2年も経って
あの温泉騒ぎから2年ほどの時間が経った、その長い月日で変った物は結構沢山ある。
まず最初に、今までの強制徴兵制度が無くなった
これで金目当てに子供を生む親はいなくなり
それと同時に孤児院も激減した、最初はかなりあったが
今は国が経営している孤児院と
先生が経営している孤児院の他に3つだけになった
理由は孤児が減ったからでは無いだろう。
まだ孤児は多いのに孤児院は減っている
つまり孤児院の経営者の殆どが金目当てだったって事だ。
孤児が減ってきたのは素直に嬉しいのだが
この状況を見てしまうと素直に喜べないな。
だが、先生が金目当てじゃ無かったのは素直に嬉しいと思った。
しかし、兵士になった子供の全員はまだ兵士のままだ
生きる術をこれしか知らないからだろう。
かく言う俺達もその一員だ、いや、俺達は特殊だったな
俺達は国に残って欲しいと言われたんだった。
現状のミストラル王国でかなり力があるからな
なんせオーム国を奪還する際に最も活躍したんだし。
今では俺達のメンバーに3人ほどの新しい戦力が増え、各々の部隊が合同し
今は小さな戦士達という部隊になっている、名前はレギンス軍団長の命名だ。
後々に軍に残った子供達も参加する可能性があるらしいが
まだ正式に決まってはいない。
各々の部隊にいる子供達はその部隊にとっても重要だったりするから
すぐには無理らしい。
で、次に俺達がいるオーム国の地名はトロピカル地方に変化した。
何でトロピカル? と思ったのだが
理由はこの方が可愛いからと言う事だ。
この地方名を付けたのはこっちに移動してきていた王家の2人の姫様
リサ姫とメア姫が付けた名前だった
2人は一応最高権力者と言う事になっているが
実際の統治はマルの両親がやっている
言うなれば、2人は天皇、マルの両親が総理大臣と言う事かな。
ただある程度の足が固まったら2人が統治するそうだ。
で、今の俺達の仕事は姫様の護衛が主な仕事になっている
大きな戦争が終わっているからな。
もう一つは、ディーアス国の国土を俺達ミストラル王国が納めることになった。
その土地は海に囲まれていて、前までの状勢で隣接していたのはオーム国だけだったようだ
今はミストラル王国が掌握したことで安全な土地の1つになっている。
ここの国民達はディーアスの圧政に嫌気が差していたようであっさりと引き渡してくれた。
国民達は全員温厚だったな、なんで兵士達があんな風になったのか、それは多分ディーアスが悪い。
今ではその土地もトロピカル地方だ、この地方の指示をしているのはメア姫とリサ姫だ。
この2人の仕事はどっちかというとこの地方の指示が主な役目だな。
「リオさん、どうしたんですか? 日記ですか?」
「あぁ、日記だ一応今まであった事とかをまとめて見ようかと思ってな」
「意味の無いことをしますね」
人が折角日記を書いていると言うのに、余計なことを言うな。
まぁ、別にどうでも良いけど、しかしアルルは年齢的には18歳か、全然そんな風には見えないがな。
「しかしアルル、本当に成長しないよな、もう18だろう?」
「年齢なんて覚えてませんね~、必要ないですし」
「覚えてろよ」
「あ、大丈夫ですよ、リオさんのお歳は覚えています、もう7歳ですね
他にもシルバーさんは19歳、メルトさんは17歳、マナさんは18歳ですね」
「自分の年齢は覚えていないくせに、仲間の年齢は覚えているんだな」
「私自身の年齢はどうでも良いんですけど、皆さんの年齢は覚えていないといけませんからね」
そうか、俺はもう7歳か、七五三に行ける年齢なんだな・・・・あれ? 5歳だっけ?
いや、でも、確か女の子は3歳と7歳だよな・・・・いや、中身は男だし5歳かな
いやいや、正直そんな事はどうでも良いか、この世界では関係の無いことだしな。
「それにしてもリオさん、2年も経ったというのに全く成長していませんよね」
「魔力量は多くなってるし成長してるだろ?」
「いえ、それじゃ無くて・・・・その・・・・見た目が」
「そうか?」
「普通はもう少し成長していてもおかしくないんですけどね、5歳の時の服も問題なく入るし」
そう言えば2年も経った割には殆ど体は成長してなかったな。
身長も変化無いし、左右にも全く広がっていない、筋力量も鍛えてるのにあまり変らないし。
「何でだ?」
「知りませんよ、そう言えばフレイさん達も成長してませんでしたね」
「成長してくれた方が色々と便利なのに」
成長してくれないと体力面に難があるままになってしまう。
現にスタミナを鍛えているはずなのに、スタミナは殆ど成長していない。
本当に理解不能だ、訳が分からない、面倒な体に生まれてしまったな。
「まぁ、私としては成長しない方が良いのです! あ、でも、このままだと子供が出来ませんね
このままだと、私との間に1個部隊を作るほどの子供を生むという私達の夢が潰えてしまいます」
「お前みたいな変態クソ女との間に子供なんざ作らん! そもそも俺は子供を作る予定も無い
決して無い! ふざけんなよ! 何が悲しくて野郎と関係なんざ持つか!」
「大丈夫ですよ、関係を持つのは私とで」
「寝言は死んで言え!」
「もふぁ!」
俺はペラペラと話をしているアルルの下あごを飛び上がり、アッパーで殴りつけた。
その時にこいつは自分の舌を噛んで血が吹き出る、まぁ、狙ってやったんだがな。
「う、つぅ・・・・ふひがいはいれふ」
「お前の口を縫い合わせてやろうか? あぁ!?」
「うぅ、最近リオさんが非力でも私に的確にダメージを与えてきて怖いですよ
あ、そうだ、リオさんが生むのが嫌だと言うのなら、私が生みますよ、リオさんの子供」
「舌を噛み切って死ね、今すぐ死ね、そして二度と口を開くな」
「辛辣ですね、冗談じゃ無いけど冗談ですよ」
やっぱりこいつと話をすると本当にしんどい、何で一切変らないんだよ。
「はぁ、嫌になるな、最近は変なのが増えたって言うのに」
「あはは・・・・リオさんはモテまくりですからね
でも! あの子はリオさんとウィングさんを特別気に入ってるっぽいですけど
フレイさん達も追いかけてますよ、つまり! 私の方がリオさんを愛していると言う事で!」
「リオは渡さない」
あぁ、噂をすればなんとやらだ、なんであいつもこんな所に来てるんだよ。
「げげ! フランさん! どうしてここに!?」
「ふふふ、私が連れてきたの」
「リサ姫様!」
「どうしても会いたいって言っててね」
「リオは私の物! 薄汚いお前に渡すもんか!」
「ぐぬぬ! 私はリオさんの部下! 誰よりもリオさんと一緒に居ると自負しています!」
「違う、リオは私の物! 私の方がリオを知ってる!」
フランも目を覚ましてからは、妙に俺を追いかけ回してきている。
ウィングも追いかけてるし、まだ子供だけの楽園を作ろうとも言ってる。
だが、2年前の戦闘で魔力の異常消費があったせいか、今はあそこまで力は無い。
1人の対象に催眠術を掛けるのが精々だ、ただ複数人に攻撃をすることも出来る。
でも、確かその場合はただ軽い幻覚を見せる程度の効果しか無い、自身の自己暗示も出来なくなっている。
それと、メルも消費があってか魔道兵を作る力が落ちている、今は一機作るのが精々だ
ただ、一機作った状態だろうと、腕を変化させての攻撃は可能らしい。
この2人も見た目は2年前と殆ど変っていないんだよな。
もしかしたら、この世界の子供は成長が遅いのかも知れない。
「リオちゃん、遊ぶよ!」
「は!? お前! 何で窓から! うわぁぁ!」
俺は窓から入ってきたフレイに腕を引っ張られ、少し高めの窓から外に引きずり出されてしまった。
何だか知らんが、こいつはドンドンと活発化してきている、いつもこうやって引きずり回される。
だが、見た目の変化は殆ど無い。
「いつあ!」
窓から引っ張り出されたせいで、俺はフレイが地面に着地すると同時に後頭部を強打した。
・・・・本当に勘弁して欲しい、もう少し優しく扱ってほしいものだ。
俺は筋力とか成長してないからあまり頑丈じゃ無いんだよ。
「あ、リオちゃん、大丈夫?」
「大丈夫じゃ無い・・・・」
俺が雲1つ無い晴天で鳥の可愛いさえずりが聞える綺麗な空を見上げていると
その綺麗な空を遮るようにして、視界の前でフレイの小さな顔と、妙に大きな髪留めのリボンが
俺の視界の一部を塞いできた。
「やっぱり大変だね、リオ」
フレイの他にも2つの顔が俺の前に出て来た、トラとウィングだ。
この2人も俺を見下ろしている、目の前は3人の顔で覆われている状態だ。
でも、真ん中だけは空が見える、それにしてもこの2人も殆ど成長しない、やはり成長が遅いのだろう。
「フレイちゃん、あまり乱暴にしたら駄目だよ」
「大丈夫だって、リオは頑丈だから!」
「・・・・ハッキリ言うが俺は頑丈じゃ無い」
「え? でも、いつも元気そうじゃん」
「そう見えるだけだ、もう少し労れよ、何度お前に殺されかけたと思って」
「お説教は嫌だね-!」
「馬鹿がぁ! 手を、手を握った状態で走るな!」
このアホがぁ! 何で俺の手を引っ張ったままで全速力で走り出してんだよ!
浮いてる! 俺の体が少しだけ浮いてる! 何か気持ち悪い!
「や、止めろぉ! 離せぇ! 手を離せや! 死ぬだろうがぁ!」
「あ、ごめん」
「は!?」
フレイの馬鹿が走りながら俺の手を離した・・・・よりにもよって走りながら。
「ごふぁぁ!」
勢いもあって、バランスも取れない状態で離されたせいで、俺は顔面から地面に投げ出された。
それなりの経験があり、無意識に何度か受け身を取ったお陰であまり酷い怪我はしなかったが
服が破れてしまった、長袖と長ズボンだったから良かったが、半袖半ズボンだったらかなりの怪我だ。
「・・・・フレイ、お前」
「あ、あれ? な、何だろう・・・・リオちゃんから禍々しいオーラを感じるよ」
「いい加減にしろよ・・・・」
「い、いや、ほら、り、リオちゃんが離せって言ったから離したんだよ!?」
「あの勢いで走りながら離すな! せめて止まって離せ! それ位分かるだろうがぁ!」
「いやぁ、止まって離せって言われなかったし」
「・・・・これで何度目だ? あぁ!? 理解しろよ! 天性の馬鹿が!」
「あ、あはは・・・・リオちゃん、その顔止めて! 怖い! 凄く怖いから!」
「そろそろ、お仕置きが!」
「ちょ、ちょっとストップ! リオ、落ち着いて、ね?」
俺がフレイの馬鹿にお仕置きをしようとするとトラが俺の前に出て来て落ち着くように促した。
「トラ、どけ、今日こそはあの馬鹿に仕置きを」
「お、お仕置きはもう十分だと思うって、ほら」
「あ?」
トラが言うようにフレイの方を見てみると、フレイの馬鹿は顔面蒼白で笑っていた。
そして・・・・その・・・・ず、ズボンが・・・・び、びしょび、くく。
「ぷ、くく、漏らしてやがる」
「も、漏らしてないもん!」
「じゃあ、その、ぷぷ、濡れてるのは」
「こ、これは・・・・な、涙だし!」
「あはは! フレイちゃん! 無理だよ、その言い訳には無理があるよ! あはは!」
「く、くぅ! 何さ何さ! 怖かったんだからしょうが無いじゃんか!」
「戦場とかだと、ぷぷ、猪みたいに突っ込んでるくせに、くく、へ、ヘタレだな」
「り、リオちゃんと兵士さんとじゃ、威圧感が違うんだよ・・・・」
「俺の方が小さいぞ?」
「怒ると誰よりも怖いじゃん・・・・うぅ」
それが分かっているなら、もう少し行動を自重すれば良いのに。
しかし、まさか漏らすとはな、猪突猛進の脳筋馬鹿のくせに結構ヘタレなんだな。
もしかして、ああ見えて結構繊細だったりすんのか? そんな風には見えないがな。
「はは、仕置きをする気も失せた、さっさと着替えてこい」
「うぅ・・・・そうするよ」
「で、なんで自然に俺の袖を引く?」
「責任とってよ」
「はは、どうしろって言うんだ?」
「移動する間、私のお漏らしを隠してよ」
「じゃあ、周りから見えないようにお前の前を歩くか、トラ達は斜めを隠してやってくれ」
「分かったよ」
俺達はフレイのお漏らしを隠す為に、正面に俺、斜めから見える場所をトラ達が隠す様に列んだ。
そして、あまり離れないようにゆっくりと進んでいく。
これなら正面からは見えないし、斜めからも見えない、側面からはそもそも見えない。
後方は・・・・見えるかも知れないけど、いちいち振り返ることも無いだろうしな。
しっかし、本当に世話の焼ける奴だ、いつまで経ってもやんちゃな妹って感じだな。




