表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/294

1日経ち、朝までグッスリと眠ることが出来た。

まぁ、多分あの子も大丈夫だろうな、ふかふかの寝床で寝たわけだし。

ひとまずいつも通り全員で朝飯を食べ、やることも無いから

部屋でのんびりと外を見たりして過ごす。


「リオちゃん! 遊びましょ!」

「ん?」


と言っても、いつまでものんびりという訳にはいかないらしい。

やっぱりフレイ達が一緒に遊ぼうとやってくる。

いつも通りだ、いつも通りののんびりとした日常。


「そうだな、で? 何をするんだ?」

「そうだなぁ、皆でお家に帰ろうよ、その内って言ってたけど

 今は結構丁度良いと思うし」


確かにそうだな、フレイにしてはまともだ。

ま、これなら俺も別に疲れやしないし、良いか。


「そうだな、じゃ、行くか」

「いえーい!」


俺達は久し振りに4人だけでの行動だ、普段ならアルル達が一緒だが

今日は付いていない、久し振りの帰宅に付いていくなんて言う

野暮な真似はしないのかもな。


「ねぇ、リオちゃん、リオちゃんは先生になんのお話しをするの?」

「別に決めてないなぁ」

「あはは、実は私もなんだ」

「私も…何を話せば良いか分からない」

「わ、私も同じ、それに何だか久し振りに帰るってなると、緊張するよ」


別に緊張する要素なんぞないだろうが、2年も会ってないし

緊張する気持ちも少しは分かる気がするな。


「あ、あの! お願いします! お姉ちゃんに!」

「しつこい子だ、駄目だって」


門の前にまで来ると、ウィンと門番がまた口論をしていた。

本当に諦めが悪い子だ…本当に。


「あ、お、お姉ちゃん!」


彼女は俺達の方に気が付いたらしく、嬉しそうに笑い

こちらに手を振ってくる。


「お姉ちゃん! お姉ちゃん!」

「……本当にしつこいな」


でも、ウィンの血色が良くなり、生き生きしている表情を見て

何だか少しだけ安心した…飯、食えたんだな。


「あの!」

「あ、あの子がリオちゃんを追っかけてる妹さんだね、似てるじゃん!」

「似てねぇよ」

「可愛い妹でしょ?」

「妹じゃないし」

「でも、アルルから聞いたけど、あの子のために色々とやってたって」


あの馬鹿、なんでこいつらにまでそんな余計なことを。


「あの馬鹿、無駄な事教えやがって」

「昨日ずっと心配そうに追いかけて、夜は一緒にいてあげたって」

「あの馬鹿のことだ、どうせ妄想だろ」

「リオちゃん、嘘下手だよね、そんな必死に否定しても分かるよ」

「う、嘘じゃ」


…はぁ、これ以上は無駄な気がする、割と長いこと一緒にいるから

この3人は俺の嘘を見抜くのは結構得意なんだよな、特にトラ。

フレイは気が付かないが、ウィングは割と堪がいいし。


「…じゃ、じゃあ、目が覚めたら変な場所にいたのも

 美味しいバナナをくれたのもお姉ちゃん!?」

「……ま、まぁ、そうだよ、お前がいくら何でも哀れだったもんでな

 恵んでやったんだ、感謝しろ」

「お、お姉ちゃん…」


え!? なんでいきなり泣き出してんだ!?


「お、おい! なんでいきなり!」

「だって…う、嬉し、嬉しぐて……お、姉ちゃん…あ、ありが、とう」

「な、泣くなよ…後、お姉ちゃんじゃ」

「そろそろ認めてあげたら? ずっときてるよ? 多分本当の妹なんだよ

 そうじゃないとさ、毎日毎日来ないって」


……確かにただの詐欺師にしては凄い根性ではある。

毎日毎日門前払い、怪我もたまにしても来ているからな。

それだけ取り入りたいのか…あるいは、本当に…


「……ほら」

「あ、ありがとう、お、お姉ちゃん」


とりあえず泣きながら座っている彼女に手を貸し起した。

…どうするか、本当に俺の妹なのかあ、ただの詐欺師か

…良いぜ、試してやるよ、それで決めてやる。


「なぁ、お前」

「ど、どうしたの?」

「お前にチャンスをやる

 このチャンスを物に出来ればお前を妹として認めてやるよ」

「なんでも言って! 何でもするから!」


こう当たり前の様に何でもするって言う奴に対しては

少し悪戯してやりたいという気持ちになる。


「なんでも? じゃあ、強盗してこい」

「え!?」

「なんでもって言ったろ?」


基本的にこの後向こうは否定、じゃあ何でもすると言うな

と、こんな感じで行くのがいつもの流れだ。


「……わ、分かった、それで認めて貰えるなら!」

「お、おい! マジに取るな、冗談だよ!」


ま、まさかそのままのやろうとするとは…は、初めてのパターンだ。

ちょっと動揺した、はぁ、挑発するんじゃなかった。


「え?」

「えっとだな、本当の条件だがひまわりだ、ひまわりを取ってこい」

「ひまわり?」

「そうだ、因みにこの時期に店には置いてはいないぞ?」

「ひまわり…」

「精々色んな奴に話を聞いて、場所を見付けることだな」

「うん、分かった! それじゃあ、そのひまわりを見付けたら

 ここに持ってくる!」

「それで良いよ、ほら、探しに行け」

「うん!」


ひまわり…あぁ、懐かしいもんだよ、何度か先生と一緒に探した。

確か国の近くにある森に咲いてたっけ。

ただ花を見付けただけなのに、本当に嬉しかった記憶がある。

ま、そこはかなり安全な場所、別に大丈夫だろう。


「ひまわり探しかぁ、懐かしいね」

「あぁ、結構な、そんじゃ、俺達はあっちのひまわりに行くか」

「あはは、そうだね、久し振りに帰ろう!」


いつもとは違う街並み、いつもよりもこぎれいな感じだ。

やっぱり場所が変わったってなると、道中も変わって分かりにくい。

でもまぁ、地図貰ってるし、これにしたがっていけば問題は無い。

俺達は地図に従い、新しいひまわりがある場所に移動した。

そこには前までのひまわりとは思えないほどに綺麗になっている

懐かしの我が家があった、なんかリフォームした家を見た感覚だ。


「いやぁ、綺麗になったねぇ」

「そうだな」

「ほ、本当にここ? 何だか不安だけど」

「違う場所だったら…ど、どうしよう」

「いや、あそこにひまわりって」


少し不安に感じながら少し距離を縮めていくと

口論をする声が聞えてきた。


「だから! あの子は私の子なんだから金を返せと!」

「子供を捨てた人が何を! 

 お金のために生んだ人に返すお金はありません!」

「ち、なら、そこは妥協してあげるわ、でも、子供は返しなさい」

「あの子はもう私の元にはいません…いませんよ…」

「は? 親の権利を返せっていってんのよ、ほら、あるんでしょ?」

「……あなたはそんな物で子供を自分の物だと言い張るつもりですか?

 ただの紙切れで? ふざけないでくださいよ!」


な、なんだ? 片方は聞き覚えがある、先生の声だ。

だけど、もう片方は誰だ? 分からない。


「はぁ? それさえあれば親と言えるわ、ほら、渡しなさい」

「あなたみたいに子供の気持ちも分からない人に渡すわけないでしょう?」

「うるさいわね! 速くウィングを返せ!」


うぃ、ウィング? な、なんだよ、こいつの親か?


「……わ、私?」

「本当に洒落にならないわ、まさか後天性だったなんてね

 それにあの小さな戦士達? だっけ? あの部隊の隊員

 しかも隊長のお友達、本当にふざけてるわ!

 ったく、なんで後天性なのよ、先天性だったら

 フランみたく育てて、美味い汁すすったのに」


な、なんでウィングの自称親から、あいつの名前が!


「あ、あなたは、子供をなんだと!」

「ただの商品よ、そうでしょ? 良い金になるしね」

「……ゆ、許せません、なんで、なんであなたみたいな人が子を生める!?

 なんで、あなたみたいな人が…なんで!」

「何よ、女なら誰だって作れるわ、あんただってそうでしょ?」

「私とあなたは違う、女性なら誰でも子をなせるわけではないのです!

 子供が欲しくても生めない、だから」

「へぇ、だから他人の子供を預かって、母親ごっこ?

 あはは! 滑稽! 滑稽ね! あなた!」


なんで…クソ! あぁ、イライラする! もう我慢ならねぇ!


「こ、この!」

「……」

「うわ!」


俺が急いで先生を庇おうとすると、後ろから肩を引かれた。


「だ、誰だ…って、ふ、フラン? 何でここに」

「付けてきてた、何処行くか興味があって…そして、来て良かった」


俺の肩を引いたのはフランだった、さっきまで居なかったはずなのに

しかし、俺達に気配を悟られずにここまで来たって結構凄い。


「あ」


フランに肩を引かれて背後を見た時、ウィングが泣いてるのに気が付いた。

さっきまで妙に興奮してたせいで気が付けなかったが。


「……なんであんな人が私のお母さんなの?

 あんな…あんな人の不幸を笑う人が…私の、お母さん?

 そんなの…嫌だよ、知りたくなかった…」

「……私は嬉しいよ、本当に嬉しい

 これでウィングが私の本当の妹だって分かった

 そして」


言葉だけなら喜んでいるのかと勘違いしてしまいそうだ

だが、その言葉の一言一言には明確すぎる殺意を感じた。

ウィングが本当の妹だと分かったと言ったところは

素直に喜んでいる様には感じたが

嬉しいという言葉は…きっと、いや、ほぼ間違いなく


「これでようやくできる、ずっとしたかった事……絶対に殺してやる

 私にあそこまでの仕打ちをした、死んで当然…絶対に殺す」


静かな言葉だった、不気味なほどに…

だが、俺を震え上がらせるには十分だった。

このままじゃ、こいつは間違いなく親を殺る

きっとその行動にこいつは微塵の躊躇いすら感じないだろう。

それは不味い、止めないと…そう思っても

さっきの言葉のせいか、妙に震える。

それは俺だけじゃなく、トラ達だってそうみたいだった。


「や、やめ…う、うぅ、なんで…私、ふ、震えて…」

「う、うぅ…体が…」


明らかな動揺、冷静であるトラも

能天気なフレイでさえ怯える程の明確すぎる殺意。

自分達に向けられているわけではないのに、下手に動けば

自分達まで殺されそうだと勘違いするほどの殺意だ。

だが、このまま放置していれば、こいつは間違いなく親を殺す。

こいつがこの状況で冗談を言う奴出ないことは間違いないし

冗談という威圧ではない、確実に殺すと言う決意を感じる。


「き、きひ、きひひ、どう殺してあげようかなぁ、自殺させようかな

 それとも死ぬまで操って奴隷にしてあげようかなぁ

 それとも操って惨めな思いをさせて殺してあげようかなぁ

 きひひ、どれも楽しそうだし、全部だ、全部やってあげよう

 操って惨めな思いをさせて、奴隷にして散々扱き使った後に

 自分の境遇に絶望させて自殺させてあげよう、それが良い、そうしよう

 当然意識は残して、体だけを操ってあげるよ、きひひ、待っててね

 お母さん、ずっと後悔させて生かしてあげるよ、きひひ」


……言葉を聞くだけでも恐ろしい程に純粋すぎる殺意

いや、殺意だけならまだ良い、その中に更に悪意まで混ざっている。

相手をどうやって苦しめ、何処まで絶望させて殺すか。

……そんな事を考える程にまで、今のフランは親を怨んでいる。

だが、駄目だ…このまま放置することだけは絶対にさせられない!

そんな事したら、フランが完全に壊れる! そんな事は許さない!

あんなクソ親の為に、こいつがこれ以上壊れるのは見てられない!

怯えるな…あいつの為だ、あいつを守る為にもうごくしか無い!


「ん~? あら、フランちゃん、帰ってきたの?」

「……きひ、きひひ、嬉しいよ、お母さん」


ヤバい! もう接触したぞ! このままじゃ、マジで!


「な、何よ、その気持ちの悪い笑顔」

「お母さん、永遠に苦しんで死んで」

「え?」


ヤバい! クソ! なんでまだ動けない!? ダラダラしてる場合じゃ無い!

恐怖してる場合でも無い! このままじゃ、あいつが…フランが!


「精々苦しむと良い、後悔しても良いけど、もう何も残らない」

「ち、力が…あなた、な、何を…」

「ずっと苦しめ、苦しめ! 苦しめ!!」

「止めて! お、お姉ちゃん!」


あと少しで母親を完全に支配下に置こうとしたときだった

フランは走ってきたウィングに突き飛ばされ、視線が親から外れた。


「ウィング! 邪魔をするな! そこのクソ女は! ウィングも、私も!」

「さっきの話を聞いたから分かってる、でも駄目!」

「なんで! あいつは親だけど親じゃ無い! 殺さなきゃ、殺さなきゃ!」

「駄目だよ! そんな事したら駄目!」


ウィングはあの状況でも…動けたのか? 俺とトラだって動けなかったのに。


「それにね、そんな事したら…お姉ちゃん、本当に壊れちゃう

 嫌だよ…折角、お姉ちゃんだって、分かったのに…それなのに

 お姉ちゃんが壊れちゃうのは、いやだ……」

「……うぃ、ウィング…ごめん、わ、私は」

「何をしたか知らないけど! 変な事すんじゃねーよ!」

「あぅ!」

「ウィング!」


あの女! じ、自分の、自分の娘を思いっきり蹴りやがった!?


「な、なんて事してるんですか!? 子供に!

 あなた、じ、自分の子供だって言ってるくせに、こんな!」

「あぁ? あぁ、その子がウィングか、ごめんね、お母さん勘違いしちゃった」

「う、うぅ…」

「本当の狙いは、下で寝てる私の所有物だったの」

「……殺す、やっぱり殺す…絶対に殺す、確実に殺す! 永遠に殺す!

 殺す、殺す、殺す! 殺してやる!! 絶対に殺してやる!!」

「何よ、所有物って言われたことにキレたの? 事実でしょ?」

「違う、そんな事はどうでも良い、でも、ウィングを傷付けた!

 怪我をさせた! 心に深い傷を与えた! 許さない!

 絶対に! 絶対に!」


なんで…俺達の生みの親は屑しかいないのか…

いや、ちょっと考えれば分かる事か、金の為に命を生んで

金にならなきゃ平然と捨てる、そんなクソ親だ。

そんな奴らが…まともな訳がねぇよ、まともな訳がねぇ。


「殺す!」

「ま…って、おね、ちゃん」

「ウィングちゃん、あまり喋っちゃ」

「だめ…殺しちゃ……だめ…」

「……」

「ほら!」

「うぎ!」


ウィングと話している間に不意にフランも蹴られた。


「や、止めてください! どうして自分の娘に!」

「所有物に何しても勝手でしょ? それより、さっさと」

「絶対に渡しません、あなたみたいな酷い人には」

「いい加減にしなさいよ! その子は私の娘よ!?」

「娘に平気で暴力を振るえる親などいない!

 あなたみたいな人はもはや親じゃありませんよ!」

「あぁ!?」


俺は静かにウィンチェスターを召喚し、2人を蹴った女を撃った。


「ん…あ」


非殺傷だ、当然ではある…本来なら、殺そうが何も感じないほどの屑。

だが、一応は国民、ついでに2人の母親だ、ま、親には見えないがな。


「……」

「眠った?」

「……正直、殺意すら抱いた、だが、一応は国民だ、殺せねぇよ」


殺しても構わない、外野の俺までそこまで思っちまうほどだ

だが、もっと辛いはずのウィングとフランも堪えてる

だったら、俺も堪えるしか無いだろう。


「リオちゃん、フレイちゃん、トラちゃん…すみませんね、皆さん

 折角来てくれたのに、こんな事になっちゃって」

「先生は悪くありませんよ…それより、ウィングとフランの手当を」

「分かっています、すぐに取りかかりますね、あ、皆も上がってください

 皆、歓迎しますよ」

「はい」


先生は2人を抱き上げ、慎重に孤児院の中に連れていった。

2人は手を繋ぎ、お互いを心配している様に見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[気になる点] 何で最初から止めないのか疑問に思う まぁ犯罪者を三回も見逃す偽善者ですか仕方無いのかな?
2020/07/22 18:45 名無しさん
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ