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唯一の狙撃手

アルルの案内で全力で走ってはいるが…異常な程しんどい…

いや、そりゃな、考えてみれば

俺ってずっとインドアだったし、体力は無いよな。

その上、今は幼女の姿をしてるし

あ、アルルの歩く速度が速すぎる…


「はぁ、はぁ、あ、アルル、ちょ、ちょっと待って…はぁ」

「あ、す、すみません、ペース速すぎましたよね」

「はぁ、はぁ、いや、速めに移動してくれるのはありがたいんだが…

 はぁ、時間ないし、はぁ、はぁ」

「呼吸が荒くて、苦しんでる姿もカワイ…いえ、何でもありません」

「この、ひ、人が苦しんでる姿を

 か、可愛いとか、ふざけ…はぁ、はぁ」


ヤバい、こ、呼吸が中々整わねぇ…

うぐぅ、足は遅いし…息切れは酷いし…

あ、足も痛い…ほ、ほんの数分程度しか走っちゃ居ないのに

…し、しんどすぎる。

くそう…フレイとかに巻き込まれて

遊んでたのに、体力、ねぇな…


「仕方ありません、時間がありませんし、私が背負います」

「あ、あぁ、分かった、ありがとう」


俺はアルルに背負って貰い、移動することにした。

うん、やっぱり速いな…流石は大人の軍人だ、体力と足の速さが凄いな。


「そろそろ目的の場所に着きます、ですが、ここから崖を登るので

 しっかり捕まってくださいね」

「が、崖!? マジで! 崖上るの!?」

「はい、この山は高低差が激しいので、崖を登ります

 と言うか、近道します

 崖を登らない道筋もあるんですが、ここが最短ですから」

「だ、大丈夫なのか? 流石に俺を背負った状態だと、お前が」

「いえ、大丈夫です、リオさんは空気のように軽いので

 一切問題ありません!」


いや、流石にそれはないだろう、だって、人間だぞ?

いくら幼かろうと体重はあるし。

と言うか、俺の体重って、確か計ったときは14kgあったはずだし…

確かに先生には5歳なのにかなり体重が軽いわね、

とか言われてたが、14kgはあるし。


「いや、強がらなくても…俺は14kgあるんだぞ?」

「あ、いえ、その、そう言う意味では…とにかく、問題ありません!」

「そ、そうなのか? 

 まぁ、確かに鍛えても無い体でこの崖を登るのは無理があるしな」

「そう言うことです、それではしっかり掴んでいてくださいね! 

 離れないで下さいよ!」


俺にしっかりとそう言い聞かせると、アルルは崖を軽やかに上り始めた。

すぐに崖の出っ張った部分に手を伸ばし、掴み、軽々と上って行く。

こいつ、こんなに能力が高かったのか…ロッククライミングの経験者?


「は、速いな…」

「私、良く山登りしてたので」

「垂直の岩肌を上ることを山登りというのか…

 てか! よ、よく見たら頂上辺りが反ってるぞ!?」

「大丈夫です、あの程度の角度なら何の問題もありません、よ!」


お、おぉ! 結構反ってるのに、それなのに落ちない!

か、かなり力あるな、こいつは


「しっかりと掴んでいて下さいね!? 絶対ですよ!?」

「え、あ、あぁ」


俺はアルルの忠告を受け、アルルの首辺りを思いっきり抱きしめた。

場所的に、ここが1番掴みやすいし。


「あ、あの、大丈夫か? 首締まってそうだけど…」

「大丈夫です、リオさんのか弱い力で締まるほど

 私の首はヤワじゃ無いので、それじゃあ、行きます!」


アルルは俺に最終報告を行ない、体を軽く揺らし始めた。

そしてある程度勢いがついたら、岩肌を思いっきり蹴りやがった。


「よいしょぉ!」

「うわぁぁ!!」


壁を思いっきり蹴ると、アルルはバク宙をするようにして

反っている崖を乗り越えた。

その時俺には結構な遠心力が掛かり

危うく腕が離れそうになったが、辛うじて耐えた。


「っとと、乗り越えましたよ」

「…あ、アルル、な、なんでそんな無駄に格好付けて越えたんだよ!

 普通に上りゃあ良いだろう!」

「いやぁ、リオさんに格好いいところを見せたくって

 どうですか? 格好いいでしょう?」

「死ぬところだったわ! 危うく腕が離れるところだったんだぞ!

 こちとら心臓止まるかと思ったわ! このアホが!」

「はい! 私はアホです! ですのでもっと怒って下さい!」

「ふっざけんなぁ! 冗談抜かしてる場合かよ! 

 マジだぞ! ガチなんだよ! こちとらぁ!

 この変態間抜け馬鹿女がぁ!」

「ありがとうございます!」


こ、こいつ…ぜ、全然反省してない…ど、どんな神経だよ


「…はぁ、もう良い! とりあえず、運んでくれて助かった」

「およ?」

「とにかく、状況が状況だ

 そもそも、お前に怒鳴り散らしても意味ないしな…っと」


俺は自分の手を意識して、軽く力を込め、狙撃銃を召喚した。

当然、出て来たのはウィンチェスターだ、形状も同じだな。

やっぱり、射撃モードを切り替える箇所がついている、ここは変わらないのか。


「アルル、これからは俺の指示に従ってくれよ」

「あ、はい、分かりました…所で、その変わった形の物は?」

「狙撃銃、まぁ、俺の魔法だな」

「武器なんですか?」

「あぁ、武器だ、見ない形状かも知れないが紛れもなく武器だ」


俺はスコープを覗き、狙撃できそうなポイントを探すことにした。


「ここはまだ無理か、こっちだな、付いてきてくれ」

「あ、はい」


そんなこんなで狙撃ポイントを捜索していると

ようやく良さそうなポイントを見付けた。

ここなら、戦っている味方の兵士も、敵兵も見えるし

何よりあの狭いルートがよく見える。


「よし、ここだな、とりあえず二脚だな、サイレンサーは要らないか」

「ん? 何だか、その武器に変な物が出て来ましたね」

「あぁ、どうにも自在にカスタマイズ出来るみたいだからな」


俺は二脚を立てて、伏せうちの体勢を取った

距離が距離だから、こうしないと安定しない。

スコープの倍率はスコープの上に付いてる

このネジの様な場所で出来るんだな。

実際の物は使ったことが無いから知らなかったが

ここを捻れば、いくらでも倍率上がるのか。

ゲームだと8倍と10倍くらいしか変えられないのに

これだと100倍くらい行けそうだな。

にしても、距離が凄いな…もう少し近いかと思ったが

予想以上に距離がある。

でも、大まかな弾道計算は出来る

落下だけだが、風の計算は難しいな。

まずはどういう風に弾が動くのかを試してみる必要があるか…

とりあえず、向こう側にある木の幹を狙ってみるか。


「……そこそこ距離はあるし、これ位かな」


俺は弾が落ちることを考え、若干上を狙い引き金を引いた。

引き金を引き、馬鹿でかい銃声がしたと思ったら

弾丸は一切落ちること無く、狙った場所に到着していた。

と言うか、少しくらいは時間差がありそうなのに、一切の時間差は無い


「な、何!?」

「何だか大きな音がしましたね、どんな武器なんですか?」

「あ、えっと遠距離から相手を撃つ武器だ」


…もしかして、この狙撃銃に弾が落ちるという概念と

タイムラグは無いのか?

だとすると超長距離射撃も出来るって事か

弾道計算も必要ない、タイムラグも無いか。

これは、かなり強いかも知れない…だが、念の為だ、もう一回試し撃ちだ。

今度はタイムラグの事を調べたいから、あの結構距離のある木だな。

タイムラグが無いならこのまま引き金を引けば、すぐにあそこに行く筈。

俺が引き金を引くと一瞬で木の方まで弾丸が到着した

着弾した音も聞えたしな。


「よし、やっぱりそう言うことか」

「どういうことですか?」

「何、確認しただけだ、じゃあ、お前に指示を出すぞ」

「あ、はい、分かりました」

「お前は双眼鏡を覗いて、敵の位置と味方の状況を知らせてくれ」

「はぁ、分かりましたけど、この距離で分かっても何の意味も無いのでは?」

「大丈夫だ、信じてくれ…あ、それと周辺の警戒も頼む、得意なんだろう?」

「はい、任せて下さい、とりあえず、その2つですね」

「あぁ、少なくとも今はな、その内指示が変わるかも知れないから

 俺の言葉は聞いてくれよ」

「はい」


俺はアルルにある程度の指示を行ない

狙撃銃に弾丸を装弾しスコープを覗いた。

すると、不思議なことに相手の会話が聞えてきた、指示もだ。

どうやら相手は左右の山から奇襲を仕掛けようとしているらしい

何人かが崖を登ろうとしている。

誰かを崖の上まで上らせてそこから縄ばしごを垂らそうとしてるのか。

そうすれば崖も登れるし数人で待機させて、チャンスを見て奇襲も可能そうだな。

こっちの部隊は通路が見えない位置で戦ってるし気付かないだろう。


「便利な物だな、この魔法」


俺は崖を登っている敵に狙いを定めることにした。

その敵兵は結構手慣れた感じで崖を登っている。

だが、そんな事はさせない…左右の山から奇襲を食らえば

味方軍の被害は避けられない、そうなれば、徴兵が始まる。

それは内部崩壊の序章だし、意地でもさせないんだよな!


「な、何だ!?」


俺の狙撃は無事に当り、崖を登ろうとしていた兵士は落下した。

その状況を見て敵軍の内側はかなり動揺している様子だ。

で、弾丸を装弾して、そのまま右側の崖を登っている兵士を撃破。


「奇襲部隊が落とされました!」

「ど、どうなっている!? 敵の攻撃か!? 

 しかし、矢は飛んできていないはず!」

「分かりません! 何処からかの攻撃も一切不明! 手段も不明です!」


さてさて、ここで指示を飛ばしている奴を見付けた

どうやら、あの妙に目立つ男らしい。

やっぱり、部隊を指揮する人間ってのは自分意識が強いのかねぇ

無駄に目立って、わかりやすい!


「あが・・・」

「た、隊長!? 隊長! どうしたのですか! 何故頭部から!」

「隊長がやられたって!? ど、どうやって! 何処からだ!」

「矢か? いや、そんな物は刺さってないぞ! ど、どういうことだ!」


よし、敵の隊長さんを撃破することが出来たな。

これだけの大所帯なんだ、きっと、別の指揮を行なう人物が出てくるはずだ。

今度は、そいつを狙って。


「リオさん! あれ、見てください、フレイさんですよ! 大暴れしてますね」

「は!? フレイ!?」


俺はアルルの言葉を聞き、素早くスコープから目を離した。

かなり遠目ではあるが、1人だけ妙に突進してる奴が居るのが分かった。

周囲の敵を容易くなぎ払っている怪力は、もうほぼ確定的にフレイだろう。

しっかし、突撃しすぎだな、後ろで追いかけてる奴しかついて行けてないぞ

このままだとあいつは1人で敵軍に突っ込む…そうなれば、孤立するだろう。

仕方ない、敵の指揮官を潰すのは後だ、今はフレイを援護するとしよう。


「うりゃぁぁあ! 邪魔だよ!!」

「クソ! な、何だよ! あの子供は!」

「誰か止めろ! 急げ!」

「無駄だよ! 全員、倒しちゃうもんね!」

「これはかなり危険だぞ! 撤退! 一旦下がれ!」

「逃がさないよ!」

「待ってください! 突進は無茶ですって! え、援護が!」


やっぱりマナではフレイを止めることは出来ていない様だな。

なんせ、あいつは人の話を聞かない…褒められたりすると聞くのにな。

しかし、このままでは本当にフレイが孤立する、と言うかあの敵軍の動き

推測だが、フレイを誘導しているようにも見える、確認してみるか。


「キは包囲して潰せ、しかし、最近のミストラル国は愚策しかしないな」

「そうですね、あんな何も見えていない子供を戦場に出すとは

 それも、戦闘力だけは高い、もう少し寝かせていれば、化けたでしょうね」

「あぁ、ここで潰せるのは得策だ、才能の芽を潰した愚かさを後悔すれば良いさ」


あぁ、案の定、包囲して殺すつもりだったようだな

さて、じゃあ、こっちからも言ってやるかな

まぁ、聞えないとは思うが…死んで悔しがれ!


「な」

「た、隊長!? そんな! な、何が! どうしたんですか!? 隊長!」

「リオさん! ヤバいです! フレイさんが包囲されてます!」

「なに!? クソ! しくった!」


俺は急いで弾丸を装弾して、再びフレイの近くに照準を向けた。


「だからと油断すると殺されるぞ! 情けは要らない、やれ!」

「い、いくら包囲してきても! 私が全部倒すんだから!」

「クソ! こ、この子供! 強い! だが、死ね!」

「フレイさん!」


フレイの背後から1人の兵士が剣を持って突撃していった。

フレイはその声に気が付き、後ろを振り向こうとしているが

どうも間に合いそうに無いな。

仕方ない、だからもう少し警戒しろと言ったんだ!


「うわぁ!」

「がふ…」

「あ、あれ?」

「いきなり、倒れた? いや! そんな事は良い!

 フレイさん! 下がりますよ!」

「あ、で、でも! まだ敵が!」

「仲間と行動してください! 死にたいのですか!?

 さっきだって、よく分かりませんが

 あの人がいきなり倒されなかったら、死んでたんですから!」

「う、うぅ…わ、分かったよ…」

「待て! 逃がすか!」

「追うな! 下がれ! 隊長がやられたんだ! 撤退するぞ!」

「た、隊長が!? そんなはず! 何処にも敵影は!」

「理由が分からないから下がるんだ! 急げ!」

「クソ!」


フレイ達を追いかけようとした敵部隊は

俺が隊長と思われる相手を狙撃したことにより

撤退していった…はぁ、何とかフレイを救えて良かった…


「おぉ、何故か敵が倒れて助かりました…どうしてでしょう?」

「俺がやったんだ」

「え!?」

「そう言う魔法? だしな」

「なんで疑問系なんですか?」

「いや、何となく」


だって、これは現代兵器だからな、それを魔法として出しているんだから

魔法なのかも知れないが、感覚的には魔法と言うよりも

科学的な武器だし…まぁ、挙動は非科学的だが。

引き金を引いたら、一瞬で相手を撃ち抜く狙撃銃だからな。


「しっかし、集中しているせいか、少しずつ疲れてきたな」

「そうなんですか? どれ位です?」

「そこそこの距離を歩いたくらいだ、まぁ、問題は無いかな」


俺は再びスコープをのぞき込み、敵の部隊の方を見た。


「なにを言っているんだ!? 前衛部隊の隊長が倒されたなんて」

「訳が分からないぞ!」

「おい! 伝令からの報告だ! 

 別動部隊を指揮していた隊長が殺された!」

「なに!? どういうことだよ! 裏切りか!?」

「わ、分からない、だが、死んだらしい、いきなり頭部から血を流して!」

「クソ! ど、どうなってるんだよ! 訳が分からねぇよ!」


やっぱり俺の狙撃は敵の兵士に恐怖を与えるには十分らしいな。

やはり少ない弾薬で戦況を動かすには、権力がある奴を仕留めるのが1番か。

うし、このまま、敵の隊長格を沈めるとするか。

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