プロローグ
久々の投稿にドキがムネムネで正直ハートがやばいことに……。
異世界転生する主人公にはもうおなか一杯かもですがよろしくです!
夕陽差し込む生徒会室にて、三年となり卒業を控えている俺は次の生徒会長への引継ぎのために最後の作業をしていた。
「ふぅ、こんなものか」
そう言って一仕事終えた俺は、肩や首を回しながら体をほぐす。
身体からはぽきぽきと心地よい音が鳴り仕事が終わったのだと実感できる。
「はい、お疲れ様です会長」
体をほぐしていると、一緒に作業をしていた少女が俺に声をかけてきた。
彼女の名前は蓮川藤乃。俺と同じ生徒会に所属する生徒で、次期生徒会長だ。
今日は俺にとって最後の生徒会の仕事ということで残って手伝ってくれていた。
他の生徒会メンバーは、仕事をすでに終わらせ帰宅している。
手伝ってもらおうと声を掛けたのだが……なぜか断られた。解せぬ。
「会長はやめい、……俺はもう会長じゃないんだ。先輩でいい」
「すみません、いつもの調子が抜けなくて」
そう言って少し照れるように笑う蓮川は、見た目の愛らしさもあり少しドキッとしてしまう。
蓮川は他の女子と比べると少し背が低く、幼い顔立ちをしているのでつい頭を撫でてしまいたくなる、というか一度撫でたことがある。その時はすごく怒られたのでなるべくやらないようにしているが、気が付くと撫でてしまっている。そのたびに怒られているのでグッとがまんだ、がまん。
しかし、怒られて手を離してるのに、離したら離したでさらに不機嫌、というかしょぼくれるのはなんでだ?いまだに謎だ。
「おいおい、これからは生徒をまとめる立場になるんだ。しっかりしてくれよ、新生徒会長!」
少々照れながらもそう言ってやると「はい、頑張ります!」と元気に返事をする蓮川。
再度撫でたくなる衝動が出るが、これまたグッと我慢し、帰り支度をして蓮川と共に生徒会室を出る。
「今日はありがとう。また明日な」
俺は生徒会室のカギを戻さなければならないのでその場で別れることになる。
「かい……先輩!」
背を向けると同時にかけられた言葉は別れの挨拶というよりは、引き留めようとする感じがしたのでいったん立ち止まり振り返る。
「ん、なんだ?」
要件を聞こうと思い聞き返すと、蓮川は何か言いたそうにしつつもうまく言えないような感じで顔を少し赤く染めながらもじもじとしている。
そういえば、作業中も何か言いたそうにしていたな。
ハッ!?まさかチャックが全開になっているとかか!?
今思えば、顔も少し赤かったような……調子が悪いのかと思って声をかけたが全力で否定された上に顔も背かれていたような……。
確認してみるが、社会の窓はちゃんとしまっていた。
だとしたら他に何が……。
うんうん考えていると、蓮川は決心したように「よし!」と小さく声を出してから俺に向き直る。
「明日の放課後、お別れ会の前にお話があるのですが、お時間よろしいでしょうか?」
話?今じゃダメなのか。俺は別にいいのだが。
「別にいいけど……今じゃダメなのか?」
「い、今すぐはちょっと……心の準備が(ごにょごにょ)」
一応聞くと、なにやらごにょごにょと喋り出して最後の方が聞こえなかった。
「ん?なんだって?」
「と、とにかく明日です!明日の放課後、忘れないでくださいよ!?」
「お、おう。わかったよ…」
まるで果たし状を押し付けるかのごとくな勢いに思わずたじろいでしまうがなんとか返事をする。
「それではお疲れさまでした!失礼します!」
そのままの勢いで挨拶をすると、蓮川は脱兎のごとくその場を走り去ってしまった。
俺は「廊下を走るなよぉ……」と小さく声を出すがもうすでにいない蓮川に届くはずもない。
なんだったんだと思いつつも、職員室にカギを返却した俺は昇降口へと向かう。
昇降口から外へ出ると、ギリギリ夕陽の明かりがあるものの暗く、一人で帰るには少々寂しさを感じる。
同時にあることに気付き、やっちまったと自分を責める。
「暗い道を女子一人で帰すのはまずいか」
気付くべきことだったが、疲れていたというのと蓮川の勢いに押されてすっかり失念していた。
無理だとは思うが……一応急ぐか。
いつもよりも歩調を速くして校門まで行くと、そこには見慣れた後ろ姿があった。
「蓮川…まだいたのか」
まさか追いつけるとは思っていなかった。けどよかった。俺のせいで帰りが遅くなったのに、蓮川に何かあったら申し訳ない。
「蓮―――」
「いいから来いって言ってんだよ!」
そのまま近づき声を掛けようとする俺の声を、かき消すように怒号が辺りに響き渡る。
その声に俺は聞き覚えがあった。
「勝!」
まさかの人物に思わず声に出してしまった。
すでに近くまで来ていたため俺の声は勝に届いていた。
勝は俺に気付くと顔に似合わない下卑た笑顔を浮かべて俺を見る。
「よぉ、兄貴。こんな時間まで残って作業なんて、生徒会の仕事は大変なんだなぁ」
そう言った勝の手には蓮川の腕が握られており、どこかへと連れ去ろうとする途中のようだった。
周りをよく見れば取り巻きと思しきガラの悪い連中が勝の周りに陣取っており、蓮川の近くには先に帰ったはずの生徒会メンバーがいた。そのうちの一人は殴られたのか顔に痣が出来ており座り込んでいた。
途中から来たから状況を完全に把握できていないが、さすがに問題が起こっているというのは分かる。
先ほどの会話でわかる通り、目の前で蓮川の腕をつかんでいる男と俺は兄弟だ。
義理の兄弟だが、俺と勝は親が兄弟のいとこ同士で幼いころからの付き合いだ。
だから、勝の性格はよく知っている。何故こんなことをしているかも…。
「勝……」
「兄貴、邪魔しないでくれよ?これは俺と藤乃の問題なんだよ」
「あなたに名前で呼ぶのを許した覚えはありません!離してください!」
「あぁ!?ウッセェ!いいから黙って俺とくればいいんだよ!」
「イタ…!離して!」
「まさ―――」
蓮川を助けようと腕を伸ばしたその時。地面から放たれた光が俺の眼を襲った。
「な、なんだ!?」
「何がどうなってやがんだ!?」
周りが騒然とする中、俺は自分の眼を庇いながら蓮川がいるであろう場所に向かって手を伸ばす。
訳の分からない状況に、俺は嫌な予感を覚えて一番近くにいた蓮川を守ろうした。
しかし、蓮川がいると思った場所には何もなく、俺の手は空を切った。
明らかにおかしいこの状況、ただでさえあまり素行がよろしくない弟が絡んできているのだ。
守らなければと思ったのに、つかんだのはただの空気だった。
もう一度腕を伸ばしたりがむしゃらに腕を振ってみるものの、俺の手には何かが当たる感触は一切ない。
それどころか、気付けば周りから音が一切しなくなっていたのだ。
あまりの状況に混乱しつつもなんとか冷静になろうとするが、次に起こった現象に俺は冷静になろうとする考えすら失ってしまった。
足から地面の感覚がなくなり、俺は下へと勢いよく落下していた。
凄まじい風圧が俺の全身を襲う。あまりの凄まじさに全身が大きく揺さぶられてどっちが上か下なのかも判断できない。
かろうじて回復してきた視界を頼りに自分の置かれている状況を確認する。
「な、……にィ!?」
それはあまりの光景だった。
気が付けば消えていた光の後にあったのは一面に広がる青と、一瞬見える緑やその他細かい色だった。
大きく広がる青、時々見える他の色。さらに、全身を襲う風圧。混乱していてもわかる。
俺は今大空高く飛んでいて落下しているということに。
「クッ……ソォ!」
もはや喋っている余裕などない。一刻も早くどうにかしなければならない!
しかし、鳥のように翼があるわけでもないのだ。パラシュートもないこの状況、もはやどうすることもできるはずがない。
ふざけんな!こんな訳の分からん場所で死んでたまるか!
考えるものの、何一ついい考えなど浮かばない。背中から翼でも生やさない限りもはや助からない。
俺は……死ぬのか?
死を覚悟したせいだろうか、地面が近づくにつれて、逆に俺の頭は冷静になっていく。
見える景色も変わったような気がする。まるでスロー再生しているかのように景色がゆっくりと流れてゆく。
同時に俺の頭の中では、今までの記憶が高速再生されていた。
その中の大半はつらいことだらけだった。
小四の時に事故死した両親。父が経営していた会社を横からかすめ取るように奪った義理の父。
勝に継がせ、俺には財産を一切渡す気などなかっただろうな。俺の扱いは、あの家では良くなかった。
疎ましくすら思っていたはずだ。けど、表向きは顔のいい義父は俺を捨てることはしなかった。世間体を気にしただけだろうが、一応ある程度の世話だけはしてくれていた。しかし、居心地は良くなかった。
速く独り立ちしようと頑張れば頑張るほど疎まれ、つらかった。だが、これを乗り越えれば自由になれる。それに、信頼できる仲間もいる。そう考えれば耐えることは出来た。おかげで忍耐力、我慢強さは誰にも負けないほど強くなった。
あと少しで…卒業したらあの家を出て自由になれると思ったのにな……。
思い出すほどにつらいことが多かったと思う。けれど、楽しいこともあった。
満足したと言えば嘘になる。しかし、つらかった分を補ってくれた仲間たちがいたから、まぁ悪くなかった思える。
もう地面も近い。俺はもう死ぬ。
最後に心残りがあるとすれば、蓮川のことだ。
あの後蓮川はどうなったのか、蓮川の話って何だったのか、蓮川の事を考えると色々出てくる。
もちろん他の生徒会メンバーの事も心配だが、最初に考えたのは蓮川の事だった。
今思えば、蓮川に支えてもらった場面が多かった気がする。正直感謝してもしきれない。
蓮川にちゃんとお礼を言いたかった。
蓮川をもう一度撫でてやりたかった。
蓮川ともう少し一緒にいたかった。
蓮川の事ばかりだな、心残りは。
「……あれ?蓮川の事ばかり出てくるのって……それってつまり俺は―――」
最後まで言い切る前に俺の言葉は途絶える。
衝撃も、痛みもない。死んだと認識する間もなく俺は地面にたたきつけられバラバラに砕け散った。
お疲れさまでした。いかがだったでしょうか?
文章もなにもかも下手で正直伝わりにくい部分ばかりだったかもしれません。
少しずつ勉強してやっていこうと思います。
投稿ペースはやはり遅いと思いますが気長にお願いします<(_ _)>