教室
お久しぶりです。
「ふー、危ないところだったねー。」
なんとかレポートを間に合わせた友香が、教室の生温い暖房でじんわりとかいた汗を拭いながら言った。
「あんただけでしょ。でもほんと、よく間に合ったよね。」
「でしょでしょ?褒めてほしいぐらいだよ。」
こういうところが本当に友香らしい。私のひねくれたところを、穏やかに均してくれる。肝心のレポートの出来は、あまり良くは見えなかったけれど。
「あ、そんなことよりもさ、今日だけでいいんだけど、京子の家泊まってもいい?お願い!」
「なに?さっき言ってたのって本気だったの?」
申し訳ない話だけれど、すっかり忘れてしまっていた。レポートを焦って仕上げる友香を見ているのが面白くて。
「本気も本気だよ!ねえ、コンビニのエクレア買ってあげるからー。」
今日は勉強したかったんだけど。でも、うん。エクレアなら仕方ない。
「わかったよ、てことは晩ご飯もたべる?」
「食べる食べる!ありがとう!京子愛してる!それじゃあおやすみ~。」
まったくこの子は...と思ったけれど、気の抜けた寝顔を見ていると、叱る気にはならなかった。
けれどなんとなく、少しだけほっぺをつついておいた。