ギルドでの扱いに驚くレリアーノ
「せ、専属ですか?」
突然の専属命令にクレメンティアが驚きの表情を浮かべるが、ベルトルトは当然とばかりに頷く。
「ルクアはAランク冒険者だ。特に問題ないだろう? それがギルドのルールならなおさらだ」
「でも俺はCランクになったばかりで……」
ベルトルトの説明を聞いたレリアーノが申し訳なさそうに確認する。
Aランク冒険者に専属受付が指名されるのは、高ランクの依頼を受け受けるためには様々な方面との折衝があるため、必要な処置であるのをレリアーノは知っていた。
だが、今のルクアはCランクになったばかりの自分と組んでいるため、受けられる依頼は低いものしかないとレリアーノが力説している横でクレメンティアが何度も頷いていた。
「そうですよ。レリアーノさんがCランクである以上、ルクアさんがAランクであっても受けられるのはCランク相当までになります。なので専属が必要だとは思いません。あまり贔屓をすると、他の冒険者たちから苦情が出ませんか?」
「確かに、その考えは間違っていない。だが、レリアーノたちが受ける依頼は、特例としてBランク以上になる事がある。私の指名依頼についてはランク付けが難しい内容になることもあるだろう。他の冒険者たちから苦情が出たら、すぐに私に報告しなさい。それでいいね」
「……。分かりました。ではルクアさんとレリアーノさんの専属として対応します。あまり特殊な事例なので、ルクアさん、レリアーノさん。私もどうすればいいのか分かっていませんがよろしくお願いしますね」
ベルトルトから再び専属になるように言われたクレメンティアは、やったことのない専属対応に不安さを隠さないまま了承する。
そんなクレメンティアにルクアが笑顔で話しかけた。
「大丈夫よ。なにかあればベルトルトが責任を取るんだし、あと私は商人ギルドのランクもBだから、特殊な依頼を受ける事があると思うわ。その辺りを考えて、あなただから出来るとベルトルトが判断して専属を指名したのだから喜びなさい。……。まあ、これからはクレメンティアの事はクレアお姉ちゃんと呼ぶからよろしくね」
「それは勘弁してください。先ほどの妹発言は取り消しますから。レリアーノさんもクレアと呼んで下さいね。親しい人はそう呼んでますから。これから専属となりますので敬語も不要ですよ」
「分かったよ。クレアさん。俺に専属が付くなんて驚いているけどよろしくね」
クレメンティアの言葉にレリアーノは答えながら、ルクアとベルトルトに確認をする。
「ルクアは後で依頼の話をするとして、ベルトルトさんと連絡を取るのはクレアさんを通してでいいのかな?」
「ああ。そうしてくれ。さっそく依頼を一つ受けてもらうから、私の部屋に来てくれ。クレメンティアも一緒に来るように」
レリアーノの問い掛けに答えたベルトルトは、ギルドマスターの部屋に来るようにレリアーノとルクア、クレメンティアに伝ると、さっさと歩き始めた。
◇□◇□◇□
「では、依頼を伝える。まずはレリアーノの実力を測るために、採取依頼を頼もう。ランクとしてはCランク相当になる」
「採取がCランク?」
ベルトルトから告げられた依頼内容にレリアーノが首を傾げる。
採取依頼はギルドに登録した初心者から中級に入るまでの冒険者が担当する依頼であり、その日暮らしをするためにギルドが斡旋する事が多かった。
「ベルトルトが指名依頼をするってことは、普通の採取じゃないのよね?」
ルクアが確認すると、ベルトルトは当然だと頷きながら説明を始める。
「ちょっと特殊な鉱石を取って来て欲しい。それほど危険はないのだが、ルクアがいれば入れる場所にある。レリアーノはルクアの護衛扱いになる。この依頼でレリアーノの戦闘力などを見たい」
「それって私がエルフなのと関係あるの? エルフじゃないと入れない遺跡なの?」
ベルトルトの説明を聞いたルクアが質問すると、クレメンティアが驚きのあまり口をパクパクとさせ、やっとのことで落ち着くと絞り出すように確認してきた。
「ルクアさんってエルフなんですか? ひょっとして隠匿魔法を使っているとか?」
「そうよ。クレアは私たちの専属受付嬢だから教えたのよ。このことは秘密にしているから、他に漏らさないようにしてね」
滅多に見ない種族であるエルフに、クレメンティアが何度も頷きながら口外しないと約束する。
情報共有は終わったとベルトルトは依頼の詳細を伝える。
「場所は、この町から馬車で1日ほどのところにある遺跡だ。近くに村があるから、そこで1泊してから向かってくれ。これは村長への紹介状だ。これを見せれば無料で泊めてくれる」
ベルトルトから招待状を受け取りながら、レリアーノは恐ろしいと聞いていた強制的な訓練がなく、普通の依頼を受けるだけなことに安堵しているようであった。
そんなレリアーノの気持ちが分かったのか、ベルトルトが軽く笑いながらレリアーノの肩を叩いて希望を打ち砕く。
「当面は様子見だからな。この依頼をこなせれば、まずはCランク依頼を自由に受けて構わない。それと残念ながら旅立つ前に訓練は一通りするからな」
いい笑顔をしているベルトルトに、どうしても嫌な予感しかしないレリアーノが乾いた笑いをしてと、ルクアが楽しそうにレリアーノの背中を叩いた。
「いいじゃない! 英雄と呼ばれる王国の盾に訓練をしてもらえるのよ。他の冒険者が聞いたら悔しがるんじゃない?」
「いやいや。ルクアも聞いてたよな? ベルトルトさんの訓練が恐ろしいって話を。基礎訓練しかしないと言ってたけど、そんなのやってみないと分からないだろう? ベルトルトさん、大丈夫ですよね? 信じてますよ。え? なんで視線を逸らすんですか? いや、ちょっと冗談ですよね?」
ベルトルトとルクアにからかわれているとは気づいていないレリアーノは悲壮な顔をしており、それを見たクレメンティアが気の毒そうな顔になっていた。
「頑張ってくださいね。レリアーノさん。遠くから応援していますよ」
「え? ちょっとクレアさん冗談でしょ? そんなに厳しいの?」
クレメンティアからもからかわれているのに気付いていないレリアーノは、ギルドマスターの部屋から出て説明を聞くまで顔が赤くなったり、青くなったりするのだった。




