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追放されたが、それでも収縮拡張スキルで英雄へと駆け上がる  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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レリアーノは買い物をする

 ライトニングレインを披露した草原から屋敷に戻る途中のレリアーノ。もらった報酬金の多さに驚きながらも、急に懐が温かくなったことに頬が緩んでいた。その日の食事にも困るレベルの給金しか得ておらず、前のパーティでは得た報酬は銅貨1枚すら渡されていなかった。


「あの頃は、どうやって腹を膨らませるか考えていたよなー。そう思うと雲泥の差だけど何に使おうか……」


 そう呟きながら、レリアーノは商店街を眺めていた。そして、何かを決めたのか目の前にあった店に入ると気に入った物はないかと探し始める。かなり気合の入った表情のレリアーノに店の店主が笑顔で話しかけた。


「どうだい? なにか気に入った物は見つかったかい? たっぷりと報酬が入った顔だな? なにか買っていってくれよ。これなんてどうだい? 安くしておくよ」


「え? なんで分かったんだ? 俺に報酬が入ったって」


「そんな嬉しそうな顔をしていたら、年端もいかない子供でも分かるわ。そういうことで、俺はあんたにこれを勧めるね!」


 店主が店で一番の品物を手に取るとレリアーノに渡してくる。レリアーノが立ち寄った店は雑貨を中心に取り扱っており、手渡されたのは可愛らしい文具セットであった。


「あんた冒険者だろ? これで手紙を書いて、知り合いに近況を伝えるのはどうだい? 手紙はギルドに依頼すれば配達してくれるからね。色々な街で世話になった人に手紙を送るのが、今の流行なんだよ。知らなかったかい?」


「へー、そうなんだ。知らなったよ。確かに手紙を送るのはいいな。その前に字を書く練習をしないと駄目だな」


「おっと! それだったら、こっちの商品がいいね。何度も書いて消せる練習用の石板だ。ほら、持ってみなよ。どうだ軽いだろう。うちの自慢の品なんだ」


 普段から字を書くことがないレリアーノが、練習が必要だと呟いたのを聞き逃さず、店主は奥から石板を持ってくる。何度も消せるタイプの練習用であり、価格も安いとの事だった。


 色々と流行りの品を推してくれる店主と意気投合したレリアーノは、金額を気にせずに次々と購入していく。今まで何も買えなかったことへの反動のように買い物をするレリアーノ。


 ルクアがその場に居たら、形相を変えて止めるレベルで買い物をしていたレリアーノだったが、さすがに心配になった店主が止める。


「おいおい。買ってくれるのは嬉しいが、貯金もしとかないとダメだぞ。冒険者なんて職業は、いつ収入が止まるか分からないだろう。後は恋人に花でも買って帰ってやりな。ほら、あの店なら新鮮な花が買えるぞ」


「恋人なんていないけど、お世話になった子はいるな。おじさん、ありがとう。後は花を買うことにするよ」


 提案された花屋に視線を向けたレリアーノが、恋人とのキーワードに顔を赤くしながら、そんな人はいないと否定する。


「おっと、恋人じゃなくて想い人かい。若いってのはいいねー。是非とも買ってやりな。よし、おっさんからのサポートだ。本来なら全部で銀貨7枚だが、6枚にまけておいてやるよ。その差額で花を買って帰りな。その代わりに、他の町に行った時には俺の店を紹介してくれよ」


「想い人でもないから! でも、まけてもらった分は花を買う事にするよ。おじさん、ありがとう」


 支払いを済ませたレリアーノが足取り軽く花屋に向かっていく。花屋の女主人に色々と勧められながら、言われるがままに花束を購入していくレリアーノの様子を見ながら、雑貨屋の店主は微笑ましそうにしていた。


「本当に若いってのはいいねー。それに素直なのも高評価だ。これで母ちゃんの機嫌も直ってくれるといいけどな」


 雑貨屋の主人が勧めた花屋は自分の奥さんが経営しており、朝に大ゲンカしたばかりであった。


◇□◇□◇□


「ただいま戻ったよ」


「レリアーノお兄ちゃん!」


「レリアーノ! どこに行っていたのよ? 起きたらいないなんて心配するではありませんか。べ、別にレリアーノを心配している訳じゃないですわよ!」


 レリアーノが買い物を済ませて屋敷に戻ると、玄関にはシャルとルイーゼが頬を膨らませて待っていた。気丈に振る舞ってはいるが、看病疲れが出ているようで二人とも目にくまを作っていた。


「ごめんよ。爺さんとベルトルトさんと一緒に街の外に行っていたんだよ。ルクアに二人が心配していると聞いて、慌てて帰って来たんだ。そ、その。これはお礼だよ。寝ないで看病してくれたんだろう? ありがとう」


 照れくさそうに早口で感謝を伝えながら、背後に隠していた花束を渡すレリアーノ。受け取った二人は最初はきょとんとしてたが、それがお礼の花束だと分かると満面の笑みを浮かべる。


「わあ! ありがとう。レリアーノお兄ちゃん!」


「あらあら。レリアーノも一端の男の子なのね。ありがとう。玄関に飾らせてもらいますわ。これを」


「かしこまりました。お嬢様。こちらは後程、ドライフラワーにしておきますね」


「ええ。そうしてちょうだい。シャルの分もお願いね」


 ルイーゼから花束を受け取った老執事が微笑みながら提案する。それに頷きながら、シャルにもドライフラワーの説明をする。花は枯れたら終わりだと思っていたシャルだったが、ずっと残しておけるとの言葉に目を輝かせる。


「良かったわね。シャル」


「お母さん!」


 シャルがもらった花束を持って踊っていると、母親のレーナがやって来た。一連の流れをルイーゼから聞かされたレーナはシャルに近付くと頭を撫でながら微笑む。


「お別れ前に良い物をもらえたわね。大事にするのよ」


「うん。分かってる」


 母親の言葉に素直に頷くシャル。レリアーノが寝ている間に、ルイーゼやレーナから冒険者の事を聞かされていたシャルは、レリアーノがいつかは旅立つと聞かされており、幼いなりに覚悟を決めていたようであった。


「シャル。明日に旅立つんだ。向こうに着いたら手紙を書くな。楽しみに待っていてくれよ」


「うん! 待っている! レリアーノお兄ちゃんからのお手紙待っているからね!」


 シャルの表情を見て、レリアーノは手紙を出すと約束をする。それを聞いたシャルは涙を浮かべながらも嬉しそうな顔をするのだった。

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