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戦争の準備

1ヵ月という時間は意外な事に結構速く進んでいった。

その間、俺はフレイ達にしょっちゅう振り回されるという日常を過ごしていた。

そのせいだろうな、異常な程に1ヵ月が短いと感じたのは

なんせ、ゲームばかりして居た頃は1ヵ月は異常な程に長く感じていたし。

まぁ、悪い気分じゃ無い、悪い思い出で時間が長く感じたわけじゃ無いからな。


「リオちゃん!」

「なぁ、フレイ…本当にお前は何でしょっちゅう俺に抱きつくんだよ、癖か?」

「抱きつかないと逃げるじゃん」


まぁ、実際抱きついてこなければ遊ぼうと言われても全力で逃げてるからな。

……それが理由でこいつは毎度俺に会う度に抱きついてくるのか?

いや、抱きついてくるときは一緒に遊ぼうと誘ってくるときだけだが。


「と言うわけで、今日も一緒に遊ぼう!」

「はぁ、あのなぁ、今日は駄目だ…

 そろそろミストラル王国の本隊が来るからな

 その時に出向かないと駄目なんだよ

 一応ここに常駐してる兵士達のトップ扱いだし」

「ふーん、何だ、つまんないの」

「ずっと遊んでる訳にはいかないからな、戦争はすぐだ、気を引き締めないと」


1ヵ月の間に国民や兵士達の活気や士気は無事に回復している。

これならレギンス軍団長も納得はしてくれるはずだ。


「リオさん、そろそろ到着予定時間です」

「あぁ分かった、そんじゃさっさと行くか、あ、お前らは待機で良いぞ

 どうせやることは大した事じゃ無いしな」

「うん、分かったよ」


俺とアルルは姫様達と合流した後に部隊の到着予定場所に移動した。

その間、何故かアルルは調子が悪そうにして居るが、本人は大丈夫といっている。

普通なら休ませたい所だが兵士達がやって来てしまったのに下がれとは言えないか。

しかし、時間ピッタリにここまで来たのか、結構な統率力だ。


「全部隊到着いたしました! これより! 国王様の命に従い

 このトロピカル地方の兵士達と合流し、供に戦います!」


到着した兵士達が同時に敬礼の構えを取り、俺達に向けてきた。


「お疲れさん、部屋は用意してある、皆、案内してやってくれ」


俺は後方で待機しているシルバー達に兵士達を部屋に案内するように指示を出した。

シルバー達は俺の指示を聞き、小さくお辞儀をした後

言われたとおりに兵士達の案内を始めた。

しかし、指示の手紙ではもう少し人数が少なくなるはずだったんだが

今回は結局特殊強襲部隊以外の4部隊が混合で来ているのか。


「結構な数だな」

「ケホ…そりゃあ、そうですよ

 仮にもミストラル王国の本隊なんですから」

「そうか……と言うか、あれだな防衛部隊とかも来たんだな

 予定には無かったが」

「向こうで協議した結果、防衛部隊も必要だと判断してな

 最前線だし当然ではあるが、ただ報告を送る余裕が無かったため

 不意に来ることになってしまった、すまないな」

「ジーク総統? 何であなたまで?」

「敬語はやめてくれ、お互い同じ様な立場だ、会議などではそうはいかないが

 こう言う状況では普段通りに話してくれて構わない」


ふーん、堅物だと聞いていたが、意外とこう言う場ではラフなんだな。

ま、確かに権限では俺とジークは同じくらいだし、敬語を使う理由はあまり無いか。


「そうか、分かった…それで? 何で防衛部隊の最高責任者がこんな所に?

 普通、指揮官って奴は後ろで指示を出すものだろう?」

「それをあなたが言うか? 戦場に単身で向い、戦況を覆したあなたが」

「あの時は最高司令官なんて立場じゃなかったからな

 まぁ、最高司令官と言っても、所詮11人程度の弱小部隊の指揮官だけど」

「弱小の部隊がここまで権限を持っている筈が無いだろう? 自覚を持て」


ま、確かにその通りだな、弱小部隊に姫様2人の防衛なんて任せないからな、普通は。

これなら、結構権力のある強い部隊だって自信を持って言うべきかな。


「その通りだな…で、話は変わるが、あの金髪は?」

「マーギルは国王様の防衛の任に付いている」

「じゃあ、マルのお母さ…えっと、ハルさんは?」

「さぁな、こちらに着きそうになった時

 少し早足になって気が付いたら消えていた

 攻撃部隊の兵士達は何処に行ったか分かっていたようだが、私にはさっぱりだ」


あー、そう言う…あれだな、多分もうマルの所に行った感じだな

結構心配性みたいだし、久々に娘の顔を見れるんだ

嬉しくてすぐに向いたくなるのも分かる。


「なる程、そう言う」

「何か分かるのか?」

「あの人の娘がここに居るからな

 多分すぐに会いたいから急いで移動したんだろう」

「娘が…そう言えば、そんな話をしていた気がするな」

「さて、ハルさんも来ているのは分かった

 リンダも来ていたし、かなり戦力を動かしたんだな」

「どんな場合でも始めが肝心だと言うだろう? それ故にレギンス軍団長も

 確実にこの戦いには勝利したいのだろう」


そうだな、最初を攻略することが出来れば、情報を集めることが出来る。

そうすればこちらにとっても有利に働くし、俺達も情報を集めやすいからな。

戦争において情報は状況を覆すほどに大きな要素だからな

ここを疎かにすれば敗北は必至だ。

その為にもこの初戦は非常に大事な戦いになる

だからここまでの戦力を投下したのか。


「確かにそうだな」

「あぁ、所で君は…男子の様な口調だな、噂には聞いていたし、口振りも大人だ」

「仕方ないだろ、そうなんだから、口振りが大人っぽいのも

 あんたらみたいな大人達の中で生きてきたんだ、そうなってもおかしくない」

「そういう物か? まぁ、私もそろそろ部屋に向おう、案内してくれるか?」

「あぁ、分かったよ」


俺はジークを部屋まで案内した後、今日1日は休んで欲しいと伝え

自分の部屋に戻った、するとすぐにフレイが俺の手を握ってくる。


「終わった!?」

「お、終わったけど」

「じゃあ、遊ぼうよ!」


あぁ、やっぱり…でもなぁ、向こうの兵士達が来ているし

あまり子供っぽい所を見せたくない。

そこを見て俺達の能力に疑問でも持たれたら士気に影響が出るからな。

だが、フレイにこの事を説明しようと関係無しに遊ぼうと言ってくるだろう。

…ここは遊びに付き合っても、部屋で出来る程度の遊びにしないとな。


「よ、良し分かった、じゃあ、トランプで遊ぼう」

「トランプ? お外で遊ぼうよ」

「まぁ、それは俺もしんどいし、トランプなら付き合ってやるよ」

「むー、分かったよ」


まぁ、この程度の遊びなら大して疲れないし、あまり目立たないからな。


「じゃあ、何する?」

「折角4人居るし、ババ抜きを久し振りにやろうよ」

「そうだな、ま、勝負は分かりきってるけど」


フレイはババ抜きが大の苦手ですぐに表情に出る。

だから、割と勝敗は決している、まぁ、勝ちすぎると機嫌を損ねるから

定期的に負けてやってるんだがな。


「た、確かに私は結構負けてるけど、何度か勝ってるから!」


その勝ってる殆どは俺達がわざと負けてあげたとはこいつは知らないだろうな。


「久し振りで楽しみかも」

「うん…今日は勝つよ」


大体本気でやると最後はフレイとウィングの一騎打ちになるんだよな。

2人とも表情豊かだし、どっちがヤバいかはすぐ分かる。

けど、お互いにあまり相手の表情を見ていないからか、勝敗は五分五分くらいだ。


「さぁ、行くよ!」


とりあえず、俺がトランプをシャッフルして全員に配った。

その結果すぐに誰がジョーカーを持っているのかが分かった。

ウィングだ、明らかに焦った表情をしていたからな。

うーん、こう言うのを見ていると、ジジ抜きの方がいい気がするが

何か2人の表情がころころ変わるのを見るのは割と楽しいし、このままで良いか。


「さてと」

「それじゃあ、やるよ!」


全員でカードを整えて、面と向ってカードを向き合わせた。

順番はトラ、俺、ウィング、フレイだ。


「それじゃあ、これ、うん、揃った」


最初だからな、トラはすぐにペアを揃えてカードを捨てる。


「それじゃ、次は俺がウィングのカードを」


俺はウィングのカードに手を伸ばし、ちょっと探るような動きをしてみた。

ウィングはその手の動きを緊張した面持ちで凝視して

ある1箇所だけ耳が赤くなったのが見えた。

で、俺はその赤くなった場所の上に手を置いてみると

ウィングが少し嬉しそうな顔をした。

あぁ、これだな、これがジョーカーだ…どうすっかな

何かこう言う顔をされると悪戯したくなる。

俺はウィングが嬉しそうな顔をしているカードを取ると見せかけて

その隣のカードを取った。


「あぁ!」


ウィングはそれをしょんぼりとした表情を見せた。

やっぱりこんな風にころころと表情が変わるのを見るのは面白い。


「よし、ペア」

「う、うぅ」

「はい、ウィンちゃん!」


大体フレイは全員の事をちゃん付けで読んでいるんだよな、トラはトラちゃん

俺はリオちゃん、ウィングは…ウィングちゃんと最初は言ってたが

最近はウィンちゃんだ。

本人曰くこれが何か言いやすいらしい

あと、マルはマルちゃん、フランのことはフランちゃん

メルはメルちゃんって行ってたっけ、

う考えてみるとウィングのウィンちゃんが特殊なんだな。

そう言えば、マナ達にはなんて言ってたっけ、確か呼び捨てだったような…

あまりこいつが誰のことをそう言ってるか覚えてないからハッキリとは分からないな。


「も、もう、私の名前はウィングだよ…あだ名っぽくて良いんだけど」

「何だかこの言い方気に入ったんだよね、と言うわけで、このまま!」

「う、うん、分かったよ」


ウィングがちょっとだけ顔を赤くして小さな声で答えた。

何か嬉しそうだな、まぁ、あだ名で呼ばれるのって結構良いよな。


「と、言う訳で、はい!」

「えーっと、これで」


フレイのカードを取るとウィングはペアが揃ったらしく、カードを捨てた。

まぁ、1巡目だしな、結構な頻度で揃うだろう。


「それじゃあ、トラちゃん! 取らせて貰うよ!」

「さぁ、どれでも良いよ」

「じゃあ、これ!」


しかし、フレイはカードが揃うことは無かった。

その次にトラは俺のカードを引き、揃わずに終わり、俺の番が来た。


「よし、引くぞ」

「…う、うん」


俺はまた最初の時のようにカードを探るような動きをしてジョーカーを探した。

ウィングはころころと表情を変え、俺は何処にジョーカーがあるかを確定した。

さて、今度はどうするかな。


「よし、じゃあ、これだ」


俺は今回でジョーカーを引く事にした。


「げ!」

「やたぁー!」


ジョーカーから解放されたウィングはかなり嬉しそうに笑ってくれた。

ここまでババ抜きを楽しんでいる姿を見ると羨ましいな。


「ちぇ、まぁ、良いし」


俺はカードをシャッフルしてジョーカーをトラに分からない様に移動させた。

トラは他の2人と違ってポーカーフェイスが上手いからな、結構真剣勝負が出来る。

子供相手に真剣勝負をするってのもあれだが

俺はこう言うときは全力で楽し事にしている。

そして順番は動き、3巡目が始まり早速トラの番だ。


「……さぁ、どれかな?」

「……」


トラは何処にジョーカーがあるか探す為にトランプの上に手をかざし動かした。

その間、トラはずっと俺の表情を見ているが、残念ながら俺はトランプを見ていない。

つまりだ、この状況では俺の表情が変わることはまずないという事。

そんな事を考えていると、トラが1箇所で手を止めた。


「そこで良いのか?」


俺はトランプをチラリと見た、そこは普通のカード。

俺はここであえて少しだけ焦ってる風に演技してみた。


「う、うーん」

「……違うか」


トラはその表情を見て、考えを変えたらしく再び何を取ろうか考え始めた。

そして、今度はジョーカーの上で手を止めた。

俺はそれを確認し、嬉しそうな表情を作ってみた。


「…これだ! あ!」


俺の読みは当たった、トラの事だ、俺が演技をすると考えているはずだろう。

だから、今回はあえて演技をしないと言う手段を取った。

その結果、トラは俺の思惑通り俺のジョーカーを取ってくれた。


「俺の勝ちだな」

「演技しない作戦だったか…引っ掛かったぁ」


前にババ抜きをした時もこんな風に中々に楽しめたものだ。

大体トラと心理戦をすることが多かったからな、割と楽しめてる。

そしてそのまま順は進み、残りはフレイとウィングの2人だけとなった。

上がった順番は俺、トラという感じで、勝つことが出来た、これで3対1だな。

勝数は俺の方が上だ、まぁ、負た数が多かったら少し恥ずかしいし。


「それじゃあ、勝負だよ」

「う、うん」


ウィングとフレイの一騎打ちが始まった、お互い手札はもう無い。

フレイは2枚、ウィングは1枚だ、つまりババ抜きの最終決戦のような状態。


「う、うーん」


ウィングがどっちを取ろうか悩みながら手を伸ばし、手札の上をウロウロしている。

その間、フレイは何度も何度も表情を変えて、非常に楽しそうだ。


「よし、これ! あ、あぁ!」

「やっふい! 今度は私の番!」

「う、うぅ」


普通ならウィングがしたように色々と考えるのが普通なんだが

フレイは一切の迷いも無く右の方を選んだ。


「あ! 外れ!」

「は、はぁ、よ、よかった」

「じゃあ、今度は!」

「う、うん!」


そんな感じの戦いがおおよそ5回ほど連続して続く、ある意味スゲーよ

2分の1をここまで外してるんだから…2人合わせて10回スルーだ。


「よし…こ、これだぁ!」

「あぁ!」

「や、やったぁ!」


だが、6回目のウィングのターンで決着が着いた。

この1対1の勝者はウィングであり、ウィングは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねている。


「ま、負けたぁ!」


フレイは悔しそうに地面に倒れ、軽くジタバタと暴れた後

笑顔でひょっこりと体を起した。


「もう1回! もう1回やろう! 今度こそ私が勝つ!」

「そうだな、やるか」

「…私も混ぜて」


俺達がババ抜きをやり、2回目をやろうとしたときにフランが参加した。

その後にマル、メルの2人も合流し

最終的には7人で盛大にババ抜きをすることになった。

結構楽しめたよ、戦争前の夜とは思えないほどに。

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