急な召集
長らくお待たせしました! 本日より第2部を開始します!
新しい戦争が始まる、その報告は突如として舞い降りた。
「リオさん! 国王様から召集です!」
「召集? まだ深夜31時じゃないか、だから寝る」
「いやぁ、まさか私の前で寝顔を見せてくれるとは嬉しいです!
凄く幸せそうなリオさんの寝顔、いつ見ても素晴らしい!」
「お、お前! 今しれっと怖い事言ったな!? 何、いつ見ても素晴らしいって!
どういうことだよ! 俺はお前に寝顔を見せた記憶はあまりないんだが!?」
「…知りたいですか?」
「やっぱ良い! クソ! 目が覚めちまった!」
あぁ! 最悪の目覚めだ! 何だよ、朝っぱらから気持ち悪い!
そんな最悪の目覚めで俺はゆっくりとベットから身を出した。
「…で、何だよ、召集って」
「いやぁ、ボサボサの頭! 寝ぼけ眼! 最高!」
「…心臓か眉間に風穴開けるぞ? それも馬鹿でかい奴」
「あ、相変わらず辛辣ですね、何も銃を向けなくても」
「…はぁ、これじゃあ、話が進まないか、ほれ、早く言え」
俺は召喚したウィンチェスターを消し、とりあえず軍服に着替えることにした。
国王様からの召集なんて、どうせ大した事はないだろうしな。
どうせ今回も祭りの相談とかだろうしな
メア姫と交流を公に持ってからはしょっちゅうだ。
「では、お話ししますね、実はですね、戦争が始まります」
「へー……はぁ!? お、おま! はぁ!? 何さらっと言ってんだよ!?
何だよ戦争って! どういうことだ!?
と言うか少しは深刻そうに話せやボケ!
何いつものトーンで当たり前の様にさらっと話してんだよ!?」
「え、えっとですね、今回の召集は軍のリーダーだけでしてね
あ、私も一応は付いていきますよ、そう言う役回りですし」
「クソ! 戦争って! あー、もう!」
俺は急いで軍服に着替え、急いで国王様の下に向うことにした。
「リオさん、髪の毛くらいときましょうよ、後、顔も洗ってください
それに歯も磨かないと汚いですよ?」
「なんでお前は冷静なんだよ!」
「戦争ばかりですし、むしろ2年間も平和だった方が奇跡ですよ」
そう言えばそうだったな
この世界は戦争が当たり前の様に行なわれている世界だ。
俺がくたばる前にいた世界じゃ、平和が当たり前だったが
ここじゃ戦争が当たり前なのか。
「ったく、最悪だ」
「はいはい、色々と準備しましょうね」
「おいコラ! 自然に抱き上げるな!」
「この方が幸せですし-」
「コラ! 気色悪い顔を近寄せるな!」
「まぁまぁ、そうカッカしないでください
はい、洗面台ですよ、お顔と歯磨きをしていてください
その間に、私はリオさんの髪の毛をといてあげますから」
「ち、非常事態だってのに」
でも、どうこう言っても仕方ない
とりあえずこいつの言うとおりに顔洗って歯を磨くか。
「はい、出来ました! うん!
綺麗な髪の毛の可愛らしいショートカットです!」
「黙れ、くだらない事を言ってる暇があるならさっさと行くぞ!
ただでさえ時間ロスしてるのに」
「そうですね、急ぎましょうか」
俺達2人は足早に国王様が待っている大会議室に移動した。
そこにはレギンス軍団長を筆頭としたミストラル王国の各部隊の最高司令官がいた
近衛部隊総長マーギル、金髪で傲慢な嫌な奴だ
防衛部隊総統ジーク結構堅物な銀髪の男だな
基本攻撃部隊総括ハル、マルの母親だな
前の戦争で尽力したためこの地位になっている。
支援部隊隊長リンダ、緑髪で献身的なメガネの女の子だ、詳しくは知らない
それにハウル教官の姿もある、まぁ、この人の仕事量を見れば分かるけどな。
と言っても、最近は新しい子供が来ることは少なくなってきてるし
更に適性S何てレアケースだし、主に指揮官の仕事をやってる
その時の戦績も結構な物だからここに居ても不思議じゃない。
まぁ、他のメンバーは揃っているが、国王様はやって来てない様で助かった。
「随分と遅かったな、小娘」
「開口一番随分な物言いですね、マーギル総長」
「ふん、コネで出世した小娘がでかい口を」
コネか、あながち間違っちゃ居ないが
そのコネって結局自力で掴んだ物なんだよな。
まぁ、容姿がメア姫に似てたって言う幸運があったお陰かも知れないけどな。
「マーギル、貴様は彼女の活躍を知らないのか?
彼女のお陰で前の戦争は勝利したのだぞ」
「レギンス軍団長、あんたも大分この小娘の肩を持つんですね
たかだか11人しか居ない弱小部隊の隊長相手に」
「少数精鋭という奴だ、特殊遊撃部隊はな」
特殊遊撃部隊これは軍の者が俺達の部隊を呼ぶときの名称だ。
国民や王族では俺達の事は小さな戦士達と呼んでいる。
軍と国で呼び方が違うちょっと特殊な部隊、それが俺達ってね。
「はいはい、そうですか」
「全く、所でクリークはまだか?」
「恐らく来ませんよ、彼は」
「はぁ、急襲部隊の長になっても変わらぬか」
急襲部隊の主な役目は確か相手へ対する先手攻撃だった筈だ
更にあのクリークという男は戦闘狂
仮に戦争が始まったという報告を受ければ
周りへ何も言わずに兵を率いて攻撃を仕掛けていても不思議じゃない。
「まぁ良い、いつもの事か…」
「諦めてますね」
「諦めもするさ」
俺達がそんな会話をしていると、奥の馬鹿でかい扉が開き
そこから国王様がリサ姫を除く王家全員と一緒に降りてきた。
リサ姫は今はトロピカル地方で仕事をして居るからな。
ハッキリ言って最前線だ
だが、攻撃があったせいで帰れないというのが現状だろう。
だが、リサ姫には俺を除いた小さな戦士達全員が付いてるし問題は無いだろう
今日ここに居るのは俺だけだしな
確か昨日指揮官としてたまには顔を出せと言われたんだったか。
そのついでにメア姫をトロピカル地方へ護衛する予定だったんだっけ
熟睡したせいか、昨日までのことをあまり覚えてない。
はぁ、本当は今日先生達に顔を見せようと思ったんだが、無理そうだな。
「殆ど集まっているようだな」
「は!」
国王様の登場と同時に、俺達は立ち上がり、敬礼を行なった。
「座ってくれて構わない」
「は! 失礼いたします!」
国王様の言葉で俺達は自分の席に座り、会議を行なう体勢を取った。
そんな俺達を見た国王様は、少し深刻そうな顔をしながらも言葉を発し始めた。
「今回、君達を急に召集したわけ、もう分かっているな」
「はい、新しい戦争が始まると」
「うむ、今回の敵はオーム国と何度か衝突していた隣国だ
国の名称はリ・アース国、ハルはかの国のことを知っているのだろう?」
「はい」
オーム国の兵士だった訳だし、敵対していた国の情報くらいは知っているだろう。
こう言う情報があるかないかで状況が変わることがあるし、ありがたいことだ。
「かの国は、最近力を付け始めた国家です、力が付く前は非常に弱く
今にも滅びそうな国だったので
オーム国はこの国には一切手を出していませんでした。
しかし、ある日を境に急激に能力を付け
オーム国に攻め入って来ましたが
その時は魔道兵の力で制圧、撤退させました
それ以降はオーム国に攻め入らず
戦力を拡大、現在の戦力は不明です」
今まで力が無かったはずの国が、ある日いきなり能力を付けるのか?
少し不思議な気もするな、今まで力が無かったのに…可能性としては
秘密裏に何かを研究していて、その研究が成功し力を付けた。
それか優秀な魔法を扱える子供が出て来たか、このどちらかだろう。
まぁ、可能性として1番濃厚なのは後者か。
「…なる程、突如力を付け始めた国家か」
と言うか、今までオーム国への攻撃を回避していた国なら
何故今更舞い戻ってきたんだ? 戦力が十分整ったからか?
だが、過去撤退に追いやられたオーム国が敗北した国に攻め込もうとするか?
もしかして、様子を見たかったから2年間も攻めてこなかったのか?
畜生、疑問が多すぎて何が何だか分からない。
「まぁ、何にしても、攻めてきたならひねり潰しだけですよね」
「マーギル、少しは考えて言葉を発しろ
そもそもだ、貴様ら近衛部隊は何もしないだろう」
「あー? お前もそうだろうが、防衛部隊総統さんよ」
「そうかも知れないが、貴様ら近衛部隊よりは仕事はする」
「こいつ、雑魚部隊の癖によ!」
「ふん、実戦経験が無いくせにエリートを気取っている貴様らよりは
かなり優秀だと思うぞ?」
「言わせておけば!」
「ストップ! 止めろ! 国王様の前だろう!?」
とりあえず、2人の喧嘩がこれ以上ヒートアップする前に制止することにした。
こんな感じに口喧嘩何かしてたら会議が進まないっての。
「すまない、少々熱くなりすぎたらしい」
「ち、仕方ねぇ、だが勘違いするなよクソガキ
俺はお前に言われて喧嘩を止めるんじゃない
国王様にご迷惑をかけないために止めるんだ」
「喧嘩を止めてくれるならどっちでも構わない」
はぁ、何とか止めてくれたな
やっぱり憎まれ口を叩こうがマーギルは近衛兵の隊長だし
国王様に対しては敬意を持っているらしい
プライドが高すぎるのは厄介だが。
ジークは噂通り堅物で真面目だからな
すぐに熱くなるかも知れないが正論を言えば大人しくなる。
しかし、この2人結構仲が悪いみたいだな。
「あぁ、良かったです、喧嘩が酷くならなくて」
「全くだよ、しかし、子供に説得される大人ってのはどうかと思うね」
「「ぐ!」」
ハルさんの軽い嫌味が2人に突き刺さったようだ
これで少しは大人しくなるだろう。
…まぁ、俺の中身は高校生…いや、高校生も子供か。
どちらにせよ、この2人は子供に説得されたって訳だ
はは、大人として恥ずかしいな。
「うーむ、教育を施した事がある私からしてみれば
リオは子供とは思えないのだがな」
「私も同意見だ、彼女の能力などはとてもじゃないが子供とは思えない」
「ほ、褒めないでくださいよ、恥ずかしい」
「あ、赤面してるリオさん可愛い」
う、後ろの方から凄く小さな声と同時に背筋を凍らすような嫌な視線が。
あぁ、そうだった、あいつも後ろに居るんだった
うぅ、たるんだ顔を見せるわけにはいかないな。
あいつ、俺がちょっとでもそんな表情を見せると
頬ずりしようとしてくるし…ゾッとする。
「あー、おほん、とにかくだ
今回君達を呼んだ理由はこの戦争、どう動くか
それを各部隊の総指揮にあたる君達の意見を聞き
全員の意見を総括、より緻密で隙の無い策や布陣を作り上げるために呼んだのだ」
俺達が横道に逸れまくっていたせいか、国王様が少し無理矢理に話を戻した。
うん、国王様にそんな面倒をかけることになるとはな。
「因みに私はリオの事は子供とは思えないが娘の様だと思って居るぞ」
「…私にそっくりですしね」
…もしかして国王様、置いてけぼりにされてたのが寂しかったのか?
と言うか、何で今言ったんだ?
何で? 言いたかったけど中々言えなかったからか?
もしかして国王様、結構かまってちゃんだったりするのかも知れない。
それにそんな国王様の言葉に対してメア姫が少し呆れながら軽く言葉を発した。
「さ、左様ですね…では、会議を始めましょう」
「う、うむ、そうだな」
なんとも反応に困る言葉だったが、レギンス軍団長が何とか話を戻した。
国王様も少しだけ恥ずかしそうにしながら、戻った話に合流した。
…大丈夫なんだろうか、この国…ちょっと危機感が足りない気がする。
まぁ、褒められて少し照れてた俺も大概だけどな…はは。
2部は11話まで大した戦闘描写は無いので本格的な戦闘は11話からとなっています
それまでは比較的ほのぼのとしたお話しをお楽しみください




