面倒な男達
はぁ、ここに潜入したときに出て来た面倒な男達
ずっと俺達に復讐する期を伺ってたんだな。
本当にあまり外で歩かなくて良かった、情報収集とかをしようとは思ったが
その時はいつも昼…きっとそれも良かったんだろうな。
今回出て来てボロボロに負けて反省する、何て事になってくれれば良いけど。
「へ、粋がってんのはあんただろうおばさん!」
最初に動いたのは俺達に話しかけてきた男だった。
その男は拳を振り上げ、かなりの大ぶりでケイさんに殴りかかる。
「所詮ただの喧嘩小僧ねぇ」
だか、ケイさんはその男の攻撃をサラリと流し、そのまま男の肩を押し
同時に男の足を右足で後ろから強く払った、すると男はバランスを崩し
そのまま何があったのかを理解する暇も無く投げ飛ばされた。
「って!」
「攻撃が大ぶり、見え見えで力任せ
そんなんで勝てるのは雑魚同士の喧嘩位よ」
「こ、このババア! 何しやがった!」
「…何をされたかも分からない馬鹿に何言っても分かりゃしないわよ
あと、ババア言うな、次言ったら怪我じゃすまなくなるわよ? クソガキ」
かなり怒っているのが分かる
やっぱりこう言う人におばさんとかババアは禁句なんだな
うん、それはもう知ってるけど…先生のお陰で。
「何だよ、本当の事じゃねーか! どうせ行き遅れババアだろ!?」
「…だ、誰が…行き遅れですってぇ! 仕方ないでしょうが!
仕事忙しいんだから! 大体上司が無能すぎるのよ!
私にたかってくる男共もあんたらみたいな馬鹿ばっかりなんだから!
後! 私はまだ27! 行き遅れじゃ無いのよ!」
「やっぱババアじゃねぇかよ!」
「マジで殺すわ」
「ちょ、ちょっと!お、落ち着いて下さい!」
きっとスゲー気にしてるんだろうな、と言うかそうか
この人は先生と同じくらいの年齢なんだな。
そう言えば、先生もまだ結婚してなかったっけ
美人さんなんだし人は沢山寄ってくるだろうに。
…もしかしたら俺達が居るから結婚をしないんじゃ…うぅ、少し罪悪感が。
「ふー、ふー、そ、そうね、あまり怒りすぎても行けないわ
やり過ぎて殺しちゃったら大変」
ケイさんは少し冗談っぽく言ってるが
さっきまでの様子を見ると冗談に聞えない。
…ま、まぁ、禁句を言った向こうが悪いんだろうけどさ…
きっと気になるんだろうな、こうなってくると。
「はぁ、婚期って…いつ来るのかしら」
「大丈夫ですよ、絶対に来ますから」
「あ、ありがとう、後アルルちゃん、あなた何歳だっけ?」
「え? あー、えっとですね、18歳です」
「1番モテる時期ね、彼氏とか居るの?」
「居ませんよ」
「あら、どうして?
あなたほどの可愛い女の子なら男も寄ってくるんじゃ無いの?」
「私、心に決めた人が居るんで」
何故かチラリとアルルがこちらを見た気がするが…きっと気のせいだろう。
「へぇ、何々? どんな人? 格好いいの?」
「えぇ、そりゃあもう格好いい人ですよ!
とても優しいし、可愛いときもあるんです!
いつもは強がってるんですけど、本当は体が弱くて
でも、必死になって健気に頑張ってて!
自分の事よりも友達の事を心配してたり!
それに、何人も人を救ってるんです!
で、救われた人は基本例外なく仲間になったりして
そりゃそうですよ! 魅力的ですもん!
こんな戦争ばかりのこの世界で本当に優しい人なんですから!
ですが、自分の事をまるで考えなかったり
大怪我しても友達の事ばかり心配したり、死にかけてるのに無茶したり
ついでに、私に対して冷たかったりするのが難点です
まぁ、私に冷たいのは別に良いんですよ?
何だかんだで不器用な優しさをくれますから!」
……へ、へぇ、よ、世の中には似たような評価をされる人も居るんだなー…
「そこまで短い間に出るって事は、よっぽど良い子なのね、私も会ってみたいわ」
「実はもう会ってたりするかも知れませんよ?」
「あら、あの居酒屋の近くに住んでたりするのかしら、探してみたいわね」
何でこの2人は変な男共に包囲されてるこの状況でガールズトークしてるんだ?
状況分かってるのか? いや、割とマジで。
「よし、今だ! ガキを捕まえろ!」
「ちょぉ!」
あの2人が楽しそうに会話をしている間に
2人くらいの男がバレないように近寄っていた。
くっそ! 警戒してなかったせいだ! 面倒くさいなぁ! もう!
「あぁ! 大変!」
「へ! ガキさえ捕まえりゃ、お前らなんぞ何も出来ないだろうが!」
「くぅ! フラン! しっかり捕まって!」
「う、うん」
俺はフランの手を引き、飛びかかってくる男を避けた。
「クソ! このガキ! 待ちやがれ!」
「待つかボケ!」
「おら!」
「捕まらないっての!」
こうやって逃げてりゃ、何とかアルル達が来てくれるだろうし!
「あ」
「ちょ! フラン!」
不味い! フランが転けた! ど、どうする!? 絶対にあいつを狙ってくるし!
「フラン!」
俺は急いでフランの前に飛び出し
左から来る男を何とかウィンチェスターを一瞬召喚して撃破。
次に右方向の男をと思ったが、どうも間に合わない!
「へ! 捕まえたぜ!」
「うぐぅ!」
く、苦しい! ちょっと待てよ! な、なんで首締めてる! 苦しい!
「へ、このガキがどうなっても良いのか? お前ら!」
「くぅ…」
そうか、首を絞めたのは…俺を人質にするため、刃物なんて無いからか。
確かに…この状態なら、俺を殺すのは造作ないはず…
ちょっとこの腕に力を入れれば子供の小さな首くらい簡単に折れる。
にしても、い、意識が…苦しすぎる、もう少し優しく掴んでくれりゃあ良いのに。
「……うぅ」
「へ、このガキ、もう気絶しやがった、まぁ良いが」
「リオ…」
「このガキを助けて欲しかったら、抵抗しないで大人しくしろ
で、そこの女は服脱いで俺達にここでご奉仕しろ、そしたら助けてやる」
「……そ、そんな事」
「別に良いんだぜ? お前がしないならお前の目の前で可愛い妹達の服を剥いで
して貰うだけだ、小さかろうと口はあるし、手も穴もあるからなぁ」
「や、やめて! それは、それだけは!」
「じゃあ、大人しく」
……ったく、クソ気色悪い話してるな、だが、その馬鹿な行動が命取りだ
俺を挑発に使うために少しだけ俺を下げた、これで足が丁度良い位置だ。
「バーカ、気絶した振りだよ! 間抜け!」
俺は馬鹿にするような笑いを後ろの男に向け
片目を瞑り舌を出して後ろの男を挑発した。
「子供だからって舐めんな!」
「あ!?」
俺はすぐに足を全力で振り上げた後、全力で振り下ろし
この男の股間を本気で蹴った。
「うぐあぁぁあぐあぁあぁあ!」
男はすぐに悶絶、俺はあっさりと解放された、へぇ、苦しかった。
「へへ! 油断するからだ! 自分に致命的な弱点があるって事位自覚しとけ!」
とりあえずあかんべーをして悶える男を挑発する、何かイラついたし。
しかしあれだな、男に致命的な弱点がある理由って
こう言うときに女が逃げやい様にって感じだったりしてな。
いやぁ、良いように出来てるぜ…ま、今回ばかりは自業自得って奴だな。
「リオ! 流石!」
「へぇ、やるわね、あの状況で騙してこんな真似をするなんて
本当に冷静な子ね」
「2人もしっかりして下さいよ
なんで子供の私が2人も倒さないと行けないんですか!?」
「そう言えば片方も倒れてるわね、本当に凄い子よ、何したの?」
「ちょっとつんっと」
「リオには相手の弱点を突く方法を教えてます
だって可愛いですし、狙われたら大変ですし」
「本当に妹の事大好きね、あなた」
「そりゃあもう、可愛い可愛い妹ですから、ねーリオ、フラン」
「大事にしてるんだったらそもそも危ない目に遭わせないでよ
フランに何かあったらどうするの?
と言うかさ、完全に敵って人があんなに居る中で何は話してるの?
状況考えて、それとお姉ちゃんは話し長すぎ
変な事言ってる暇があったら戦ってよ、戦えるんだから」
「「ごめんなさい」」
はぁ、今回は何とかなったとはいえ、危うく大変な事になるところだった。
ガールズトークってのは考え物だね…と言うか、この場で始めた2人が悪いんだけど。
本当に状況とか考えて欲しい…何でこの状態であんなに集中して話が出来るんだ?
本当に変わってるよ、俺からして見れば考えられない。
「クソ! あのガキ…やっぱり油断ならない!」
「あと少しだったのにガキに負けるたぁ! テメェらそれでも男か!」
「今回は男だから負けたんだ、少なくとも1人は」
女だったらあそこまで致命的な弱点は無いからな、まぁ、女の状態で
股間にダメージ食らったこと無いからよく知らないけどさ。
「ち! こうなりゃ、全員で行くぞ! 狙いはガキ2人だ!
あの2人さえ捕まえちまえば俺達の勝ちだからな!」
「もう2人を危ない目には遭わせません! 絶対に行かせない!」
「同時に来たら手加減出来ないから
骨折ったりしても文句言わないでちょうだいな!」
一斉に走り出してきた男共8人
その内の2人はすぐにアルル達を制しようとやってくるが
その2人はすぐに制圧された、だが、所詮は時間稼ぎだったのだろう
2人からそれなりに距離を開けて残りの6人がこちらにやってくる。
だが、その内の2人は最初の2人を制圧した後に走ってきた
ケイさんとアルルに倒される。
残り4人…このままの状態で2人で制圧できるのは恐らくあと2人。
なら、残り2人はこちらにやってくるわけだ
俺はすぐにフランの手を引っ張りその場から離れる。
「待ちやがれガキ!」
「誰が待つか!
そもそもそんな厳つい顔で走ってくる奴を待つ子供が居るわけないだろ!?」
「顔に似合わず生意気なガキだぜ! テメェ!」
こっちに来てるのはあの時の夜に攻撃を仕掛けた1人の男と何処かの禿げだ。
あの禿げは知らないが、あの時の男に追いつかれたりしたら、俺は大怪我するだろう。
何かこの姿になってからと言う物怪我の危機ばかりだし、何だか貞操の危機も多い。
普通子供ってそんな危機に陥らないよな? 怪我は知らないけど
貞操の危機を感じることなんて本来はない筈だろ、それがこっちは本当に多い。
「……何で俺って、変なのに好かれるんだろうか」
色々と考えている間にちょっとだけ口から漏れた言葉だった。
だってさ、変態のアルルに執念のフラン…大体この2人のせいだ。
怪我はまぁ、戦争に身を投じているんだ、当然あるだろうけど。
「くたばれガキがぁ!」
そんな事を考えている間に追いつかれそうになっている
子供の足じゃ大人から逃げるのは困難だ。
だけど、それ位分かってる…子供が大人から逃げ切れないことくらい
だから近くにあった公衆便所の方に走っていた、隠れることも出来るし
それか、戦うしか無いだろう?
「おらぁ!」
俺を狙っていた男がある程度近づき
届くと判断したのか思いっきり思いっきり蹴ろうとした。
ローキックという奴だろう、雰囲気的には手加減一切なしという感じだ。
「リオ! フラン!」
俺はすぐにフランを庇うように抱きしめる。
「リオ!」
フランはそれに驚き、演技を忘れて焦りながら俺の名前を呼んだ。
このままだと俺はあの蹴りを背中に食らって大怪我をするだろう。
だけど、子供の足では大人から逃げられないと考えていた俺が無策なわけが無い。
「言っただろ?」
俺はすぐにフランと共に前に進み、その蹴りから逃げようとする。
普通なら蹴りはそんな俺達を追いかけて来て蹴ってくるんだろうが。
「あまり子供を舐めるなって」
「んな!!」
俺の背後には鉄パイプがあった、近くにある公衆便所の物だ。
男はそれに気が付かずに蹴りを出し、その鉄パイプの方を蹴った、全力でだ。
「うがぁぁああぁ!あ、足がぁぁ!
少し俺達ばかり見過ぎてたな、いや、正確には俺かな、復讐の為によ。
「へ、少しは周り見ろって!
俺1人に味方2人はやられたんだ、警戒するべきだったな!」
「このガキ! 殺す、絶対に殺す! 俺を! 俺をコケにしやがって!」
「子供相手にマジになってんなよ!」
「あ、り、リオさん! 後ろ!」
ち! もう1人忘れてた!
もうあの禿げは行動をしている、この状態で出来る事は!
「この!」
俺はフランを抱きしめたまま側面に飛び
フランを庇う為に下に回って地面に着地した。
こう言うの、アニメとかゲームでは良くやるけど
じ、実際やると背中がスゲー痛い!
「いったぁ!」
う、うぅ、冗談じゃ無い…せ、背中打っただけで少し呼吸が苦しいんだけど。
あと少しで頭も強打しそうだったし、こ、こう言うの平気で出来るのって凄いよな。
いや、ドラマじゃ腕から着地することが多いっけ…痛いしな。
でも、そんな事を考えてる暇はあの時の俺には無かったし。
「リオ!」
「はぁ、はぁ、うぅ、やっべ…しばらく立てないかも、フラン、さっさと逃げろ!」
「でも!」
「2人捕まるのは不味いだろ! 特に、お前が捕まるのは」
俺は俺に乗りかかった状態で心配そうにしているフランの背中を押して逃がした。
そんな事をした直後くらいに俺は足を捕まれ、男に宙ぶらりんにされてしまう。
「く、くぅ!」
「良くもやってくれたな、ガキ」
「こ、この!」
俺は抵抗でもう片方の足で男の顔を蹴ろうとしたがあっさり捕まれる。
「抵抗しても無駄だ」
ちぃ、最悪だ……まぁ、この状態なら両手はフリーだ。
だが、この体勢であの方法を使って脱出したりしたら明らかにバレる気がする。
…そんな事したら、大事な情報収集も出来やしない。
「リオ!」
そんな事を考えている間に血が頭に上り、何か気持ち悪くなってきた…
「うぅ…」
「さて、どうしてやろうか、腹でも殴るか? それともこのばで手を離し
頭から落としてやろうか?」
「そ、そんな事したら! 死んじゃいます!」
「構いやしねぇよ…良し決めた、ここで手を離してやる、感謝するんだな、ガキ」
「やめて!」
アルルの声が聞え、男は笑いながら俺を高く上げ、ゆっくりと手を離した。
さっきまでそれなりに遠かった地面が一瞬の間に目の前まで来た。
このままの勢いで落ちれば、当然大怪我だろう。
「うぐぁぅ!」
だが、俺は何とか体勢を変え、頭から落下することは回避出来た。
その代わり、お腹から落下したためぶスゲー腹が痛いし
腕もかなり擦りむいた…折角買って貰った服もボロボロだ。
「いっつぅ」
「そして、トドメの!」
不味い、これ、蹴る気だ! ちょっと待て! この体勢じゃ腹にモロ入るぞ!
「くぅ!……ん?」
しかし、蹴られる感覚も痛みも無く、しばらくの沈黙…ちょっと動揺しながら
恐る恐るあの男の方を見てみると、何故か倒れている。
「は?」
「転けたの」
「え?」
「あの男の人は転けたんだ」
その様子を見て動揺している俺にフランがそう言った。
転けた? 自分で蹴ろうとして? そんな間抜けな事…
あ、そうか、フランだ、フランが催眠術で操ったんだ!
そうだろうな、アルルとケイさんも何がどうなったか分かってない状況だ!
それなのに何でフランだけがどうなったかを知っている、普通はあり得ない。
この状況下ですでに状況を知ってるのは何かをした当事者だけだろう。
そして、自分がやったことを告げない理由は1つ
ケイさんに自分がした事を悟られないためだ。
なら、俺もその行動に合わせないと駄目だろう。
「そう…よ、良かった、ドジな人で」
何か色々あったけど、何とかなって良かった…
とりあえずケイさんの家に帰ったら手当てして貰おう。
腕を結構擦りむいたし、割と痛いんだよな
酷い怪我なら何度もしてるはずなのに
何だかこう言う怪我は今でも痛いと感じる…ヒリヒリするしなぁ。




