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追放されたが、それでも収縮拡張スキルで英雄へと駆け上がる  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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レリアーノは目が覚める

「ん、んん。ふぁぁぁ」


 少し息苦しさを感じつつ目が覚めるのを意識したレリアーノが身体を起こそうとした。しかし、なにかに押さえつけられているのか身動きができず、なんとかしようと体を動かす。


「……ん」


 自分の目を覆っているのはどうやら人であるようであり、レリアーノは動かせる両手を使って上に乗りかかっている人物からなんとか脱出した。そして大きく目をつぶり意識をはっきりさせると、自分にのしかかっていたのが誰かを確認する。


「ルクア?」


 どうやらルクアがレリアーノを膝枕していたようであり、いつもの姿ではなくゴブリンジェネラルとの戦いで見せていたエルフの姿であった。膝枕をしたままルクアも眠っているようで、静かな寝息を立てていた。


「やっぱり奇麗だな」


 レリアーノは今までの激闘を忘れたかのようにルクアの姿に魅入られていた。服装もラフな部屋着に着替えているようだが、それよりもレリアーノの視線を奪っているのは透き通るような肌に長いまつげ。金色の長い髪は窓から射し込む光でキラキラと輝いていた。エルフの姿のままであるルクアにレリアーノは見飽きることなく眺めていたが、意を決したのかルクアの輝いている髪に触ろうとした。すると遠慮がちな声がレリアーノの耳に届く。


「なあ。ルクアを眺めたいのは分かる。その髪に触れたいのもな。だが俺たちが居ない時にしてくれると助かる。どう見ても、女性が寝ている無防備な状態だからな。俺たちは止めないといけない」


「うわぁぁぁぁ!」


 突然、聞こえてきた声にレリアーノが思わず叫んで後退(あとずさ)ろうとして、ベッドから転げ落ちた。


「い、い、いつから?」


「ん? いつから? モニカ、俺たちが居たのはいつからだ?」


「レリアーノがぐっすり眠っていて、目が覚めてルクアに押し付けられていた胸から脱出する辺り?」


 挙動不審なレリアーノの問いかけに、ユリアーノが隣にいたモニカに確認する。首を傾げながら答えたモニカに、一部始終を見られていたレリアーノは真っ赤になった。


「最初からじゃんか!」


「……なによ。うるさいわね」


 レリアーノとユリアーヌ達の会話で目が覚めたルクアが大きく伸びをしながら、口を尖らせて抗議してくる。そして柔らかく微笑みながらレリアーノをながめる。絶世の美女と言っても過言ではないルクアに見つめられたレリアーノの顔がさらに赤くなる。


「ふふふ。なに赤くなっているのよ。頑張ったら、エルフの姿を見せると約束していたじゃない」


「い、いや。そうは言っても――」


 いつもと違うルクアの姿にレリアーノが照れていると、小悪魔のような笑みを浮かべてルクアはレリアーノに近付いた。


「ふふ。レリアーノがライトニングレインを撃つための時間を稼ぐために、ゴブリンジェネラルにうら若きエルフの柔肌を見せたのよ。責任を取ってもらわないとね」


「え、えっ!? せ、責任って」


 しな垂れかかるように近づいてきたルクアに、レリアーノがどもりながら答える。そんな様子にルクアは軽やかに笑うとレリアーノの肩を軽く叩いた。


「冗談よ。でも本当にありがとう。レリアーノが居てくれたおかげで、ゴブリンジェネラルを倒せたわ。もう一度言うけど、本当にありがとう」


 真っ赤になっているレリアーノの反応を楽しんでいたルクアだったが、真剣な顔になると心からの謝礼を伝える。それまではレリアーノの反応を一緒に楽しんでいたユリアーヌだったが、同じように真剣な顔になると頷いた。


「ああ。本当にレリアーノが居てくれて良かった。お前が居なかったら少なくとも俺は死んでいた、いや全滅していただろうな。それが俺の怪我だけで済んだんだ。本当にレリアーノとの出会いには感謝している。なあ、モニカもそう思うだろう?」


「そうね。私達を逃がすためにユリアーヌなら自分を犠牲にしていたでしょうからね」


「それを言うなよ。モニカを残して死ぬ訳ないだろう」


 ユリアーヌがモニカに語り掛けているのを聞きながら、レリアーノは違和感を感じていた。そしてユリアーヌの動きを見ながら青い顔になっていく。


「なあ、ユリアーヌ。ひょっとして右腕が……」


「ん? ああ、ほとんど動かないぞ。ゴブリンジェネラルとの戦いで怪我した際に、ろくな手当をせずにポーションで無理やり治したからな。これで冒険者家業は引退だ。大人しく親父の手伝いをするよ」


 恐る恐る確認するレリアーノに、ユリアーヌは軽い感じで答える。むしろスッキリした表情を浮かべており、それは大仕事をやり遂げた者の顔であった。


「今回のゴブリンジェネラルを撃退できたのは大きな功績なんだよ。俺はそれを持って貴族として生きていくよ。レリアーノは、もっと自信を持ってくれ。爺ちゃんですら使えない魔法でゴブリン達を殲滅したんだぞ。爺ちゃんも結局は間に合わなかったからな。遅れてやってきて凹んでたぞ」


 あまりにも自分の事を気にしているレリアーノに全く問題ないと伝え、そしてもっと自信を持つように伝えるユリアーヌ。それでも暗い顔をしている後輩冒険者のレリアーノを元気づけるために、マリウスがやって来たときの話を始めた。


 全ての戦闘が終わり、ゴブリン達の処理が終わってしばらくしてからマリウスが戻ってきた。そして一連の話を聞くと、一同が無事であることに安堵しながらも自分が離脱したことを心底後悔しているようであった。さらにレリアーノがライトニングレインを使ったとの話を聞くと、その場に居なかったことを地団駄を踏んで悔しがっていると伝える。


「あの時の爺ちゃんの顔を見せたかったな。物凄く面白い顔になっていたぞ」


「面白顔なぞしておらん! ユリアーヌは話を大げさにするでない。ところでレリアーノ。身体の調子はどうじゃ? かなり無茶をしたみたいじゃな」


 ユリアーヌが楽しそうに話していると、マリウスが部屋にやって来た。拠点で別れた時よりも疲れた顔をしており、今まで激務をこなしていた事が分かった。


「心配かけたけど、爺さんに教えてもらった魔法でなんとかなったよ」


「なにが『なんとかなったよ』じゃ。お主は2日間も寝込んでおったんじゃぞ」


 マリウスの言葉にレリアーノは驚いて、ルクアを思わず見つめるのだった。

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