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急すぎる変化

俺達はあの後、実習訓練をある程度こなした。

そこそこハードだったが、さほど問題は無い位の優しい訓練だったな。


「いやぁ、少し汗かいちゃったよ」

「訓練で軽く汗をかいた程度で済むって、どうなんだろうな」

「私達が子供だから手加減してくれたんだよ、きっと」

「体を壊さないようにかな?」

「そうだと思うよ、きっと」


特訓の後にこんな軽い口調で話す事が出来るんだし

本当に大したことのない感じだったんだろうな。


「以上で訓練、授業は終了だ」

「次はいつですか?」

「次はない、君達にはすぐに指揮官として配備される」

「な! そんな!」


嘘だろ!? 本当に基礎的なことをやっただけだぞ!?

体は全然できあがってないって言うのに、もう実戦配備!?


「速すぎやしませんか!? まだ基礎をやった程度で、体も出来てませんよ!?」

「それは分かっているが、時間が無いんだ、君達は優秀な人材だからな

 出来る限り速く配備したいのだ、体の方は自主練を行なってくれ」

「そんな! いくら何でも! 

 俺達と俺達の部下になるはずの人材を殺そうとしているのと同じだ!」

「その事は百も承知だ、だが、我が国の人材不足は深刻なんだ、分かってくれ

 異様なほどに聡明な君なら、理解することが出来るはずだ」


…マジかよ、そこまでこの国の人材不足は深刻なのか…

だが、この急すぎる配置は、いくら何でもあり得ない…

1日やそこらで教え込んだ知識と技術で戦場を生き残るのは厳しすぎるぞ…

いや、俺は良いんだ、狙撃だから体も必要ないし、それを扱う技術はある

戦術も無駄に知識が多いから、判断は出来るんだが、他の子はそうはいかない。

俺みたいに過去の記憶があるわけじゃないから、完全に何も分からない状態だ。

その状態で戦場なんて・・・本当に死んでこいと言ってるような物だ。


「そこまで深刻なんですか?

 マイナスしかないって分かってるのに、やるくらい? 馬鹿ですか?」

「ハッキリ物を言う子だな、まぁ、否定はしない

 確かに行いとしては愚かで馬鹿な行為だ、だが、分かっていても

 やるしか無いほどにこの国は追い込まれている、思え

 この手段を執らなければ、この国は確実に何度も滅んでいるのだから」

「でも、おっさんは生きてるって事は…

 あぁ、そうか、教える役がいりますからね

 だから、あんたは生きてるんだ、何人ものガキを死地に向わせてね」

「……反論はしない、好きに言ってくれ、私はそれだけの事をした

 だが、変えられないんだ、もし変えたいというなら

 君がこの状況を崩すことだな、以上だ」


最後にそう言い残し、おっさんは城に戻っていった…言い過ぎたか。

どうしても会話というのは得意じゃないから、暴言を吐いてしまうな。

こいつらと話すときは問題ないのに

知りもしない奴相手だと、どうしてもああなってしまう。

もう少し感情と言葉を制御できれば良いのに、難しいもんだな…


「あ、ハウル教官! まだ、この子達の式についてのお話を!」

「君が教えてやってくれ・・・」

「はぁ・・・分かりました・・・」


式? なんかあるのか? 式というと

どうしても人が多いだろうから嫌なんだけど


「えっと、あなた達はこれから30分休憩

 その後に正式に部隊長として認定する式があります

 その式の後に部隊員になる方を紹介する事になっています

 その細かい説明はその時にしますので、今は式のことを考えていてください

 偉い人も来るので、失礼の無いようにお願いします

 特にあなた、さっきみたいに喧嘩を売るような発言は避けてくださいね」

「は、はい」


やっぱりこの人も怒っているんだな、いや、仕方ないけどさ。


「ねぇ、リオちゃん、せいしきにぶたいちょうってどういう意味?

 あと、にんていって? しきって?」

「教えて! 分からないし」

「うん、知りたい」

「あっとだな、まずは正式にだけど。これはなんて言えば良いかな、

 まぁ、あれだ、沢山の人が見ている中で

 自分がこうなったって事を教える、みたいな感じかな」

「じゃあ、ぶたいちょうって?」


こう、噛み砕いて説明して欲しいと言われると、やっぱり難しいな。

部隊長って何? とか聞かれても

部下を指示をする人や他の部隊長と意見を交換する人

とかは言えないし…とりあえず、どうやって説明するかな


「あー、えっとだな、少ない仲間の中で偉い人かな」

「へぇ、偉い人なんだ、じゃあ、しきって?」

「え、えっと、沢山の人が見に来る物かな」

「おぉ! 沢山来るんだね! じゃあさ、にんていって何?」

「え、えっと…その…なんだ

 今度から、自分達が部隊長だって事を分かって貰う事…かな」

「おぉ! 私達が偉い人になるんだ! 分かって貰えれば良いなぁ!」

「色々と分かった、ありがとう

 あ、あと私も分からないことがあるんだけど、ぶたいいんって?」

「俺達が部隊長って言う偉い人になった時に言う事を聞いてくれる人達だな」


この説明は比較的楽だな、もうすでに部隊長ってなんなのかを教えたしな。


「へぇ、私達の言う事を聞いてくれる人が部隊員なんだね

 じゃあ、しつれいって?」

「そうだなぁ、偉い人…

 まぁ、先生とかをお婆ちゃんとか言っちゃうことかな」

「うぅ、確かに言ったら怒られちゃったもんね

 お姉さんか先生と呼びなさいって、ほっぺ痛かった」

「ま、まぁ、うん、確かにいたかったな…本気でやること無いのに」


俺の場合はお婆ちゃんなんて優しい感じじゃなくて

ババアとか言っちゃったからな。

感情にまかせてそう言ったのを覚えてる、

そしたら、グーで殴られた。

いや、うん、俺が悪いよな…分かりきってる事だけど。


「とりあえず、失礼って言うのはそう言うことだ

 もしも、相手の頭がツルツルだからってツルリン禿げとか

 テカテカジジイとか言うなよ? 絶対だからな!?」

「言わないよ、テカテカジジイなんて、でも、面白いね、その言葉!」

「お、面白いなんて物じゃねぇよ! 恐ろしい罰が来るぞ!」

「そ、そうなんだ、結構怖い言葉なんだね」


俺がこの世界に飛ばされて

こんな容姿になってしまった全ての元凶の言葉だしな…

正直、失礼がないように気を付けないといけないのは確実に俺の方だ。

感情が暴走したら、暴言とかを吐きまくっちまうし…さっきもそうだったし。


「と、とにかくだ、出来るだけ返事だけで済ませるようにしよう

喋らないことが1番だ」

「なんで?」

「だって、間違って変な事を言ってしまったら怒られるぞ? 

 あ、でも、名前とか呼ばれたりしたらしっかりと返事はしないとな」

「分かった!」

「えっと…そろそろ時間ですよ」

「へ?」


ま、まさか、言葉の意味とかの説明をしていただけなのに

もう30分経ったのか!?

時間が経つのは早いな、予想以上に。


「あと10分ですので、私に付いてきてください、案内します」

「あ、うん、分かった」


俺は教官のサポート役の女の人に付いていき、大きめな扉の前に案内された。


「ここですか?」

「はい、あと、少ししたら開けますので、開けたら中にお入りください

 部屋に入ると正面に軍の総指揮を執る軍団長のレギンス様がいらっしゃるので

 レギンス様の足下に移動して、膝をおつきください、そうすると

 レギンス様があなた達を部隊長と認める仰りますので、言われた後は礼を言い

 書状をいただき、部屋から出て下さい、それで認定の式は終わりです」

「け、結構あっさりなんですね・・・」

「レギンス様も多忙の身なので、あまり時間は取れないのですよ

 さて、時間です」


そう言い、サポートの人は隣に居るもう1人の女の人の方を見て

うなずき、扉を同時に開けた。

ゆっくりと扉が開き、俺達の目に飛び込んできたのは

鎧を着ているゴツい大人達だった。

だが、全員がゴツい大人というわけじゃない

扉に近い方には幼い子供も居る、だが、奥にも居る。

当然、その子達も鎧を着ていた、それに気が付き、分かったこととしては

これは武勲を積んだ人から順番に並んでいるんじゃないかって事だ。


「これは…」


それにしても大人達が途中でばったり減り、子供ばかりになっている。

最高レベルと思われる総団長の近場は幼い女の子だ。

これはきっと幼いこの方が功績を積んでいると言う事なのだろう。

それは魔法の力なのか、もしくは出撃頻度の差なのかは分からないがな。


「前へ」


レギンスさんが俺達の方を見て、そう言った

これは前の方に出て来いという意味なのだろう

それにしたも、明らかに圧迫的すぎる、子供にこの環境は厳しいぜ

ついでに毎日ゲームばかりしていた他人と距離を置いていた人間にもな


「うぅ…」

「い、行くぞ」

「大丈夫…怖くないって…うん」

「そうだよ、ほら、行こう」


俺達は4人でそんな会話を行ない、ゆっくりと前へ歩き始めた。

そして、レギンスさんの足下まで移動し、膝をついた。


「では、我々、ミストラル王国率いる、レギンス軍は、本日より新しい部隊長として

 お前達4名を受入れ、認めよう

 君達は指揮官として部隊員の命を預かるという責任を知り

 ミストラル国の永劫の繁栄を願い、尽力して国の為に戦う名誉を与えよう」

「あ、ありがとうございま…す」

「ありがとうございます!」

「あ、ありがとう…ございます」

「…あ、ありがとうございます」


どうも心の底からありがとう等と言えないな

名誉なんて強制じゃないか。

しかし、ちょっと声が裏返ってしまった、

こう言う場はどうしても嫌だな。

だが、トラは結構普通に礼を言ったな

こう言うときに強いのか? あいつは。


「これを渡そう、大切な書状だ、しっかりと携帯することだ、無くすでないぞ」

「はい、分かりました!」


俺達は全員が礼を言った後に差し出された書状を貰った。

この時、分かりましたと言ったのはトラ1人だけだ。

あいつは先生とかに良く色々と教わってたからな、礼儀正しい奴だ。

それに、こんな状況でも動揺しないとは、将来有望だな。


「では、本日より部隊長の責務、しっかりと果たすのだぞ」

「はい!」


最後にその言葉を貰い、俺達はこの部屋から出て行った。

そこにはさっきのサポート役である女の人が待っていた。


「良く出来ましたね、では、こちらです

 あなた方の部隊と隊員を紹介します、こっちです」

「あ、はい」


せめて、少しくらい休ませてくれても言い気がするがなぁ。

まぁ、時間があまりないんなら、仕方ない

俺達は案内されるがまま少し大きな部屋に移動した。

そこには、4人の女の人達が立っている。


「ここに居る4名のうち、1人があなた方の部下となります

 彼女達はあなた方に勉学を教えてくれたり

 戦い方を教えてくれたりと、まぁ、アドバイザーの様な方です

 戦場に向う際は、必ず各々の部隊員を近くに付けておいて下さい

 では、あなた達、自己紹介を」

「はい! えー、私はマナ・ソーリャと言います

 接近戦ならお任せください、体力、接近技術には自信があります」


なんだ? この流れ、自己紹介って言うか面接みたいな感じだな。

まぁ、うん、とりあえず

この紫色の瞳で、髪の毛が青く短いボーイッシュな人はフレイかな。

あいつは身体強化系の魔法だし。


「私はメルト・マールと言います、武器の扱いならば私にお任せください」


この金髪で全体的にキリッとして

髪の毛が長いどことなくクールな感じの人はウィングかな

あいつは武器を召喚して戦うんだ

立ち回りとかを教わる為にもこの人だろう。

しかし、この人、外国人に日本人を無理矢理混ぜた感じだな

目の色が何故か黒だし。


「私はウィル・シルバー・サーシャ

 基本的に何でも出来ますわ、どうぞよろしく」


この緑髪でウェーブが掛った感じの長い髪の毛

顔立ちはこの中で1番大人な感じで目の色は髪の毛と同じく緑

胸はかなり大きく、少し高飛車な雰囲気が出てるこの人だが

何が出来るのか曖昧でイマイチよく分からない

だが、何でも出来るって言ってるって事は

とっさの判断とかが得意なのかも知れない

だが、誰向きなのかは分からない。


「あ、えっと、わ、わわ、わ、わたひわ! 

 アルル・フィートと言います! 得意な事は…

 えっと……観察とか、状況判断は得意です! 

 あ、接近戦も少しは出来ます!」


随分と噛んでるな、あの人髪型は赤色で髪を左右にリボンで小さく結んでいる。

目の色は青色で、胸は無い…まぁ、得意な物を聞く限りだと、俺向きだな。

いや、でも、どことなく危険な香りがするのは気のせい…かな?

てか、普通幼い子供相手との会話で噛むってどうなんだろうか

まぁ、うん、一応上司だしな。


「さて、この4人の中で、あなた達が気に入った人を選んでください」

「そうは言われてもなぁー…

 やっぱ、そう言うのはリオちゃんに聞こう、誰が良いと思う!?」

「自分で決めろ…と、言いたいところだが

 お前らが自分の魔法と相性が良い仲間を選べるとは思わないし

 良いぞ、俺が選ぼう」

「本当に!? やったぁ!」

「まぁ、後でなんか嫌だ、とか言うなよ? 受入れることが大事だ」

「うん!」

「分かってるよ、先生に言われてたもん」

「そうだよ! 大丈夫、誰でも大丈夫だよ! よく分からないけどね!」


あの先生は偉大だな、子供にここまで影響を与えるとは。

やっぱり孤児院の先生だし、慕われているんだろうな。


「さて、じゃあ、まずはフレイだ、お前はマナという人が良いと思うぞ」

「なんで?」

「お前は接近戦に強い魔法を使うんだ、だからそれに付いていけれる人が居る

 それに接近戦が得意と言っているんだから戦い方も教われば良い」

「分かった!」

「で、次はウィングだな、お前はメルトという人が良いと思うぞ」

「そうなんだ、分かったよ」

「理由は聞かないのか?」

「聞いても分からないだろうから」

「一応聞いておけ、あの人は武器を使った接近戦が得意だと言ってた

 だから戦い方を学べば良い」

「あ、簡単に分かった…ありがとう」


さて、問題はあの2人だな…曖昧な情報しかないシルバー

俺向けの能力ではあるが、あまり能力は期待できないアルル。

でも、やっぱりトラの能力も考えると、あのシルバーって人かな。


「で、トラはシルバーって人だな、能力が高いらしいから

 汎用性も高いだろうし、上手く動けると思う」

「分かった、じゃあ、リオはあのアルルって人?」

「そうだ、観察が得意だって言ってたし、観測手向きだろうしな」

「かんそくしゅ?」

「まぁ、周りを見てくれる人だな、大切なんだよ、そう言う人が」

「そうなんだ、よく分からないけど、良いか」


俺達は各々の部下になる人材を選び、その人を部下にした。

その後、部隊名を決めろと言われたので

俺は自分の部隊を安直に狙撃偵察部隊とした。

正直、難しい部隊名とか分からないし、FPSの主人公のチーム名から

インビジブルグリムリーパーという名前にしようかとも思ったが

…なんか臭いから止めた。

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