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追放されたが、それでも収縮拡張スキルで英雄へと駆け上がる  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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レリアーノは最終試験に向かう

「準備はいいか? 問題なければ出発するぞ」


「もちろん! いつでも行ける」


 ユリアーヌの問いかけに、レリアーノが気合いの入った表情で頷いて答えた。魔物退治に向かうため、屋敷の前に集合しているのは、レリアーノとルクアであり、ユリアーヌとマリウスも装備を調えてたたずんでいた。


「リア兄ちゃん……気を付けて行ってきてね」


「ああ。お土産を楽しみにしておいてくれよ」


 夜が明けていない早い時間であるにもかかわらず、シャルが眠い目をこすりながら見送りに来てくれていた。シャルを支えるように母親のレーナもおり、母娘揃っての見送りに、レリアーノは少し恥ずかしそうにしながらも元気よく笑顔で答える。


「ほっほっほ。ではレリアーノの成果を見せてもらおうかのう。少しでも甘いところがあれば、あと半年は訓練じゃぞ。それを忘れんようにな。2人で冒険者としてやって行くには厳しい世界じゃぞ」


「ああ、そうだな。普通は4人から6人でチームを組む。お前等も早めに仲間を探せよ。前衛を3人は確保した方がいい。レリアーノは前衛を兼ねながら支援系もいける。ルクアの指示に従っていれば間違いないからレリアーノは前衛と後衛を兼ねて臨機応変に動けばいいが、それを差し引いても仲間は2人は必要だな」


「あら。リーダーとして評価してくれるのね」


 マリウスの後に続くようにユリアーヌがレリアーノに今後のアドバイスをしていると、ルクアが会話に参加してきた。そんなルクアはいつものように身軽な格好をしており、大きなリュックを担いでいて、見た目はポーターのようであった。


「ああ。この何日かでルクアの性格と実力は大体把握した。敵には回したくはないな。爺ちゃんくらいだぞ。ルクアとためを張って言い合っているのは」


「ほっほっほ。ルクアはエルフだけあって知識が豊富じゃ。だてに年を取って――」


 マリウスの言葉を最後まで聞かずに、ルクアは手に持っていた杖を振りかざして無言で振り下ろした。風を切るような鋭い音が鳴り、マリウスの頭上を襲う。寸前のところで飛びのいてかわしたマリウスが叫んだ。


「なにするんじゃ! 今のはしゃれにらなんぞ!」


「うるさいわよ! なに年齢の話をしようとしているのよ。エルフにとって年齢の話はタブーなのよ。前にも言ったわよね」


 ルクアがエルフであるのは、屋敷に到着してから数日でルクアが自ら告白していた。最初は驚いたゲールハルト達だったが、すぐに受け入れる。珍しい種族ではあるが、この町にも何人かおり、また姿を偽って暮らして者も多いと知っていた。


 そんなエルフであるため、ルクアが隠匿魔法を使って姿を偽っていても不思議ではなかった。シャルなどは物語で出てくる種族エルフだと知って、目を輝かせていたがそれだけであり、他の者も特に気にした様子はなかった。


 エルフだからと特別扱いをしない一同にルクアは安堵し、宴会をしていたある日、隠蔽魔法を解除して普段は見せない真の姿を見せていた。初めてルクアの姿を見た一同は、その美しさに唖然、憧憬、驚愕の表情を浮かべる。


 レリアーノは呆けたような表情を浮かべて、真っ赤になっていた。そんなレリアーノの表情にルクアが微笑みを浮かべ、さらに真っ赤になっていくのをシャルは頬を膨らませ、マリウスは苦笑を浮かべ、他の一同も微笑ましそうに見るのだった。


「ルクアがエルフなのは他言無用なんだから、あまり大声で言うのはどうかと思うぞ」


「分かっておるわい。この屋敷だからこそ話が出来るんじゃろうが。まあ、しばらくはルクアの姿を見られんのは寂しいじゃろう。年はともかくあの美貌じゃからな。そうじゃ。この試験が合格したらルクアに頼んで二人きりで、あの姿で話をする機会をやっても良いぞ」


「ななな、なにを言っているんだよ! ほら、もう行くぞ。準備は整っているんだろう! シャルは心配しないで待っててくれよ!」


 にやにやと笑いながら合格祝いの一環じゃと伝えてくるマリウスに、レリアーノは顔を赤くすると誤魔化すように出発するように伝えるのだった。


◇□◇□◇□


「そろそろ気合を入れなおせよ。そろそろ魔物がやってくるぞ」


 斥候役の冒険者から報告を聞いたユリアーヌがレリアーノに声を掛ける。ユリアーヌのパーティーは6名編成であり、前衛3名と後衛3名の理想とされる人数であった。


 ユリアーヌの言葉にルクアが反応する。彼女自身も精霊魔法を使っており、索敵を行っていた。生命のある者であれば検知できる魔法であり、森に生きる種族として誰でも使えた。ただ、アンデッドや魔法生物など生命を検知できないデメリットがあったが、この場では問題なかった。


「言われなくても大丈夫よ。それにレリアーノは冒険者として過ごしていたのよ。戦闘はしてなくても、その辺りの油断はないわ。そうよね?」


「ああ。今まで違って戦闘もするんだ。油断はしない。でも、ちょっとだけ時間が欲しい。……。……魔力量を調整。……対象を把握。『身体強化!』」


 レリアーノがこの場にいる全員に補助魔法である身体強化を掛ける。事前に話を聞いて休憩中に試していたが、実際に発動してホッとするレリアーノ。対象となったユリアーヌの仲間たちから、改めて感嘆の声が上がる。


「おお。やっぱり凄いな。身体が軽くなった」「本当ね。これだけの人数を同時に補助魔法をかけられるなんて優秀じゃない」「リーダーを首にしてレリアーノを入れようぜ」「ダメだって。ルクアが睨んでいるぞ」


「おい! 俺を首ってどういう意味だよ」


 仲間の一人が呟くように言った言葉にユリアーヌが笑いながらツッコみを入れる。緊張感がないように見えるが誰の目も油断しておらず、リラックスをしているのが分かった。


「これが高ランク冒険者の実力よ。しっかりと見て参考にしなさい」


「分かっているよルクア。爺さん。今日は杖を使うのは禁止なんだよな?」


「ああ。そうじゃ。補助魔法までは認めるが、儂の指示があるまでは攻撃魔法は禁止とする。安心せい。手に負えない魔物が出てきたら儂が殲滅してやるわい」


 今回の魔物退治は3日に渡って行われる。マリウスから初日は剣技を中心に見ると言われており、レリアーノは緊張感をもって頷くと汗ばむ手をズボンで拭きながら剣の柄を何度も確認するように握っていた。

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