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潜入開始

予想以上に俺達は順調に進軍を進めることが出来た。

何というか、この場所の兵士達も全員やる気の無いような連中ばかりだった。

誰も勝とうと思って行動していない、ただ言われたとおりに動く人形のように

誰からも生気を感じない…ど、どうなってるんだ?

最初の進軍の時もそうだが、こいつらは一体何のために戦ってるんだ?

ここまで戦意も何も感じられないんじゃ、ただの殺戮と感じてしまいそうだ。


「誰1人として戦意を感じません…どうしてですか?」

「俺に聞くな、分かるわけ無いだろう」

「リオさんの力なら敵の声も聞えるんじゃ?」

「そうだが、今ここでやる必要は…まぁ、何か伏兵とかの情報が出るかも知れないし、やってみるか」


とりあえず俺はアルルに言われたとおりに周囲の兵士達の声を聞くことにした。

と言っても、ここは街だあまり複数の人間の声を聞けるとは思えないがやってみるか。


「えっと、とりあえずあいつで」


俺は目に付いた兵士に向ってスコープをのぞき込んだ、すると会話が聞えてくる。


「……はぁ、またこんな戦いか、どうせ負けるのに」

「あぁ、向こうは幸せ者だよ、あそこまで本気で国の為に戦えるんだから」

「だな、俺達なんか国の為に何しようと意味ねぇからな、所詮捨て駒だ

 あのガキが来なけりゃ、もうちょっとやる気も出てたかもしれねぇのによ」


あのガキ…多分兵士達の口振りは今まで聞いた話から総合してみると

向こう側にある最も優秀な部隊、その部隊は1人の子供が作ったという可能性がある。

となると、その部隊は魔法を扱えるその子供を筆頭に活動している可能性があるのか。

しかし、ただの子供なのに最強の部隊の指揮官か、かなりの天才って事だな。


「どうです?」

「あいつらの会話から分かったことは優秀な子供が居ると言うことだな

 で、推測だがその子供はリ・アース国最強の部隊の指揮官だと思う」

「子供が指揮官ですか、リオさんみたいですね」

「俺はちょっと違うだろう、そこまで部隊デカくないし

 何というか、仲良し組で作ってるお遊戯部隊みたいな感じだし」

「お遊戯部隊が戦争を1つ終わらせるはずもありませんわ、もう少し自分達を評価してくださいませ」


まぁ、そうだな実際このメンバーで国を1つ制圧したわけだし

俺達の実力もそれなりか、でも、向こうの部隊はその部隊だけで

多数の国を制圧していると考えられるんだから、どう考えても俺達より格上だろう。


「まぁ、仮に自分達を評価したとしても、向こうさんには勝てないだろうよ

 向こうの方が実績あるからな、ま、正面からぶつかる事は無いだろうから

 あまり悲観的に捉える程の事じゃ無いがな」


基本的に影からの支援を主に行なってる俺達がそんな化け物部隊と正面からやり合うことは少ない筈だ

そう言うのはクリーク率いる急襲部隊が相手するだろうしな。

あまり会話をしたことは無いが、周りの話を聞いたところ、変わってないらしいし

強い部隊と聞けば誰よりも速く戦うために動きそうだ。


「しかし、あれだな、向こうの兵士はその部隊の影響で戦意は皆無だ

 理由としては自分達は必要なく、ただの捨て駒だと考えているからだろう

 まぁ、自国に最強の切り札があると知ってたらそう考えてしまうかも知れないが」

「ですね、それも国の辺境の地にある街の兵士となればなおさらでしょう」


何にせよ、その部隊のお陰で今回の戦いも容易に勝てそうだ。

戦意も何も無い相手と戦って、苦戦する要素は殆ど無いだろうし。


「いやぁ、今回も楽に勝てそうですね」

「その可能性は十分あるが、あまり油断するなよ? 何か潜んでるかも知れないからな

 どんだけ相手の戦意が無かろうと、奇襲食らえばこっちは死ぬからよ」

「ですね、警戒していきましょう」

「あぁ、それじゃあ、進むぞ、敵の本拠地も見えてきて」


俺達が進み始めようとしたとき、隣の扉が開き、そこから子供が出て来た。

その子供が姿を見せて少しして、奥からその2人の親と思われる人影が出てきて。

扉した子供を俺達から隠すように覆い被さり守った。


「何だ!? あ、あんたら、どうして家に? 戦争中だぞ!? 何で避難してない!?」

「あ…あの…ひ、避難の指示は…無くて…こ、殺さないでください」

「…はぁ、殺しませんよ、一般市民を殺すほど鬼畜じゃ無いんで」

「ふ、ふぅ」


俺の言葉を聞いたその親はそそくさと子供を家の中に避難させる。


「もう出て来ないで下さいよ? 死にたくは無いでしょう?」

「は、はい…もう外には出ません」

「そうですか、じゃあ、気を付けてくださいね」


はぁ、ったくさ、これから戦争になるって分かってたはずだろうに国民の避難は無しかよ。

不意打ちでの攻撃という訳では無かったのにな、わざわざデカい音立てて攻撃部隊は行軍してたし

ちゃんと見張りが働いているなら見落とすこととかは無いだろうに。

てかさ、仮に避難が遅れていたとしても国民の避難誘導くらい誰かすれば良いのに。


「リオさん、どうやら家の殆どには住民がいるみたいですね」

「だな、避難誘導くらいすれば良いのに」

「もしかしたら、私達は後方から来たから兵士達による誘導がまだとか?」

「どうだか、でも、その可能性は低いと思うぞ

 逃がすつもりなら流石に大声で避難誘導する兵士くらいは居るはずだからな

 だが、それがないという事は端っから国民を逃がすつもりはないんだろう」


全く兵士なんだから国民の安全を優先すれば良いのにさ

それに誘導の方が何か楽だろうにさ、命の危険はあまりないし。

俺なら絶対に誘導に向うが…でも、誰もしてないって事はあれか? 指示が無かったんだろうか

じゃあ、国民の誘導をサボってるのは兵士じゃ無くて国かって事になるな。


「仕方ない、あんま被害出さないためにも早急に勝負を仕掛けないとな」

「そうですね」


さて、それじゃあ、さっさとあの場所に向わないとな。

しかし、やっぱりある程度近寄っても敵の数は変化が無い。

防衛を一切考えないで、ただひたすらに攻め込んでるのか?

マジでどうなっているんだ? どんだけ無能だとしても防衛を無視することなんてあるのか?

それとも、そもそも勝つつもりが無いのか? …今までの流れから考えたら十分あり得るな。

兵士達は一切の戦意は無かったし、もしかしたら指揮官を抑えてもあまり問題は無いかもな。

でも、指揮官が倒されたからと言い訳が出来るから、降伏してくれる奴が居るかもな。


「……えっと、あれですね、一気に防衛の数が増えましたね」


さっきまで大した数はいなかったのだが、敵基地周辺には大量の兵士達がいた。

さっきまで殆どいなかったはずなのに、基地の周辺は異常な程に兵士が多い。

うーん、あまり数が少なかった理由はここの防衛に殆ど当ててたからか。

意外と楽に攻略できるかと思ったが、そうでも無いな。

しっかし、防衛の兵士達は全員やる気を感じられないな。


「全く何でここばかり人員割いてるんだよ、もう少し考えろっての」

「そうですね、もっと広範囲に配置していれば時間稼ぎも出来るでしょうに」

「だな、それに一点に人員割いても対処法は割と簡単だ、フラン、誰でも良い1人を操れ」

「分かった」


フランは俺に言われたとおり、複数人の兵士の内1人を操ってくれた。


「操った、それでどうするの?」

「俺達がいる方向以外に人影を見たと騒がせろ」

「分かった」


この状態なら操って言葉を発せさせる事が出来るだろうからな。

当然この作戦が一番的確だし、楽だ。


「お、おい! 東で何か動いたぞ!? 敵かも知れない!」

「何? 敵がここまで…仕方ない、全員で潰しに行こう」

「だな、どうせ死ぬなら名誉の死が良いからな」


何だよあいつら、全体的に生きることに絶望してるじゃ無いか。

でもまぁ、フランのお陰で俺達の方の見張りは全員移動した。

普通1人2人残しそうだが、全員での移動か、無茶をするな。


「じゃあ、マル、あの場所の敵をスポットしてくれ、一応念の為にだ」

「うん」


マルのスポットの結果、その場所に人影がないという事が確認も出来た。


「よし、じゃあ、移動するか、アルルは移動の間周辺警戒頼む」

「分かりました」


アルルに周囲を警戒させて、俺達はゆっくりと敵基地内部に侵入した後

マルのスポットを展開、基地内部の敵情報を把握した。

割と見張りはいるな、だが、基地の規模は結構大きいから潜入は出来る。


「さて、ここからは俺達の番だな、全員敵位置の把握は出来てるか?」

「う、うん、不思議だよね、何処に敵がいるか分かるなんて」

「便利だよな、マルのお陰で潜入もかなり楽だ、助かるよ」

「う、うぅ、何だか嬉しいよ…前まで魔法はあまり使えないなって言われてたのに」

「そうなのか?」

「でも、皆優しかったから良いんだけどね」

「…やっぱり、まだ」

「あ、ご、ごめん、そ、そういうつもりで言ったわけじゃ無いの

 あのままだったら悪い人達だって思われそうだったから、それは嫌だったから」


やっぱり前の部隊の人達のことが好きだったんだな、本当に悪い事をした。


「でも、安心して、もう恨んでないし、皆といるのも楽しいって思ってる

 昔の事を全部忘れるのは無理だろうけどね、忘れたくないし」


はぁ、マルは割と吹っ切れてるみたいだけど、俺はどうもまだ後悔が残ってる。

後悔しても意味は無いって分かってるんだがな…。


「リオさん、後悔するのも分かります、でも、後悔しても何も変わらない

 変えられるのは未来だけです、ですから、罪滅ぼしをしたいというなら

 マルさんを幸せにすることで罪滅ぼしとしましょう」

「……そうだな、ここで後悔しても遅いし、それにここは敵の基地内部だ

 こんな所で落ち込んではいられないか、まずはこの戦いに勝つことだな

 そっから罪滅ぼしをしよう」


まぁ、それで俺の罪が消えるわけじゃ無いが、それでも何もしないよりはマシだろう。


「うん、それが良いよ、それに罪滅ぼしもいらない、だってもう感謝してもしきれないくらい

 色々と貰ってるからね」

「…そうか」


や、ヤバい、少しだけ涙出て来た、こ、こんな所で泣いてる暇は無いってのに!

あぁ、もう! 泣くのは後だ後! さっさと戦い終わらせて泣くならその後に泣く!


「よし、もうさっさと制圧する! 目標は敵指揮官の確保だ

 良いか? 出来る限り最小の犠牲で最大の戦果を上げるんだ

 戦闘は極力回避する方向で行くからちゃんと俺の指示通りに動けよ」

「うん」


さて、この複数の敵のポイントから指揮官を見つけ出すのは結構骨だな。

まぁ、大体の目星を付けることは出来る、単純に殆ど動いてない奴が指揮官の可能性がある。

でも、その場合は見張りの兵士だという可能性もあるから、そこから更に絞る。

普段は殆ど動いてないが、他のポイントと接触も無しにちょっとした距離を動くポイント

それが指揮官である可能性が高い筈だ、ただの推測ではあるが

こんなに敵が居るなら目星を付けないとどうしようも無いからな。

さーて、それじゃ、しばらく潜伏して目星を付けるポイントを見つけ出すか。

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