表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/68

レリアーノはルクアと出会う

「1週間の依頼受付が停止……。しかもギルドで悪評が流れているから、この町のギルドには顔も出せない。なんで強制脱退なんてされないといけないんだ……」


 とぼとぼと宿に向かって歩きながらレリアーノが呟いていた。


 ウードは追放するだけでなく、強制脱退届なんて普通は出さないものを提出したのか? 俺になにか思うところがあったのか?


 なにもできないつらさと、冤罪を掛けられたのに証明できない悔しさ。


 これからどうすればいいのか分からない先行き不透明さが重なり、レリアーノの心に急激に不安が押し寄せてきた。


 涙が滲んでくるのを感じながら歩いていたレリアーノに、驚いたような声が掛かる。


「レリアーノ? もう、街を出たんじゃなかったの?」


「ルクアさん?」


 話し仕掛けてきた女性にレリアーノが慌てて涙を拭いながら答える。


 この町に来てから世話になっている道具屋の店主であるルクアが、大量の荷物を持って立っていた。


 彼女との付き合いは、レリアーノ達が街に着いたときからで、半年に渡っており、道具調達や不要品買取などで世話になっていた。


 一方のルクアも困惑の表情を浮かべる。


 なぜレリアーノがこの場に居るのか分からなかった。


 彼女はレリアーノのパーティーが旅立ったと聞いており、あれほど親密なやりとりをしていたレリアーノが、挨拶もせずに旅立った事を不思議に思っていたのである。


「どうしたのよ? なにか忘れ物でもあったの?」


「いや。実は……」


 レリアーノはパーティーを首になった事や、ギルドでの出来事を伝える。


 さらには1週間は依頼が受けられない状態なので、どうしようかと悩んでいる事も伝えた。


 諦めの表情を浮かべ、乾いた笑いを出しながら淡々と語るレリアーノの話にルクアが激高する。


「なんて奴らなの! あなたがどれだけパーティーに貢献していたかを知らなかったの? あいつらが買い物に来た時に事情を知っていたら、3倍の値段で売り付けてやったのに!」


「いいよ。冒険者として役に立っていないのは事実だから。せっかく授かったスキルも役に立たないしね」


「あなたがそう言うなら……。それにしても役に立たないスキルなんてあるのかしら。前にあなたのスキルを聞いて気になった事があったの。旅に出るなら、もう少し話を聞かせてくれない? わたしの店に来なさいよ。どうせ暇でしょ?」


 今までの話を聞いて憤慨していたルクアだったが、なにかを思い出したのか、レリアーノから話を聞きたいと言ってきた。


「スキルの話? 大した内容にならないと思うけど、なにかあるのか? 暇だからいいけどさ」


 今までとは違う真剣な表情に、レリアーノは不思議そうな顔をしながら頷く。


「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。茶飲み話だと思ってくれていいから。さあ行くわよ」


 ルクアは軽く笑いながらレリアーノに大量の荷物を押し付ける。


 普段と変わらないルクアの態度に、荷物を持ち直しながらレリアーノは苦笑して後を付いていった。


◇□◇□◇□


「荷物はそっちのテーブルに置くといいわ。とりあえずお茶を用意するから座ってなさい」


「じゃあ失礼して」


「小難しい言葉を知っているじゃない。普段の言葉でいいのよ」


 荷物を置いたレリアーノが座って物珍しそうに見渡す。


 道具屋のバックヤードであり、普段はここで食事や帳簿を付けているとの話を聞きながら、なぜ急に店に呼ばれたのか確認する。


「俺のスキルで気になる所があると言ったよな? 教会で何度も確認したし、自分で色々と調べたりしたけど何も分からなかったし、変わらなかったよ」


 鍛えようとしたが駄目だったと、ため息混じりに話しているレリアーノに、ルクアは奥から持ってきた水晶に魔力を流し始める。


 突然、水晶を用意したルクアにレリアーノが何事かと眺めていると、普段とは違う表情を浮かべたルクアが静かに話し始める。


「いい? レリアーノ。この水晶はスキルの詳細が分かるアーティファクトなの。『なぜ、そんな物を持っているのか?』と顔に書いてあるわよ?」


「それもあるけど、なぜそこまで俺に?」


 レリアーノの疑問はもっともであった。


 この世界は弱肉強食が基本であり、仲間や家族には一定の愛情や親切心を出すが、赤の他人にここまで親切にされる覚えはなかった。


「ふふ。そうね。まず単純にあなたが良い奴で気に入っていたこと。レリアーノは私の希望を極力聞いてくれたよね? 『当たり前だ』と思っているかもしれないけど、長年生きた私からすれば珍しいことなのよ」


 そう言って、水晶を眺めながら呟くルクア。そして水晶からレリアーノに視線を向けると、ユックリと微笑んで話を続ける。


「それに、あなたのスキルに興味があるの。長らく様々なスキルを見てきたけど、私の勘が未知のスキルと告げていたの。そしてそれは間違ってなかったわ」


「長年生きたと言っているけど、ルクアって若いよね? それに俺のスキルが未知のスキルだって?」


 ルクアの言葉は分かるが意味が分からないとレリアーノの顔が百面相のようになっていた。


 それを見て、ルクアは大きな声を出して笑う。


「なんて顔をしているのよ。いい? あなたの人柄が気に入って、親切にしていたら珍しいスキルを持っている気がした。これから説明するスキルは私が物凄く気になるスキルなのよ。それと女性に年齢は聞くものじゃないわよ。ふう。これでいいかしら? じゃあ、早速スキルの詳細を調べてみましょうね」


 自分の言いたいことは全て伝えたと真剣な表情にり、ルクアはさらなる魔力を水晶に注ぎ始める。


 そしてレリアーノに水晶に触るように伝えた。


 恐る恐る水晶に触るレリアーノの脳内に突然スキル名が現れ、詳細な情報も表示されるのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ