表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/294

更なる状況変化

「…さい! お…さい! 起きてください!」


…グッスリと眠っていると、耳元で起きるようにと言う叫び声が聞えてきた。


「何だよ…俺は眠い…」

「それどころじゃないんです! 敵軍です! 敵軍が攻めてきたんですよ!」

「はぁ? 敵!?」


何だと!? 眠っていたら、襲撃だと!?

そういえば、俺が今いる場所も、さっきまで眠っていた場所とは違っていた。


「ここは!?」

「招集があったので、私が会議室に運んだんです」

「そうか、助かった・・・で、会議は?」

「今からです、もうそろそろ始まると思います」

「そうか、目が覚めて良かった」


目が覚めて、周囲を見渡すと、沢山の大人達がそこには居た。

数カ所席が空いてはいるが、かなり緊張した雰囲気だ。


「あ、えっと、すみません、こんな状況で眠っちゃってて・・・」

「いや、構わない、君はまだ子供で、本日その職に就いたばかりだ

 気構えが整って無くてもおかしくはない、そもそも、君以上に

 こんな状況だというのに欠席をしている大人達の方が問題だからな」


数カ所席が空いているからな…

だが、敵が来たというのなら、部隊のいくつかは

迎撃に向っているんだろうから

あの数カ所のうち何カ所かは迎撃に当たって来れなかった部隊長かな。


「全く、招集を行なったというのに…あの2人は…」

「仕方ありませんよ、今は会議を行ないましょう」

「そうだな…では、戦況を話すとしよう」


そう言って、レギンス軍団長は大きな紙を卓上に広げた。

その紙は、地図のようだ、作戦会議だし、地図は必須だよな。


「まずは現状の状況だ、この赤いピンは敵位置、青は味方だ」


そう言って、レギンス軍団長は地図にピンを複数刺した。

どうやら、敵は国の正面からやって来たようだ。

そして、その赤いピンはかなりの量だ、物量作戦だろうな。


「我が軍の戦力は僅かに2万、に対して

 相手は4万だ、2倍ほどの差がある

 恐らく、相手のこの人数はほんの一部だが

 我々はこの戦力が最高だ、戦力差は歴然か」


こっちの部隊は2万が最高戦力なのに

相手は一部で4万とか…勝てるのか?

予想以上にこの国の状況は悪い…

だが、今まで無事だった、きっと、粒ぞろいだからだろう。

相手は戦力こそ多いが、兵士1人の能力が低いと考えられる。

そうじゃなけりゃ、この国はもう何度も滅んで、今でも生き残ってるわけがない。

だが、戦力の差により、この国は兵士の急速な確保が必須となっている訳だ。

つまり、今まで優位だった兵士個人の能力も落ちて言ってる可能性があるか。


「恐らくこの戦いに勝つことは出来るはずだ、だが、兵の損失が大きすぎると

 場合によっては魔法を扱える幼子だけで無く

 使えぬ物も徴兵せねばならくなる」

「そんな事したら!」

「ただでさえ、現状はかなりの愚策だというのに…

 更に徴兵となれば、国民の不満も限界だろう

 出来る限り、この戦いでは損失は出したくはない…

 しかし、多大な損失を出さずにこの戦力差を覆し

 勝利をするのはかなり難しい、何か手はないか、それを会議したい」


もしも、このまま真っ向から戦うとなると…恐らく、この国は終わる。

今でさえかなり不満を持っているんだ、先生もそうだった。

そこに更に無駄死にを増やすような政略のような物が出れば、内側から壊れる。

こう言うのは、ゲームでも良くある展開だ、ゲーマーだったからよく分かる。

だが、損失を出さないようにこの状況を覆せるわけがない。

無双ゲーとかなら出来そうだが

今はリアル、1人が暴れて状況が変わるはずも無い。


「作戦がある者は手を上げてくれ」


しかし、誰も手を上げようとしない…

そうだよな、この状況で損害を減らす方法はほぼ無い。


「やはり、誰も居ないか…」


もしも、この国に城壁とかがあれば

その城壁を利用して損害を減らすことが出来るかも知れないが

この国には城壁がない…いや、正確にはあるが、城の周りだけだった筈だ。

俺達が住んでいた孤児院とかも、城壁の外側だったからな…

殆どの家や施設は城壁の外だ、理由は知らないが、多分資源がないんだろうな。


「やはり、正面からの迎撃しか手はないのか…」


そういえば、この敵兵の配置って全体的に細いな。


「あの、1つ質問良いですか?」

「なんだい?」

「この敵兵のピンは、何故こんなに細いのですか?」

「あぁ、ここはかなり高い山に囲まれているから狭いんだ」


はぁ、狭いのか

だから、このルートを通る際にはかなり狭いことになっているんだな。


「じゃあ、ここに落石でも仕掛ければ、相手を足止め出来るのでは?」


こう言うルートならば最初に出てくる方法だよな、落石は。


「おい子供、少し考えるんだな、この道はこの国に繋がる唯一の道だ

 私達からしても、この道が他の国に繋がる唯一の道

 そこを落石でせき止めてしまえば戦いの後に

 他国と貿易することが出来なくなる、そうなれば私達の国は滅ぶだけだ」


あぁ、なる程、この道が俺達に取ってはライフラインなわけね。

そうか、だから1番有効的な落石を行なっていないわけだ。

だが、ここが細道である事に変わりは無いんだよな。


「それじゃあ、その、もうひとつ良いですか?」

「何だ?」

「この細道はクネクネしてます?」

「いいや、かなり長い間は曲がることはない殆ど一直線だ

 だから相手軍の進行も速い、故に早急に手を打たねばならないんだ」

「なる程、理解しました…要するに、曲がってないんですね?」

「あぁ、だから発見も速いんだ、当然、相手の方も我々を感知しやすい」

「じゃあ、敵は休んだりは? 常に行軍ですかね?」

「そうだな、あの場所で休む事は不可能だろう」


真っ直ぐで細道、休む事も無い…

当然、行軍の指揮を執っている指揮官も居る。

問題はそいつが誰かだが…そこは、堪で判断するしかないな。


「あの情報を聞いて、何か良い案が浮かんだか?」

「えぇ、少しですが、しかし、あまり確実性はありませんよ?」

「それでも構わない、言ってくれ」

「レギンス様、こんな子供の意見などどうでも良いではありませんか

 どうせただの戯れ言です、今は時間が無いのですから、出撃の指示を」

「…しかし」

「そうですよ、所詮は子供なのですから、魔法の適性で選ばれただけのね」


ま、そうだよな、俺は今、5歳の子供で

完全に魔法の適性だけで選ばれた指揮官だ。

その上、場数も踏んじゃ居ない、これが最初の戦場、信頼されないのは当然か。

むしろ軍団長が俺の質問に答えてくれたのが奇跡のような物だ、ありがたいね。


「……構いませんよ、大丈夫です、俺の作戦は支援は要らない

 ただ自由に動く許可を下さい」

「…良いだろう、君は自由に動いてくれ」


どうやら、このおっさんは結構物わかりが良いらしい。


「レギンス様!」

「確かに彼女は子供だが、少なくとも我々とは違う戦い方が出来る子だ

 我々は彼女の行動を制限するべきでは無い」

「しかし!」

「何も君達に彼女を支援しろと言っていない

 君達は私の指揮下で動いて貰うだけだ」

「…分かりました、しかし、あんな幼子を信用はしません」

「それで構わぬ、それでは、出撃だ! 敵軍を迎撃せよ!」

「はい」


自由に動く許可は得た

周りには信頼されていないようだが、それでも構わない。

俺はアルルを連れて、会議室から出て行った。


「リオさん、他の部隊の人にあんなことを言うなんて…

 大丈夫なんですか? よく言えましたよね」

「いや、何だ、お前が隣にいるからな、部下の前だし、少し強くで喋ったんだ」


と言うか、こいつが隣にいてくれたお陰で

少しだけ安心出来たというのが正しいかな。

敵にはならないと分かっている奴が居るのはありがたいからな。


「やっぱり、リオさんってワイルドですよね、男の子みたいで格好いいです

 それに大人の男達に向ってあんな風に言えるなんて、憧れます」

「そうかい」

「はい、喋り方とか、自分を俺とか言っちゃってますし、ワイルドですね」


まぁ、見た目は幼女だろうが、中身は男だからな、口調は変わらん。

と言うか、もうこんな容姿になってしまったらな、喋り方まで変えたら

もう自分が男かどうかを見失いそうで怖いし、変えられないよな。


「所でリオさんの作戦って何なんですか? 確実性が無いって言ってましたが」

「あぁ、相手を見抜くことも出来ないし

 そもそも、俺の魔法を信じてくれるとは思わないし」

「魔法? あ、そういえば、リオさんの魔法って、何なんですかね?」

「狙撃」

「そげき? あぁ、部隊の名前にもそげきってありましたね」

「そうだ、狙撃だ」

「気になってたので聞きますけど

 それは何なんですか? やっぱり弓矢ですかね?」


やっぱりこの世界には銃火器は存在していないようだな。

だから狙撃と言う言葉が分からないか。


「似てるが違うな、まず射程が違うし、飛び方も違う」

「よく分かりませんね…」

「実際の戦闘の時に見せるさ、所で双眼鏡とかあるのか?」

「双眼鏡ですか? ありますよ、今は持ってませんけど」

「じゃあ、双眼鏡を取ってきてくれ、あ、後、地図も頼む」

「えーっと、分かりました」


アルルは自分の部屋に小走りで走って行った

結構距離があるけど、待っておくか。

それから、少しして、アルルが首に双眼鏡を掛け

手に地図を持って走ってきた。


「持ってきましたよ、双眼鏡と地図です

 しかし、地図は分かるんですけど、双眼鏡は何故?」

「必要だからな、とりあえず地図をくれ」

「はい」


俺はアルルから地図を貰い、開いてみた…しかし、腕の長さが足りない!

全然足りない! 地図が大きすぎて全く開けない!


「でけぇ…」

「あ、す、すみません、私が開きますね」

「あぁ、頼むよ」


俺は地図をアルルに渡し、開いて貰った。


「それじゃあ、腕を前に伸ばしてくれ」

「はい」

「よし、ありがとう、後しゃがんでくれない?」

「分かってますよ」


俺はアルルが伸ばした腕の間に入り、地図を見ることにした。


「ちょっと失礼っと」

「ふわぁ!」

「えっと、ここがこの国で、出口はここ

 レギンス軍団長の話では、確かこの道だよな」

「あぁ、髪の毛の匂い、シャンプーの良い匂いがしますぅ…

 でも、ほのかに匂ってくるこの匂い、

 これがワイルドさを出していて最高です…」

「あーっと…じゃあ、ここだな、地図的にもこの場所も山だし高いだろう」

「あぁ…あぁ…」

「おいアルル、この場所だ、この場」

「上目遣い最高に可愛いです!」

「はぁ!? うわぁぁ!!」


俺がアルルの方を見たら、よく分からん絶叫をした後に

大量の鼻血を噴出しやがった!

その鼻血は完全に俺の髪の毛と顔に引っ掛かってしまった

…ちょっと口にも入った。


「ぺっぺ、何だよ! いきなり! どうしたんだ? 病気か?」

「はい、病気です、不治の病です~」

「クソ、訳分からん、うぐぅ、血が口に入った、クソ不味い…」

「あぁ、私は何て幸せなのでしょう、心配して貰いました」

「あぁ、クソ…顔が血まみれになった…初めてだぞ、こんな事」


と言うか、普通は血が顔に引っ掛かる事なんてあり得ないんだよ…


「この馬鹿女! 汚らしい鼻血なんぞを引っかけやがって!」

「もっとお願いします!」


…人選ミスったかな…完全に変態じゃ無いか、この女

と言うか、不治の病って何だよ…あ、そうか、変態という不治の病か。


「だぁ! もう! もう良い! こんな馬鹿話してる場合じゃ無い!

 急がないといけないんだよ! この地図の場所に案内…」


俺が地図の方に目を移すと、あの地図は無残にも血まみれになっていた…


「ち、地図が血まみれじゃねぇか! お前の鼻血のせいだぞ!」

「はい、すみませんでしたぁ~」

「ふわふわしてんじゃねぇよ! 時間がねぇんだよ! さっさと取ってこいや!

 この変態女が! トラ達の命掛ってんだよ! おら! 速く行きやがれ!」

「はい! す、すみませんでした!」


クソ、あの女、今が戦闘中だって自覚無いのかよ…

フレイ達は前線に向ってんだぞ、こんちくしょう。

こんな所でモタモタしてる場合じゃ無いんだよ、全く。


「すみません! 持ってきました!」

「よし! 急いでさっきと同じ体勢を取れ! 場所教えるから!」

「はい、分かりました」


俺はさっきと同じ様に、アルルの腕と地図の間に入り、目指したい場所を教えた。


「この場所だからな! 案内しろ!」

「分かりました、案内ならお任せください」

「じゃあ、急ぐぞ!」

「あ、リオさん、髪の毛についた血はどうするんですか?」

「知ったこっちゃねぇよ! 時間がねぇんだ! 

 身だしなみとかどうでも良いから! 速くしろ!」

「はい! わ、分かりました!」


俺はアルルの案内で狙撃ポイントに移動を始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] えぇ……某ラインの悪魔相手にやったら確実に殺されてるだろこれ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ