二話 第一階層守護者二話
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シドは暗闇の中にいた。洞窟の中は湿っていて居心地が良いとは言い難い状況であった。
「ここの洞窟はどのくらいの大きさなのだろう」
そうやって手さぐりに洞窟の壁を伝っていると暗闇に目が慣れ始めたのか徐々に見えるようになってきた。
よく見ると奥に道が続いているのがわかる。
「奥に行く道があるのか。ここにいてもしょうがないし外に出たらまたあの狼に襲われるかもしれない。
ここは道を進むしかないな」
シドは洞窟の奥に続く道を歩いていく。
既に数十分歩いただろうか。奥越づく道はまだまだ途切れることがない。
さらに数十分歩いていくと湿っぽかった空気が乾き始めた。そしてかすかに滝の音が聞こえるようになったのだ。シドは歩を止めることなく前に進んでいく。そしてついに洞窟の先に一筋の光が差し込んだ。
シドはついに走り出した。そして一気に視界が開けた。
そこには巨大な空間が広がっていた。洞窟を向けた先は高台になっていて下に向かって無数の階段が存在している。
「す、すげぇ」
シドはその壮大な光景に圧倒されていた。巨大な空間の両脇からあふれ出す水が巨大な滝を作り出し
あたりに轟音が響いている。あふれ出した水は滝となり地にたまって巨大な池を作り出す。
池の水は底が見通せるほど透きとおっている。そして池の真ん中には真っ白な石のタイルで作られた
道が続いている。
無数の階段を下り池に浮かぶ真っ白な道を進んでいく。しばらく進んでいくと突然目の前に
巨大な扉が現れた。両脇には二体の真っ白な騎士の像が佇んでいる。
そして巨大な扉の前にたどり着いた。
「この扉はどうやって開けるんだろう」
よく見ると扉に手形がある。シドはその手形に自分の手を重ねてみる。すると手を重ねた部分がゆっくり
沈み込んだ。そうすると頭の中に音声が響く。
「汝この扉を開けるか」
うお! びっくりした。
いきなり頭の中に声が聞こえたぞ。どうなっているんだ?
「もう一度問う。汝この扉を開けるか」
そんなの開けるに決まっている
「開ける」
シドはそう答えた。
「ならばこの扉をとおるがいい」
そうすると目の前の巨大な扉は空間が軋むような音を立てて動き始めた。そしてついに巨大な扉が
完全に開く。シドはまるで何かに引き込まれるように扉の向こう側に姿を消した。
扉の向こう側は思った以上に明るかった。白い石で造られた空間が姿を現す。その空間に足を踏み入れた瞬間、巨大な扉が突如閉まり始めたのだ。
「ちょっ マジかよ」
シドは急いで引き返すが間に合わず扉は完全に閉じられた。
「間に合わなかった」
どうするこのままここにいても食糧が尽きてそのまま飢え死にだ。一日や二日ならもつかもしれないが
早く食糧を確保しないと。
シドは白い空間の先を見据える。
きっとこの先には何かいるだろう。魔獣がいるかもしれないしさっきの狼よりヤバイやつがいるかもしれない。でもきっと何とかなるはず。飢え死にするより食われて死んだ方がましだろ。まずは奥に進んで食糧を確保しなくちゃだな・・・・・・こういうときってビギナーズラックはあるんですかね。
シドは白い空間を進んでいく。しばらくすると空間の先に出口が現れた。シドは出口を通って空間を出る。目の前には小さな空間が広がっており目の前には三つの別の空間に通じる扉がる。
ここは空間と空間をつなぐ中継地点みたいな役割を果たしているのだろうか。
ここには特に用はないため通り過ぎようとすると目の前にいかにもという感じの宝箱が現れた。
・・・これは開けていいのか。こういうときってだいたいミミックかトラップでやられるていうのが
おちなんだけど・・・・・
と思いつつもつい開けてしまう。こういう誘惑にめっぽう弱いシドであった。箱を開けると<テッレレー>とすっごいゲームちっくな音声がながれた。中には小さな橙色の袋とこれは・・・・・・・手榴弾か?
なんで手榴弾?とりあえず鑑定をしてみる。
「鑑定」
マジック袋(大)・・・・・マジック袋の中で一番大きいもの。手に持てる物はだいたい収納できる。
なお生きている生物は収納不可。
手榴弾・・・・・・手でピンを引っ張ると爆発する。
うん・・・・そのままだね。異世界だから別物かと思ったけど一緒だったわ。
手榴弾って全世界共通なんですかね?
手榴弾をマジック袋に収納する
「扉三つあるけどアタリハズレあるのかな」
「右かな?・・・・左かな?・・・・・いやここは真ん中をとって中央の扉にしよう」
シドは中央の扉を開き中に入った。
中はごつごつとした岩でできていた。薄暗いうえに湿気が多くてジメジメしている。
「グギャゲェギァ」
奥からなんとも汚らしい鳴き声が聞こえる。
ゴブリンだ!ファンタジー小説の定番でいっつも主人公に最初に倒されるお決まりのやつ。
ここで来たか。ゴブリンは雑魚と相場は決まっている。ここはすぐに突破できるだろう。
こんな序盤に強いやつが来るはずがない!・・・・・・・今なんかフラグを立てた気がする。
「ゲギァ」 ゴブリンが襲いかかってきた。ゴブリンの攻撃を軽くかわして足元に落ちていた
拳程度の石をゴブリンの頭にたたきつける。
グシャと鈍い音を立ててゴブリンの頭が陥没した。頭を潰されたゴブリンは体を僅かに痙攣させたあと
動かなくなった。
「うん やっぱり弱かったな」 そう思っているとまたあの鳴き声が聞こえた。
「「「「「「「ゲギァ」」」」」」」
またゴブリンか 一、二、三、四・・・・・・・・全部で十二匹か。
シドはさっきやったことを十二回繰り返す。
「やっと終わったか」
ここにいると血の匂いにつられてほかのゴブリンがくるかもしれない。
十三体のゴブリンの死体をマジック袋に収納してその場をあとにした。なおそのあとすぐに別のゴブリンがやってきたのだがシドは知るはずもなかった。
少し歩くと岩だらけだったところに小さな広場が見えてきた。奥には出口と思われる扉があった。
出口が見えた。
ここでシドの悪い癖がでる。何も考えず扉に向かって走り出したのだ。こういう場合だいたい罠が仕掛けてあるなんてことは誰でも思いつくことだ。物事に対して安易に考えてしまうのがシドの悪い癖である。
案の定シドは罠に掛かった。
直径三メートルを超える火球がシドを襲う。
「やばいっ」
シドは咄嗟に前に転がりギリギリで火球を躱す。火球はそのまま壁にぶつかり大爆発する。
ドゴォーン
爆風によって飛ばされた石が体にあたる。けっこう痛い。
爆風によって土煙が舞い上がる。シドはすぐに土煙に紛れて岩の影に身を隠す。すると広場に例の鳴き声
が聞こえてきた。
「ゴブリンか」
でもおかしくないか。なんでゴブリンが魔法を使えるんだ?それにあの威力普通じゃない。
ここのボスキャラみたいなやつがいるのか?
次第に土煙がはれてきた。そしてついにそいつが姿を現した。そいつは漆黒のゴブリンだった。片手には
大剣を持っている。俺はすかさず鑑定を使った。
「鑑定」
種族 ゴッドゴブリン
魔素量 74659
称号 ゴブリンの神
第一階層を守りし者
化けもんだった。今までの魔物と強さが段違いだ。こいつは普通に戦ってもおそらく勝ち目はないだろう。なにか手を講じなければ。俺は魔法を使えない。ってなると肉弾戦か?いや、近づいた時点であの大剣で両断されるな。じゃあどうする?周りになにか使える物が転がっていないか。
・・・・・あった!天井に今にも落ちてきそうなつららの形をした岩があるじゃないか。あれをどうにかしてあのゴブリンに当てたい。少しでも衝撃を与えればあの岩を落とせるだろう。衝撃を与えられる物・・・・手榴弾でいけるか? よしなら作戦は俺があのゴブリンを岩の真下まで誘導する。次に手榴弾を使って岩を落下させる。それをゴブリンに当てて仕留める。うん、これでいける。よし作戦開始だ。俺はゴブ神に向かって走り出す。何とかしてゴブ神を岩の落下地点まで誘導しなければならない。
「おい、ゴブやろう」 俺はゴブ神に足元にあった石を投げつける。投げた石は運よくゴブ神の頭に当たった。自分より小さな俺に攻撃されたのが許せないのかゴブ神は憤慨している。
「ゴァァァァァァ」 こっちに向かって突進してきた。
俺は咄嗟に目標地点に向かって走り出す。ゴブリンでも神だけあって結構速い。俺は目的地点にたどり着いたときにゴブ神に追いつかれてしまった。ゴブ神が大剣を俺に向かって一閃する。俺は前回りして大剣の一撃を躱す。放たれた一撃はそのまま地面に突き刺さり地面を削りとり土煙を巻き上げる。土煙でゴブ神の視界が遮られている間に手榴弾のピンを抜き天井に向かって投げつける。手榴弾は天井付近で爆発し
岩が落下して、下のゴブ神に直撃する。
ズガァァァァン
轟音があたりに響いた。すさまじい衝撃が俺を襲う。ゴブ神は大岩に貫かれて死んでいた。戦いに勝ったことを自覚した俺は急に疲労を感じた。無自覚に体を酷使していたのだろう。さっきまで完全に存在を忘れていた扉が開き始めた。ボスキャラを倒したからだろうか?そんなことを考えつつシドは扉を通った。