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居酒屋での歓談

エナさんの居酒屋に世話になってから、3ヶ月ほどの時間が経過した。

俺達を探していると思われる兵士は姿を見せなくなった。

そろそろ情報を集めて始めるか、俺達を探してる兵士がウロウロしている状態で

下手に情報収集なんてしてたら見付かるだろうが、今の状態なら大丈夫だろう。


「アルル、そろそろ情報収集を始めよう」

「分かりました、お店に来ている人達からちょっとずつ聞いてみますね」

「そうしてくれ」


俺もお店の手伝いをしている間にチャンスがあったら情報を集めるとしよう。

同時に情報を2人が集め始めたら結構怪しいが、アルルの質問に対し

俺が興味を持ってちょっとだけ深い質問をする、と言う感じなら問題は無いだろう。

慎重かつ大胆に噛み付いていかなきゃ、深い質問は難しいからな。


「リオちゃん、フランちゃん、アルル、そろそろ仕事の準備をするよ!」

「あ、はい!」


俺達2人は早速下に降りていき、居酒屋の準備を始めた。

フランは2ヶ月前から参加を始め、居酒屋には馴染んできている。

で、俺は3ヶ月間仕事をこなした、その甲斐あってか

なんか俺達3人を目当てに来てくれる客も増え、エナさんも少し嬉しそうにしている。

今現在は結構な信頼を得ている状況、この状況を作るのは中々時間が掛かったが

情報収集を安全に行なう為の下準備期間と考えれば時間が掛かったのは大した問題じゃ無い

こんな孤立無援な状態では安全を最優先に動くのは偵察として当然の行動だしな。


「よいしょ、っと、ふぅ、準備終わりました」

「ありがとうね、いやぁ、本当に3人が来てくれて助かったよ

 私とセレスの2人だけじゃ、そろそろ大変になって来た頃だったからね」

「そうなんですか?」

「あぁ、客も増えて苦労してたんだよ、でも、2人が来てくれたお陰で人手も増えてねぇ

 まぁ、今まで以上に客も増えたが、問題は無いだろう

 それにセレスも今まで以上に元気になったしね、毎日ニコニコしてて嬉しいんだよ」


セレスさんはずっとニコニコしているイメージだったが、それは俺達が来てからだったのか

あまり笑ってないセレスさんを想像するのはちょっと難しいんだがな。


「そうなんですか、ふふ、何だか嬉しいです、私達が来て良い方に変わったって言うなら」

「あぁ、あんた達のお陰で色々と変わったよ、本当にありがとうね」


こう本気でお礼を言われるというのは少し嬉しくはあるが、やっぱり恥ずかしいな

本当に照れてしまう…何度かこうやって感謝されることはあったが、やっぱり慣れないな。


「さーて、今日も仕事の時間だよ、今日も頑張るよ」

「「「はい!」」」


俺達はいつも通り仕事にせいを出すことにした、その仕事の合間にチャンスがあれば情報収集だ。

これで有用な情報を手に入れる事が出来れば……う、うーん、帰ることが出来るんだけどなぁ

何だかちょっと長いこと居すぎたようで、少しだけ帰るのを躊躇う。

でも、帰らないとな、あいつらの顔も見てないし。


「リオちゃん! 何辛気くさい面してんだよ、ほれほれ、いつも通りの笑顔笑顔!

 子供は笑ってなんぼだって! 辛気くさい面なんて似合わねーよぅ」

「はは、そうですね」

「おぉ! 笑ってくれたじゃん、そんじゃ、酌頼むぜ!」

「はいはい、喜んで」


俺目当てに来てくれてるお客さんだが、本当に元気な人だよな、この人。

もう酌をするのも慣れた物だよ、3ヶ月間も働いてりゃな。


「っとと、お、丁度良いじゃ無いか、もう慣れた物だな、リオちゃん」

「3ヶ月間もおじさん達の酌してたら慣れますよ」

「へへ! ま、そうだな! それにリオちゃんが酌をする相手は大体固定だし

 相手の好みの量ってのも分かってんだろうなぁ、リオちゃん、そこら辺覚えるの得意だしな!」

「えぇ、おじさん達のお陰で得意になりましたよ」

「はっはっは! そうかい!」


何度も何度も同じ人に酌頼むって言われてたら、相手がいつも止める量が分かるからな。

これ位の角度で何秒間経ったら止めるかを覚えていけば好みの量を入れるのは楽だ。

まぁ、気分や体調次第で欲しい量は変わってるから、そこは正確には覚えられてないが。


「いやぁ、美味いぜぇ!」

「なぁ、そう言えばグラード、お前さん仕事で変な事あったか?

 お前さん昇格して本部勤めになったらしいがよ」

「お? 昇格できた理由でも聞いてんのか? そりゃぁよぅ、リオちゃんに毎日酌して貰ってから

 何だか仕事終わりが楽しみになってなぁ、毎日サボってたのを

 美味い酒を飲むためにマジでやってたら昇格してよ!」

「おぉ? 居酒屋効果か? そりゃ凄いじゃねーか!」

「違うなぁ、リオちゃん効果だ!」


俺にそんな効果があるのかよ、相変わらず変な事を言う人だな。


「グラード! あんたもしリオちゃんを狙ってるってんなら容赦しないよ!

 前も言ったが、この子は7歳だ! 手を出して良い年齢じゃ無いんだよ!」

「ちげーよ! あれだよ、ほら、リオちゃんの為に頑張らねーとって思い始めただけだ!」

「お? それってあれじゃね? 父親としてのほら、父性って奴が芽生えたんじゃねーの!?

 リオちゃん7歳だし、毎日通ってたらそう言うの目覚めてもおかしくないだろ」

「お? 何? 親父としての感情ってこんな感じなの?」


父性ねぇ、まぁ、俺相手にそんなのが芽生えてくれるなら嬉しいい様な…

何せ、俺父親居なかったし、でも、そこまで嬉しくないような微妙な感じだ。


「おいおい! テメェだけが父性? とか言うのを覚えてると思うなよ!

 俺だって感じてるんだからよ!」

「んだとぅ! リオちゃんの父親は俺だぜ!」

「俺だよ俺! 俺の方がお前よりもお父さん面だろうが!」

「老けてるだけだろうが! その点、俺は出世してリオちゃんの親父として優秀だ!」


な、なんで俺の父親の座をかけて争ってるんだよ、その争いに勝ったとしても俺の父親にはなれんって


「それじゃあ、私はリオちゃんのお母さんね、ほ~ら、リオちゃん、オレンジジュース」

「え?」


俺目当てで来てくれている女性のお客さんが俺にオレンジジュースを渡してきた。

……俺、オレンジジュース飲んだら舌が痛くなるからあまり好きじゃ無いんだけどなぁ。

でも、貰ったら飲まないと、勿体ないし。


「えっと、ありがとうございます」

「ふふ~、いやぁ、何だか本当に母親になった気分よ~!」

「あ! ちょ! だ、抱きしめたらこぼしますよ!? オレンジジュース!」

「うはー! 私の心配をしてくれるのも大好きよぉ~!」


うわぁ! さ、酒くっさ! 酒くせぇ! 確実に酔ってる!


「ちょ! ま! むぐぅ!」


む、胸がぁ、あ、あぁ! やばいやばいやばい! これはヤバい!

ま、不味い! は、鼻血出る! 待って、柔らかい! あぅ…


「こ、こらぁ! 私の可愛い可愛い妹に何してるんですかぁ!」

「あぁ! 私のリオちゃーん!」

「ケイさんの物じゃありませんよ! リオは私の物ですぅ!」

「お、お姉ちゃんの物でもな、むぎゃぁー!」


こ、今度はアルルがぁ! 普段こんな事しない癖にぃ!


「へへへ、リオ~、うふふ~」

「む、むぐ! むぐぅ!」

「私のお姉ちゃんを離して! 馬鹿お姉ちゃん! 死ね!」

「え、えぇ!?」


フランが俺の足を引っ張っている、ちょっと痛いんだけど。


「いいや、私の娘なのよ! リオちゃんもフランちゃんも! あ、アルルちゃんも私の娘になる?」

「い、いや、正直ケイさん見たいに酒癖の悪い母親はちょっと」

「酷いわぁ~! 私の何処が酒癖が悪いのよ~!」

「あんたは毎日来る上にビール10杯以上飲んでるんだ、酒癖は間違いなく悪いと思うけどねぇ」

「そうだよ、本当に早死にするって、まぁ、居酒屋でそう言うのはどうかと思うけどね」

「私は酒が命なのよ~、むしろ酒を飲まないと早死にするの、あ、砂ずりとリオちゃんプリース♪」

「砂ずりは喜んで出しますけど、リオは渡しません!」

「速くお姉ちゃんを離せ、馬鹿お姉ちゃん、死ね、3回以上地獄に落ちろ!」


あ、あぅ…なんか、なんか…ヤバい、今日は今まで以上に過酷だ…


「あぁ! ふ、フラン! リオが! リオが落ちちゃう! あ、あぁ!」

「へ、いっつあぁ!」


アルルの腕からずり落ちた俺は顔面から地面に落下した。


「ちょ、ちょっとリオちゃん! 大丈夫かい!?」

「だ、大丈夫へふ…」

「り、リオ、凄い鼻血だよ!」

「ふへ?」


……あ、スゲー鼻血出てる、これ、どっちの鼻血だろうか、叩き付けられたとき?

それとも、アルルのアホに抱きしめられてるとき? もう自分でもよく分からん。


「全く! リオちゃんを取り合うのは良いけど怪我させてどうするのさ!」

「「「ご、ごめんなさい!」」」

「私に謝ってどうするんだい!? 謝る相手を間違えてるよ!」

「リオ本当にごめんなさい!」

「ごめんね~!」

「ごめんなさい! 捨てないで!」


な、なんだよ、なんで3人とも全力の土下座なんだよ! 普通に謝ってくれよ!

ここまでガチで謝られると困るんだけど!?


「え、えっと、気にしないでください、ちょっと鼻血が出たくらい問題無いですから」

「ありがとうね~! リオちゃ~ん!」

「でも、もう抱きしめないで!」

「ぐはぁ!」


ケイさんがすごい勢いで自分で吹き飛んでいった。


「おぉ! じゃあ、お姉ちゃんが!」

「お姉ちゃんも来ないで!」

「ごふぁぁ!」


アルルも同じ様に自分で吹き飛んでいった、何? 遊んでるの?


「お姉ちゃん、私を選んでくれて嬉しい」

「別に選んでないよ?」

「うぐ!」


フランは何故かお腹を押さえ、その場に倒れ込むような動作をした。

何? 調子のってんの? 遊んでるの? それともこいつら俺を馬鹿にしてるのか?


「な、なんかよぅ、リオちゃんを巡って戦うのはやめようぜ、嫌われたくねぇし」

「お、おう、珍しく意見があったな、そうだよな、嫌われたら元も子も無いよな」

「あ、あぁ」


少しの沈黙の後、周りの席から堪えきれずに吹きだした様な笑いが1つ聞え

そこから連鎖的に全部の席から楽しそうな笑い声が響いた。

その笑い声に影響されたのか、俺も笑いがこみ上げてきて

周りと同じ様に盛大に笑い始めた、こんなの笑うしか無いよな。

本当に楽しい場所だよ、ここは、本当にここだけはな。

ここ以外は大して活気も無い国で治安も悪いって言うのに

きっとエナさんの影響なんだろうな、はは!

ま、情報収集は出来なかったが良い雰囲気の中で笑えたし、別に良いかな。

でも、まだ時間はあるし、チャンスはあるだろう、その時は質問してみよう。

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