反撃開始
マルの友人メルが目を覚まし、こちらの戦力は十分!
この状況下なら、一気に勝負を掛けることが出来る!
「一気に行くぞ! この状況、ここで覆す!」
この狭い倉庫のお陰で敵が来る場所は1箇所だけだ。
この1箇所を集中して守るだけならこの戦力でも十分対抗できる。
基本はメルがそのポイントを攻撃、撃ち漏らしを俺とトラが攻撃すれば良い。
それに、もしも俺達が更に撃ち漏らしたとしても、アルル、シルバーが居る。
不意打ちはマルの魔法でカバーできるこの状況なら!
「マル、お前はこの範囲を魔法で探っててくれ、それで不意打ちに対処できるからな」
「分かった」
これで不意打ち対策は十分だろう、後方から来たとしてもマルの魔法で動きが分かるからな。
動きが分かれば逆に相手方に不意打ちをかますことだって可能だ。
「メル、だったか、お前は目の前の敵を倒してくれ、だが、撃ち漏らしは気にするな
ただ目の前の荒波みたいに来る敵を倒し続けてくれ」
「荒波? えっと、とにかく敵を倒せば良いって事?」
「そう言う事だ、撃ち漏らしは気にするなよ、そこは俺とそこの虎の髪留めの女の子が潰す」
「撃ち漏らしの処理ね、分かった」
「分かった、頑張る!」
どうやら、俺の指示を理解してくれたようだ、しかし、荒波って例えは駄目だったか。
考えてみればここら辺に海が無いし、荒波と言われても分からないか。
まぁ、理解してくれたのなら問題は無いだろう。
てか、魔道兵だった腕を振りかぶったら魔道兵が出てくるのか、かなりの速度で出せるんだな。
ただ、召喚した直後に彼女が少し疲れている様に見えた。
どうやら魔力は召喚した直後に多大に消費されるらしい、でも、維持が容易なら安い消費か。
「えっと、私は何をすれば良いのでしょう?」
おっと、そう言えば、まだ指示が途中だったな。
とりあえず、こいつに指示を出さないとな。
「お前はもし、俺とトラが敵の迎撃に失敗して接近されたときの対処だ」
「あまり重要そうな役割ではありませんわね」
「馬鹿言え、どんな時も最悪の事態に対する対策は必要な物だ
お前達はその事態の対策、あまり仕事は無いかも知れないが、何だかんだで重要な役割だ」
「確かにそうですわね、ではその役割、全力でこなしますわ!」
これで全員に指示を出すことが出来たな、それじゃあ、防衛を始めるか。
この状況は俺達に取ってはかなり有利な状況だ。
魔道兵の最大の脅威であるフレイはこの場にいない。
それなら、魔道兵での足止めも可能だし、撃ち漏らしも対応できる。
ただ、やはりフレイが来たときの対策も必要かも知れない。
あいつが何処から来るか分からないがな。
「えっと、リオさん? 私への指示ってあるんですかね?」
「・・・・あ、忘れてた」
「酷くないですか!? リオさんと1番一緒に居るのが私なんですけど!?」
「いや、ほら、お前は怪我もしてるし、ちょっとそれを考えて」
「ついさっき忘れてたって言いましたよね!? 嘘は駄目ですよ!」
そう言えばアルルの奴も居たな、でも、丁度良いか。
「それじゃあ、お前は退路の確保を頼む、敵兵の位置とその流れはマルの魔法で分かるだろう?」
「はい、そうですね、敵兵の動きは分かります、あくまで動きだけですが」
「で、その動きをお前の自慢である観察眼で観て、敵兵から逃げることが出来る退路の確保を頼む」
「おぉ、かなり重要そうな役目ですね! 私に任せてください!」
よし、アルルには確実に適役だろう、これならあまり動かないだろうから怪我が酷くはならない。
こいつの観察眼は結構な物だから、動きを見ることも出来るはずだ。
そして、こいつを俺の近くから離すことも出来る、まぁ、流石にこんな時に暴走はしないだろうが
何か怖いし、何にせよ重要な役目だからな。
「さて、敵の流れは相変わらず正面集中って感じだな」
「うん、この流れだったらメルの魔道兵が迎撃出来る」
今更ながら、魔道兵はかなりの戦力だよな、敵だったときは大して感じなかったんだが
こう、味方になった時に理解できた、一般の兵士ではとてもじゃないが対処できない。
攻撃しても、その攻撃はほぼ無意味で、むしろ攻撃をしている方がダメージを食らっている。
それなりの魔法があれば対処は出来るのだろうが、それなりの魔法も珍しいだろう。
俺みたいな特殊な感じの魔法か、フレイみたいな脳筋過ぎる魔法
あるいは、俺を助けてくれた時の2人みたいに、2つの魔法を合わせた連係プレイ
これが無いと例え魔法が使えたとしても、勝機は無い。
味方ならかなり心強いが、敵になったときはかなり厄介、それが魔道兵か。
「こうみてみると、かなり強いですわね、魔道兵」
「そうだな、かなりの脅威だ、ただ例え強力でも弱点はある」
「弱点? 何それ」
「それは、本体が居ると言うことだ」
いくら魔道兵が強くても、それを扱う本体は人間だ。
なら、その人間が殺されたり、意識を失ったりすれば魔道兵は機能しなくなるだろう。
今回の場合、この可能性が十分ある、理由は簡単で、メルはもうボロボロだからだ。
今回、一日中操られている間、魔道兵を作り続け、操り続けていたんだ
だから、魔力量も少ないだろうし、あまり集中力も無いだろう。
魔道兵は半自動で戦っているのかも知れないが、技とかは指示を出さないと駄目なんだろうな。
前にミストラル国に攻めてきた魔道兵はレーザーをぶっ放していたが
今日戦った魔道兵は全く使っていない、で、今も使っては居ない。
今は多分殺さないようにしているからだろうがな。
「大丈夫、私は倒れないから」
「無理はするなよ、お前がかなりしんどいのは分かってるんだ
魔力量には限度がある、無理をしすぎると、お前、死ぬぞ?」
「う! ・・・・でも、戦わないと!」
俺の言葉を聞いた直後、こいつは明らかに動揺した。
しかし、それでも戦う意思を曲げていない、理由は分からない。
「メル! どうして、そんな無茶をしても戦おうとしてるの!?」
「それはね、私を助けてくれた皆を守るため、それに、大丈夫だよ、私は大丈夫」
彼女はかなり弱々しい笑顔を俺達に向けてきた、本当にかなり不味いらしい。
でも、この状況だろうとバレない様に振る舞う辺り、子供っぽくは無いな。
ま、バレバレなんだけど、そこら辺は子供らしい。
「そんな今にも死にそうな笑顔で言われてもな」
「うぅ」
「お前を殺すわけにはいかない、キツいと思ったら言ってくれ」
「・・・・分かった、でも、今は大丈夫だから、これは本当」
例え無理をしているとしても、この状況では彼女に戦って貰うしか無いか。
俺も魔力量はすっからかんだし、そもそも俺の魔法はこう言う多人数相手には向かない。
トラの魔法もここは膨大な武器があるから、まだ対処は出来るかも知れないが
武器を飛ばすという関係上、使えば使うほど武器は遠くに強く刺さる
多分、敵の位置はトラが魔法で何かを浮かすことが出来る範囲外だ。
それだと、いずれ武器が尽き、攻撃出来なくなる。
敵がある程度近づけば魔法で押えることが出来るかも知れないが、人間を浮かすのは難しいだろう。
フレイ相手でも少ししんどそうにしていたからな、子供の体重で。
今の相手は大人、更には鎧まで着けている奴も居る、この状況だとこの手段での攻撃は不可能。
やっぱりこの状況下だとメルの魔道兵に頼るしか無いらしい。
「あぁ、今回は頼ることにする、でも、本当に辛かったら言えよ?」
「うん、分かってる」
その後も魔道兵は猛威を振るった、迫ってくる兵士達を赤子のようにあしらう姿はとんでもない。
だが、いくら魔道兵が頑丈だからと言っても、何度も攻撃を食らえばダメージは食らうらしい。
いや、もしかしたらメルの魔力量が少なく装甲に十分な耐久力が無いのかも知れない。
この可能性が十分ある、前に戦ったときはここまで脆くなかったからな。
「あの魔道兵がボロボロに」
「魔力量が足りなかったのか?」
「・・・・うん、あまり良いのが出来なかった」
やっぱりな、魔力量が足りなければ魔法の効果は落ちるからな。
「リオ、どうする? この状況はかなり不味いと思うよ、このまま魔道兵が倒されたら」
「あぁ、残りの残党が一気に来る、そうなると俺達だけでの迎撃は厳しい」
「大丈夫、私がまた新しいのを作って」
彼女が新しい魔道兵を作ろうとしたとき、敵の中に凄く早い奴が居た。
この速さ、俺は覚えがある・・・・ヤバい、これは確実にフレイ!
「不味いぞ! 撤退しないと!」
「え?」
「リオさん! 退路確保できました!」
丁度良いタイミングにアルルが退路を確保したと報告してきた。
「よし! 急いで撤退だ! アルルかシルバー、大丈夫そうなら俺を運んでくれ」
「はい、分かってますよ、その足では動けませんからね」
「では、リオさんを運ぶのはアルルさんに任せますわ、私は撤退の支援ですわ!」
「え? え? どうしたの!? そんなに焦って」
「良いから! メル! お前も急げ!」
「あ、う、うん」
マルとメルはこの撤退の理由は分からないようだが、トラ達は分かっているようだった。
とにかく、俺達は急いで撤退を開始、そして退路付近まで下がったとき、魔道兵が砕かれた。
「そんな! 私の魔道兵があんな風に壊れるなんて!」
そして、さっきまで魔道兵が居たところには見覚えのある姿があった。
「やっぱりフレイか」
あいつは魔道兵を粉砕した後、俺達を探すように周りを見渡している。
にしても、なんでおでこに手を当ててキョロキョロしているんだ?
あれじゃあ、いつも通りって感じで何か不気味だな。
とにかく今は下がるしか無い、撤退しか手段が無いだろう。
フレイが参戦してきたら、魔道兵だと足止めは出来ないからな。
「それにしても、随分と良い感じの退路だな」
「えぇ、そりゃあもう、私の全ての力を使って探しましたからね
あの兵士達にはバレにくく、なおかつ、敵基地に入れるルートです」
「何!?」
それはつまり、フランを探す事が出来ると言う事か!
「良い仕事するじゃ無いか、アルル!」
「そんな嬉しそうな顔をされると頑張った甲斐がありますよ」
「それじゃあ、一気に基地に入って、あのフードの女の子を!」
「あぁ、一気に叩く!」
一時は状況が悪化したと思ったが、アルルのお陰で優勢を引き戻せた。
これで大本のフランを倒すことが出来れば勝てる!
だが、警戒はしないと行けないな、護衛が居ないと言いきれないからな。




