六話 ムべリンガ
かなり投稿が遅れてしまい申し訳ございません。これから先も投稿していきますのでよろしくお願いします。
突然橋が破壊されたことでシドの心の中は驚きと恐怖で満たされていた。
突然のこともさることながら敵の姿が見えないのはこれ以上のない恐怖である。いつ襲われるかわからないのだから。
恐怖に駆られたシドは全力で走り出す。
橋を渡り切ってしまえば襲われる心配がなくなると思ったからだ。まぁもっともただただ本能的に体が動いてしまったのが主な原因なのだが。
ズドン!
ズドドン!!
ズドドドン!!!
全力で走っている間も後ろから破壊の音は鳴りやまない。きっと橋は見るも無残な残骸となりはてているだろう。
しかしシドは止まらない。というか止まれない。止まったらそこで橋もろとも吹き飛ばされるのがめにみえているからだ。なおこの時シドの恐怖は極限に達していた。
こぇぇぇ
(なんでこうなるんだよ。いかにも凶悪そうな奴が追ってきているのがめにみえてるんだけど!
でもさ思ったんだけどどんな奴が追ってきているのか気にならない?ほら意外と可愛いやつかもしれないじゃん。もしかしたらそのまま友達になれるかもしれないし。ここは振り返ってみるべし!)
そしてシドは走るのを止めて後ろを振り返る。しかし運命はシドに味方しなかったようだ。可愛いどころかワニより恐ろしい顔を水面から覗かせている魚がうようよいたのだから。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、さずがに友達にはなれそうにもないかな。
めっちゃ怖-よ。なにあの凶悪そうな顔。まだコンビニの前でたむろしているヤンキーの方が可愛げがあるよ。
・・・・・・・・皆さん、期待に満ちた目でこっちを見てますよ。あれですかね、運よく足を滑らして橋から転げ落ちてくれないかなみたいに思っているんですかね。そうですか、俺は獲物ですか。俺のどこが獲物なんだ・・・・・・獲物以外みえないか。
ともかく敵の情報でも集めますかね)
「鑑定」
種族 ムべリンガ
魔素量 1600
称号 魚雷
無理激怒
ムベリンガ・・・体長三メートルの巨大魚。見た目のとおり肉食で動くものにはなんでも反応する。とても気性が荒くなにかの拍子に怒りだすと手がつけられなくなる。怒り出すとむやみやたらに物に突進して行くので非常にわかりやすい。
またムべリンガと目を合わせると標的にされて集中攻撃されるので決して目を合わせてはいけない。
(・・・・・・・・・さっきからずっと目を合わせちゃったんだけど。目が輝いてたのは獲物を見つけたから?えっ、じゃあなに、俺これから集中攻撃されるの?さっきのは集中攻撃じゃなくて?)
ブオン
シドに向かって高速でムべリンガが接近する。首を傾けることで紙一重でムべリンガの突撃を躱す。
(速い!なんとかぎりぎり躱せたがこれが続くとさすがに厳しいか。橋を軽く破壊する突撃をした後でもなんともなさそうにしているからよほど体が頑丈にできているんだろう。こいつらにダメージを与えるためには長剣が最適だな。リーチが長いし威力もでる)
シドはマジック袋からミスリルの長剣を取り出した。そのまま突進してくるムべリンガに頭から一気に縦方向に剣を振り下ろす。
ズドン!!!
何とも言えない重々しい感触が手に伝わり頭をかち割られたムベリンガは大きな音を立てて沼へ沈んでいった。
さらにムべリンガの猛攻は続く。
(あの巨体が猛スピードで突っ込んでくるのには本当に勘弁してほしい。なんかまるで魚雷を相手にしているみたいだ。手が痺れて剣を振り続けるのが辛い!)
・
・・
・・・
「攻撃が止んだ?」
さっきまで怒涛のように突撃してきたムべリンガが突如として大人しくなったのだ。
(どういうことだ?さっきのとは打って変わってまるっきり静かになってしまった。さっきの様子からして諦めたとは考え辛い。そうなると可能性があるのは・・・・・・罠)
よく見るとムべリンガが橋の左右に展開していた。
(そういうことか。一方方向から左右同時に攻撃するように俺を包囲したのか。後ろの橋を破壊されたら俺は橋の上で孤立することきなる。さっさと退却しますか)
ムべリンガは左右同時に突撃してくる。
ズドドドドーン!
(こえー。さっきまであったはずの足場が一瞬で消え去る。全力で走っているけど追いつかれる!オラ、もっとがんばれ俺の足!このままじゃあの殺人魚雷に粉砕いや、爆散させられるぞ!)
走った所は破壊され轟音が轟いているなかシドは一心不乱で走り続ける。いや、たぶんそんな大したことじゃなくてただ単に怖かっただけの様に見えるが。
そうこうしている内についに橋の終わりが見えてきた。しかし油断は大敵。ここからのシドの判断によっては橋の終わりじゃなくて人生の終わりになるかもしれないのだから。
(橋の終わりまであと三十メートルといったところか。相変わらず後ろから破壊音が聞こえるよ。諦めとかはないんですかね)
「あともう少っ」
ドーン!
橋の終わりまであと五メートルというところでムべリンガは陸と橋を繋いでいる部分を破壊したのだ。なんと運の悪いことだろう。ご都合主義の欠片もない。
「クソッタレー!」
非常に汚い言葉を吐きながらシドは陸に向かって大ジャンプした。言葉が汚いのは問題だが声を張り上げたのは効果があったみたいでいつもより遠くに飛べたきがした。
「ぶふっ」
着地は最悪。顔から見事にスライディングしたシドは勢いおさまらずさらに一回転することになったのだった。
(後ろを見ると既に橋は残ってなく完全に破壊されていた。少しでも走るのが遅かったり何かに躓いたらその時点で命はなかっただろう。
ここから一つだけわかったことがある。それは・・・・・・・・・・生きててよかった)
「橋を失ってここから後ろに下がることはできなくなったか。そういえは水の補給がまだだったな。どこかに泉とかないのだろうか。汚い水があるのならきれいに浄化された水があっても不思議じゃないけど」
(前方には森が広がっている。もしかしたら木の実があるかもしれない)
デザートとの存在に期待を膨らませながらシドは森に入っていくのだった。
「さて、まずは水を探すか。未だこの迷宮に入って飲める水を見たことがないんだけど。これは単に運が悪いだけなのか?」
少し愚痴を言いながらも水を探す。
向こう側でなにか光った気がした。水が光を反射したのかもしれないと思い光った方へ足を進める。
そこへ進むと次第に自身に降り注ぐ光の光量が増えていくのを感じた。
そこは開けていて透き通った水で満たされた泉が存在していた。その水は底が透けて見えるほどきれいで逆に生命感が無いようにも感じられる。
(水は少し硬いか?軟水かと思っていたけどどちらかというと硬水に近いみたいだ。もしかしたら近くに鍾乳洞でもあるかもしれない)
水を手に入れたシドは次の目的である木の実を探し始めた。迷宮内での甘いものは優一の楽しみである。即急に手に入れなければいけない。
(しかしなかなか見つからない。第二階層の森には木のみなんて至るところにあったのにここじゃ全然見つからないから不思議だな)
第二階層ではまさに虫たちによって木の実が育てられていたことをシドは知る由もなかった。
なんとか最低限の木の実を確保したシドは次の階層へ向かうために森を抜けて第三階層の奥へ進んでいった。