29 ヒノマル国のお姫様
貴族や城の関係者達はヤヨイが嫌がったため、簡単な謝罪をしてその場からいなくなっていった。
突然ヤヨイが姫だとか言われても全然実感がわかない。
ヤヨイ自身もバレてからも変わった様子が見えない。
「有名なんだなヒノマルって」
ヤヨイがいつも通りの飄々とした様子で言う。
「ヤヨイ……本当に、お姫様なのか?」
ヤヨイはしかめっ面で俺を見た。
「産まれたのがそこだっただけだ、望んでそうなったわけじゃない」
嫌がってる……?
ヤヨイはヒノマルの姫だったことを良く思ってなかったのか。
ん? ナイナの顔が青ざめている。
「大丈夫かナイナ?」
今にも泣き出しそうな表情で震えてる。
「まさか、ヤヨイ……いや、ヤヨイ姫様がヒノマルのご出身だったなんて……」
ヤヨイの事、ナイナも知らなかったのか、そうだよなさっきの貴族も知らなかったくらいなんだから。
「今まで通りでいい、ヤヨイ姫なんて言われるのはごめんだ……」
ナイナは汗を拭っていた、そうとうな動揺だったみたいだ。
「今まで通りって言われてもこんな事知ってしまうと、ちょっと意識してしまいますけど……が、がんばります……」
「お茶を飲むんだナイナ、ほっとするぞ」
「今だけは、飲みたい気分です……」
何も変わらないヤヨイのトーンにナイナは少し緊張が解けたような感じはする。
「ところで、なんでヒノマルってだけであの貴族は急に態度が変わったんだ?」
自分の国のことだが、ヤヨイは城の者達が慌てていた理由がわかってないようだ。
でも確かに……
ヒノマルってここから遠く離れた島国だ、あまり外と関わりを取ろうとしない国だって言うのは知ってるけど、その姫ってだけで、そんなに貴族達の態度が変わるものなのか?
「ヒノマルの人に向けてヒノマルについて説明するっていうのも不思議な気持ちですが……」
「国の事情なんて全然聞かされたこともないからな、他の国からどう思われているかなんて考えたこともなかった」
「ヒノマル国は、鉱物がよく取れるんです」
「ああ、確かに採取が盛んだったな」
「魔導石や、それよりもさらにすごい石も取れるみたいで、ヒノマルは色々な国から貿易を交渉されているのですが、あまり上手くいってないようなんです」
「そうなのか、仲良くすればいいのにな」
「そうなんですけどね……」
ナイナが苦笑いした。
なんだか、ヤヨイは本当にヒノマルの対外事情とかを何も知らないみたいだ、話を聴いてる姿を見ていてもとても姫様だなんて思えない……
「うちの国の王もヒノマルと交渉をしていて、うちは割と上手くいっているみたいだと言うことは聞いたことがあります」
なるほどな、ちょっとわかってきた。
ヤヨイはまだ不思議そうに話を聴いている。
「そこに来てのヤヨイがヒノマルのお姫様だなんて話がだったので……こんなにバタバタしてしまったみたいですね」
「……」
ヤヨイは黙り込んだ。
黙ったまま部屋を出て行こうとした。
「ヤヨイ、どこへ?」
まだ外はざわついてるかもしれない、下手な行動はしない方が安全だ。
「変な扱われ方されるのは嫌なんだ、王に頼んでくる」
「ちょっ、ちょっ、ちょっと! 待て待て待て! さすがにそんな簡単に話できるようなものじゃないだろ、気持ちはわかるけど」
「そうです、今は無茶な行動は避けるべきです」
ヤヨイがプイッと横を向く。
「……不満だ……」
拗ねてしまった……
この大会早く終わってくれないかな……これ以上揉め事になるのは勘弁だ……
「おやおや、バカそうな面をしてると思ったら知ってる奴じゃないか」
急に声をかけられた、次から次になんだ今日は……しかも聞き覚えのある声だ……
「やめろ、ヅィリィさっきの騒ぎを聞いてなかったのか」
ヅィリィ……今、別の男の声がさっきの声の奴のことをヅィリィといった。
「あっ……」
声の方を向くと、魔導師ギルドのソウルガンドのヅィリィが嫌味な顔をしてこちらにきた。
なんでこんな所にこいつがいるんだ?
ヅィリィを制止した奴は初めて見る、前にはいなかった奴だ。
優男で、さわやかなヅィリィとは真逆な雰囲気の男で、前と同じようにヅィリィと隣の優男ともに黒服に身を包んでいる。
「魔導師ギルドがなんで剣士の大会に来てるんだ?」
ヅィリィが俺の質問にニタニタと笑っている。
それを無視して、ヅィリィの隣にいた優男が話し出す。
「魔導師ギルドと言ってもな、我々は大きいギルドだから色々な奴がいる、中には剣術をかじってる奴もいるんだ」
普通に答えてくれた。
ヅィリィと一緒にいるのにこの人はいい奴そうだ。
「ふん……この大会は我らがソウルガンドが頂く」
「そうだ! お前、ヤマトの事を知ってたな!」
ヤヨイが思い出したかのようにヅィリィに話しかけた。
ヤマトって、ヤヨイが探してるって奴のことか、同じ国出身って言ってたってことはそのヤマトっていうのもヒノマル出身なのか。
ヅィリィはヤヨイの問いかけに意外そうな顔をした。
「なんだ、その関係があってこの大会に参加したのかと思ったら違ったのか」
その関係? ヅィリィは何を言ってるんだ……?
「どう言うことだ、この大会とヤマトになんの関係がある?」
ヤヨイの問いかけにヅィリィはニヤニヤと笑いだす。
「この大会の賞品を知らないのか?」
また、ヅィリィが嫌がらせをしようとしたのに隣の男が答えてくれた。
この大会の賞品って? そんなの全然知らないぞ……
「確か、名刀オロチっていう名前だったような……」
ナイナが賞品を知っていたみたいだ。
「で、その刀がなんだっていうんだ?」
ヅィリィは理解の悪いヤヨイに苛立ち出した。
「なんで、そんなことも知らないんだ……」
ヅィリィの態度も構わずと隣の優男が再度話しだす。
「オロチはヤマトの使用してた刀だ」




