病室でのやり取り
まさか、授章式の前に結構な大怪我をするとは思わなかったな。
そのせいで、授章式の日時は延長。
自分勝手な行動のせいで、レギンス軍団長や国王に迷惑掛けたな。
でも、あの状況で見捨てる訳にはいかないからな。
「うーん、暇だ」
しかし、暇なんだよな、大した怪我では無いのだけど
念の為にと言う事で入院、ちょっと野犬に噛まれた程度で
でも、野犬だし汚い物喰ってたりする可能性もあるし
菌が入ってたら危ないだろうしな…うへぇ。
「リオさん、傷は酷くなっていたりしませんか?」
「大丈夫だよ、別に酷くなっちゃ居ない」
怪我が酷くはなってないし、体に痛いところもない。
最悪犬に噛まれたら死ぬとか言うけど、今回は大丈夫そうだ。
はぁ、やっぱり犬って奴は死神なんじゃ無いかな。
なんかちょっとした怪我でも場合によったら死ぬらしいし
マジ怖い…本当に犬とかと遭遇はしたくないなぁ。
「そうですか、消毒がまだ速かったお陰ですかね」
「どういうことだ?」
「いやぁ、もしも発見が遅れてたら最悪…って、話を先生が」
「何それ怖い、え? 俺、実は結構危なかったのか?」
「はい、まぁ、あの判断のお陰でなんとか助かった感じですね」
「マジか、狙撃魔法で良かった」
あの行動を取らなかったら最悪見付からず、俺達2人は
あの山の中で死んでたのか、本当に我ながら良い判断だったよ。
「本当にリオさんって運が悪いですね」
「あれは大体自分の行動が原因だしな」
「無茶ばかりしますからね、でも、リオさんはその危機をいつも脱しています
判断力もそうですけど、やっぱりカリスマ性みたいなのがあるんでしょうね
仲間に助けられることが多いですし」
「大体お前のお陰なんだよな、悔しいことに」
「悔しがらないでくださいよ、それにですよ?
私が命を賭けることが出来るほどにリオさんにはカリスマ性があるのです」
「カリスマ性ねぇ」
そんなものあるんだろうか、アルルがついてきてる理由だって
多分、俺が可愛いからとかなんだろうな。
はぁ、可愛いと思われるのはなんか嫌なんだけど
そのお陰で助かってるんだし、全否定できないんだよなぁ。
「どうせカリスマ性とかいっても、可愛いとかそう言うのなんだろ?」
「それは入り口でしかありませんよ
今の私はそこだけでリオさんに付いていってる訳じゃ無い
リオさんは私の恩人で、今じゃちょっとした憧れですよ」
「ん? 憧れ? 恩人? 何かしたっけ、と言うか恩人なのはお前だろ?
俺が何度お前に救われてると思ってんだ?」
「……ふふ、自覚無いんですね、ま、皆までは言いませんよ
後、私の事を恩人だと思っているなら
私に少しくらい自由にさせてくださいよ、あのですね
頭なでなでしたり、ほっぺスリスリしたり、お胸をさわさわしたり!」
「また殴るぞ? 今度は鼻にでも突っ込んでやろうか? んん?」
「すみません、あれは止めてください、超痛いです」
やっぱりあの攻撃はかなり痛いんだろうなぁ、大体の奴が食らえば悶えるし
接近戦闘もあれ結構使えるし、アルルのアホのお仕置きのために考えただけだが
予想以上に使い勝手も良いし、割と助かってる。
あの変態行動のお陰で助かった場面が多いと言うのは
凄く不本意だが、まぁ、感謝はしてやろう、口には出さないがな。
仮に口に出したとしたら、こいつまたすぐに調子に乗りそうだしよ。
「まぁ、それは良い、所でウィンはどうだ? 大丈夫そうか?」
「はい、ウィンさんは傷も良くなってきていますね
ただ足をかなり捻ったらしく、歩くのはしばらくキツいでしょうが
そこ以外は大丈夫です、怪我の具合も問題ありませんし
恐らくですけど、今はリオさんの方が酷い怪我です」
「何でだよ、俺なんかちょっと切ったり、犬に噛まれただけだろうが」
「犬に噛まれたから危ないんですよね、血も沢山出てましたし
菌の侵入が考えられるので、非常にね」
「やっぱり犬は駄目だな、会いたくもない」
犬は本当に死神だよ、絶対に会いたくねぇよ、あんなの。
それなのに何故俺は犬を飼っているのだろうか。
恩犬だから? まぁ、そこが大きいんだろうけども。
「でも、噛まれたって事は逃げなかったって事ですよね?」
「そりゃな、ウィンが襲われそうになってる状況で逃げるかよ」
「ウィンさんの為なら自分が犠牲になっても良いと?」
「……まぁ、ほら、死にかけてる奴を放置するのはあれだろ?」
「素直じゃ無いですねぇ、素直に妹の命の方が大事だと言えば」
「……ま、まぁ、し、慕ってくれる奴を、み、見捨てるのは…なぁ」
「むふ、その表情良いです! 顔を赤くして恥ずかしそうながらも
嬉しそうに顔を背ける姿! 最高ですね!」
「……」
何だかイラッときたから、アルルの鼻に向けて
ウィンチェスターを召喚した。
「あ、あぁ-! は、鼻がぁ! 私の鼻にぃ!」
「いい加減にしろと何度言えば分かるんだ? おぉ?
その変態発言をされるこっちの身にもなりやがれよクソ女」
「わ、わかりまひた! で、ですので、はなひてくだはい!
痛い! すごくいはいでふ! あ、鼻血がぁ!」
何だかマジにいたそうだったからさっさとウィンチェスターを消した。
しかし、なんでこいつにお仕置きする度にウィンチェスターが
こんな目に…うぅ、好きな銃なんだけどなぁ
でも、すぐに召喚出来るのこいつだけだからなぁ。
お仕置きをしようとなると、どうしてもこいつを出すしか無くなる。
他の銃だったら召喚に時間掛かるから逃げられるし。
「痛いですよぅ、鼻血が凄い出てるんですけど」
「お前、いつも出してるだろう?」
「あ、そうでしたね、毎晩リオさんの裸を」
「テメェ、今なんつった! お前!」
「いやいやいや! ご、誤解しないでくださいよ! 見てませんよ!
確かに毎晩床に忍び込んで」
「おま、お前! ほんま、おま!」
「い、いえ! ちょっと待って! 引き金に手を掛けないで! 違いますよ!?
と、床に忍び込む妄想してるだけですよ!? 流石に現実で手を出しては居ません!
で、床に忍び込んで、リオさんの服をゆっくりと脱がし」
「マジで殺す!」
「妄想です! 妄想ですからぁ!」
「死ねやおらぁ!」
「ひぃ!」
俺が引き金を引こうとすると、病室のドアが開く音がした。
なんだよ、こんな時に誰だ? 看護師さんか?
「んぁ? …あ、お前」
「お姉ちゃん、元気になったんだ…良かった」
扉が開くと、そこにはシルバーに車いすを押されて入ってくる
ウィンの姿があった、周りにはトラ、フレイ、ウィングも居る。
「おぉ、元気そうだね」
「リオさん、そんな体調でもアルルさんのお仕置きですの?」
「あぁ、このクソ変態女をちょっと処刑するから部屋から出て」
「シルバーさん! ちょっと隠れさせてくださいね
私、リオさんに殴られるのは良いんですけど
撃たれるのはちょっと…」
「て、てんめぇ! 何シルバーの後ろに隠れてるんだよ!」
「なる程、それではいきましょうか、アルルさん」
「あ、あれ? 何だか私の手を握る力が異常に強いような…」
「流石に病院で騒ぐのはマナー違反ですし、ちょっと屋上か
お外に行きますわよ、おほほ」
「あ…り、リオさん! た、助けてぇ!」
「…シルバー、みっちりと教え込んでやれよ、なんなら腕の骨折っても良いから」
「え!? そ、それは!」
「分かりましたわ、アルルさんが気絶しようともキツーいお仕置きをしてあげますわ」
「い、いや! どうせやられるなら、私はリオさんに!」
「リオさんの手は煩わせませんわ、あなたは私で十分ですの」
「ひぃー! リオさーん! 助けてくださーい!」
ずるずるとシルバーに手を引かれながらアルルは部屋から連れ出された。
「おぉ! 何だか面白そう! 私もアルルにお仕置きしにいくよ!
なんでお仕置きされるのか知らないけど、悪い事をしたからだよね!
多分リオちゃんを怒らせたりしたんだよね? だったらお仕置き~!」
「フレイ、お前は止めとけ」
「なんで~?」
「アルルが死ぬ」
流石にフレイのお仕置き…と言うか、一撃を受けてしまえば
無駄に頑丈なアルルでもくたばっちまいそうだしな。
死なれちゃ困るし、何より一撃でくたばっちまえば
お仕置きにならない、完全に処刑だからな。
「うーん、死なないと思うよ? 死ぬわけ無いじゃん」
「お前は自分の力を侮りすぎなんだよ」
「え~?」
「あはは、お姉ちゃんって色んな人に好かれてるんだね」
「好かれる? まぁ、変な意味で好いてくる奴は結構多いか」
「リオちゃんはね、格好いいんだよ!
どんな時でもいっつも私達の事を助けてくれるんだ!
色々と考えてくれるし、遊んでくれるの!
普段あまり元気ないのに、遊んでくれる時は全力で遊んでくれて!
あ、でも、怒ると本当に怖いよ? 口から炎出してるの!」
「1度たりとも炎は出したことは無い」
「あとあと、頭も凄く良いの! 分からないところいつも教えてくれて
後、色々と指示? を、出してるときも凄く格好いいんだ!
だけどね、いつも無茶ばかりするから、私達が居ないと大変なんだ!
前だってね、リオちゃん1人で無理して悪い人達に捕まったんだ!
その時は皆で助けに行ったよ! 凄く大変だったけど
なんとか助けられたんだ! あの時は嬉しかったなぁ
リオちゃんを助ける事が出来てさ! いつも助けられてばかりだから!」
さっきっからフレイのマシンガントークが凄いな
他が入る隙間が無いほどに連続で話してる。
「後、今はなんか凄い人になってるの! だから忙しいんだって!
でも、ご飯は一緒に食べるし、遊んでくれるの!
だから、私はリオちゃん事が大好きなんだ!」
大好きと言われるのは割と嬉しい…フレイが高校生くらいだったらなぁ
そしたら飛んで喜ぶんだけどなぁ、7歳だし。
と言うか、考えてみればフレイが高校生くらいなら
俺もこの見た目で高校生になるのか…そ、想像出来ねぇ…
全然想像できねぇ、この姿で高校生になったらどうなるんだ?
……うん、やっぱり想像出来ん、なんか胸が出てる姿とか全く考えられん。
でも、胸が出てたら良いな、揉み放題じゃん…でも、きっとあれだな
結局そうなっても自分の体だし虚しくなるだけで…ん? んん!?
か、考えてみれば、俺って今、お、女の体なんだよな!?
じゃ、じゃあ…あ、あぅ…だ、駄目! 駄目駄目! 駄目だろ!
お、落ち着け…落ち着くんだ俺、じ、自分の体だし
何しても多分虚しいだけだろう…は、はは
だ、だが、女体化したらやってみたいと思うこと第1位!
で、でも…やっぱ、だ、駄目だ…駄目、お、落ち着こう、うん。
「は、はぁ」
「リオちゃん? どうしたの?」
「い、いや、何でも無い…」
「んー?」
「そんな目で見るなよ」
うぅ…たまーにこんな感情になる気がするんだよな。
でも、なんかさ…どうしてもアルルが居るから行動できない。
あいつが何処かで見てるんじゃないかとか考えたら
下手な行動できないんだよな…アルルだしあり得そうじゃん。
でもまぁ、そのお陰で禁忌を犯さないで済むって何かな。
「まぁ、いいや、リオちゃん、速く治ってよ!」
「あぁ、だいじょう、うぉ! お前! き、傷口を撫でようとするな馬鹿!」
「え? なでなでしたら痛くなくなるって」
「大した事のない傷だったらな!? だが、大したことない傷じゃ無いんだよ!
絶対痛いって、撫でられたらよ…」
「そうかなぁ?」
「そうだよ! だから傷に触れるなよ? 痛いのは嫌いなんだから」
「痛いのが好きな人なんて居ないよ」
「でも、アルルはリオに殴られるなら良いけどって」
「…忘れろ、あいつの発言は全て」
「なんで?」
「なんでも、あいつは…ほら、色々と特殊だし」
「ふーん、まぁ、そんな気はするけど」
「う、うん、分かった」
「色んな人に好かれてるね、お姉ちゃんって」
「出来れば好かれたくなかったな、あんな奴には」
あんな変態に好かれるとは、本当に面倒ばかりだよ。
そう言えば、向こうでも変な男に目を付けられてたっけ
あぁ、女の子ってのは、大変だな…男の方がかなり楽だよ。
戻りたいなぁ、でも、戻ったらこいつらは…
うーん、なんか複雑だよ…この状況は。




