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短編集

足手まといなのに勇者パーティーにいて良いんですか?!

 私には何もできない。それは良く分かっているつもりだ。

 この世界の誰もが五歳で女神様にスキルを授かるのだが、私のスキルは「足手まとい」だった。足手まといってなんだ。ああ、有る意味天職か。私はお遊戯やゲームですら皆の足を引っ張ってきたのだ。どんくさくて、馬鹿で。納得だね! ……。納得……なっとくできるかあああっ! ごらあっ! 女神は納豆食っとけ!! あ、私納豆は好きです。つか誰かが異世界なのに納豆あるのかよとか言いましたけど異世界だから有るんじゃないですか? 異世界とかファンタジーですね。

 はあっ、はあっ……。はぁ……。


 幼馴染みの私を良くいじめていた男の子が与えられたスキルが「勇者」だったのに、この格差、酷すぎると思わないだろうか?


 だが、王の命により、勇者が選ぶべし、と言われた七人のパーティーのうちに、何故かその勇者は私をパーティーに入れたのだ。意味が分からない。

 あれか、虐めてストレス発散出来るからサンドバックがわりに持ち歩こうと言うのだね?

 実際戦闘が始まると私は何のスキルも無いも同然なのに敵だけは引き付けた。

 皆が私を守らなければ私は一瞬で死んでしまう。重戦士も魔法使いも聖女も狩人も、こう言ったお話では私を追い出す役割のはずの賢者ですらも私を守る。何でじゃ? 賢者何でじゃ? っ駄洒落です。つまんないね。


 何と言う足手まとい。


 散々魔物に襲われる恐怖でお漏らしまでする始末。余りに悲惨すぎて逆にパーティーメンバー誰一人として私を批判しなかったからね。むしろ優しく甲斐甲斐しく世話までしてくれたよ。皆流石に伝説クラスのスキル持ちだからか、好い人たちなんだ。

 私が不遇に魔物に襲われてるのに勇者が非道って責める人もいなかったけど。何故だ? 賢者何でじゃ?


 ある時気が付いたのだが、このチームのヘイト管理は完全無欠だったのだ。

 敵は皆足手まといの私しか狙わない。

 勇者たちは戦略の組み立てが非常に楽だったのだ。賢者要らないんじゃ? ごめん賢者。

 魔王さえ私しか狙わない。足手まといって、実は凄いスキルだったのだ。

 例えばヘイト(敵が嫌悪して特にターゲットとして狙う存在への指標ベクトル)は全て私に向かう。敵は一切搦め手を使わず真っ直ぐに私を攻め立てる。これは作戦の組み立てを非常に容易にする。罠を私の前に張ると魔王さえ罠に落ちるらしい。勇者の推測だが。

 それだけではない。私が敵に寝返ると宣言するだけで敵陣は壊滅した。皆何故か足手まといの私を守ろうとして足元を掬われる。味方は最初から足手まといと馬鹿にしているので嵌まった事は無いが……。馬鹿にしてたんだよね? あれ? 馬鹿にされた記憶無いな。勇者には虐められたけど何故か皆微笑ましげに見てたな。

 だがまあ、敵の足には確実にまとわりついてた。


 勇者が言うには女神様のスキルは「寵愛スキル」とも言われ必ずメリットが有るものなのだとか。そうだったんだねえ。寵愛してくれるんなら名前変えようよ、とは思うが。でも私の「足手まとい」にも意味は有ったんだね……。

 足手まとい。これが絶対的チートスキルだと気付いてからは私(以外が)無双。皆がターゲットを絞ってくる敵を余裕でほふるだけで経験値を得て強くなってきた。メタルス○イムやはぐれメ○ルやメタルキ○グが躊躇なく寄ってきて逃げないのだ。しかも回避能力が高い彼らに攻撃が必ず当たる。どんくさい私を皆が守るからだ。つか勇者が私に押し寄せる魔物に背中から嬉々として剣を振るう様が私に剣を振るうように見えるんだが? ああ、こう言う虐めか。

 だが私はいつしか調子に乗っていた。皆が苦戦しているのにヘイヘイー、とか、言って敵陣に突っ込んでまで敵を挑発する。敵は激怒。勇者パーティーが背中を向けた敵の足元を掬って撃破。

 こんな風に私はチームの役にたってしまっていた。だけどさ、私何の攻撃力も、回復力も無いんだよ? こんなんで勇者パーティーにいちゃダメだよ。もっと凄い人いると思うもん!

 そう勇者に宣言した。したんだよ。

 勇者は、なのに笑っていて。


「お前は凄い奴だよ。足手まといなんて一見クズみたいなスキルでいつも恐怖に晒されているのに、それでも怖くて逃げ出そうとはしなかった。きっと、お前こそが勇者なんだろうな」


 そんな事を言うのだ。私の涙腺は崩壊した。

 それからも私は逃げる事だけはしなかった。気絶しようがお漏らししようがだ。

 何故かパーティーメンバーまで私を勇者と呼び始めた。勇者スキルの持ち主は私じゃ無いだろうに。


 そして一年後、ついには私たちは魔王を倒す。

 そして全てが解放され、私たちが王都に凱旋したその夜。


 勇者は私に話があると言って呼び出しをかけてきた。

 私は素直にてくてく勇者の元に歩いて行ったが……。

 やべえ。私なんもしてないのに普通に報奨をもらったりパーティーに出ていたご馳走や高級な美酒をガバガバ胃袋に投入したりしてた! 何と言う足手まとい! ……それはちょっと違うか。しかしだ。

 やべえ。今夜こそ勇者に虐め殺されるのか……。今までの事が、今の幸せな気分から地獄に落とすための伏線だとしたら回りくどすぎてそこまで恨まれていたのかとガクブルする状況では有るのだが……。

 そう思ってビクビクしていた私の左手、薬指に、勇者が指輪を入れてきた。

 ん? なにこれ? なんだっけ? ……。なんじゃこりゃあああああっ!!


「結婚しよう!」

「いやあんた私大嫌いでしょ!! 昔から私の事虐めてたじゃん! はっ!? どっきりか?! 納得!!」

「違うわっ! どんだけ自虐的なんだっ! って、俺のせいか。……すまん。最初からお前の事が気になって虐めてた……」

「なんですとおおおおお!?」


 何と言う。何と言う。


 その後、私は勇者のプロポーズを条件付きで受ける。その条件とは……。


「足手まといなのに勇者の嫁で良いんですね?」


 何故か勇者は大爆笑してそれに必死に首を縦に振ったのだった。


 足手まといなのに良いんですね。……有り難う勇者様、私を……愛してくれて。






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