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同棲犯  作者: 松河直人
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旅行サークル

「芹沢友香、教育学部。よろしくね?」

私が所属している旅行サークルでは長期休みの旅行に向けて、数か月前からグループに分けられて活動が行われる。このサークルは人数がとても多いし、且つ私は友達も少ない方だったので、話したこともない人と同じグループになること請け合いだった。だからこそ今日の初会合は億劫だったのだけれど、さらにそこに現れた笑顔の権化にいだいた印象は、苦手だな、それだけだった。

「ほら、引いちゃってるじゃない。友香は距離感が近すぎることがあるから。あ、私は橋本京子。よろしく。」

うるさくない方の子に言われて我に返り、よろしくとだけ返す。仲良くなれそうな子もいてよかった、と心の中で思う。

そのあとも何人かやってきたけれど、典型的な文系女子大生という感じで、とてもついていけそうになかった。

そもそもこんな私がこのサークルに入っているのは、高校の時から頭が上がらなかった先輩に誘われてしまったからだ。そうでもなければ入ったりしない。


自己紹介を済ませた後、旅行先はどこにするかについて話し合っているけれど、このままでは千葉や大阪にあるテーマパークのどちらかになってしまいそうだ。まるで中高生を見てるみたいだと思いながら、面倒だから反論はしない。私は旅行するなら温泉に行ったりするのが好きだけれど、どうやらこの年代でそういう人は多くないらしい。それに私は一緒に旅行に行くつもりはない。適当に理由を付けて休むつもりだ。

「えー、でも私は道後温泉とかいってみたいなー。みかんすきだし!」

 さっき話しかけてきたうるさかった子が意外なことを言った。

「みかんと温泉関係ないじゃん!」

「温泉とかおばあちゃんかよ!」

とかなんやかんや言われているけれど、結局まさかの道後温泉に決まった。人は見た目によらないと改めて思う。その子が温泉を好きなのは意外だったし、自分の意見をきちんと人に言えるのはすごいことだと思う。

帰り際に、誤解してごめんね、と呟く。でもそれはただの独り言になって、一月の夜に溶けた。


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