国の活性化
「いやぁ、祭りですね! ようやくですね!」
「あー…そうだな」
あれから、祭りの出し物が決まった、祭りの出し物はやはり料理大会とクイズ大会の開催だ。
正直さ、こう言う祭りって普通はどうやって決めるのか分からないからな。
まぁ、それでもこれは国民達の意見を反映した結果だし、納得してくれるとは思うが。
最終的な票は大食い大会が148、料理大会が89、クイズ大会が64だったからな。
上位はこの3つだった、ただ、別の上位があり、楽しい事ならが308票もある。
まぁ、確かにいきなりどんなお祭りの出し物が面白そうですか、とか聞かれてもすぐは出て来ないよな。
「ヒャッホー! 屋台が一杯じゃん!」
「そうだな」
「そう言えばリオちゃん! その服どうしたの? リオちゃんが服を着替えるなんて珍しいね!」
「あーっと、色々あってな」
「へぇ、似合ってるよ!」
「あ、あはは、そ、そうか」
に、似合ってると言われても喜べないな……だって、自分で選んだ訳でも無いし
こんな服を着るのは嫌だったからな、だから褒められても嬉しくは無い。
でも、折角褒めてくれてるのに何も反応しない訳には行かないからな。
「あ、リオちゃん、良かったね、服貰えたんだ」
「え? ま、まぁ、そうですね」
普段買い物に行っている八百屋のおばちゃんが声をかけてきた。
この人は結構俺の事を気に掛けていたみたいだし、一応服のことも気にしてたのかもな。
「いやぁ、おばちゃんはお姫様達に服を買って貰えないのかと思って心配してたんだよ」
「いや、まさかそんな、ただあの服が動きやすいし、新しい服を買うのが面倒だから来てただけですよ」
「面倒ってねぇ、女の子はちゃんと服装に気を配らないと駄目よ?」
「あ、あはは、そ、そうですか?」
やっぱり気に掛けてくれてたのか、いや、嬉しいよ? 一応嬉しいんだけどさ
正直中身男だし、服装とか気にした事が無いしから、かなり難しい注文なんだよな。
「リオ、あそこに行こう」
「お? あ! フラン! 引っ張るな! あ、えっと、おばちゃん! お祭り楽しんで!
ちょ! 分かった! 分かったから引っ張るな! 行くからさ!」
「うんうん、仲の良い子達だねぇ、微笑ましいわ」
「同感です、いやぁ、やっぱり癒やされますねぇ」
「アルルちゃんったら、ほら、速く追いかけ方が良いんじゃ無いの?」
「そうですね! 待ってください!」
祭りと言う事で興奮したフレイ達が異常な程にテンションを上げ、俺を引っ張ってくる。
いやさ、なんで俺を巻込もうとするんだろうか、てか、なんで俺だけ引っ張られないと行けないんだ。
ウィング達を引っ張ったりはしないのにな、まぁ、あいつらは引っ張らないでも付いてくるけど。
「さぁ! この何か赤い丸い物を頂戴!」
「はい、どうぞ」
「やたぁー!」
「フレイさん、喜びすぎですよ、あ、はい、お金です」
「どうも、いやぁ、それにしてもこの祭りというのは面白いですな」
「はい、お店が沢山ありますし、凄い人ですからね」
「へっへっへ、こう沢山人がいると、一緒に楽しんでるって気分になって良いですな!」
「えぇ、そう思って貰えるなら嬉しいです」
ふーん、マナって年上に対しては結構普通に話すんだな。
俺達に対しては、一応上司と言う事でちょっと話しにくいのかもな。
でも、アルル達とは同い年っぽいから話しやすそうなんだが、あまり積極的に話してないよな。
もしかしたら、同い年だからこそ話しにくかったりするのかもな
俺も同級生とかとはろくに話せないからな、引きこもってたし。
「あ! この赤いの美味しい!」
「そうなのか、何か食いにくかったから、食ったことないんだよな」
「そうなの!? じゃあ、はい! 美味しいよ!」
「いや、それはお前が舐めてた飴だろ?」
「美味しいよ? ほら!」
「むぐ!」
あ、結構美味しい、結構りんごの味がするんだな。
「美味しい?」
「まぁ、美味しいな」
「この場合、間接キスになったりするんでしょうか」
「違うと思いますわ、そうだとすると皆さん間接キスしまくりですよ、大体フレイさんが原因ですけど」
ま、まぁ、フレイは飯を食うときに誰かがそっちが食べたいというと自分の使ってる道具で食わすし。
いや、それが間接キスとは思えないけど、間接キスってあれだろ? 飲み物を飲んだ時に
自分が唇を付けてた所で相手がその飲み物を飲んだりする時の事だっけ?
「は! そうですね! ペロペロしてた物を相手に渡したって事は!
これは間接キスでは無く間接ディープキス!」
「…アルルさん? 戯れ言はそこまでにした方が良いのでは?」
普段温厚なシルバーが珍しく怒っている、と言うか、シルバーって怒るとき笑ってるんだな。
こう言う攻撃的な笑顔って言うのは何か恐ろしい物を感じる。
「あ、えっと、ご、ごめんなさい」
「えぇ、分かったのなら、もう変な事は言わない方がよろしいですわ」
「あ、はい」
シルバーの威圧に負けたアルルが小さく謝罪をした。
やっぱりシルバーって怒ると怖いんだな、よく分かったよ。
「まぁ、この話はここまでにして、お祭りを楽しみましょうか」
「そうだな」
俺達はめちゃくちゃ賑わってる祭りを見て回り、活気が回復しているかを確認した。
全体を見た感じ、国民達は全員かなり楽しんでおり、活気があるように思える。
それと分かったことがもうひとつ、それはアルルが言っていた事が本当だったと言う事だ。
ちょくちょく話をしている人と出会う度、全員が最初にあったおばちゃんの様に感じていたらしく
俺が服を着替えていると言う事に気が付くと全員結構喜んでいた。
うーん、やっぱり服が基本的に同じってのは周りからして見れば気になることなんだろう。
俺としてはあの服が動きやすいから同じ服を着てるだけなんだがな。
「いやぁ、色んな人達に服のこと言われてましたね」
「そうだな、まさかあそこまでとは思わなかった」
「愛されてる証拠ですね~、愛されてなかったら誰も何も言いませんし」
「何でだろうな、俺ってそこまで何かしたか?」
「あくどい帝王を倒して助けたじゃ無いですか」
「俺1人じゃ無い、それはお前らが居たからだ…俺1人じゃ、何も出来なかった」
「私達は全員リオさんの為に来たんですよ? つまり、リオさんの人徳です
リオさんが何もしなかったら私達も何もしてません、だから、リオさんの力です」
結局俺は助けて貰っただけだ、あいつらに…だから、もっと強くなって
自分の力で全部守れるようにならないと、その為にももっと魔力を。
「リオさん、悩んでます? 折角のお祭りです、楽しんでくださいよ」
「だが」
「あ!」
俺がアルルと話していると、正面から歩いてきたトラがつまずき
手に持っていたソフトクリームが俺の顔面に。
「つ、冷てぇ!」
「り、リオ! ごめん! ごめん!」
「顔拭きますよ!」
「わっぷ! お、お前! せめて、へ、返事を待て!」
「すみません、焦ってましたから、はい、拭き終わりましたよ」
…ま、まさか顔面にソフトクリームを浴びることになるとは。
「ごめん、本当にごめん! だ、大丈夫?」
「あ、あぁ、何とか」
「うーん、トラだとあまり怒らないね、私だったら絶対怒ってるのに」
「お前は普段の行いが悪いからだ」
「普段の行いって何さ、別に良いじゃん」
全然良くないだろうと言いたいが、こいつに言ってもあまり意味ないだろう。
絶対に直らないし、言うだけ無駄って奴だ。
「いやぁ、しかしリオさんもかなり災難ですねぇ」
「その災難の一役というか、殆どを担ってるお前がそれを言うか?」
「あはは、何も言えません」
「自覚があるなら止めろよ」
「普段から欲望を我慢したら、一線越えちゃいますよ?」
何か本当に勘弁して欲しいな、はぁ、なんでヤバい時以外はこうなんだか。
「はぁ」
「さぁ、お祭りですお祭り」
「分かったよ」
それから俺達はこの祭りを終わるまで全力で楽しみ、中々楽しい1日を終えた。
どれ程楽しかったかというと、今が戦争中だと言う事を忘れるほどに楽しかった。
フレイが楽しそうに走り回って、色んな屋台の食べ物を買ってがっついて。
そのフレイに全員で付いていき、美味しく屋台の物を食べる。
今まで殆ど行ったことが無かった祭り、それが何人かで行くとここまで楽しいとはな。
「ふぅ」
祭りが終わり、軽く風呂に入る事にした、珍しく1人でだ。
今日俺達のメンバーは全員グッスリ寝ているからな、楽しかったんだろう。
「…広いな」
あいつらが一緒に居て散々騒いでいるから湯船が狭く感じていたが
いざ1人で入ってみるとなると非常に広くこの広さがなんとも寂しい感じがする。
「まぁ、ゆっくりと入れるし、良いか」
とりあえずいつも通りに湯船に入り、のんびりと天井を見ながら過ごす。
非常に安らかな気分ではあるが、静かすぎて何か落ち着かない。
あの騒がしい奴らと長いこと過ごしたせいだな
今までは1人で居る事に何も感じず過ごせたのに、今じゃ静かすぎると落ち着かない。
まさかこんな気持ちになるとは思わなかったな、ずっと部屋でゲームばかりして
ネットのフレンドとも遊んだりして…ま、ネットのフレンドなんて1人くらいだったが。
まぁ、楽しかったな、そう言えばあの人、今頃何してるんだろうか。
INW2が出たら、一緒にやってどっちが先にクリア出来るか競争しようと約束してたが
あの約束、果たせなかったな……何だよ、昔思い出したら、後悔ばかりじゃ無いか。
父さん母さんに礼の1つも言えねーで、迷惑ばかり掛けて。
それなのに孝行の1つすら出来ずにくたばる、とんだ親不孝者だよ、俺は。
「……」
あぁ、そんな事ばかり考えてると、少しずつ涙が出てくる。
だが、きっとこの後悔があるから今の俺はあそこを守りたいと思ってんだろう。
俺にとっての第2の故郷、ひまわり……もう、後悔はしたくないからな。
もう親は泣かせたくない、あぁ、カナン先生…元気だと良いけど。
「はぁ」
やっぱ1人だとどうもしみっぽくなっちまう、やっぱり風呂から出るか。
「リオ」
「ん? おわっぷ!」
俺が風呂から出ようとすると、いきなり何かに抱きつかれた。
「な、何だ!?」
「一緒に入る」
「ふ、フラン? お前、寝てたのに」
「起きたの…ねぇ、何だか目が赤い、泣いてたの?」
「こ、これは! あれだ! 湯船が目に入っただけだ!」
「……嘘、泣いてたんだ」
「泣いてねぇよ、泣く要素なんてねぇだろうが」
「流石に分かる」
クソ、泣いてたなんて絶対に知られたくないのに、恥ずかしい。
「なんで泣いてたのかは分からないけど、何かあったら言って、私も手伝う」
「お前がそこまでする理由が」
「私はリオ達に助けて貰った、だから、今度は私もリオ達を助ける
でも、私もまだ泣くことがあるかも知れない、だから、その時は助けて欲しい」
「なる程、だから私が、じゃなくて、私もと言ったのか」
「うん、困った時は一緒」
……暴走してた時はこんな性格じゃ無かったのにな、いや、この性格が本来のこいつなのかも知れない。
クソみたいな環境に身を置いてやつれてたが、俺達と出会って元のフランに戻った。
所詮想像でしかないが、そうだとすれば頑張った甲斐がある。
「そうか、じゃ、何かあったら手伝って貰うよ、当然俺達も手伝うさ」
「うん、ドンドン頼ってね、その方が嬉しい」
昔の事を思いだして、色々と後悔したが、フランのお陰で少しだけ吹っ切れた。
もう、俺は戻れないんだから、だったらここで本気で頑張らなきゃな。
もう2度と後悔しないためにも、今回こそ、全力で。
「なぁ、フラン」
「何?」
「…ありがとう、少し楽になった」
俺のお礼の言葉でフランはニッコリと笑顔を返してくれた。




