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後悔の夢の中

真っ暗な意識、暗闇の中で俺は夢を見た。

真っ暗な空間で、こちらに手招きをして居る人々の姿を見た。


「……」


その人達は何一つ言葉を発さず、笑顔で俺に手招きをずっとしていた。

あぁ、謝らないと、あの人達の所に行って、謝らないと行けない。

俺のせいで…あんな事になったって、夢でも良いから謝らないと。


「……リオさん」


俺が手招きをしている人達の方へ進もうとすると、後ろから声が聞えた。

とても懐かしい声、ずっと聞いてこなかったけど、ずっと記憶にある優しい声。


「カナン先生…」


そこには先生が立っていた、先生は凄く悲しそうな表情をしている。

今にも涙を流しそうな、そんな表情だった。


「リオさん、向こうに行ってはいけませんよ」

「え?」

「向こうに行けば、あなたは戻って来られない、それは分かってますよね?」


先生の言葉でチラリと後ろの方を向いてみた。

その時、そこで手を振っていた人達の笑顔が妙に張り付いたような物だと気が付く。

目は笑っておらず、口元だけ笑ってる、何だか凄く恐ろしい。


「……」

「死んだ人は戻ってきません、謝罪をしてもそれは届きません

 なら、生き残る事が出来る人は生き残り、その人達の無念を晴らす

 いえ、晴らさなくてもいい、その人達の分まで必死に生きるべきです

 だから、死なないで、あなたは必死に生きないといけません」


先生の言葉を聞きながら、後ろの人達を見ていると、後ろの人達の表情が崩れ出す。

笑顔は消え去り、目から涙を流しだしたり、服がゆっくりとボロボロになる。

更に体が燃え始める人達もいた…きっと、あの姿が現実なんだ。

死んだ人達の…最後の姿…あの炎の中で死んでいった人達。

どうして殺されたのかとか、そんな事も分からないまま殺されて…

ただあの人達は幸せに生きたいと思ってただけだろうに……何で、


「この世界は残酷ですよね、生きたいと願っても理不尽に殺される

 戦争ばかりの世界、更に世界を平和にするためには人を殺さないといけない

 本当に理不尽な世界です…だけど、こんな世界に生まれてしまった私達に出来る事

 それは理想の為に全力を尽くすことです、それも力がある者はより一層

 ですが、逃げても良いんですよ、逃げて自分の幸せを見付ける自由もあります

 私は止めません、ですが、死ぬことだけは、自ら命を捨てることだけは止めてください

 それは明日を焦がれながらもそれを掴めなかった人達への冒涜ですから」


先生の言うとおりだ、俺は今まで何度もこの手で誰かの命を奪ってきた。

自分達が生き残るためだ、その為に殺してきたんだ、それなのに

その人達の未来を奪って得た未来なのに、その未来を自分で捨てるなんて屑だ。

……俺は、分かってたはずだった、向こう側に行けば死ぬって事

それなのに少しでも向こうに行こうと思った俺は…本当にクソ野郎だ。

生き残れるはずなのに、自分の命を捨てようなんて……さ。


「先生…俺さ、生きてても良いのかな? こんなクソ野郎が」

「分かりきってる事ですよ、あなたは生きないといけません

 それにあなたが生きる理由は沢山あります、そうじゃないと私があなたの前にいませんよ」

「……ねぇ先生、俺はまた会いに行っても良いかな?」

「歓迎ですよ、いつでも帰ってきてください…‥待ってますよ」


先生の優しい声が聞えた後、先生の後ろからいつもの聞き慣れた声が聞えてきた。


「……呼ばれてますよ、速く行ってあげてください」

「…ねぇ先生、俺、絶対に生き残るよ…絶対に生き延びて、皆まとめて守ってやる

 先生のためにも平和にしてやる、この手でもっと人を殺めることになっても、絶対に…

 これ以上、こんな気持ちを誰かに感じて欲しく無いから」

「…分かりました、ですが、無理はしないでくださいね、私の願いは平和じゃありません

 私の願いはあなた達の幸せですから…ですから、リオ、1人で無理はしないで」

「……」


俺は先生の言葉に答える事が出来なかった、1人で無理をしない

俺はそれを約束することが出来そうに無かったから。


「…‥リオさん、約束、忘れないでくださいね? 待ってますよ」


最後にそんな言葉が聞え、俺の視界は真っ白になり、俺は全身の痛みと供に目を覚ました。


「リオさん…今日も…」

「…ア…ルル」

「り、リオさん!? リオさん! 目を覚ましたんですね!」

「本当ですか!? あの重症で!? 奇跡です! あ! 皆さんに伝えてきます!」

「リオさん! 私の事覚えてますか!?」

「わ、忘れるかよ…お前は強烈すぎて、忘れたくても忘れられねぇよ」

「リオさん…良かった…無事でいてくれて、ありがとう……」


アルルが目に涙を溜めながら、押し殺したような声で小さく呟いた。


「私…リオさんが死んじゃったら…って、思って、震えがずっと、止まらなくて…」

「アルル…う、つぅ」

「リオさん!?」

「い、いてぇ……く、クソ…」


全身が異常なくらいに痛む…こんなに痛い思いをするなんて。


「やっぱり、まだ怪我が」

「…い、意識が戻ったなら、大丈夫だろう…が、そ、そうだアルル、あれからどれだけ時間が?」

「1ヶ月です、1ヶ月の間ずっと」


い、1ヶ月? そんなクソ長い間…でも、その割には会話も当たり前の様に出来るし

体も少しだけなら動く、普通なら、もっと酷い気がするけど。


「1ヶ月も寝てて、俺はこんなに元気なのか?」

「元気とはほど遠いと思いますが、でも、そうですね、理由は多分マオさんのお陰だと」

「マオ?」

「はい、子供達の中でリオさん並みに功績を積んでる人です

 確か部隊長の任命式ではレギンス軍団長に隣に経つほどの功績の持ち主です」


…あぁ、あの子か、かなり久々で忘れてた、でも、最初の思いでは良く覚えてるから出て来た。

確か子供が多かったよな、ただ最高幹部で子供は俺以外いなかったけど。


「あの子が?」

「はい、あの人は回復系の魔法を使うらしいので、そのお陰だと思います

 レギンス軍団長に報告したら、マオさんが飛んできてくれて、付きっ切りで回復をしてくれてました」

「そうなのか…じゃあ、お礼を言わないと」

「そうですね、でも今は眠っています、フレイさん達と一緒にね」


はぁ、やっぱりフレイ達も大丈夫だったんだな、だが、問題はウィングだ。

あの時、フレイ達は大丈夫だって聞えていたが、ウィングはヤバかったらしいし。


「じゃあ、ウィングはどうなんだ? い、一緒に寝てるのか?」

「いえ、ウィングさんはまだリオさんと同じ様に入院してリハビリ中です」

「じゃ、じゃあ、ウィングも生きてるんだな!? あつぅ!」

「あ! 興奮したら駄目です! 嬉しいのは分かりますが、落ち着いてください」

「す、すまない」


よ、良かった、ウィングも無事で本当に良かった……

もし、あいつが死んでたら俺はきっとずっと泣くことになってた……あ

そうか、もし俺が死んでたら、あいつらも全員泣くことになってたんだよな。

…そうなったら、俺は死んだまま後悔してたのかも。

……あぁ、結局どっちに行っても、俺は後悔することになってたのか。


「アルルさん! 伝えてきました!」

「リンダさん! 本当ですのね!?」


急いで伝えてきたのか、リンダと一緒に来たシルバー達は汗をかいている。


「り、リオさん…あぁ、よ、良かったですわ」

「はぁ、よ、良かった…ご無事で」

「本当安心だよ」


俺の無事を確認したシルバーはその場に座り込み、涙を流している。

マナは一安心と言う表情を見せた後、涙を流してくれた。

メルトは俺の顔を少し見た後、表情を少し変え、目を押さえながら部屋の外に出て行った。


「はぁ、はぁ、り、リオ目を覚ましたって聞いて!」


その後すぐにメア姫とリサ姫も俺が寝ている部屋に飛んできた。


「あぁ、り、リオ、よ、良かったですわ!」

「メア姫様、今リオさんは怪我が酷いままですから、抱きつくのは」

「で、ですが、目を覚ましているリオを見ると…」

「メア、1番リオを抱きしめたいであろうアルルが我慢してるのよ、我慢しなさい」

「わ、分かりましたわ」


アルルの奴、俺の体を気遣ってくれてるから抱きしめてこなかったのか。

普段は本当に暴走ばかりしてるのに、こう言う時は優しいな。


「…そう言えば、あの犬は?」


確か俺の為に怪我をしたはずだ、あの犬。


「やっぱり心配ですか?」

「し、心配なんかじゃ無い、なんで俺が犬なんかを心配しないといけないんだ

 ただ、あれだ、助けて貰ったのに…何もしてやれないのはちょっとって思ったから」

「あの子なら元気ですよ、リオさんが眠ってる間、心配そうに頬を舐めてました」

「マジで!? あだ!」

「あぁ、もう、大声出したら駄目ですよ」

「う、ぐぅ…」


……そうか、あの犬生き残ってたのか…良かった。

いや、なんで俺が犬の心配して無事だって分かったら安心しないといけないんだよ。

…でもまぁ、あいつは恩人だからな…いや、恩犬? まぁ、どっちでもいいや。

それにあれだ、あのまま死なれたら後味悪いし。


「とにかくリオさん、しばらく安静にしていてくださいね

 あ、安心してください、今日もずっと一緒にいますから」

「はぁ…ん? 待て? さっき今日もって言ったけど、どういう」

「アルルさん、1ヶ月の間ずっと付きっ切りなんでで看病していたのですわ」

「め、メア姫様、それは言わない約束では!? リオさんが私に気を遣ったらどうするんですか!?」

「ですが、事実は言わないといけませんわ」


い、1ヶ月の間、ずっとこいつは俺の看病をしてたのか?

ずっと付きっ切りで!? …‥本当馬鹿なんじゃ無いか? 俺みたいな奴のためにさ。


「アルル、お前俺の為に…」

「…リオさんの為なら、私は何でも出来ますから、1ヶ月なんて何て事ありません

 ですから気を遣わないでくださいね? いつも通りに接してください」

「…当たり前だ、今更お前に対して接し方を変えるかよ」


俺の返事を聞いてアルルが安心したように笑った。

それにしても1ヶ月の間、ずっと付きっ切りでいられるなんて

凄い精神力だよな、俺だったら絶対に飽きるだろう。


「アルルはリオにベタ惚れですわね」

「勿論です、リオさんは私の天使なのです」

「そう言うの止めてくんない?」

「あ、はい、すみませんでした」


何か今日アルルは妙にあっさり引き下がるな、やっぱり気を遣ってくれているのか。

…何か、こんな会話が幸せに感じるなんて思わなかった。

本当に…ありがとう先生…俺を助けてくれて、やっぱり俺がどんなになっても

俺は先生に救われてばかりなんだろう、だからいつか絶対に恩を返す、絶対に。

でも、今は生き残った喜びを噛みしめよう、それが今の俺に出来る最高の行動だから。

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