増えた不安
「くそう、死んだ方がマシだ」
あんなくっそ恥ずかしい事を言う位だったら死んだ方がマシだろ
なんで酒ってあんな面倒くさい影響が…う、うぐぅ…
「まぁまぁリオさん、大丈夫ですよ~、辱めを受けたわけじゃ無いんですから」
「十分恥だろうが!」
「いや、でもリオさん、人前でおしっこを漏らしたりするよりはマシかと」
「しねぇよ!」
こいつ、たまに人を子供扱いしやがって、確かに見た目は子供かも知れないが
中身は違う、小便漏らすわけが無い! くっそ、マジで会話するのもイラつく!
「でも、リオさん? 最悪しますよ? ほら、リオさんってお仕事の時トイレ行きませんし
もしもトイレに行きたくなったりしたときに昨日みたいに拘束されてたら」
「ちゃんと仕事する前にすましてるよ! まだ慣れないがな!」
この体になってもう7年経つが、それでも未だに色々と勝手が分からない。
やっぱり男の体の方が楽だ…間違いないな。
「そうですか…あ、トイレで何故か思い出したんですけど、リオさんってもう7歳…ですよね?」
「そうだぞ、もう7歳の筈だ…はぁ、もう7歳か、もう7年も…うー…」
こう言う風に言われると、7年間の苦い思い出が蘇ってくる。
本当に色んな目に遭った、だが、1番辛いのは性別が変わったことだろ。
なんで男である筈の俺が女にならなきゃならないんだよ!
あの禿げ頭ぁ! 今度あったらツルテカクソジジイって言ってやる!
もしくは変態脳天禿げ頭だ! 間違いなくあいつ変態だろ!
なんで男である俺を女に変えてこんな世界に飛ばしやがったんだぁ!
あれか? 性別逆転とか見てみたかったのか!? それなら自分の性別変えろや!
くぅ! イライラが! イライラが湧き上がってくる!
「あ、あの、り、リオさん…い、いきなり怒りの表情をしなくても
あ、でも、可愛いですよ? 怒ってる姿もやっぱり」
「だまらっしゃぁ!」
「ひぃ!」
ふー、ふー、いかんいかん、こいつに八つ当たりしても仕方ない。
はぁ、危なかった、危うくウィンチェスターのフルスイングで頭殴るところだった。
「い、いやぁ、ぞ、ゾッとしました、当たったら痛かったでしょうね」
「痛いですんでたとは思えないがな」
全力だったし、銃口の方を持って振ったわけだから遠心力も凄かっただろう。
そんな勢いで殴ったら流石のアルルもかなりの重症になってたんじゃ無いか?
と、思ったりするが、どうせケロッとしてるんだろうなとも思う。
「ま、まぁ、そうですね…えっと、おほん、それではお話しに戻りますけど
もう7歳って事は最悪…あの、あれ来てます? あれ」
「あれってなんだよ」
「いや、だから…まぁ、知らないなら良いです
ずっと成長しないから、もしかしたらと思ったんですけど杞憂でしたかねぇ」
「なんだよ、なんか気になるだろ?」
「まぁ、知らないなら良いんです、そう言う病気の可能性があるから気になっただけです」
……こう意味深な発言をされるとトコトンまで掘り下げたくなるな。
「いやいや、気になるじゃ無いか、言ってくれよ」
「…ま、まぁ、リオさんもどうせその内知りますけど、初潮って奴です、あります?
あの血が出る奴、あれ大変なんですよ」
「ん? あぁ、生理って奴か? へぇ、で、それと俺とがどうして関係あるんだ?」
「…で、ですね、その生理って奴が速く来る子は居るんです、リオさんくらいの年齢でも
それでそう言う子は成長が遅くなるそうで、だから、リオさんが成長しないのはそのせいかと
思いまして、ちょっと気になったので聞いただけです」
「…はぁ? 全く訳が分からんことを」
まぁ、なんか血が出るってのは知ってるけど、あれって…あ、あれ?
い、今俺って女だし、え? そんな状態になったりするわけ?
い、いやいや、そ、そんな訳ない、きっと無いだろう。
そ、そもそも仮に出たとしても、ど、どうせ血がちょっと出たりするだけだろ?
痔みたいな感じだろ? ま、まぁ、大丈夫だろう、うん。
「あ、あのー、リオさん? 明らかに動揺してるんですけど」
「ど、動揺なんざしてねぇよ!」
「生理…怖かったり?」
「へ、そ、そんなのになるわけ無いし…どうせ痔みたいな物だろ? ほら、尻から血が出る奴
うん、あれ辛いよね、結構痛いしな!」
「…か、勘違いしてるようですけど、それじゃ無いです」
「いや、あれだろ? ほら、痔だって、あ、もしかしてたまに先生とかが不機嫌になってた奴?」
「多分それです! それ!」
「…な、ないない! あり得ない! 俺がなるわけ無いじゃないか!」
なるわけ無い、なるはずが無い! そんな馬鹿な事! だって、現になってないし!
血なんて出てないし! 痔も治ってるし! き、きっと痔をこじらせた感じだろ?
だったらあれだ、痔にならないように気を付けてたらなんの問題も無い!
「ど、どど、どうせ、痔を拗らせただけだ、そ、そういう感じだろ?」
「り、リオさん、その通りだったとすれば女の子は全員痔を拗らせてることになります」
そ、その通りだ、それは確かに不自然だ、流石に何人か対策してるだろう。
ま、まぁ、その生理があったとしても俺に関係あるわけがない! 男だし、俺男だし!
「さっきよりも汗かいてますね」
「かいてねぇよ!」
「ま、まぁ、そのですね、あまり動揺しないでも大丈夫ですよ
行基で無いなら後5年間は猶予がありますから、それまでに心の準備をすれば良いです」
「しねーよ! だってならないし!」
「…因みに魔法を扱う子は初潮が速いと聞きますのでご注意を」
「な、なんで!?」
「知りませんよ…多分子孫を残すのに速く準備を整える為とか、そう言う理由じゃ無いんですか?
動物的な本能で、だって魔法は小さな子供しか扱えないですし」
…………ど、どうしよう、いや、だ、大丈夫…だよな、大丈夫! 多分大丈夫!
十中八九大丈夫! きっと大丈夫だ! だって、お、男だし。
お、男が生理なんて、き、聞いたこと無いし…ない、あり得ない!
「あ、あ、あぁ、えっと、ま、まぁ、お、俺には関係ないかなぁ…」
「リオさん、さっきっから凄い動揺してますけど…だ、大丈夫ですか?」
「だ、だだ、大丈夫、大丈夫だし!」
「アルル、リオ、何してるの?」
俺達が話をしていると少し眠っていたフランが目を覚ました。
「あ、フランさん、あ、そうだ、フランさんって初潮」
「アルル、殺すよ?」
「え!? い、いやいや、いやらしい意味じゃ無いですよ!? ただ心配で!」
「…なんで心配なの?」
「い、いや、フランさんも見た目リオさん達とあまり変わりませんし、もしかしたらと思って」
「…そうだね、確かに私、もう10歳だし」
「え!? 10歳!? じょ、冗談でしょ!?」
「冗談じゃ無い」
「で、でも、見た目は5歳児なんですけど!?」
「……気にしてることを言うな、殺すよ?」
「あ、す、すみません…」
な、なんでフランが10歳なんだ!? てか、え? 10歳でもこの見た目!?
なんで!? どういうことだよ! 訳が分からない!
「…え、えっと、あまり理解できないんですけど…」
「私もよく分からない、全然背が伸びない、むかつく」
「は、はぁ…じゃあ、年齢的にはあれがあってもおかしくない年齢ですが」
「…あれ?」
「あ、はい、あれですあれ」
「……あぁ、赤い奴、最初ビックリした」
「はぁ!? あ、あるのか!? あるのか!?」
「うん、目が覚めたら真っ赤だった、ビックリしたよ、でも、もう慣れた」
……あ、あるんだ、見た目5歳なのに…
うぐぐ、アルルがあると答えたことで俺にあった恐怖心がより一層増した。
い、いや、無いとは思う、あるわけがないあって良い筈が無い!
俺は男だ! 絶対に無いし! あってたまるかこんちくしょう!
だ、大丈夫だ、フランは…きっと成長が遅いだけだし、10歳だし
そもそも俺と違って純粋な女の子だ…でも、俺は違うからな
7歳だし、純粋な女の子じゃ無いし! 大丈夫!
「リオさん、ドンドン動揺の色が濃くなってきてますよ」
「にゃ、にゃんのことだ!?」
「…可愛い、結婚して」
「いや! 何馬鹿な事言ってんだよ!」
「そうですよ! リオさんは私と結婚するんです!」
「なんでそう言う話しになるんだよ!」
結局そのまま2人が喧嘩を始めてしまい、俺は初潮とやらの詳しい事を知らされないまま時間が経った。
この喧嘩が終わったら話を聞こうとは思ったが、その前に食事が出来て聞けずじまい
あげく立て替えが決まったという話をうち明かされて
その日の夜に向かいに来ると知らされた、その間に聞こうと思ったが今度はセレスさんに呼ばれて
髪の毛をセットしたいと言うことで時間が潰れ、その後は準備で夜まで時間を潰してしまい
時間が来てケイさんが向かいに来てしまった、なんか、聞けない状況がずっと続いている。
「はぁ、結局どうなるんだよ…俺の体」
うぅ、もうヤダ…なんで女の体になったんだろうか、どうせ女の体になるんだったら
精神とかも女になってくれれば良いのに、いや、それは流石にちょっと…なぁ。
やっぱり男の体で男の精神ってのが1番良い…その方が適応してるし
てかさ、なんで男としての最大屈辱を卒業できないままこんな事になったんだよ。
うぅ……はぁ、最悪すぎる、もうやだなぁ……ん? あれ? てか、ここ何処だ?
随分と広いな、家なんて何処にも無いんだけど。
「あの…ケイさん、ここ何処ですか? 家なんて何処にも」
「少しだけ待ってて頂戴ね、面倒ごとよ」
「ん?」
「ほら、周り見て、やれやれ、まぁ、集まっているとはいえ所詮子供2人に大人2人
子供は脅威カウントしないとすれば、脅威なのは2人だけ」
「…何ででしょうねぇ、また面倒ごとですか」
俺が色々な事をしながら歩いている間に、俺達は10人ほどの男に包囲されていた様だ。
「へ、俺達に気が付いてたんなら人が多いところに行けば良かったのによ
まさか俺達に取って好都合な場所に来るとはよ」
「全くこんな時間に何の用?」
「まぁ、安心しろよおばさん、俺達はあんたに用は無いんだ
俺達が用があるのはそこのお姉ちゃんとガキ2人だ」
「あぁ?」
…あの顔、何処かで見た気がする…確か、そ、そうだ、公園の奴らだ!
後、アルルが制圧した男も居るぞ!
「あのクソガキ…ぜってぇ殺す」
「おいおい、殺すのはやめろよ、精々痛めつけるくらいで止めろよ、あのガキ上物だぜ?
本当なら後10年は寝かせておきてぇところだが、まぁ、問題ねぇだろう
売ることだって出来るんだ、間違いなく高値が付くぜ? ああいうのが好きな変人に売りゃぁよ」
……クソ、なんでこんな目に…この姿になってからと言う物、変な奴らばかり寄ってくる。
「売れると思う?」
「へ、2対10、勝負は見え見えだろ? それにあんたらは女だ、大した力も無いだろ?
お前らみたいな女は男の奴隷になってりゃ良いのさ」
「…い、いい加減にしろよ! お前ら! 女をなんだと思ってんだよ!」
「ただの穴、もしくは金だな」
「このクソ野郎が! テメェら、それでも男かボケ! 恥を知れ!」
「り、リオちゃん、随分と感じが変わったわね、ワイルドねぇ、あの男達に怒鳴ってるわ」
「リオは怒ると性格変わるんですよ、まぁ、そこも含めて私は大好きですよ
男っぽいところも含めて、本当に弟と妹を1人でこなしてる感じですよ」
「ふふ、その気持ち、分かるわぁ、性格変わっても可愛いわねぇ」
「テメェら! 何のんきに話してんだ!? 状況理解してんのか!? あぁ!」
「……ふ、理解してないのはあなた達よ馬鹿共、粋がってるだけのガキが、世間の厳しさ教えてあげる」
普段のケイさんからは想像も付かないほどの威圧感が放たれている。
な、なんだ? 本当にケイさんなのか? …で、でも、スゲー頼りになる。
これなら、俺達は後ろに隠れてるだけで大丈夫そうだ。
魔法は出来るだけ使いたくないしな。
「…頼むよ、お姉ちゃん、ケイさん」
「任せて」
「ふふ、女を怒らせると怖いわよ? あんまり女舐めんな! まぁ、手加減してあげるわ
だから安心して後悔しなさい、クソ餓鬼共」
ケイさんから放たれる威圧で、俺達も少しだけ後ずさりしてしまった。
本当に凄まじいな…これがマジの状態のケイさんか。
これなら大丈夫だ、間違いなく強い、俺の勘がそう言っている
むしろ心配なのは向こうの男共…怪我だけで済めば良いな。




