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追放されたが、それでも収縮拡張スキルで英雄へと駆け上がる  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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レリアーノは宴会を楽しむ

 レリアーノとルクアの送別会は盛況のさなかにあった。ゲールハルトが館に残っている一同に声を掛け、訓練場を開放し、そこで宴を始めたからである。各地から集められた兵士や冒険者、王都からやって来た文官達も混じり、飲めや歌えの大騒ぎとなっていた。


 その中で注目を集めているのは当然ながらレリアーノである。スタンピード寸前のゴブリンジェネラル率いる魔物に致命的な一撃を加えた冒険者として、ゲールハルトから紹介されたのである。その他にも、ユリアーヌや仲間達が武勇伝を語っていただけでなく、マリウスやベルトルトの英雄たちも手放しで褒めていたとの情報もあり、レリアーノの周りには人だかりが出来ていた。


「なあ、ゴブリンジェネラルってどんな感じだったんだよ?」「強大な魔法で倒したと聞いたぞ?」「俺は豪快な一撃で一刀両断したと聞いた」「美人エルフとコンビを組んでいるのは本当か?」「なあ、俺たちのパーティーに入らないか?」「とりあえず飲め!」「止めとけって。ベルトルトさんに怒られるぞ」


 一斉に質問攻めにされ困惑するレリアーノだったが、今回の騒動では話せる内容が限られており、どこまで話していいのか判断が付かなかった。引きつった笑顔を浮かべながら受け答えをしていたレリアーノだったが、パーティーの勧誘だけはきっぱりとと断っていた。


「パーティーの誘いは嬉しいけど、もうルクアがいるから」


「それは残念だ。まあ、レリアーノほど優秀な冒険者がソロで活動しているなんてことはないか。すまなかったな。気を使わせてしまったようだ」


「いいよ。誘ってもらえたのは純粋に嬉しいから。それだけ俺のことを認めたって事だろ?」


「はっはっは。違いない。明日に差支えのない範囲で飲もうじゃないか。ベルトルトさんからも『レリアーノに飲ませすぎるなよ。二日酔いになんてなっていたら、お前たちは特別特訓だ』と脅されているからな。まあ、とりあえずは乾杯だ」


 レリアーノの断りを笑いながら受けた冒険者の一人がジョッキを持ってきた。レリアーノ用に薄められたエールになっているようで、周囲に集まった一同もジョッキを手に取ると乾杯の準備をする。


「我らが英雄のレリアーノに!」


「「「 乾杯! 」」」


 周囲の唱和に合わせてジョッキをぶつけ、一気にエールを飲み干す。果実水で薄められたエールは程よい感じで飲みやすくなっており、薄いながらもアルコールを感じることが出来た。周囲の称賛や軽めのアルコールによって饒舌になったレリアーノは、ゴブリンジェネラルとの戦いを熱く語る。


「まさかユリアーヌが吹っ飛ばされるなんて思わなかったよ」


「ひゅー。すげぇな。あのユリアーヌが手も足も出なかったのか。この町でトップランクの冒険者だぞ? 油断でもしていたのか?」


「いや。あのゴブリンジェネラルは特殊個体だった。ユリアーヌは俺が知る中でも最高の冒険者だよ。油断するなんてありえない」


「それにしても特殊個体だと? その話は本当かよ?」


 ユリアーヌの話を聞いていた中の一人が疑問をレリアーノにぶつける。詳細な戦闘シーンは話してもいいと聞いていたレリアーノが、ゴブリンジェネラルは特殊個体であったと説明をし、それはマリウスから聞いたと力説する。


「爺さんから聞いたから間違いないぞ」


「爺さんって誰だよ?」


「大賢者マリウスだよ! お前ら知らないのか?」


「「「 知ってるよ! 」」」


「お前こそ、大賢者マリウスを『爺さん』呼ばわりするなよ!」


 英雄を爺さん呼ばわりしたレリアーノにツッコみが入る。そして、マリウスの偉大さをそれぞれが語り始めた。過去の戦争で退却する際に一人で殿(しんがり)を務め、追撃してきた敵軍に大魔法を浴びせて撃退した事。勇者パーティーと呼ばれる一員であり、ドラゴン討伐や魔族も倒した事があるなど。


「今は宮廷魔術師として王家を支えているんだぞ。生きた伝説で英雄なんだ」


「だよなー。そうなんだよ。俺も伝説で英雄の大賢者マリウスは知っている。もちろん尊敬もしている。だけど爺さんを見てたら、どうしても英雄には見えないんだよなー。気のいい爺さんって感じくらいで」


「は……ははっ! 大賢者マリウスを見ても英雄に見えないだとさ! これが英雄になる奴と俺らの違いじゃないのか?」「だな。俺なんてマリウス様の前に出たら緊張して喋れなかったぞ」「分かる! 俺も握手をしてもらった時に泣きそうになった」


 一同が感心しながら同時に呆れていた。自分は英雄と会えた幸運を後世語り継ぐつもりなのに、レリアーノは気のいい爺さん扱いである。周囲はレリアーノの態度を心配していたが、マリウス本人は気にしておらず、むしろレリアーノが自分を普通の人間としてみてくれることを喜んでいた。


 そんな事情を知らない一同は、レリアーノが特別な存在であると思い、やはり繋がりを持つのは必要だと感じてる。さすがにパーティーへの勧誘は誰もしななかったが、自己アピールを始める者や、将来性を見て色仕掛けをする者。剣を使えるとの話に模擬戦を申し出る者まで現れ、周囲はお祭り騒ぎのようになっていた。


「レリアーノ」


「え? ル、ルクア!? なんて格好をしているんだよ!」


 そんなか、急に沈黙が訪れる。全員がレリアーノの背後を見ており、何事かとレリアーノが振り返ると、そこにはルクアが変装を解除したエルフの姿で立っているのだった。


「普通の恰好でしょ?」


「いや。そうだけど、そうじゃなくて!」


「ごめんなさい。ちょっとレリアーノを借りるわね」


 レリアーノに腕を絡めながら宴会場を去っていくルクアに、一度の視線が釘付けになっていた。絶世の美女であるルクアを見て呆けている者や、あまりの美貌の差にレリアーノへのアタックをあきらめるも者。後でレリアーノに制裁をしてやると血の涙を流しながら酒を一気飲みして団結する冒険者たちなど。先ほどは違う雰囲気に、レリアーノは戸惑いながらも引きずられるように会場を後にするのだった。

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