉に近付くのを見て、慌てたように後を追いかけるレリアーノだが、守護者ゴーレムが気になるのか何度も振り返っていたが急に変な声を上げる。


「なによ。次はこの扉を調べないと駄目じゃない。魔力を貯める時間が欲しいの? なによ、どうかしたの?」


 一刻でも早く次の扉を開きたそうにしているルクアに、レリアーノが必死になって叫ぶ。


「さっきまで有ったゴーレムの身体が一瞬で消えたんだよ!」


 ルクアが視線を向けると、そこにあったはずの守護者ゴーレムの残骸は跡形もなく無くなっていた。


「ど、どういうこと?」


「ちょっとこれは予想外かなー。現れた時と同じように消えるなんてありえるの?」


 慌てて戻った二人が守護者ゴーレムを調べるも、()()()()()()()()()()()()()部屋の様子に首を傾げるしかなかった。


「とりあえず先に進みましょうよ」


「そうだな。もうちょっとしたら魔力も充てんできるけど、最高の状態からしたら、半分くらいだぞ」


「いいわ。さすがに私も魔力が回復しなくなってきたわ。早く攻略を進めましょう。絶対にギルドに戻ったらベルトルトに文句を言うわ」


 さほどまでのハイテンションが嘘のように疲れ切った表情を浮かべるルクアが扉を開いて先に進むのだった。


◇□◇□◇□


 轟音と共に衝撃が2人を襲う。砂煙が巻き上がる中、レリアーノとルクアが勢いよく飛び出し走り始めた。


「うそだろぉぉぉぉぉ! 危険はないと言ったじゃないかー」


「こういった事があるのもまた人生なの。そう運命とも言うよね」


「さも人生を悟ったような言い方だけどな! 『この先に危険なゴーレムはいないわ。エルフである私を信じなさい』って言ったじゃん。おい! よそ見して無視すんなよ!」


「レリアーノは口が悪くなったわねー。お姉さんは悲しいよ」


「お前のせいだろうがー!」


 息も絶え絶えになりながら悪態を吐いているレリアーノの横で、軽やかに羽が生えたように走るルクア。


 2人が必死に走るのは背後から迫りつつあるゴーレムから逃げるためである。


 スピードが遅いため、なんとか逃げ続けられている状況だが、たまに飛んでくる岩石と疲れを知らないゴーレムに追いかけられており、徐々に距離を詰められつつあった。


「さあ、あなたの真の力を披露するときが来たわ! むしろ見せて! そろそろ体力が厳しいの」


「簡単に言うなよ! さっきの戦闘で魔力が半分だって言っただろうが!」


 思わず叫び返すレリアーノだが、背後から迫ってくる音が大きくなってくることに危機だと理解させられ、ルクアを睨みながらやけくそになって叫ぶ。


「やってやるぅぅぅぅ。魔力を収縮させる! 『我が手に集まれ雷の力! ライトニングレイン』いっけぇぇぇぇ」


 振り向きながら叫んだレリアーノに反応するように、右手に握られていた杖に魔力が集まり、そこから金色の雨が放たれゴーレムに向かって降り注ぎ始めた。


 2人を追いかけていたゴーレムは3体であったが、その全てに等しく雷の雨が降り注ぎ、まばゆい光が消えさると動いているゴーレムは1体もいなかった。


「ふう。もう、出し惜しみせずにライトニングレインを使ってくれたらいいのにー」


「拡張収縮魔法は覚えたてで、燃費が物凄く悪くて魔力も半分しかなかったの。そして今の一撃で完全に魔力が無くなったからな。俺は休憩するぞ!」


「無事だったから良いじゃない。さあゴーレムの魔石を回収するとしましょう。今度はさっきと違って魔石があるはずよ! ……。ふっふっふ。やっぱり。素晴らしいわ。これは高く売れるわねー。ベルトルトからは1個でいいと言われているから、残りの2個は高額で買い取ってもらいましょう。拒否されたら商人ギルドでオークションにかけるわよ。商人である私の勘が、これは素晴らし逸品だと激しく報告してくるわ!」


 完全に疲れ切った表情のレリアーノに、ルクアは笑顔で話し掛けながら、ゴーレムの魔石を回収していく。


 嬉々として解体をしているルクアにレリアーノは苦笑を浮かべながら、改めて自分が倒したゴーレムを眺める。


「こんな強敵を含めて、物凄い数のゴーレムを倒したぞ。ちょっと前の俺が見たら仰天するだろうな」


 昔に比べると格段に戦闘能力は上がっており、それまで荷物持ちとしてこき使われていた頃とは雲泥の差だとレリアーノは感じていた。

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