深い眠りの後
……何故かいきなり意識が遠のき、目が覚めたらもう朝だった
いや、朝というか昼だな…こんなに遅い時間に起きたのはいつぶりだろうか。
昔はしょっちゅうこんな遅い時間に起きてたのに、いつの間にか早起きが当たり前になってたからな。
「ん…あぁ」
少しクラクラする体に少しだけ無理をさせ、ちょっとだけ立ち上がったが
立ちくらみも凄い…くそう、本当に昨日、何があったんだろうか。
確か、変な薬を誤って飲んで…あぁ、駄目だ、何があったか思い出せない。
「うぅ…」
「あ、リオさん、体に異常などはありませんか?」
「体? そうだな、立ちくらみと頭痛が…なぁ、昨日何があった?」
「えっと、誤って睡眠薬を飲んでしまい、それで眠っちゃったんですよ」
「そうなのか?」
あぁ、あの薬は睡眠薬だったんだな…通りでまだ眠いわけだ。
てか、そんな薬7歳程度の子供が飲んだら不味いんじゃ無いか?
まぁ、頭痛とか立ちくらみがするくらいで、活動に支障は無いけどさ。
「あぁ、リオちゃん、起きたんだね」
「え、エナさん、もしかして心配して?」
「あぁ、そうだよ、にしてもごめんね、まさか部屋に睡眠薬があったなんて思わなくてさ」
「いえ、誤って飲んだこっちが悪いんですから」
「本当に出来た子だね、リオちゃん、これも姉の教育の賜物かねぇ?」
「あはは、私、頑張って色々と教えたんですから」
「そ、そうですよ、これは…お、お姉ちゃんのお陰で」
「ぶふぁぁ!」
……アルルが隣で鼻血を拭きだして倒れた。
「あ、アルル!? だ、大丈夫かい!?」
「だ、大丈夫でふ、可愛い! 問題な、可愛い!」
「……あの、あ、姉は重度のシスコンで、私がお姉ちゃんて言うと、大体こんな感じに」
「あぁ、し、幸せです」
「…あ、愛されてるね、リオちゃん…まぁ、あまり姉を興奮させないようにしなよ
と言うかアルル、流石に鼻血を出しすぎだよ」
「す、すみまへん…」
アルルが鼻血を拭き取りながら、ゆっくりと立ち上がった。
しかしだ、かなりの出血だと言うのに、アルルは満面の笑みを見せている。
鼻血をダラダラと流しながら笑う変態とか怖すぎる。
「いやぁ、やっぱり良い物ですね! 妹って!」
「そ、そうだね…とりあえず、リオちゃんが大丈夫そうで安心したよ、これなら大丈夫そうだ」
「あ、はい、私も頑張ってお仕事しますよ!}
「あぁ、でも、今はまだ営業時間外だし、妹達と遊んでいても問題無いさ
それに、休むときは休む、働くときは働く、切り変えが大事なんだからねぇ」
「はい、分かりました!」
そう言い残すと、エナさんは部屋から出ていった。
で、俺はまたアルルのアホとフランの3人になった。
「でも、リオさんが妹だとすると、私はリオさんと結婚できませんね」
「貴様なんぞと結婚するつもりはねぇし、そもそも性別同じだし」
「そう、リオは私の物になるの、邪魔しないでよ」
「お前の物にもなんねぇよ!」
「ふ、甘いですね、私はリオさんと既成事実を作り、大願への道へ進んでいるのです!」
「あぁ!?」
「と、言う夢を昨日見たので、私の方が優位の筈!」
「なんて夢見てんだよ!」
もう、何か怖いわ、夢の話でよかった…いや、だって俺は昨日ぶっ倒れてたから
もし何かされてたとしても、多分気付けなかった…だから、何か冗談に聞えない。
「いやぁ、昨日リオさんがお薬飲みましたよね?」
「あぁ、事故でな」
「その時にあの薬、色んな意味でヤバい薬だと勘違いしてしまいまして
私の脳内環境がすぐに凄いことになったリオさんを妄想してしまい、それが脳に刻み込まれ
でも、途中で夢だと気付き、がっかりした反面、夢なら問題無いよねと言う思考が降臨!
夢の中のリオさんをそれはそれは大変な姿に! あだぁ!」
何か凄くイラッとしたからこいつの頭をウィンチェスターで殴った。
「不味いですよリオさん、それは痛いですって!」
「痛めつけるためにやったんだし当然だろう? さて、この野郎、そろそろマジで調教するぞ」
「リオさんに調教されるならむしろウェルカム! と、言いたいところですが、その、リオさん?
その銃は一体? ほ、ほら、調教と言えば鞭と蝋燭ですよね?」
「あぁ? 何言ってんだ? そんな生チョロいもんなわけねぇだろうが」
「…い、いやぁ、あの、り、りり、リオさん! あれです! 夢の話です!
夢のお話しでガチキレするなんてお、大人げないなぁ、もう」
「少なくとも今は子供だからな!」
「あだぁ!」
とりあえず軽く叩き込み、そのまま腹の上に乗っかり踏み付けた。
しかし、やっぱり子供の体重だからか、あまり痛く無さそうにしてる。
「うふふ~、リオさんの体重でそんな事しても痛くないですよ~? と言うか微笑ましいです!」
「…仕方ない、なら、あの上にある薬をお前に飲ましてやる」
「り、リオさん!? それは駄目です! そんな事をしたら、私が私じゃ無くなり
猛獣になりますよ? で、勢いのままリオさんを襲って、夢の続きをすることになります!」
「…何かマジでそうなりそうだから止めとこう」
と言うか、あの薬が変な薬で、もしアルルのアホが死んだら大変だからな。
「ま、お前が死んでも困るし、仕方ない」
「おぉ! 私の心配をしてくれてるんですね!?」
「いや、お前が死ぬと俺達の飯が危うい」
「そこー!?」
「そりゃそうだろう、飯食わないと俺達死ぬし」
「えー、私が大事だからとかそう言う理由じゃ無いんですか~?」
「貴様みたいな変態を大事にするわけが無いだろう? 間抜け」
「がふぁ! あ、相変わらずの強烈な一撃…だが、そこが良い!」
この馬鹿な一言に少しイラッときた俺は、アルルの眉間に銃口を向けた。
「マジで締めてやろうか?」
「い、嫌だなぁ、じょ、冗談に聞えない冗談は勘弁してくださいよ…」
「冗談じゃ無いぞ? ほれ、自覚あるのか? 俺の指先1つでテメェの人生終わるんだぞ?」
俺はちょっとウィンチェスターの引き金を強く引いた。
「待って! それは怖いです! 本当に勘弁してください!」
「なら自重しろよ」
「それは無理で」
部屋中にサイレンサーで小さくなった音が響いた。
「……あ、あ、あ」
「空砲だよ、間抜け」
「…り、リオさん…そ、その…そ、そそ、そう言う、お、脅しは、や、止めて欲しいです…
ほ、本当にし、心臓…止まるかと…」
「そのまま止まってくれても良かったんだがな」
空砲、弾丸を狙撃銃の中に入れる動作をしない場合、こんな風に音が鳴る。
だが、弾は出ない、今回のウィンチェスターには弾を入れる事はしていなかったため
ただの空砲になった、だが、撃つつもりで召喚した場合は即時弾が装弾されてる様だが
今回はそんな事は無かった、確認する方法としては手元にすぐに出て来た弾丸で分かる。
弾が入っている状態なら手元に出てくる弾丸は3発、空砲ならば4発だ、これも試した。
で、何発残弾あるか確認しようとすると、撃てるだけの弾丸が出てくる、便利な物だよな。
「は、はぁ、リオさんにそんな脅しの方法があったとは…」
「サイレンサー無しで撃った方がビビるぞ?」
「あのですね、この部屋でサイレンサーでしたっけ? その音を消す物が付いてるって事に
なにやらリアリティーを感じて…ゾッとしましたよ」
「は、そうかい、ま、これに懲りたらもう変な真似はするなよ? 間抜け」
「いえ、私は絶対に自重などせず! リオさんを!」
俺はウィンチェスターに弾丸を入れて、アルルの方に向け、引き金を強く引いた。
「うわぁ!」
アルルは焦って顔を背け、しばらく沈黙した後、細目でこちらを見た。
「弾は出ねぇよ、セーフティー掛けたからな」
「……り、リオさん…本当にすみませんでしたぁ!」
「分かれば良い」
「と、と言うかリオさん! 一体、いつの間にそんな沢山の脅し方を!?」
「お前を黙らせるために色々とやったからな、怖かったろう?」
「…本当に怖かったです、リオさんが大変な事になったとき程ではありませんでしたが」
「ん? そんなにあん時は焦ったのか?」
「そりゃあ焦りますよ! どうしようかとか考えて、最悪の場合を考えて!
あ、お、思い出しただけでも涙が…」
「わ、悪かったって! 泣くなよ!」
マジかよ、泣くほどに焦ってたのか、正直…悪い事したな。
だが、大変な事になった時っていつだ? 血まみれで死にかけたとき?
それとも捕まったとき? どっちもかなりやばいと感じたけど。
ま、まぁ、それは良い、何かアルルがシクシク泣いてるし、慰めないと。
「そ、そんな事があったけど、ほら、俺は無事だからさ、だから泣かないでく」
「かかりましたね!」
「なぁ!」
アルルを慰めようと近づくと、不意にあいつが両手を広げ俺を押し倒してきた。
「へへへ、仕返しですよ!」
「こら! てんめぇ!」
「ふふ、騙される方が悪いんですよ、私が過去の事を今更ウジウジと言うとでも?
私が見ているのは常に前! 未来なのです!」
等と強気で言っているアルル…しかし、あいつの目から落ちてきた液体が俺の頬に落ちた。
それに気が付いて、アルルの方を改めて見ると、あいつは涙を堪えながら笑っているように見えた。
「……リオさん」
「…な、何だよ」
「私にどんな悪戯をしても構いません、さっきみたいにとても驚くことをしても構いません
…ですけど、1つだけ、絶対にして欲しくないことがあるんです、悪戯でもね」
「……」
「私の前から居なくならないで…死んだふりとか、絶対に嫌ですから」
「…いきなり気持ちのわりぃ泣き顔を見せたと思ったらそんな事か?
お前の事だ、仮に俺が居なくなろうが絶対に探し出すんだろ? この変態女が」
「…勿論です、それにリオさんに何かがあっても、私が身を挺して守りますしね
…リオさん、すみませんね、私の汚い泣き顔…見せちゃって、やっぱり私は笑ってる方がそれっぽい」
アルルが俺の方を見て、ニッコリと笑った、いつも通りに戻ったという感じか。
だが、まさかそこまであの時の事をトラウマに思っているとは思わなかった。
「本当に、お前は何処まで本気なんだよ」
「何処までもですよ、さっきの言葉も、あなたへの愛も」
「止めろ気持ち悪い、それによ、先にさよならするのは俺じゃ無くお前の方なんじゃねーの?」
「え?」
さっきっから後ろの方でフランが圧倒的なほどの負のオーラを放っている。
「あ」
「アルル…許さない! 操って大変な事にしてやる! きひひ!」
「あぁ! ヤバいです! あの笑い方は久しく聞くヤバい笑いです!」
「これはかなりガチだぞ? お前はフランから逃げ切れるか?」
「あぅ、ち、力が抜けるぅ…り、リオさん、助けてぇ…」
その後、何とか俺がフランを説得し、何とか暴走を止めることが出来た。
これでアルルは助かったが、アルルを助ける交換条件として
俺は今日フランに抱きしめられて過ごすことになってしまった。
何であの馬鹿の為に俺がこんな目に遭わないといけないんだか…はぁ、散々だ。
……と言うか、今更ながらこれって俺、かなり大変な状況なんじゃ無いか?
えっと、これから毎日アルル、フランと同じ部屋で寝るんだよな?
……あ、今更だが人選ミスったかも知れない、能力的には良いとは思うが
俺自身の事を考えてなかった…だ、大丈夫…だよな? 大丈夫だよ、きっと
エナさんも居るし、多分…大丈夫…だよな?




