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軍団長からの返事

報告書の返事は予想以上に早く帰ってきた。

まぁ、短い文だったし、読むのにさほど苦労はしないだろうからな。

とりあえず、俺は自分の仕事部屋で帰ってきたその手紙を読む事にした。

どうせ中身なんて大した事も無い、報告ご苦労程度の物なんだろうが

帰ってきた物を読まないわけにはいかない、重要な事が書かれてる可能性があるからな。


「うわ、長ぇ」


手紙を空けてみると、あの程度の手紙の返事とは思えないほどに大きな紙に

びっしりと沢山の字が書いてある光景があった…おれ、読み物苦手なのに。

こんなクソ長い文を見るだけで、正直言って読む気が失せる。

だが、読まないと…重要な事が書いてあるかも知れないし。


「あー……はぁ、面倒くせぇ」


此度は報告ご苦労、敵国に強力な部隊がいると言うことが分かっただけで十分な収獲だ。

この貴重な情報を集めてくれた君には多大な感謝を贈ろう。

それにだ、君の報告によるとトロピカル地方の兵士達はかなり優秀だと言う事が分かった。

相手に戦意が無かったとしても、負傷者を殆ど出さずの勝利は非常に価値ある物だ。

そんな彼らに贈りたい言葉もある。

君達はよく頑張ってくれた、だが、これで戦いが終わったわけでは無い

この圧倒的な快勝を糧とし、更に質の良い鍛錬に励み、より強固で力強い兵士となれ。

この言葉を君から伝えて欲しい、私からの言葉としてでも、君からの言葉としてでも構わない。

…さて、ここまでは君からの報告に対する返事と、兵士達への称賛だが、君にも称賛の言葉を贈りたい。


「……もう良いや、何か返事も最初の2行だけで終わってるじゃ無いか

 あの後、作戦指示とかが続くなら読んだが、後俺への称賛だけならもう読まないでいいや」


俺はレギンス軍団長からの返事の紙をゆっくりと畳み、保管用のファイルに入れ


「ちょっと待った! リオさん! 絶対に全部読んでませんよね! それ!」

「うぉ! あ、アルル! お前! また見てたのか!?」

「あのですね、レギンス軍団長の報告書とかをよく読んでると分かるんですけど

 あの人は重要な事は後ろの方に書いてることが多いんですよ

 ですから、最初だけ読んで後は読まないのは、非常に危険です!」

「い、いや、でもさ……な、長いし、読むのしんどいし、目とか痛いし

 と言うか! 俺は長い文を読むのは苦手なんだよ! こんなクソ長い手紙、全部読めるかぁ!」


俺はラノベとか読んでみようかな、とか思っても、読み始めて2ページで諦める位に字が苦手だ。

ラノベみたいに相手を楽しませようとしてる文ですら読むのが苦行だってのに

こんなめちゃくちゃ堅苦しいクソ長い手紙を全部読むなんて絶対に無理だ!


「し、指揮官として、それは……ま、まぁ、リオさんはまだ7才ですし、仕方ない部分はありますけど」

「う、うっさいな、いくつになろうが、苦手なもんは苦手なんだよ!」

「仕方ありませんねぇ、私が音読してあげましょう、手紙を貸してください」

「ん」


何か悔しい気分になるが、重要な事が書いてある可能性がある以上、読まないわけには行かない。

俺は仕方なくアルルにその手紙を手渡した。


「えーっと、あ、短いですね」

「み、短い!? これで短いのか!?」

「あ、はい、レギンス軍団長のお手紙は普段はこれの3倍はありますね

 凄いときは10倍くらいですかね、きっとリオさんが子供だから短めに書いたんでしょう」


400文字の原稿用紙くらいの大きさがある紙を10枚くらいを繋げ、折りたたんでいて

更にその紙全部にびっしりと字が書いてある様な状況で普段よりも短いだと!? 

え? その3倍って事は、普段はこれが30枚になってるのか?

更に多いと気だと…さ、100枚? え!? 400文字だぞ!?

単純に考えて、多い時は4万文字書いてるって事か!?

それに字は小っちゃいし、実際はもっと…や、ヤバすぎだろ!


「まぁ、流石にこれだけの文字を朗読って言うのはしんどいので

 所々はしょりながらお話ししますね、では、行きますよ、良く聞いていてくださいね」


此度の戦いで、兵士達の士気が激しく向上したのは間違いなく君の存在があったからだろう。

君はトロピカル地方では名を知らぬ者がいない程の英雄であるからな。

そんな君をこれ程まで鍛え、強くしたのは紛れもなくアルル君だ。

彼女の助け無しでは、君は生きていくことは出来ぬだろう、さぁ、今すぐに籍を入れ永遠の愛を


「おいコラ! この馬鹿が! テメェ! 何勝手に改変してんだよ!」

「あ、バレました?」

「誰だって分かるだろうが!? 馬鹿か!? あぁ! テメェ!

 仮にも上官の言葉が書いてある手紙を改変して変な風にしてんじゃねーよ!」

「あっはっはー、その上官様のありがたーいお言葉が書いてあるお手紙を

 ろくに読もうとせず永久に封印しようとしていたのは何処の誰でしたっけねぇ~」

「この! そ、それはちょっと違うだろうが! 良いから、本来の内容を話せ!」

「はーい、あ、英雄の下りまでは正しいですから、その次を読みます」


君の功績は実に素晴らしい物だ、だが、だからこそ君はもう少し自分を大事にしなければならない。

君が倒れてしまえば、トロピカル地方は総倒れとなってもおかしくない程の痛手を受ける事になる。

だが、君で無ければこなせない任が多々あるのも事実だ。

それ故に肝に銘じて欲しいことがある、君を見守り、導く役割を持つ彼女達の言葉を良く聞くことだ。

君は少々、その事が疎かになっている、良いか? 君は確かに強い

だが、子供だ、そんな君が体を酷使しすぎれば、すぐに限界が来て倒れるのは目に見えている。

だからこそ、彼女達がいるんだ、そんな優秀すぎる力を持って生まれてしまった君達を支え

苦楽を供にする為に、良いか? 彼女達を頼れ、自分1人で抱え込むな…分かったな。


「うぅ…ま、まだ言われてるのか、信頼無いな」

「信頼をしてないと言うよりも、心配してるって感じでしょうね

 きっと軍団長はリオさんの事をお孫さんみたいに思ってるんじゃ無いでしょうか」

「軍団長、孫とかの歳なのか?」

「おじいちゃんですからね」


まぁ、確かに見た目結構老けてたような…だが、威厳とかのせいで歳に見えないんだよな、あの人。


「さて、それじゃあ続きを…うーん、と、思いましたが、後は私達への言葉や

 フレイさん達に対する言葉ですね、リオさんには重要な部分じゃありませんね」

「どんな内容が書いてるんだ? 簡単にで良いから」

「あ、はい、簡単にまとめると、フレイさんには暴走しすぎるなと

 トラさんには仲間を思うのも大事な事だが自分も大事にしろと

 ウィングさんには君は優秀だからもっと自信を持つようにと

 フランさんには友人が欲しいのは分かるが、あまり自分の気持ちを押し付けすぎるなと

 マルさんには君の能力でリオさん達を支えて欲しいと

 メルさんには君は彼らの仲間だ、遠慮をする必要は無いと書いてありますね」


ど、どれも的を得ている、正確にあいつらの弱点を把握しているとは

レギンス軍団長、恐るべしって所だな…流石だ。

だが、マルへの評価は普通だ、弱点とかは見えなかったのかも知れない。

確かにマルには目立った弱点が無いからな、家族の事以外は。


「じゃあ、シルバー達へは?」

「えっとですね、メルトさんにはもう少しウィングさんを建てて行動した方が良いと

 マナさんにはもっと積極的に引っ張り、意見した方が良いと

 シルバーさんにはもう少し気を楽に持った方が良いと、うん、流石軍団長、弱点を網羅してますね」

「お前には?」

「わ、私はほら、才色兼備、何でも出来ちゃうあなたのアルルさんですから」

「顔を真っ青にして背けながら言うな、書いてんだろう? 早く言えよ」

「…も、もう少し自重しろと、リオさんを少しは敬えと…う、敬ってるつもりなんですけどね

 でも、リオさんを見る目がおかしいとか、そんな事を……」

「流石軍団長だ、よく見てるな、だが、流石の軍団長もお前の変態度までは見抜けなかったようだな」

「へ、変態度だなんて、いやですねぇ、私はただリオさんが愛らしすぎるから、こう」

「うっさい! テメェが何と言おうと! お前は正真正銘の変態なんだよ!」

「変態じゃ無いですー、仮に変態だったとしても、変態と言う名の淑女です!」

「お前は何を言おうと! ただのド変態なんだよ!」

「ぐは!」


お? 以外だな、この程度でこいつがダメージを喰らうとは。

普段は何を言っても応えないって言うのに、それが今はここまで。

もしかして、あれか? レギンス軍団長にまで指摘されて流石に応えたか?


「う、うぐぐ…い、いやぁ、あれですね、り、リオさんにだけ言われるなら

 ご褒美で済むんですけど、別の誰かにまで言われると、流石に応えますね

 軍団長がこのままでは変態という称号を渡されることになるぞって書いてまして」

「やっぱり軍団長は流石だな…でもまぁ、もうすでにそんな称号はこいつに纏わり付いてるけど」

「はぁ、自重しようかなぁ……」


お、ついにこの変態の暴走が終わるときが来たのかも知れない。

流石軍団長! 言葉の重みがまるで違うな。


「ま、まぁ、続き…読みますね、私達の行動の文です、重要な場所ですから」

「お、そうなのか、どんな指示が来るかな」


さて、長い前座はここまでとして、本題となる君達への指示を出そう。


「い、今までの前座だったのか」

「軍団長のお手紙は前座が9割です」

「殆どじゃねーかよ!」

「まぁ、書きたいことが多すぎて前座ばかりになるんだと思いますよ、それじゃあ、読みます」


君達は一月の間、このトロピカル地方に待機しメア姫、リサ姫の護衛を行ないながら

トロピカル地方の士気を上げ、国民の活気を高めて欲しい、君達なら出来るはずだ。

一月が経った後、攻撃準備を整えた攻撃部隊と近衛部隊がそちらに到着するだろう。

その時が来れば、姫の護衛は近衛部隊と変わり、君達は攻撃部隊とトロピカル地方の兵士達と供に

一斉に攻勢をかけて貰う、向こうは国土を多く持っている様子である為

最初の国土はその作戦で奪うことが出来ると考えている、その為には兵士達の士気向上が必須だ。

最初の国土を奪った後は情報収集が主な仕事となるだろう。

以上で報告に対する返事、指示を終わる、短くて済まないな。


「むしろなげーよ!」


ヤバい、最後の一言に対してに無意識に突っ込みが…何か恥ずかしい。


「っと、こう言う内容ですね、さて、やっぱり最後の最後に重要な情報を書いてましたね」

「そ、そうだな…正直これ、最初の文と最後の文だけで良いんじゃ」

「レギンス軍団長のありがたいアドバイスもあったじゃないですか」

「そうだけど…それはそれで別の手紙で出してくれれば」

「良いんですか? 何十枚にもなりますよ?」

「…やっぱ良いや」

「でしょ?」


レギンス軍団長…よくまぁ、こんなに沢山の文字を考えつくよな。


「それでは、フレイさん達にしばらくの行動を告げた方が良いでしょうね」

「そうだな、全員総出じゃ無いと、この命令は全うできないだろうからな」

「はい、あと、アドバイスの方も教えておきましょう、あ、私はシルバーさん達に言ってきます」

「じゃ、俺はあいつらか、アドバイスは個別に告げるとして、命令は全員集めてだな」

「分かりました、それじゃあ、行ってきます」


俺とアルルは全員を探し、会議室に集めて今回の事を告げた。

その後、シルバーの意見により全員でどうやってトロピカル地方の兵士達の士気を上げ

活気を高めるかを話し合う事になった、更にメア姫とリサ姫も参加するらしい。

ま、ここの活気を高める方法を考えるのも、姫様達の仕事だからな。

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