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大便戦争  作者: 和スレ 亜依
3/3

第三糞

 私は中村次郎と申す者で(そうろう)。運動が少々苦手でござるが、勉学には自信があるで候。しかし、勉学に没頭するあまり座りっぱなしが響いたのか、肛門に大病を(わずら)っているでござる。

 今、鰤便高校では一学期期末試験の真っ最中でござる。それでも国立東京鰤鰤(ぶりぶり)大学を志望する私にとって、さしたる関門ではないのでござる。

 しかしながら、私は危機的状況に瀕しているのでござる。なぜかと言えば、便意が押し寄せているからでござる。

 便所を申告すれば良いのだろうが、戻っても再試験は受けられないので候。

 そして、我慢をすればするほど肛門へのダメージが大きくなるで候。すでに、痛みが増しており、状況は刻一刻と悪くなっているのでござる。

 私は得意の数学と物理で必死に考えるのでござる。行列を使った肛門にかかる応力計算と、微分積分を駆使したデッドラインの計算。

(だめでござる……これはあと十分ももたないでござる)

 私は尻をもぞもぞと動かし延命措置を講じるが、焼け石に水でござる。若干、周囲からも不審の目で見られ始めたでござる。

 このままでは、肛門が引き裂かれるか、第二のストゥール池谷になってしまうでござる。それは何としてでも阻止しなければならないのでござる。

 残された道はただ一つ。やるしかないのでござる。

(あと数分でこの試験をクリアしてみせるでござる!)

 私の思考は光速を超え、問題を(さば)く手指は神のごとき早さを見せる。

(やれるでござる!)

 見えてきた光明に、ラストストスパートをかけた。

(これで……終わりでござる!)

 私は最後の一問を解き終えると、そっとペンを置いたでござる。

「先生、トイレに行きたいです」

 やり遂げた。

 私は心の中で栄光と共に拳を天高く掲げたのでござる。


 しかし、中村は気づいていなかった。教室から便所に向かって点々と(したた)る血痕に。ドン引きする女子たちの視線に。

 だが、中村が真実を知ることはなかった。二名のテスト監督の内の一名が同じく痔持ちだったからだ。痔の苦しみを知る教師は中村を気遣って、すぐさま雑巾で血痕を拭いて回った。

 のちにこの事件は「血の期末テスト」として密かに語り継がれていくことになるのであった。

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