第五話
第五話投稿です。結局またちょっとグダって物語があまり進んでない……。
今回は、新たに一歩前進したことと魔法に触れます。
カエデ先生の下で読み書きを習って一週間。仕事もしながら、早朝にカエデ先生の屋敷に行って勉強をするのは、最初は少しきつかったがすでに慣れてきていた。子供嫌いという割には、俺に優しく丁寧に、そしてわかりやすく教えてくれた。その甲斐あって、文字を読むのは完璧にできるようになっていた。書く方はと言えば、まだたどたどしくぎこちないため、完ぺきとは言えない。それでも仕事にある程度生かせるくらいには書けるようになってきていた。おかげでできる仕事も増え、今では孤児の中で一番稼いでいる。
今は、勉強も仕事も終えて暇な時間になったので、文字を読むのに慣れるために自分のベットに座って本を読んでいた。
今読んでいるのは童話だが、その他にも魔法に関する本が俺の横に置いてある。これらの本は、カエデ先生が持っていたものを、本人の許可を得て借りているものだ。童話は、昔あった出来事について書かれているものが多いので、歴史に少しでも触れることが出来るのと、あとは、読む訓練にはちょうどいいと言う理由からチョイスしたものだ。魔法の本に関しては、単純に魔法が使えたら生存率上がるし、何よりも興味があったので選んだ。
童話の内容は、この世界の神話に関するものだった。その内容を簡単に説明すると、大昔に魔神との大規模な戦争があり、この世界が滅亡しかけたが、召喚魔法で異世界から勇者を召喚し、なんとか勝利をおさめ世界に平和が訪れた…というものだった。
「勇者を召喚……」
歴史を知るついでに何かヒントを得られればと思って選んだ本だったが……。いろいろ気になることもあるが、何よりも気になったのは異世界から勇者を召喚したというものだ。いきなり大きなヒントを得られたことに喜び半分、驚き半分といった具合で、ある意味拍子抜けするような結果に微妙な気分になってしまった。
だが、この情報を得られたのは大きい。異世界からの召喚、それは俺があの時に遭遇した現象がそれであったことを証明する何よりのヒントだった。まだ¨誰が¨¨何のために¨というのは分からないが、読み書きの先生を得られた時と同じくらいの喜びが俺の中にはあった。また一歩前進したという喜びだ。
魔法であるなら、魔法研究をしているカエデ先生に聞くのが一番だろう。彼女なら、何かわかるはず。明日、聞いてみよう。
童話の本はこの辺にして、次は魔法の本を読もう。タイトルは『初級・魔法の発動と練習』と書かれている。
「魔法とは、術式によってこの世界に現象を引き起こすもので、術式を構成し魔力を流すことで発動すると……」
読めば読むほど、興味深いことが書かれており、俺の知的好奇心を刺激する内容だった。
「魔法を発動させるのに必要なのは術式と魔力だが、魔力操作がうまくできなければ、不安定化しそもそも発動しない」
なるほど……魔力操作がうまくできないと魔力の流れが制御できず、必要以上の魔力が流れ込んで術式が崩壊したり、魔力を無駄に消費してしまったり、逆に少なくて魔法が発動しないなんてことになるのか……。そもそも、魔力を術式などに送るためのパイプが存在し、魔力制御ができたとしてもパイプが細ければ発動に時間が掛かるか発動しない。太すぎても制御ができていなければ無駄に放出してしまうだけだと。理想は、太いパイプがあり、魔力を完璧にコントロールできている状態が最も望ましいものである…か。
「練習法は……お、あったあった」
ある程度の魔法の説明の後、魔力制御の練習法とパイプの鍛え方が書いてあった。
「魔力を全身に巡らせ、常に一定の量で安定させる。これで魔力制御は鍛えられると。パイプは何度も魔力の放出を繰り返していれば自然と鍛えられるからいいとして、問題は魔力量か」
俺ってどの程度魔力があるんだ?本によれば、多かれ少なかれ魔力は誰もが持っているものと書かれているが、魔法を使うには才能に左右される場合が大きいとも書かれている。そもそもの話し、俺が魔法使えなきゃ意味ないな……。一応、【身体強化】といった、【無系統】魔法は才能関係なく使えるらしいが。
読み進めていくと、魔法が使えるか判別するための項目が出てきて一先ず安心した。そこに書かれていたのは一つの魔法陣のような図形と発動する魔法の説明だった。ようは、魔法を使ってみて発動しなければ才能無しってことか……確かにそれならはっきりとわかるわな。
「よし、さっそく……」
と思ったが、いったん待ったを自分にかける。試そうとしている魔法は指先に小さな火を灯す魔法だが、流石に室内でやるわけにはと、一旦とどまった……が。
「……」(チラッ)
周りをよく確認……
「…よし!誰もいないな!」
とどまったが、わざわざそれを試すためだけに外に出て戻ってくるのは面倒……もとい、非効率的と断じてその場で試すことに。単純に、知的好奇心が勝っただけともいえるがな。
だが、火を使う魔法はさすがに危険なので別の魔法を試すことにした。面倒とはいえ室内で火を扱う程バカではない。
そこで選んだのが風の魔法だ。単純にそよ風を吹かすだけのものだが、室内で使っても危険がないのでこれにした。水でもよかったが、最悪の場合ベットを水浸しにするという可能性を考慮して風にした。
本来は、術式を自分で構成し発動させるのが普通らしいが、これは手をのせてを頭の中で発動するように念じればいいだけのようだ。
緊張の一瞬、魔法陣に手をのせて、強く『風よ吹け』と念じる。すると、
フワ
「!……おお」
体から何かが抜けた感覚の後、わずかにではあるが風が吹き、毛布を少しだけ浮かせた。
フワ フワ
「おお…おお…!」
その後、俺は舞い上がってしまい、他の魔法も試した。『室内では危険』という考えはこの時、既に無くなっていた。
「……ふむ、こんなもんか」
納得して満面の笑みを浮かべ、結果に満足する。結局他の魔法も全部試してしまった。舞い上がってしまったとはいえ、冷静さをなくしてたような気がする。反省。
一通り試した結果、この本に書かれている魔法はすべて使えた。どれも、効果はそこまでのものではなかったが、それでも、発動したので個人的には満足している。
すでにこの本は読み終えており、俺は非常に続きが気になっていた。初級ということは中級・上級とあるはず。明日、召喚魔法のついでにその辺の本も借りよう。カエデ先生に教わると言う手もあるが、ただでさえ読み書きを教えるのに時間を割いてもらっているんだ、せめて、読み書きが完璧になるまでは、この話はしないことにしよう。
思ったよりも早く読み終わったが、ちょうどいいので、魔力制御の練習とパイプの強化をしようとおもう。魔力量に関しては、魔力制御や魔力の放出をやることで増やすことが出来ることがわかったが、魔力量を増やす訓練は、ひたすら消費するのが一番早く効率が良いと本にも書かれていた。そこで、まずはじっとした状態で魔力制御の練習をしながら放出を行い、魔力制御・パイプ・魔力量を鍛える。魔力制御がある程度安定するようになったら、今度は体を動かしながら同じことをする。それに慣れれば、勉強や仕事をしながらでも訓練ができるだろう。で、それ以外の時間で暇を見つけてはただ放出するのではなく、本に書かれた魔法をひたすら使って消費しまくる。これらをしばらく続ければ、それなりに鍛えられるはずだ。
善は急げだ。そうと決まったのであればさっそくやってみよう。
それから俺は、魔力制御が安定するまで訓練し続けた。途中、シスターから手伝いを頼まれたり、他の孤児の面倒を見たりしたが、そのころには動きながらでも、安定して魔力制御ができるようになっていた。どうやら、イメージ力が大事らしく、元々持っていた想像力の豊かさのおかげで早く身に着けることが出来た。その後は、夜までぶっ通しで訓練し続けたのだが、途中、急激な眠気に襲われ仕方なくいつもより早く眠りについた。
後日、俺はカエデ先生にこっぴどく叱られることになるのだが、この時の俺にはそんなこと、わかるわけもなかった。
お疲れさまでした。
今回は、主人公が新たに情報を得たり、魔法を使ってみたりした回でしたが、うまくかけていたらいいなァと思っています。正直、何回書いても、どういう物語を書いてもいつも自信がありません。こればかりは数をこなしてうまくなっていくべし…と、知り合いも言っているので、数こなして頑張ろうと思います。
次の投稿も、気長にお待ちください<(_ _)>