いつも以上に騒がしく
フレイを周りの視線から守りながらこいつの部屋まで移動した。
その後、俺達は解散して自分達の部屋まで戻る事にした。
そう言えば、俺の部屋にはフランとアルルがいるわけだが、大丈夫なのか?
面倒だな、このまま色んな所を回る方が良いのかも知れない。
「リオ、見付けましたわ」
俺がウロウロしていると、後ろの方からメア姫が声をかけてきた。
そう言えば、メア姫はこっちに来てから良く俺を気に掛けてくれてるよな。
「どうしました? メア姫様」
「ふふ、リオ、あなたに良い物を持ってきましたわ」
「良い物?」
そう言うと、メア姫は後ろに隠していた何かを俺の前に出した。
「どうですか!? 新しい服ですわよ!」
「・・・・・・」
メア姫が差し出してきた服は全体的にふりふりが多い、無駄に可愛いデザインのドレスだった。
軽く見ただけでその素材がかなり高価なのも分かる・・・・
てか、胸元にピンクのふりふりリボン、その真ん中にはエメラルドの宝石が埋め込まれてる。
これは絶対に高いだろうな、なんでこの姫様は俺にこんな物を。
「えっと、これは?」
「これは、私が着ていた服なのです、ですが安心なさい、色々と手を施し
リオ似合うように可愛く仕上げましたの、サイズも問題ないですわ、ピッタリですわよ」
「いや、お、俺はそんな服は着ないのですが」
「フレイ達の服は良く変わるのに、リオの服は殆ど同じでは無いですか
どれもこれも可愛らしい服など無い、あなたも女子なのですから可愛い服を着なさい
前にも言ったでしょう? 女子である事にプライドを持ちなさいと
このままではあなたは家庭に恵まれず、結婚も出来ないでしょう
それに、もしかしたら男装をしているから背が伸びないのやも知れませんわ、なので、あら? リオ?」
あんな服を着てたまるか、とりあえずペラペラ喋ってる間に逃げたんだが
大丈夫かな、バレなければ良いが・・・・しかし、困った物だ。
ああいう服を着てみろとはいつもアルルが鼻息を荒くして言ってるが
あいつの場合は悪意しか無いから躊躇いなく攻撃出来る。
でも、メア姫様には一切の悪意が無いから断るのも忍びない。
てか、いちいち自分の服を弄ってまで持ってきているとはな。
メア姫は成長著しいから、今の服を俺が着たらブカブカになるし。
「リオ、何処に行ったのですか? 出て来なさい、そして私の持ってきた服を着るのです
もしや、自力で着れないと思ったのですか? 大丈夫ですわ、私が着せてあげます
確かに私の服は着にくいですからね、でも大丈夫ですわ、私がいるのです
安心なさい、着れないからと醜態を晒すことなどないのですから」
そう言う意味じゃ無い、着れそうに無いからとかじゃない、単純に俺かあの服を着たくないからだ。
普通にあの服は可愛くできすぎてる、確かに俺の見た目的には似合うかも知れないが
中身が男の俺にはあの服を着るのは苦行でしか無い、冗談じゃ無いぞ。
あんなの着れるのは若い女か女装癖がある変態の男子くらいだろう。
俺には無理だ、俺には女装癖なんて無いんだよ!
「うーん、あ、メア姫様、どうしたんですか? その服は?」
「おぉ、アルル、実はリオを探しているのですわ」
「リオさんを? 一体何故ですか?」
「この服を着せようと思っているのですが、どうやら恥ずかしいようなのですわ」
「そ、そそ、その、その可愛らしい服を、りり、り、リオさんに!?」
「あ、アルル、顔が近いですわよ? 後、顔が怖いですわ、それと鼻から血が出ていますわよ?」
ヤバい! 何でよりにもよってあの変態女がこんな所に!
あ、そうだった! 考えてみればここは俺の部屋の近く!
アルルの奴が近くに居ても不思議じゃ無い!
「おっと失礼、ふふ、メア姫様、お任せください、私がリオさんを見付けます!」
「そうか、頼りになりますわ」
「えぇ! もう、手足を拘束してでもつれてきます! ふふ、ふふふ!」
「リオに怪我はさせないようにしてくださいませ」
「分かりました! すぐに発見して見せます! マルさん! マルさん!」
え? 俺の部屋にマルがいるの!? 嘘! 冗談じゃ無いぞ! あいつはヤバい!
マルはヤバい! 隠れても意味ないじゃ無いか! そうだ、せめてフレイ達の近くまで行けば!
いや、そっちに行こうとするとメア姫に見付かっちまうじゃ無いか! 八方塞がり!?
「えっと、アルルさん、どうしたんですか?」
「リオさんを見付けてください! 今すぐ!」
「え? あ、えっと、あ、うん」
「えっと、場所は・・・・あぁ、見付けました」
ヤバい、凄い寒気がした! 恐ろしい寒気が!
「リオさん! そこですね! 隠れても無駄なのですよ!」
「うわぁぁ! やっぱ来た!」
「ひゃっはー!」
「この!」
ヤバいな、接近戦では分が悪いけど、接近戦しか出来ない。
そうだ、接近戦闘が弱かったとしても不意打ちなら活路はある!
「リオさーん!」
「黙れ!」
「本気の私にリオさんの攻撃が当たるわけが、げふぉ!」
俺は殴りかかると見せかけて、ウィンチェスターを召喚し、アルルの腹を銃口でついた。
召喚の時に結構な威力があるのか知らないが、それを受けたアルルは地面を転がりのたうち回る。
やり過ぎたか? そんなに威力があるのか? 召喚の力って怖い!
「あ、お、おい、アルル・・・・大丈夫か?」
流石に悪い事したな、やり過ぎた感が凄い、まさかここまで威力があるとは思わなかった。
とりあえず、手当てした方が良いのか? あ、口から血が出てる! やり過ぎた!?
「血が!? ちょ、ちょっと待ってろ! すぐに」
「ふふふ、あはは! 捕まえましたよ!」
「わぁぁぁ!」
俺が後ろを振り向いて医者でも呼ぼうとしたときに、のたうち回っていたアルルが起き上がった。
そして、後ろからすごい勢いで拘束されてしまった! ヤバい!
「お、お前! 血が出てたのに!?」
「トマトジュースです、いやぁ、驚きました? 驚きましたよね?
いやぁ、一度でも良いからリオさんを嵌めてみたくて!」
「ふっざけんなぁ! 離せごらぁ!」
「り、リオさん、お、おちつい、痛、いや、抵抗は無駄で、おぶ!」
とりあえず暴れていると、アルルの色んな場所に攻撃が当たったようだった。
うん、結構手応えもあるし、これは痛いんじゃないかな。
でも、やり過ぎた感が否めない、大丈夫か? 怪我とかしてなければ良いけど。
いや、俺としてはあの服を着せられる方が地獄だし、ここは抵抗してやる!
「離せやぁ!」
「あだ・・・・きゅぅ・・・・」
「お?」
俺の一撃が何処かにヒットすると、アルルの力が一気に抜けてきた。
その隙に俺が急いで手から脱出して、その場から離れた。
「何か知らんがラッキー」
「捕まえましたわよ」
「おわぁ!」
しかし、角から出たら隣に待機していたのかメア姫に捕まってしまった。
ヤバい・・・・アルルなら問題ないけど、メア姫に対して抵抗なんて出来ない!
「さぁ、大人しくしなさい」
「いや、その! 俺の服はこのままで良いんですよ! この方が動きやすいんですから!」
「駄目ですわ、リオは女子、男のような格好などはしたないですわ」
「いや! この服で大丈夫ですって! 一応この服は思い出の品ですから!」
俺が休みの時に着ている服は先生が縫ってくれた服だ、決して高価な生地ではないが
愛情がこもっている、俺達に取ってこの服は大切な物だ。
全員特注だぞ? 世界に1着しか無い服だ、値段なんて意味の無い最高級の服だ。
それに、3年間この服を着ているんだし、今更変えるのも。
「そうなのですか、すみませんね、そうとも知らずに汚い服などと言い」
「ま、まぁ、良く知らない人に取ったら汚い服でしょうからね、でも、これで分かってくれましたか?」
「えぇ、ですが、やはりこの服も着て欲しいのですわ、リオにはもっと色んな服を着て欲しい」
「いや、だから俺はこの服で」
「安心なさい、その大事な服を捨てろと言っている訳では無いのですわ
一時でも良いのです、私はこの服を着て欲しいのです」
「うぅ・・・・」
あぁ、姫様が少しだけ半泣き状態に・・・・・・はぁ。
「・・・・わ、分かりましたよ・・・・着れば良いんですよね、着れば」
「はい! それではこちらに来て下さい! 私が着せて差し上げますわ! 感謝なさい!」
「・・・・はい、姫様のお手で着替えさせていただくなど、身に余る光栄です」
「他人行儀は止めて下さい、リオは私の妹なのですわ!」
「いつ妹になったんですか? そもそも、見た目は姫様の方が大きいですが、年齢的には同い年でしょう」
「そうですわね、じゃあ、私はリオの双子の姉ですわ、これなら自然ですわね!」
確かに見た目もそっくりだ、服装さえ似せれば家族さえもだませるほどに。
だが、1国の姫様とそこら辺でのたれ死にかけていた薄汚い子供が双子なんてな。
「はぁ、姫様、俺みたいな薄汚い子供とあなたが双子の姉妹なんて言わない方が良いですよ
ミストラル王家の名に泥を塗ることになりますよ?」
「自分に自信を持ちなさい、あなたは国を救った英雄なのですから」
やれやれ、初めて会ったときは俺の事を結構馬鹿にしていたのにな。
こう、2年ちょっとでここまで変わるか・・・・いや、違うか。
俺が家族を守ったからかな。
「それでは、着替えさせますわよ」
「・・・・はぁ、お願いします」
結局、俺は抵抗すること無く渋々姫様が持ってきた服を着ることになった。
姫様は慣れない手つきで俺に服を着せた、その間に何度も皮が挟まったり
皮をつねられたり、姫様が転けそうになったりと散々だったが、何とか着ることが出来た。
「で、出来ましたわ!」
「そ、そうですね」
慣れていないからだろう、俺にその服を着せるまでに掛かった時間はおおよそ1時間だ。
姫様もかなり疲れている様子だった・・・・俺は肌の何カ所が赤くなった程度で問題は無い。
いや、結構痛いけど我慢できないほどじゃない、腹を刺されたり骨が折れたりするよりは何倍も楽だ。
「それにしてもリオ、体中傷だらけでしたわね」
「一応、俺も兵士なんで怪我は結構してるんですよ」
まぁ、大半は訓練の時の怪我だろうな、深い怪我はしていないけど傷は残る物だ。
「本当にもっと労ってあげないと行けませんわね」
「俺を労る必要は無いですよ、どうせならフレイ達を労ってやって下さい
あいつらの方が怪我は多いんですから」
「そうですわね・・・・ふふ、良いことを思いつきましたわ! リサお姉様にお話ししてきますの!」
「へ?」
良い事って何だろうか、いや、それよりもあのドレスで走って大丈夫なのか?
「あ、あ、あれ!? め、メア!?」
「り、リサお姉様!? どうして扉の前に!? それに、お顔も真っ赤ですわ、大丈夫ですの?」
「おぉ! リオさん! 最高です! 超可愛いです! メア姫様と同じドレス!」
「アルル!? お前まで!? 鼻息も荒いし!」
何で扉の向こう側に! うぐぐ、メア姫が心配で気付かなかった!
あんにゃろう、今度こそ再起不能になるまでボコボコにしてやる!
「アルル! この! っと!」
ヤバい! そうだった、今はドレスだった! 走ったら転けそうになる!
うぅ、やっぱり動きにくい服だな。
「走り辛いな」
「それにしても、リオがこの見た目で私達の王家に参加しても違和感ないよね」
「見た目は私にそっくり、後は言動に気を付ければ王家の者と言われても違和感は無いですわ」
「いやぁ、お姉ちゃんは嬉しいわ、可愛い妹が増えて」
「リオさんは私の嫁です!」
「じゃあ、アルルも私達王族の仲間入りね、私の事はお義姉様と呼びなさい」
「はい、お義姉様!」
「リサ姫様!? そこは怒って下さい!? 何ナチュラルに受入れてるんですか!?」
「あ、そうね、駄目よ、リオは夫でしょう?」
「そうじゃない! そうじゃないんだ!」
「ふふ、いやぁ、リオをからかうのも面白いわね」
もう駄目だ・・・・この国、もう駄目な気がする・・・・
何で最高権力者の1人がここまで・・・・はぁ。
「えっと、リサお姉様、実は提案があるのですわ」
「提案? 何かしら?」
「今度、軍に残った子供達を全員集めて、パーティーをしましょう!
彼女達は本来は子供です、たまにはそう言う出し物に参加したいはずですわ!」
軍に残った兵士達を全員集めてのパーティー・・・・あぁ、メア姫は優しいな。
普通、1国の姫様にとって、兵士なんてただの手駒だろうに。
「よし、面白いわね、乗ったわ!」
そして、リサ姫にはもう少し考えて欲しかったな。
一切の躊躇い無しとは・・・・はは。
「でも、どうせなら他の兵士達もまとめていきましょうか、で、子供の会場と
大人達の会場を分けましょう、子供と大人では話す内容は違うでしょうし」
「そうですわね、皆様に感謝をしないと」
「ふふふ、こう言うパーティーの構想は私は得意なのよ、待ってなさい!
今からお父様達にも伝えるわ! 早馬! 早馬を出しなさい!」
・・・・凄い結構軽いノリで大規模なパーティーの構想が始まった。
まぁ、今は戦争も無いし・・・・こう言うときくらい、楽しむかな。




