休まず考える
俺が目を覚ましてから1ヶ月経過した、俺はようやく少しずつだが動けるまでに回復
今は何とか入院が終わり、部屋で安静に待機する感じになっている。
まだ足が棒みたいに重いが、それもリハビリで何とか回復するだろう。
しかし、俺が万全の状態に回復するまではかなりの時間が必要か。
「はい、リハビリはそこまでです」
「はぁ、ふぅ、あぁ…ちょっと動いただけでスゲー疲れた」
俺は結構引きこもりがちで体力は無いが、今日ほど歩くのが辛いと思ったことはない。
「リオさん、お疲れ様です」
「アルル、お前ずっと待ってたのか?」
「えぇ、心配でしたし」
心配するような事は無いだろうに、まぁ、こいつは結構心配性だからな。
「そうか、まぁ安心してくれ」
「そうみたいですね」
俺のリハビリが終わっと確認したアルルは俺を背負い、部屋にまで連れて行ってくれた。
「はい、ゆっくりと休んでくださいね」
「分かった」
扉を閉じるときに、チラリと俺の方を見た後、アルルは音を立てないように扉を閉めた。
…‥一応、後もう少しはこのままで安静にしておこう。
それから、1時間程休んだ後、俺はベットから立ち上がり、自分用の机の前に座った。
「……あの爆発、一体どうなったんだろうか」
折角自由に動けるようになったんだ、時間を無駄にはしたくない。
とにかくグダグダと休んでる暇があるなら、どうしてあんな事になったかを考えないと行けない。
俺は机の引き出しから白紙の紙を取りだし、どうしてあんな風になったのかを書いて考える。
後で忘れたりしたら大変だからな。
「まず何が爆発したのかを考える、あれほどの規模の大爆発が爆弾1つで出来るわけが無い
つまり、無数の爆弾が同時に爆発した、あるいは誘発したと考えるべきだ
だが、一体どうやったのか、それが一番の問題になる
誰かが起爆をしたと考えるのが一番最初に出てくるが、それは不自然だ
何せ、あそこの兵士達は自分から進んで命を捨てようなんて考える奴は少ないからだ」
どう考えても生きるために兵士になっている様な奴らばかりだった。
国の為に命を捨てる、そんなとち狂った様な考えを持つ奴がいるとは思えない。
…‥‥それに、何処に大量の爆弾を置いているのかも分からない。
まぁ、仮に分かったとしても何も残っていないだろうから、大した意味は無いだろう。
「……うーん」
色々と考えを巡らせても、結局可能性がある考えは出て来ない。
そんな風に1日中考え、気が付くと外が明るくなっていた。
うーん、ちょっと前に暗くなったと思ったんだが、気が付いたら明るくなってた。
「……うーむ」
まぁ、時間はいくらでもある、考えるだけなら体力は大して消耗しないからな。
現に1日中起きていても全く眠くない。
「どうやって爆破したんだろうか」
俺は再び考えを巡らせる事にした。
命を捨てる兵士がいないと考えるなら、遠隔での爆破の可能性がある。
だが、遠隔で物を爆発させる技術は無いだろう。
現実世界にはC4とかの遠隔爆弾が存在してるわけだが、銃火器すら無い世界にそんな物がある訳ない。
だから、遠隔での爆発なんて出来るわけが無い、じゃあ、やっぱり誰かが直接起爆したと。
でも、国民達を巻込んでの爆撃を平然と出来る人間がいるわけがない
だってあそこの兵士はきっとあの街出身の兵士だろう
そんな奴らが家族を巻込んでしまうような爆弾の起爆をするとは思えない。
「…‥それに兵士達の殆どは喜んでいた、爆撃なんてするとは思えない」
うぐぐ…考えれば考えるほど訳が分からなくなってくる。
「リオさん」
「うわぁ!」
俺が色々と考えていると、目の前にアルルの顔が出て来た。
「な、何だよいきなり…び、ビックリした」
「さっきっから何度も呼んでましたよ、どうしたんですか?」
「な、何でも無い、ちょっとあれだ、考え事をしてたから」
「リオさん、休んでてくださいよ…まぁ、それは後にして、ご飯が出来ました」
「そうか、で? 何処にあるんだ?」
「共同のお部屋ですよ」
「分かった、連れてってくれ」
「はい」
アルルに手を引っ張って貰い、俺は共同の部屋に移動した。
部屋に着くと、フレイがよだれを垂らし料理を凝視している。
だが、一切手は付けていない、待っててくれたんだな。
「り、リオちゃん! やっと来たんだね! さぁ! いただきますだよ! お腹減った!」
「……分かったよ」
全員が揃っての食事か、何だか凄く懐かしい気がする。
そして、何だか少し涙も出そうだ…全員生きてたわけだからな。
俺はもう2度とこの場に座れなかったかもしれなかったんだから。
「じゃあ、いただきます!」
「いただきます」
元気いっぱいのフレイの挨拶の後、俺達は全員同時に挨拶をして食事を始める。
俺の食事は皆とは違い、結構質素な物になっている。
理由はまだ万全な状態じゃ無いからだな。
「ん…意外と美味しいな」
かなり質素な料理ではあるが、なんとも俺好みの味だ。
このほどよい塩気がかなり好きなんだよな。
「えぇ! そりゃあもう! リオさんが大好きな味付けを研究し!
体に悪影響が無い食材を使い、リオさんが大好きな味付けに必死に近づけた料理ですから!
いやぁ、料理の一品を作るのに3時間掛かるとは思いませんでした」
「さ、3時間だと!? お前、今の時間は7時だぞ? お前4時から料理作ってたのか!?」
「えぇ、リオさんに美味しいご飯を作ってあげたくて…そ、それにほら!
相手のハートを掴むには、まず胃袋を掴めと言いますし!」
何だ、やっぱり下心全開だったのか…と、思ってはみたが
アルルはあの回答が出るまで少し間が開いた、それに少し耳が赤いからな
多分あの理由は即席で考えた物だろうな。
何でわざわざマイナスになる言葉を言ったかは分からないけど。
「ふーん、ま、美味いし、別に突っ込みはしないさ」
「それはつまり! 私にハートをゲッチュされたという!」
「はぁ? 料理が美味しいだけで相手の心を奪えると思うなよ?
お前は普段からマイナス要素の塊なんだ、それが料理だけで帳消しになると思ってんのか?」
「き、厳しいお言葉、何も反論できません、でも、反省はしません」
「反省しろ馬鹿、反省しないと成長出来ないぞ」
「リオさんだって反省しないじゃないですか、無茶ばっかりしてますし」
い、今言うんだ、確かに無茶ばかりしてるから何も言えない。
「そ、そうだけど」
「まぁ、私は出来れば今のリオさんのままが良いです
でも、安心してください、大きくなっても私はリオさんを愛し続けます!」
「キモいことを言うな、いい加減に風穴開けるぞ?」
「分かってますよ、今のリオさんは魔法が使えな」
何か馬鹿にされたからウィンチェスターを召喚してアルルの眉間に銃口を付けた。
「悪いな、もう一度言ってくれるか?」
「い、いやぁ、まほうがつかえるまでかいふくしてくれてアルルさんはうれしいです」
顔面蒼白のままアルルが片言で答えた、面白い反応だな。
どうやら、本当に俺が魔法を使えないと考えていたみたいだ。
「少し俺を侮りすぎたな、病み上がりだろうが1発は撃てる」
「さ、さすがリオさん…あ、あの、そ、その、わ、分かりましたから
そろそろ、それを離してくれれば、あ、ありがたいかなぁと」
「そうか、反省しろ」
俺はウィンチェスターの銃口をアルルの眉間から離してやった。
「い、いやぁ、回復速いですね、あはは」
「速くはねぇよ」
その後、食事を終えた俺はアルルに自分の部屋に連れて行って貰った。
あんな事があってすぐに、楽しく食事をする、罪悪感が無いわけじゃない
でも、深刻な表情のままあいつらに接触してたら不安にしてしまう。
出来る限り、今まで通りの自分を演じないといけない。
その後から3日間ほど、俺は同じ様な事を繰り返し
眠らずに考え続けた、しかし、何故あんな爆発が発生したのかは分からないままだ。
自分を捨ててまで街を滅ぼすような兵士はそういないだろうし
遠隔で爆発する手段も無い筈だ、でも、現に街は爆発したんだ
何かがあったはず、何か大規模な爆発物があった筈なんだ。
どうしても腑に落ちない、絶対に何かあるはずだ。
「リオさん、体調はどうですか?」
「アルル、あの街に連れてけ」
「ま、街ですか?」
「あぁ、爆発した場所だ、連れてけ」
「で、でも、リオさんはあまり動ける状態では」
「良いから!」
「わ、分かりましたよ」
なんとかアルルに街へ連れて行って貰い、俺は色々と探す事にした。
しかしだ、爆発し酷い有様になっているあの町をみて、あの時の光景を思いだし
少し吐き気を感じてしまうが、必死にこらえた。
「まだここの復興は出来ていません、少し前にようやく亡骸を…いえ、何でもありません」
「そうか」
結構な月日が経っていたはずだが、俺達の兵士もかなり被害を被っただろう。
だから、街の人達の亡骸を集め、火葬したりするのに時間が掛かったんだろう。
「なぁ、アルル」
「はい」
「あの爆発での被害は…どんな物だったんだ? 俺はどれだけ被害を被ったか知らないんだ」
「いえ、でも…」
「頼む、俺達に精神的ダメージを与えないためだってのは分かるが、それでも知りたい」
俺達にどれ程の被害があったのか教えないのはそれが理由だろう、俺達は子供だから。
「……良いんですか? 知らない方が良いこともありますよ」
「良いから教えろ」
「……街の住民の9割は死亡、1割は重傷です、私達の兵士達は3割は死亡、3割は重傷、2割は軽傷
2割は無傷です、兵士の被害は攻撃部隊の被害です」
「9割も死んだのか…でも、1割は無事か」
「はい、ですが生存者の数は10名、死亡は約1000人、1割とは言い難いですが」
「そんなに…」
街の人達の内、1000人も死んだのか、殆ど全滅、ここに住んでいた人はもう10人だけ。
なんでこんなに死んだんだよ、なんの為に…どうして…
「…絶対に見つけ出さないと、なんでこんな事になったかを」
「リオさん…気持ちは分かります、ですが無理はしないでください」
「大丈夫だ、ちょっと色々と探すだけだから」
俺はアルルに連れられ、崩壊した街を回る事にした。
その時、最初に違和感を感じたのは地面だった。
地面にはいくつもの穴が開いているようで、沢山の瓦礫が沈んでいる。
この事からあの爆発は足下から発生した可能性が濃厚だ。
「足下からの爆発だな」
「爆発ですか、魔法でしょうか?」
「違うだろ、魔法なら足下じゃない筈、いつでも出せるんだから」
魔法ならわざわざ地面の中から攻撃することはない筈。
地上での攻撃の方が殲滅力もあるだろう。
だが、わざわざ地下からの攻撃と言う事は、火薬とかによる爆発の可能性がある。
「きっと爆薬での爆発だ、色々と探すぞ」
「あ、はい」
でも、瓦礫をどかすほどの力は俺達には無く、瓦礫の上を探す事しか出来なかった。
その間に赤い液体がしたから流れ出ている瓦礫を何カ所も発見してしまった。
その周囲では腐敗臭が漂い、ハエが飛び回っている。
「まだ見付けて無い亡骸も何カ所もあるみたいだな」
「そうみたいですね…瓦礫をどかすことが出来なかったんでしょう」
その瓦礫をどかそうと2人で頑張って見たが、動くことは無い。
どうやら、俺達2人だけじゃ、亡骸を救い出してやることすら出来ないか。
「……探すぞ、手がかり」
「そう…ですね」
何もしてやれないという無力感を抱きながら、俺は瓦礫の上を探した。
しかし、爆発の手がかりを見付けることは出来ず、無駄足だった。
「クソ、見付からないか」
「リオさん…諦めましょう、私達だけじゃ手がかりは見付かりませんよ」
「そんな事! あ」
アルルに対して怒鳴ったら、俺は足に力が入らなくなった。
「リオさん!」
転けそうになった時、アルルがすぐに俺を受け止めてくれ、転けずにすんだ。
「…クソ、足が」
「まだ1人で歩ける状態では無いんです、無理しないでください」
「まだ…何も見付けてない…」
「…はぁ」
諦めきれ無い俺を見かねたのか、アルルが俺の事を背負った。
「お、おい! 何を! まだ何も!」
「諦めてください、体壊しますよ」
がっちりと掴まれ、アルルの背中から脱出することも出来ない俺は
そのままアルルに背負われ、城にまで戻された。
……クソ、もっと力があれば、色々と見付けることが、助けることが出来たのに…




