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楽しい酒の席

「よし、じゃ、飲むぜ! 俺の出世祝いに! 全員分の生だ! 俺が奢ってやるぜぇ!」


グラードさんがあの騒動の後に大きな声で叫び、この場にいる全員分の酒を注文した。


「おぉ! マジかよグラード!」

「あったぼうよぅ! 実はよ、今日本部勤めになってから初めての給料日でな!

 かなりの金が入ってるんだ! ここに居る全員分の生を頼んだところで

 大した額じゃ無いぜ! はは! 城壁の見張りなんぞよりも稼ぎまくりだ!」

「じゃあ、喜んで奢ってもらうぜぇ!」

「おぉ! ドンドン奢ってやらぁ!」


かなりの大盤振る舞いだなぁ、今まで働いてて、ここまで盛大に金を使う人はこの人が初めてだ。


「そうかい、じゃあ、うちも稼がせて貰おうかね!」

「はっはっは! いくらでも出してやるぞ!」

「じゃ、急いで運ぼうか! アルルさん!」

「任せてくださいよ! せっせせっせと運搬です!」


俺達は総動員でこの居酒屋に来ている50人のお客に生ビールを運んだ。

しかし、やっぱり多いよな50人ってのは、この小さな店に50人は凄いと思う。

何てったって、毎日毎日席が全部満席になるくらいだからな。


「おっとと、なんだ? 賑やかだと思ったら、もう満員か」

「おぉ、お前も来たのか?」

「そりゃ来るっての、てか、俺の席あんのか?」

「無いな」

「ちぃ! 折角来たのに!」

「立ち飲みでもしろよ」

「ま、そうだな、折角来たんだしよ」


何だか最近は客も増え、この居酒屋の大きさがそろそろ少ないと感じてきた頃だ。

本当に人気なのは良いが、も少し店が大きくなれば良いんだが。


「やれやれ、そろそろこの店も手狭かねぇ」

「はは! 前までは30人位だったのが、今じゃ満席の50人が当たり前だしな!

 やっぱあれだな、看板娘が増えれば人も増えるってね!

 前までは1人だったが、今じゃ4人だしよ! 間違いなくこれからも増えるぜ!」

「ちょっとあんた! 私は看板娘じゃ無いってのかい!?」

「はは! まぁ、あんた目当てで来る奴も居るのは確かだが、娘って年齢じゃ」

「言って良いことと悪い事があるんじゃないかい!?」

「いだ! ちょっま!」


あんな事を言ったせいでグラードさんはエナさんに何発か拳骨を貰った。

これはエナさんの事を若くないように言った場合の制裁だ

この店に来た客の大概が通る道らしく、この場にいる全員は楽しそうに笑っている。


「わ、悪かったって! あんたは麗しの乙女だ!」

「分かればよろしい」

「ちぇ、やっぱり容赦ないな…鬼婆…ちょ!」


小さな声でそんな事を言ったが、当然そう言う悪口は聞き逃さないエナさんだ

すぐにその小言に反応し、再び拳骨がグラードさんに炸裂した。


「反省しな!」

「あだぁ! く、くっそぅ、じ、地獄耳なんだからよぅ」

「まだ必要かい?」

「何でもない! あなたは美しい乙女!」

「よしよし、もう変な事を言うんじゃ無いよ、今度変な事を言ったら

 もうリオちゃんにあんたの酌をさせたりしないし、酒も出さないよ」

「ま、マジかよ! も、もう言わないって!」


私的には大してキツくない制裁ではあるが、グラードさんにとっては結構な制裁なんだろう。

そうじゃないと、あそこまで必死に謝罪しないし。


「はぁ、ま、実際これからも客が増えるのは間違いないだろうし

 そろそろ店の拡張でもしてみようかねぇ、でも、それだとしばらく店が開けないんだけどねぇ

 それにこの子達の住む家もしばらく無くなっちまうしねぇ」

「お、じゃあ、その間、俺達のうち誰かが面倒見りゃ良いんじゃねぇか?」

「面白そうねぇ! じゃあ、私はリオちゃんの面倒を見るわぁ~」

「いや! リオちゃんの面倒は俺が見るぜ!」

「いや、私よ~!」

「じゃあ、勝負だ! ジャンケンか飲み比べで!」

「じゃあ、飲み比べで勝負してあげるわ~!」


え、えー…まだ決まったわけじゃ無いのに俺の面倒を誰が見るかで勝負が始まった。


「それじゃあ、さっさと酒を出してくれ! あ、金は負けた方が払うって事で良いな!?」

「良いわよ~、私が勝つんだからねぇ~」

「ちょっと待てよ! なんでお前ら2人だけでおっぱじめようとしてんだ!? 俺も参加する!」

「じゃあ、リオちゃんの面倒見たいとか言う奴は出て来やがれ! まとめて勝負だ!」

「っしゃおらぁ!」


…その言葉で参加を表明したのは15人…多すぎじゃ無いかな? なんだってこんなに。

その内、男は9人、女の人は6人だった結構同じくらいの人数なんだなと。


「じゃあ、こっちはこっちでフランちゃんの面倒を掛けて勝負だぜ!」


で、フランの方は10人、その内男は6人、女は4人だ、やっぱり多いな。


「それじゃ、俺達はアルルちゃんだな」

「よしよし、やってやるぜ!」

「え、えぇ~! 私はリオとフランと一緒にすごしたいんですけど!?」

「ん? じゃあ、リオちゃんとフランちゃんを賭けて戦ってるメンバー合わせていこうぜ!

 考えてみればあの子達姉妹だし、離れ離れにはなりたくないだろうしな!」

「そうね~、やっぱり姉妹は同じ場所で過ごしたいわよね~

 それに別々だとアルルちゃんが凄く心配するだろうし~」


アルルの言葉で俺とフランの面倒を見るために争っていた30人が合同で対決を始めた。


「楽しんでますね、本当に」

「まぁ、どんちゃん騒ぎしたいからだろうねぇ、で、セレスの面倒を見てくれる子は居るのかい?」

「勿論居るっての!」


セレスさんの面倒を見るという人の数は20人、流石長い間看板娘をしているだけはある。


「おや? あと5人は?」

「そりゃ、エナさんよ! 当然でしょう? 困ったときに協力しようって思ってる物」

「そう、でもね、私はセレスが世話になる場所に世話になるつもりだよ

 流石に年頃の女の子を1人で預けるわけにはいかんだろう

 いかがわしい事をする輩に世話になったりしたら大変だからねぇ」

「お? そうなのか? いやぁ、エナさんも来るんじゃったら、家事が楽じゃ」

「セレスちゃんのお世話も歓迎だし、私達も協力するわよ

 それに変な事を考えてる男共の場所に万が一でも世話になったりしたら

 大変だし私達も参加するわよ」

「この戦いも当然最初に潰れた奴が全額負担! 分かってるんでしょう?」

「勿論! やってやろうじゃ無いのさ!」


そのままの勢いで総勢55人の飲み比べが始まった。

本当に楽しそうだよな、異常なくらいに。

しっかし、良くまぁ今まであんなに飲んでたのに飲み比べに興じようと思った物だ。

と言うか、別に何も言わなかったって事はエナさん本当に建て替えるつもりなんだな。


「それじゃあ、始め!」


その号令と共に全員が一斉に大量の酒を飲み干し、すぐに次のおかわり

そのおかわりをする人に合わせてアルルや俺達が必死に運ぶ。

流石に55人同時にやってると何度も何度も運ばないと行けないからしんどい。

でもまぁ、全員マジに楽しそうだし、こっちも少し楽しい。

情報収集をするつもりだったが、このままじゃ難しそうだな。


「っぷはぁ! まだまだ持って来なさぁ~い! まだまだ余裕よぅ~!」

「うっぷ、ケイさん、スゲー飲むなぁ…」

「はっはっは!」


このままの勢いでケイさんはひたすらに酒を飲み続け、周り全員が酔いつぶれた後も飲んでいた。

流石毎日10杯も飲んでるだけはあるな、良く酔わないよな。


「よしよ~し、これで私の勝ちねぇ~! あはは~! 

 リオちゃ~ん、アルルちゃ~ん、フランちゃ~んしばらくは私が面倒見てあげるわぁ~

 うふふ~、キスしてあげる~」

「ま、待ってケイさん! その酒臭い顔を近寄らせないでください!」

「ん~、うふふ~、もしかしたら、匂いだけで酔っちゃうかもねぇ~、ほらほら、ふーふー」

「う、うぐぐぅ」


や、ヤバい、マジで酔ってきた…う、か、勘弁して欲しい。


「け、ケイさん…な、なんか本当に酔ってきた気がするので、離して下さい…」

「うふふ~、このまま行くわよ~、ほらほら、ふーふー」

「や、やめ!」


う、うぐぅ…目、目が回ってきたぁ…酔う、マジで酔う!

なんで匂いだけで酔うんだろうか、本当に嫌なんだけど。


「う…うぅ…目がぁ…」

「け、ケイさん! リオ本当に酔ってきてますよ!?」

「あはは~、そんな訳ないわよ~、匂いだけで酔うなんて事あり得ないわぁ~」

「一応言っておくけど、匂いだけで酔う事ってあるんだよ? ビールとかなら無いだろうけど

 あんたみたいにめちゃくちゃ酒を飲んだ奴の口なら酔うかも知れないよ」

「そうですよ! リオ少し顔赤くなってるじゃないですかぁ!?」

「ん? あら、本当だねぇ~、熱でもあるのかしら~」

「酔ってるんですよ! リオを離して下さい!」

「いやぁ~、どうせら酔っちゃってるリオちゃんを見てみたいわぁ~、ほら、ふー、ふー」

「あぅ…ケイさん…うっぷ、か、勘弁して下さい…死にます」


うぅ、き、気持ち悪い…アルコールってこんなにキツいのか?

う、あぁ…酒なんて…の、飲んだこと無いし、わ、分からなかったけど…

こんな感じになるなら、酒なんて飲みたくない…うぇ、吐き気が…。


「限界ですから! リバースしそうな勢いですからぁ!」

「大丈夫よ~、そう簡単に吐くわけ無いじゃないの」

「そりゃあ、ケイさんならね! でも、リオは小さな女の子! すぐに酔ってしまいますから!」

「そもそも~、匂いだけで酔うわけが無いのよぅ」

「顔真っ赤でしょうがぁ!」


無理矢理俺をケイさんから剥ぎ取ろうとしたアルルが俺を引っ張ってきた。

しかしだ、正直ブンブンと揺さぶらないで欲しい、吐く! このままじゃマジで吐く!

あ、ヤバい! 喉まで! 喉まで何か来てる!


「ケイさん、離して下さい…吐きそうです…」

「そう? そこまでなの? 仕方ないわねぇ」

「は、はぁ、リオ、大丈夫?」

「……う、うん」


大丈夫では無いけど、大丈夫と言っておこう。


「あっと、歩ける?」

「うぅ」


結構酔ってるこの状態で歩けるわけも無く、地面にアルルが降ろしてくれた後

すぐにクラクラとしてしまい、近くのイスにもたれ掛かった。


「駄目そうね」

「…お姉ちゃん、大丈夫?」

「だいじょう…うっぷ、うへぇ」

「大丈夫じゃ無いね、はぁ、アルル、運んでおやり」

「あ、はい」


そのまま今日は2階の部屋まで運ばれ、布団を掛けられた。


「…リオさん、散々ですね」

「…お姉ちゃん、頭痛いよぉ」

「むむ!? お、お姉ちゃん!? まさか酔った影響ですかね!」

「ん、うぅ…」

「ふむ、まぁちょっとした間違いでしょう、それじゃあ、リオさんゆっくりと」

「あ、お、お姉ちゃん、待って…1人は嫌だよぉ」

「……そ、そんな表情でそ、そんな事い、言われたら…」

「お姉ちゃん…」

「り、リオさん…か、可愛い!」


布団が真っ赤に染まった…お姉ちゃん、何してるんだろう…まぁ、いいや、一緒に寝てくれるなら…




んぅ? あ、あれ? いつの間に明るく…と言うか、布団が真っ赤で…あ、あぁ! そ、そう言えば

き、昨日…く、くぅぅ! いかん、酒に酔ったらそんな風になるの? 凄く恥ずかしい!

と言うか、え!? 酔うと見た目相応な性格になるの? 嫌すぎる!

なんで酔うとあそこまで性格変わるの!? 訳が分からない!


「リオさん、うふふ~、お姉ちゃんですよぉ~?」


目が覚めるといきなりアルルがふざけた顔でふざけた事を抜かした! イラつく!


「黙れぇ! そのイラつく顔をやめやがれ!」

「そう怒らないで下さいよ~、お姉ちゃん怒っちゃいますよぉ? 一緒に寝てあげませんよ~?」

「誰がお前なんぞと寝たいと思うかよ馬鹿がぁ!」

「あ、もしかして昨日のこと覚えてます? 覚えてますよね? うふふ~

 そうですよね~、だって覚えてないと顔真っ赤にしませんよね~」

「い、いい加減にしろよ! 殴るぞこらぁ!」

「昨日のリオさん、本当に可愛かったですよ~、顔真っ赤にしてお姉ちゃんって

 1人は嫌だっておねだりしちゃって、あの時だけ見た目相応な性格になっちゃって

 あれですよ、普段のリオさんを見てるとギャップ萌えと言う物を感じ!」

「だまれやぁ!」

「あだぁ!」


ち、畜生! もう酒なんぞこりごりだ! なんでこんな事に!

畜生がぁ! なんで覚えてるんだよ! 最悪だろ! どうせなら忘れたい!

うぐぅぅぅぅ!! 酒なんてもう絶対に嗅がない! もう絶対に酒なんて嗅がない!

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