絶対に見付け出す!
アルルに連れられ、城に戻った後も俺は必死に考えた。
2日間の間も、俺はずっと眠らずに必死に。
しかし、無理が祟ったのか、あまり体調を崩さなかったが、ついに体調を崩してしまう。
「…‥けほ、けほ」
「リオさん、大丈夫ですか? 顔色も凄く悪いですし、目にも凄いクマができてます」
「だ、大丈夫だ」
あぁ、無理ばかりした結果体調を崩す…‥だが、のんびりしてはいられないだろう。
あの戦争で何人もの人が死んだ、どうして沢山の人が死んだのかを俺は探し出さないといけない。
理由も知りたいが、今大事なのはどうして爆発したか、それをなんとか見つけ出す必要がある。
そうしないと、次の場所を制圧した時に今回の二の舞になってしまう。
これ以上、あんな悲劇を出さないためにも、俺は何が何でも理由を見つけ出さないといけない。
そうしないと、笑顔で帰れやしねぇよ。
「アルル、もう一回…あの場所に」
「駄目です」
「頼むよ、どうしても行かないと駄目なんだ…」
「駄目です、寝ててください、そんな状態で動いたら駄目です」
「だけど…なんとしてでも理由を見付けないと」
「駄目です」
俺が必死にお願いしても、アルルは俺をあの場所に連れて行ってはくれようとしなかった。
あぁ、確かにこれが当然だろう、体調不良の人間に無理をさせるわけには行かないだろうからな。
でも、それでも俺は諦めずに何度もアルルにお願いした、だが、駄目だった。
「何でだよ…俺は急いで見つけ出さないといけないんだ、そうじゃないと…
次の場所もあの街みたいに…だから」
「リオさん、焦る気持ちは分かります、私だって速くどうしてああなったかを突き止めたい
なんの罪も無い人達が何人も何人も死んだんですから…ですが、無理をしても意味はありませんよ
だって、あなたには沢山の仲間がいるんです、任せてくださいよ」
「どういうことだ?」
「リオさんが体調を崩した後、私は皆さんにリオさんが必死に理由を探していることを告げました
すると、皆さんリオさんの為に頑張りたいと言って、調査に向いました」
「お前! あ、あいつらに、あの惨状を見せようってのか!?」
「説明はしましたよ、どんな状況か、事細かに、皆さん少し怯えていました
でも、リオさんの為に頑張る、その気持ちが勝ったのでしょうね
皆さんは一切躊躇うことは無く、あの場所に向いましたよ」
あいつらに…あの惨状を見せる、正直それは避けたかった。
自分達のせいであんな風になったとあいつらが考えたら、あいつらは凄く辛い思いをする。
だから、出来るだけ明るく振る舞っていた、あいつらを不安にさせたくなかったから
そして俺だけで見つけ出し解決したかったのに、それなのに結局あいつらを巻込んでしまった。
俺が体を壊しさえしなければ、こんな事には……
「なんで…俺はいつもこの様なんだよ…どんだけ頑張っても、結局1人じゃ何も出来ない」
「1人でなんでも出来る人はいませんよ、私達は全員得意な物が違いますからね
だから、お互いが欠点を補いながら頑張ってきた
今までもそうだったでしょう? 誰か1人掛けてたら駄目だったことばかり
だから、リオさん…どうか1人で背負い込まないで、私達にも手伝わせてください」
何度目だろう、こうやってアルルに説得されるのは。
何回も何回も言われてきた、その度に納得はする。
でも、結局自分1人で背負い込んで、体を壊していた。
それなのにこいつは俺を見捨てず、何回も何回も説得してくれたり、助けてくれた。
まるでカナン先生みたいだ、あの人も無茶ばかりする俺を何度も説得してくれてた
はは、何でだろうな、どうしてこんな変態と先生を重ねてしまうんだか。
あぁ、きっと眠たいからだ…ずっと眠らなかったから、変な風に見えるんだろう。
「……アルル、分かった…じゃあ手伝ってくれ、あの人達の無念を晴らす為にも
これ以上、あんな惨劇を繰り返さないためにも…俺といっしょ…に」
あぁ、まぶたが重い…5日間だ、5日間も寝てなかったんだ、そりゃあ、眠くもなる。
でも、不思議だな…ちょっと前まで、全く眠くなかったのに
あいつの言葉を聞いたら、何故か体が軽くなって、まぶたが重くなる。
「リオさん…一緒に見付け出しましょうね、絶対にあんな悲劇を繰り返さないために
そして、その元凶を倒して、あの人達の無念を晴らしましょう」
「……ありがとう、見捨てないでくれて」
「私は絶対にあなたを見捨てません、一生付いていきますよ」
アルルの小さな声が聞えた後、俺は安心してか、そのまま眠りに付いた。
その時に見た夢は…何でか、いつも通りの夢、いつも通り俺達全員で飯を食べてる夢。
その夢の中にはカナン先生の姿とひまわりのガキ達の姿もあった。
「リオさん、グッスリですね、かなり眠たかったんでしょう」
リオさんはいつも無茶ばかりをする、今回はもしかしたら1度も寝てないのかもしれない。
普通ならあり得ないでしょうけど、リオさんだし、可能性はありますよね。
でも、そんなリオさんが眠ってくれたって事は、安心してくれたって事でしょう。
本当にすぐに無理をするんですから、でも、だから付いていきたいと思ったんですけどね。
それにしても、寝顔可愛いなぁ、やっぱり天使だなぁ。
おっと、いけないいけない、こんな事をしている場合じゃありませんでしたね。
速くフレイさん達に合流して一緒にどうして爆発したのかを探さないと。
「あ、アルル、リオの様子はどうですの?」
「メア姫様」
私が急いで部屋から出ようとすると、お花を持ってウロウロとして居るメア姫が立ってた。
きっと、リオさんのお見舞いに来たんでしょうね、でも、恥ずかしくて入れなかったのかも。
「リオさんは大丈夫ですよ、今はグッスリ眠っています」
「そ、そうなんですか、で、では、この花をリオに渡して欲しいのですわ」
「メア姫様、それはご自分で、きっとリオさんもその方が嬉しいと思いますから」
「…そ、そうですわね、じゃ、じゃあ、窓の近くに置いておきますわ」
メア姫様は少し嬉しそうに部屋に入っていき、部屋の窓際まで行き
手に持っていた鞄から花瓶を取りだし、その花を慎重に入れだした。
やっぱり自分で渡すための道具も用意していたんですね、分かってましたけど。
「アルル、私も来たんだけど、リオは大丈夫? 後、メアは来たかしら?」
メア姫様が花瓶に花を入れている間にリサ姫様もやって来た。
リサ姫様は沢山の果物を持ってきてくれている。
きっとお花はメア姫様が持ってきてるって知ってたんでしょうね。
「はい、メア姫様も来ていますよ、リオさんも大丈夫です」
「そう、良かったわ」
「それと、お手間じゃ無ければなんですけど、リオさんの事お願いできますか?」
「どうしたの? 何か用事でも?」
「はい、フレイさん達が爆発の原因を探しているので、私も探しに行こうと思いまして
リオさんにも頼まれましたしね」
リサ姫様が私の方をジッと見た後、少しだけ微笑んだ。
「良いわよ、任せときなさい、可愛い妹の面倒を見るのも姉としての勤めよ
だから、あなたもリオの部下として頑張ってきなさい」
「はい、ありがとうございます」
リサ姫様ならリオさんの事を任せても大丈夫ですよね。
本当ならずっと看病してあげたいですけど、それよりも大事な役目を貰いましたから。
私は急いでフレイさん達に合流するために走り出した。
「アルルさん、どうしたのですの?」
「はぁ、はぁ、私も行きますよ、原因探し」
「え? り、リオさんの、看病は、ど、どうしたのですか?」
「リサ姫様にお任せしてきました」
「……リオさんの看病ですし、アルルさんなら喜んですると思っていましたが、意外ですわね」
「リオさんにお願いされましたから、なので、私はその方を優先します、絶対に見付けないといません」
私の言葉を聞いたシルバーさん達は少し固まった後、リサ姫様と同じ様に少し笑った。
「そうですの、では、一緒に頑張りましょう、アルルさん」
「はい、絶対に見つけ出します、あの人達の無念のためにも、そして、リオさんの為にも」
私達は足並みを揃えて、あの街の方まで移動した。
そこはまだ荒れ果てたままで、少数の兵士達が亡骸の回収をして居る最中だった。
「……なんで、こんな」
その悲惨な光景を見たフレイさん達はその場に固まってしまい、動けなくなった。
やっぱりリオさんが思ったとおり、フレイさん達には厳しすぎた現実だったかもしれません。
「…皆さん」
「……なんで、こんな事になったのか、それは…分からない
だけど、分かることはある…それは、見つけ出さないといけないって事
なんでこんな事になったのか、誰がこんな事をしたのか……見つけないと、いけない
この光景をみて、改めて思った…絶対に見つけ出す」
普通なら動けなくなってもおかしくない程の悲惨な光景。
でも、トラさんはその光景を見ても、震えながらも足を進めた。
だけど、トラさんの目には確実に涙が浮かんでいた。
それでも歩む…やっぱりトラさんもリオさんに似ています。
「リオならそうする…絶対に、だから、私達もやるよ」
「……そうだね、リオちゃんの為にも私達が頑張るんだ、動ける私達が!」
「リオはきっと知ってた、でも、私達の為に普段通りに振る舞ってた、リオはそう言う子
だから、私達もリオの為に頑張って見付けないと…こんな事をした元凶を」
「……泣いてても始まらない、頑張らないと」
……こんな光景を見て、一時的に固まってたのに皆さんはリオさんの為に歩みを進める。
リオさんに似ていたのはトラさんだけじゃありませんでしたね、皆さん、リオさんに似てます。
酷い光景を見て困惑しても、それでも歩みを進めて原因を探そうとする。
でも、少し方向性は違いますね、リオさんは皆さんの為に無理をして自力で答えを探そうとする。
皆さんはリオさんの為に無理をして一緒に答えを探そうとする。
1人は皆の為に、皆は1人の為に…まさにそんな状況ですか
本当に美しいです、皆さんリオさんが本当に大事なんですね
まるで自分の事みたいに嬉しく感じます。
「リオさん、やっぱり愛されてますね」
「そうですわね、分かる気はしますが」
「シルバーさんも分かります?」
「えぇ、必死に努力して、無茶ばかりしますが、行動の殆どは他人の為ばかり
今回黙っていたり、明るく振る舞っていたのもトラさん達の為
本当に優しい方ですわ…あの人のお陰で、私も人を殺すのは当たり前では無いと気が付けました」
「私も…そうです、リオさんに会う前は戦争で人を殺すのは当たり前だと、思ってました」
「私も同じ感じ、不思議な子だよ、私の常識を全部変えちゃって」
「そうですね、リオさんの前では当たり前が変わった、当然良い意味で、ですよ」
リオさんは本当に短い間で私を変えてくれた、人を殺める事が心を痛めることだとは思わなかった。
当たり前だった、戦争で沢山の民が死ぬのも仕方ないことだと思ってた。
でも、今は違う、今は人を殺すことは極力避け、国民ですら無い住民の為に
こうやって必死になって原因を探す…前までの私じゃ考えられなかった事ですよ。
でも、今の私はこうやって積極的に原因を探している、リオさんの影響でしょうね。
リオさん、私は一生あなたに付いていきますよ絶対に。
「さぁ、急いで探しましょう、なんでこうなったかの原因を突き止めるために!」
全員の力強い返事が周りに響いた、絶対に見付けて見せますよ、原因を!




