表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/294

奇妙な状況

アルルのお陰で一気にフランに攻撃を仕掛けるチャンスを得る事が出来た。

この状況下で勝つには、もはや本体であるフランを倒す他ない。

あいつさえ倒せればこの状況は終わるだろう。


「アルル、本当にこっちであってるのか?」

「はい、あってます、どんな時でも隠し通路という物はありますからね」

「どういうことですの?」

「簡単ですよ、城が攻め込まれたとき、王族などが逃げる為の通路は確実にありますから」


良くは分からないが、こいつが見付けた退路というのは帝王が居た部屋に向うらしい。

本当に何を考えているんだか、俺は退路を見付けろと言ったのであって

決して奇襲を出来る場所を見付けろとは言ってないのにな。


「はぁ、退路を見付けろと言ったのにな」

「攻撃は最大の防御ですよ、この状況下において逃げるには敵の中心を倒すしか無いと言う判断です」


確かにここは山の上で結構な崖だ、この状況で逃げるには相手を潰すしかないか。

撤退しようにも崖が深いから降りられない、降りたところで何も解決しない

なら、選択肢は1つだ、フランを倒してあいつらを戻す。

まぁ、端っから選択肢はこの1つしか無かったがな。


「さて、そろそろですよ」

「確かに敵兵の場所が近寄っているな」


マルの魔法の効果で敵の位置が分かる、そして、その場所には2つの気配がある。

まぁ、それは確定だが何故1人だけなんだろうか、意図が分からない

自分を守る為ならもっと複数人居てもおかしくないだろうに。


「それじゃあ、行きますよ!」


アルルが凄い速度で移動して、目の前にあった扉を蹴破った。


「うふ、うふ、うふふ」

「・・・・・・は?」


扉を蹴破った先に待っていたのはゆっくりとお茶を啜っているフランだった。

そして、フランはもう1人の女の子と仲良くお茶を飲んでいる。

その相手は・・・・ウィングだった。


「ど、どういう状況?」

「・・・・この状況で、随分と楽しそうですわね」

「ふふ、ふふふ・・・・お客さんかな? うふふ」


何だろうか、最初にあった時の狂気とは違う嫌な狂気を感じる。

あの楽しそうな笑顔が恐ろしい・・・・訳が分からない。


「お、お前ら、これはどういう状況だ」

「うふ、うふふ、楽しいなぁ、こんなに賑やかなお茶会は初めて」

「・・・・ウィングがあの場所にいなかった理由は、こう言う・・・・そもそも、状況が理解不能だ」

「でも・・・・大人は要らない、必要ない・・・・あんな醜い生き物、ここは私達の空間なのよ」


アルル達の方を見る目つきが豹変した、まるで相手を睨み殺すかのような視線

目は見開き、目は血走っている、更には強く噛みしめているからか口から僅かに血が垂れている。


「要らない、要らない! 要らない! 要らない!! イラナイ!」

「や、ヤバいですよね・・・・私達を見る目」

「だから・・・・殺す! あんな腐った生き物はイラナイ! 全部殺す!

 私達子供だけの楽園を作るの! イラナイ生き物は全部キエロ!」


そこまで言った後、彼女は地面を思いっきり踏んづけた。

すると、地面に小さいながらクレーターが出来た!


「えっと、この人は人体強化魔法の使い手ですか?」

「・・・・まさか、そんなはずはない・・・・こいつが扱うのは催眠術の魔法だぞ?」

「・・・・フランちゃん、どうしてこんな!」


メルはその様子のフランを見てかなりの動揺を見せた。

どうやら、彼女はフランを知っているらしい。


「あの子を知ってるの?」

「・・・・フランちゃんは・・・・私の友達」

「は? ど、どういうことだ? 何でお前がこの国の兵士であるフランと仲が良いんだ!?」

「・・・・フランちゃんは・・・・オーム国の女の子だったの、本当の出身は知らないけど」

「ほ、本当の出身?」

「ふふ、ふふふ、そうだよ、全部皆が悪いんだ、お母さんは私を売った・・・・

 私の国は私を捨て駒にした、その後の国も私を捨てた・・・・でも、あの人は拾ってくれた

 でも、ワタシヲステタ! だから、大人は皆殺す、あんな腐った生き物はイラナイ!

 ゼンブイラナイ! だから、ゼンブホロボス!」


こいつにどんな過去があったのか良く分からないが・・・・とにかく精神的に病んでるのは確かだな。

ここまで狂ったような表情でアルルとシルバーを睨むなんてな。

そもそも、なんで催眠術魔法なのに足場を踏んだだけなのにクレーターにするとは。


「確実にヤバいですよね、警戒しないと」

「うふふ、お姉ちゃんと一緒にあの腐った生き物たちを滅ぼそうね」

「・・・・うん」


無表情のままでウィングはフランの言葉に頷いた。


「フランちゃん・・・・こんな、こんな事をして・・・・楽しいの!?

 意識がない子を操って、一緒に遊んでも!」

「・・・・大丈夫だよ、私は全ての大人を殺せればそれで良いの」


そんな恐ろしい表情を殆ど表情を変えることなく言うなんてな。


「・・・・じゃあ、倒してでもあなたを止める! あなたの友達として!」


その言葉を聞いたメルは魔道兵を大量に召喚した。


「お前! 今の状況でそんなに魔道兵を出したら!」

「大丈夫・・・・私がどんな風になってでも、私はフランちゃんを・・・・助ける!」


かなり無茶をしているのが表情を見ただけで分かる。

顔にはかなりの汗をかいている、どう見ても弱っているのが分かる。


「め、メルちゃん! 止めて!」

「そうですよ! そんなに無理しないで下さい!」

「そうですわ! 私たちも戦うのですから!」

「これは私が何とかしないと駄目なの! フランちゃんがあんな風になるまで気付けなかった

 そんな私が悪いの! だから、私が何とかする!」

「・・・・ふふ、ふふふ、メルは優しいねぇ・・・・とっても優しい・・・・

 でも、負けない・・・・私があなた達を手に入れるためには、私の楽園を作るためには」


そんな言葉の後に、一気に飛びかかった魔道兵の一機が撃破されたと思うと

こちらに全力で走ってきた! 訳が分からないぞ!? 何で催眠術の魔法を扱うこいつが!

何でフレイ並みの攻撃力を持ってやがる!?


「ここは私が足止めしますわ!」

「どけ、醜い大人が」

「うぐ! これは・・・・子供の力ではありませんわ!」


まさか、シルバーが軽く押されるほどの戦闘力だと!?

冗談だろ? 催眠術の魔法で後衛だったって言うのに、この能力は!


「仕方ない!」


俺は急いでウィンチェスターを召喚して、シルバーと交戦しているフランを狙った。


「食らえ!」

「あは!」

「げ!」


俺の行動を感知した様に急いで後方に下がり、俺の攻撃を回避した。

こんなのは初めてだ! 反射神経も異常な程に早い!


「リオさんの攻撃を避けた!?」

「冗談じゃないぞ・・・・これはヤバい」

「反射神経がおかしいですわ」

「動きくらい分かるよ、私とあなたはお友達だから」


俺はこんなに狂った女の子と友達になった記憶はないんだがな。

こんなに目を見開いている女の子なんて普通は誰も近寄らないっての。


「リオさんの攻撃を回避・・・・今まであり得なかった相手ですね」


俺が狙ったことを察知して、俺が引き金を引く直前に身を引く

そんな真似が出来るなんて、まるで漫画やアニメとかのキャラクターじゃないか

確かにここは異世界、色んな非常識があってもおかしくないが・・・・こいつはヤバい。

催眠術の魔法に身体強化だと? 2つの魔法を扱える奴なんて。


「ふふふ」

「な」


俺達を見ていた彼女の腕から血が垂れ始めてきた。

俺はその場所に攻撃が当たったところを見ていない。


「ふふふ」

「なんで血が出てるのに笑ってるの?」


俺達がその光景に気を取られていると、地面を思いっきり蹴る音が聞えてきた。

俺は急いでその方向を振り向いて見ると、ウィングが突撃しているのに気が付いた。


「な!」


そして、ウィングの狙いはアルル! 考えてみれば当然かも知れない。

あの女のこの狙いは大人、この空間にいる大人はアルルとシルバー

なら、狙うのはその2人のどちらか!

それにしても、アルルの奴はこの動きに気が付いていない!


「クソ! アルル!」

「どうしてそんな、あ」


俺の声がけでアルルはウィングの動きに気が付いたようだが

完全に不意打ち状態、この状態だとまともに反撃も出来ない!

仕方ない、やるしか無い! ここなら間に合う!


「ウィング! 止まれ!」


俺はウィンチェスターを構えることはなく、銃でウィングの攻撃を受け止めた。

この状況で狙ったとしても照準を合わせることが出来ない!

だったら受け止めるだけ、でも、こいつの力と俺の力じゃ差は歴然だが

時間を稼ぐ程度ならひ弱な俺でも出来る!


「ぐぅ!」


やっぱり予想通り、俺の力だとウィングの攻撃を受けきれなかった。


「いっつ!」


ウィングの攻撃を受け止められなかったせいで、こいつの剣先が俺の右手の指先を斬った。


「リオさん!」

「下がって」


フランの言葉でウィングは大人しく身を引いた。


「リオさん! 大丈夫ですか!? 怪我は!」

「・・・・右手の指先を斬られた」


よりにもよって・・・・右手の人差し指と中指・・・・最悪だ、これじゃあ利手が使えない。

そもそも、左手も満足に使えないこの状況・・・・クソ、これだとまともに戦えない!


「出血が酷いです! い、今すぐ手当を!」

「馬鹿! ここで手当なんざしてる暇は無いだろ! 目の前に・・・・集中しろ」

「でも!」

「魔道兵も殆ど動いていない、トラが扱える武器もない、マルは戦う事が出来ない、俺もこのザマ

 ・・・・分かってるよな、この状況下で、お前が戦う事が出来ないって事は

 あの2人と戦えるのはシルバーだけになる、あの2人にシルバーだけで勝てるとでも?」

「・・・・ですが」

「アルル、頼むよ、私が手当てするから」


トラがかなり焦りながら俺の方に走ってきて、アルルを説得した。

その説得でアルルは少しだけ悩んだ後にうなずき、ウィング達の方を見た。


「リオ、何とか手当てするから」

「悪いな」

「ふふ、うふふ・・・・あなた達を殺せば、あの子達はワタシノモノ」

「アルルさん、接近戦闘は出来ますの?」

「一応出来ますね・・・・ただ、あまり期待しないでくださいね」

「そうですか、では、ウィングさんをお願いいたしますわ、もう一方はあなたでは厳しいでしょう?」

「はい・・・・気を付けてくださいね、シルバーさん」

「あなたもお気を付けて・・・・勝負はリオさんが回復するまでですわ!」

「はい、それまで意地でも死ねません!」


俺が回復するまでって・・・・回復すれば良いんだがな、畜生。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ